共謀罪と組織犯罪防止条約5(立法事実2)

私は大部隊出動ニュース(カナリアまで用意して行きました)を見て「なんだ前から分っていたのに泳がしていたのか?」と家族で話し合ったものですが、今になってみると当時サリン製造していることが分っただけでは、警察としては何か事件を起こしてくれないことにはどうにもならなかったからではないかと思われます。
アメリカの9・11事件では、ビル崩壊の状況がビル解体に使う爆破とそっくりであって、飛行機が上の方でぶつかって上から崩れたにしてはおかし過ぎることや、アメリカの政府高官が一人も犠牲にあっておらず、情報に疎い日本の銀行マンが大量に被害を受けるなどからブッシュのやらせ事件ではないかと言う意見が根強くあります。
「やらせ」かどうかは別としても、情報機関が大方の計画をつかんでいても、実際にどの飛行機を乗っ取るかまでは分っていなかったと言うこともあり得ます。
(テロリスト実行犯をあちこちの空港に待機させておいて、どの飛行機に乗り込むか3〜40分前に連絡しテロ道具支給する場合、実行直前の盗聴が出来ない限り事前摘発出来ません)
こういう大規模被害を未然に防ぐには、実行する前の計画が発覚した段階で規制や検挙出来る必要があります。
この教訓からでも、アメリカ政府が乗っ取り計画を把握した段階で検挙したいと主張しているとすれば(議論の詳細を知りませんが・・)合理的です。
我が国も、法が予め決めた決めた定型行為に着手する前の共謀段階で検挙したいと言う立場だったのではないでしょうか?
そうとすれば我が国でも既に共謀罪の制定の必要な社会状況・・法律家の言う立法事実が発生していたことになります。
ただし、以上は飽くまで共謀罪制定問題の委員でもない門外漢・素人である私の推測です。
私はこの議論の素人ですが、素人しての希望は、プロが反対論を展開する以上は、単に近代法の精神に反すると言うスローガンだけではなく、現在は近代から2世紀も経過していて社会も大幅に変わっているのですから、現在社会に生きている素人が・・現在社会ではどうなのかの疑問を抱くのが普通ですから、この疑問に答える説明が必要です。
20世紀以降は大衆社会とひとくくりに言われていますが、2世紀前には反乱等を企画出来るのは地域有力者なり、軍資金の出せる一定の勢力を保有している限定された勢力を監視していれば良かったのですが、数日前に起きたカナダ議会での乱射事件のように名もない個々人が一人で結構大きな事件を起こせますので、土豪・有力者など監視していれば良かった2世紀前までとは段違いです。
あるいは元北大生がテロ組織「イスラム国」に参加するために出国しようとしていたことが話題になっていますが、ホンのちょっとした閉塞感から孤独な若者がひょっと過激組織に共鳴してことを起こす危険が高まっているのが現在社会です。
19世紀までの刑事法制は「結果が出てから処罰するのが刑法の原則で、例外的に(殺人のような重大事件に限って)未遂を罰する」法体系でした。
刀や槍での殺傷中心時代ならば、武器の準備は目に付くし、結果が出てからでも(秋葉原事件のような大事件もありますがそれにして爆発物やサリン等ほどの大規模化リスクはありません)大したことがないので、この程度で処罰するのがえん罪や不法な逮捕を防ぐ・人権意識とバランスが取れていました。
これが反対論者が錦の御旗にしている近代刑法の精神です。
近代刑法が出来たのは絶対王政や独裁政がフランス革命等で倒れてからの新理念ですから、成立時の政治情勢・・革命前時代に対する反動と言う面を無視出来ません。
絶対王制かあるいは専制君主制・独裁制下での恣意的連行を防ぐ意味もありましたが、先進国(中国や韓国ではまだ人権侵害の危険性の方が高いでしょうが・・)では、司法機関の独立性が高く最早そうした恣意的逮捕・検挙は滅多に出来ないし、仮に恣意的逮捕しても訴訟手続が完備しているので、無罪になってしまい・・政権の打撃になるので滅多なことは出来ない時代です。
今では、・・そちらの危険よりは社会不安を煽るテロ被害・・社会防衛の方が心配な時代に入っています。
社会防衛思想はナチス刑法で強調されて発展した思想だったので危険思想化する傾向があり・・我々も刑法の勉強ではそのような本バカリ読んで育ったので無意識のうちにそう言う思想が身に付いています。

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