NAFTA→雇用喪失と移民増2

日本大手メデイア好みの移民問題に対する理解・人道主義的理解・オバマ礼賛オンリーでは日本は誤ります。
かと言って、トランプ氏の過激政策(壁を建設するなど)は選挙対策的には意味があるでしょうが、基本的に無理筋のイメージです。
企業が出て行けばその分野の雇用が減る(製造業が国内立地の場合不採算事業を国外に移せば、)その分野の雇用が減るのは理の当然ですし、企業が国外活動すれば自国民が出かけるだけでなく外国人も入ってくる関係になります。
これが気にくわないと当たり散らしてもどうなるものではありません。
人件費が割に合わないならば、一部国外進出どころか潔くその事業を全部やめればいいのですが、フォードやクライスラーが国内全面撤退すると政府が怒るので企業が付き合いで国内に止まるには赤字にならない程度の割安労働力が必要です。
ところが、低賃金あるいは3K部門のやり手がないのでそれを嫌がらず担当するメキシコ系の移民導入が進んだのではないでしょうか?
日本では不法就労外国人だからといって賃金単価を差別することは出来ないので米国も同じと思われるのですが、なぜ外国人に低賃金職場が奪われるかのような不満が起きるかといえば、労働者不足の場合経済原理からいえばその分野の人件費が上がるべきなのに上がらないのは低賃金参入があって下支えをするから上がらない・この不満を古典的表現で「低賃金職場が奪われる白人の不満」とメデイアが表現しているのではないでしょうか?
実際に米国では好景気でほぼ百%雇用状態と言うのですから、不法移民が白人の職を奪っているのではなく、不満があるとしたら好景気なのに給与が上がらない・格差が縮まらない不満というべきでしょう。
日本の介護士不足のコラムでだいぶ前に書いたことがありますが、本当に不足しているならば経済原理に委ねれば時給単価が上がり労働環境の改善が進むはずなのに上がらないのは、低賃金政策があるからではないか?
待遇改善したくない力学が働いているという意見を以前このコラムで書いたことがあります。(下書きに書いてそのままになっているかも?)
完全雇用下で市場原理に委ねると単価的に近い接続職場・・従来の3K職場や非正規雇用者との人員争奪になり膨大な裾野労働者の人件費引き上げに連動していきます。
今の人件費体系で辛うじて生き残っている(ギリギリの採算で)旧来型製造工場サービス業等が軒並み国際競争力を失う結果になるからでしょう。
これをやってしまったのが韓国最低賃金強制引き上げによる零細事業の廃業続出現象です。
医師、介護士や看護師給与は一見市場原理のようでいて、国民皆保険制度の結果、薬価同様に点数次第で基本枠組みが決まるのでその枠内での業界内の自由競争でしかなく、実事実上の国定賃金です。
本当に保育士や介護士を増やしたいならば、競合する居酒屋やコンビニバイトより単価を上げれば済む話です。
それが出来ないのは一波万波を呼び・・競合接続業界から順次人件費引き上げ連動が起きて、最後は国内製造業の工賃単価に及び、辛うじて生き残っている限界企業が国外移転するしかなくなる・・雇用縮小に見舞われるのが怖いからです。
100%雇用状態とは言い換えれば国際競争できる人件費水準であり、これを仮に2割あげるとたちまち競争力がなくなり職場がなくなり失業の嵐になるでしょう。
為替相場で円を2割高にする政策と同じです。
保育士や介護士がコンビニや回転すしチェーンや居酒屋より重要だというならば、現行の賃金体系の序列を変更して、保育士介護士などの賃金をあげるが日本全体の賃金底上げに連動しない・・(そんな法律は作れないので)国民合意しかないでしょう。
100%市場原理で雇用している宅急便やコンビニ居酒屋等の場合、人手不足→競合他社より人件費待遇改善すれば自社だけ人を増やして労働時間短縮できるはずです。
しかし、他社と生産性が同じであれば他社より高い賃金では採算が取れない→自社だけ単価を上げると客が逃げる・・業界横並びで賃金アップ→商品単価アップすれば他業界に客が逃げる(スーパー業界が談合で単価を1割上げればデパートやコンビニに負けるなどで他社や他業界との生産性比較の問題です。
人手不足とは人が足りないのではなく、その業界が他業界から人材を引き抜けない・・これ以上給与を上げられない→単価を上げれば競合類似業界に客を取られる・・生産性の低さの言い訳に帰することがわかります。
売り上げ減を補うための単価値下げ競争は(回転すしのように合理化による単価下げは意味がありますが、)消耗戦に過ぎないのは知られていますが、生産性アップを伴わない待遇改善競争→客単価の値上げしかない・これも値下げ競争同質の消耗戦です。
寿司業界が回転寿司業態を開発して生産性で大飛躍しましたが、人手足を嘆く業界は、生産性アップ努力で他業界に遅れていることを自白をしていることになります。
回転寿司のような画期的業態変化は滅多にできないので、国内で低賃金が不満なら安い人件費でも喜んで働いてくれる後進国へ逃げて国内生産にとどまる競合を圧倒する安直戦略が流行りました。
サービス業は海外に逃げられない(コンビニや建設業も海外展開していますが国内分野ゼロでは国民が困るので)ので、待った無しの生産性アップ努力が問われるようになったのです。
そこで介護ロボットの工夫・医療現場のIT化など進み、コンビニ・スーパーなどでのセルフレジ化)介護化看護師等の負担軽減努力が進んで来たのですが、その程度では足りない・・待遇改善だけではなく給与そのものアップが必要です。
企業とすれば、10人必要なレジ係が最新設備によって3人で足りるようになれば、7人分の人件費が浮くのですが、その代わり機器導入費負担がかかるのでストレートな人件費アップになりません。
このような構造変化が進む結果、労働分配率が下がり続けているのですが、メデイアが時々この種の批判論をキャンペインするのをこのコラムで批判してきました。
回転すしで言えば従来20年前後徒弟奉公したベテランしか握れなかった寿司を、短期間講習で握れるように単純工程化した結果、人件費単価が急激に下がりましたが、この場合企業の大きなコストは回転チェーンの設備投資と立地経費、仕入れ単価が多くを占めるのであって、労働分配率が下がるのは当たり前です。

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