NAFTA→雇用喪失と移民増3

機械化による効率化・生産性向上が進むと人件費率が上がるより下がる方向へ作用します。
ロボットなどの製造工場に合理化・生産性向上分の多くが吸い上げられる構造です。
宅急便の荷物仕分け物流センターの機械化も同様で、100人の作業員が10人で済む・・あるいは恒常的残業時間がへる方向になり手取り収入が減ります。
企業は元々白人に対する高額賃金では国内に1工場も残せないから低賃金労働者を入れて平均コストを下げて何とかしているとした場合で考えます。
外国人労働がないと工場の維持ができない=白人の職場がゼロになる関係・・例えば千人の工場に200人働いているから白人の職が200奪われているのではなく、200人いないと800人の白人の職場がそっくりなくなる関係とすれば、逆恨みも良いところです。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44975010Y9A510C1000000/

トヨタ「輸入車規制は逆効果」 トランプ氏に反論
2019/5/18 7:10
トヨタの米国法人がコメントを出した。同社が60年以上にわたって米国に根付き、工場や販売店で50万人近い雇用を生んでいると主張。「今日の声明から、トヨタの米国への投資や従業員の貢献が評価されていないというメッセージを受け取った」と不満を表明した。トヨタが米政権を批判するのは珍しい。
トランプ大統領は同日、日本車を含む輸入車への追加関税の判断を180日延長することを決めた。一方で自動車の輸入増を「国家安全保障上の脅威だ」と指摘し、期限内に合意できなければ「追加措置を取る」とした。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50272150W9A920C1MM8000/
2019/9/26 22:35  日本経済新聞 電子版

【ニューヨーク=飛田臨太郎、辻隆史】日米両政府による貿易交渉は25日(日本時間26日)、閣僚級協議の開始から実質半年という短期間で決着した。日本は最大の懸案だった米国への自動車輸出の高関税や数量規制を回避。中国と対立を深める米政権は2020年の大統領選を控え、牛肉や豚肉の関税削減を確保した。安倍晋三首相は「ウィンウィンの結論」と評したが、先送りした懸案も多い。

先送り感は否めないものの、政治というものはいつも先送りであり、いつ蒸し返されるかしれない本質を持つものです。
当面危機回避できたことは良いことです。
トランプ氏の移民抑制とNAFTA見直し宣言は、高度成長期に日本からの輸入増大による職場を失う不満が、ハンマーでの日系製品叩き壊しパフォーマンスになったのと同じ方向のエネルギーを汲み取った政策と見るべきでしょう。
トランプ氏がNAFTA再交渉宣言とメキシコとの国境の壁設置を同時主張している所以です。
ここでメキシコの発展経過を見ると、日本の中国に対する関係同様にNAFTAをキッカケに米国企業の現地進出の動きが始まったので、現地人が工場労働経験を積み(規則正しい勤務になれるなど)製造工程の機械化が進めば進むほど個々人の技能差に頼る率が少なくなり、米国内生産と品質面でそれほどの遜色なくなっていきます。
メキシコ人労働者が経験を積みサプライチェン関連のインフラも整ってきたのを見て、日系企業も進出してもモノになると踏んで?日系企業進出が始まると、現地人工場労働技術習得に加速度がついた印象です。
11日見た車生産台数のグラフでは、日系進出が始まった11年の翌12年以降急激に車生産が増えています。
18年には韓国の生産台数を追い越してしまったニュースを見ました。https://www.globalnote.jp/post-3184.htmlによると18年ランキングでは、メキシコはドイツの次・・世界6位で韓国7位でした。
こうなると、メキシコを米国の独占市場にするどころか、米国の方がメキシコの製品の販売市場になって輸入国に逆転してきたのがこの4〜5年ということでしょうか?
こうした傾向は米国の対中関係でも同様です。
米国は冷戦勝利の余波を駆って中国の門戸をこじ開ければ、中国市場席巻の予定だったでしょうが、(実際に大量の米企業が進出しある程度成功しています)逆に中国からの輸入の方が増える一方メキシコ同様に予定が外れ、トランプ氏の不満が炸裂しました。
11日冒頭にアップルの例を紹介した通り、最終完成品を中国から輸入する仕組みでは貿易収支で見れば、自国初の発注製品でさえ米国の方が赤字になるのは必然です。
要は最終製品輸出国は貿易黒字になりやすいのです。
米国にとって中国のように覇権争いをしませんが、経済的に見れば中国同様に目障りになった段階かもしれません。
グローバル化に成功してみたら自国が損をすることが分かって、ちゃぶ台返しを始めたのでしょう。
米国覇権を狙うのを許せないのは共和、民主共通ですのでトランプ氏に限らず対中政策強化は一致のようですが、メキシコは米国覇権を否定しようとしていないので、共和、民主の立ち位置による評価の違いが出ているのでしょうか?
メキシコやカナダは米国覇権に挑戦する気持ちがないので、あっさり米国の要求に応じてNAFTA見直しに応じ米墨の紛争(メキシコからの輸出環境不明のままだと日本などのメキシコへの進出計画が立たず・・投資停滞・経済活動停滞リスク)が長引くことによる貿易関係不確実性除去に早期成功しました。
トランプ氏の恫喝によるメキシコに対する影響は以下の通りです。
https://biz-journal.jp/2017/03/post_18439.html
2017.03.24

ドナルド・トランプ米大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しを打ち出し、メキシコで生産された自動車に高関税を課す考えを示した。今後の交渉次第では、メキシコからの輸出に影響が出かねない。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC