アメリカの対日政策6

アメリかの対日政策の変遷に話題を戻します。
世界一強になったつもりのアメリカが増長した結果自ら招いたとも言えますが、最近ではあちらでもこちらでも戦火が拡大して、モグラ叩きのようになって収拾がつかなくなって来ました。
9月25日に書いたように、あちこちの政権反対派を育成して来たのが、鬼子になって育って来たのですから、言わば自業自得とも言えます。
昔は武器も限られていたし、ゲリラ戦術があまり発達していなかったので、傀儡政権を少し脅かす程度の程々に力を持っていて、傀儡政権が困れば近代兵器を投入して蹴散らしてやる・・こうして恩を着せておくのが、宗主国にとって便利な存在でした。
日本で言えば汚職等のリークで政権批判を起こさせては、適当なところで沈静化させて恩を売るし、対外的には、今後はアジアの時代だとなれば、今のうちだと中国をけしかけて、日中韓の対立を煽り、日本やフィリッピンなどにアメリカに頼るしかないと思わせるなどをして操縦に成功してきました。
このやり方は一定の組織集団間の争いのばあい、双方共にその組織・利権を根底から失いたくないことから、適当なマッチポンプ方式がずっと成功して来たのですが、ベトコン以来、失うべきもの・拠点を持たないゲリラ戦術に対しては適当な落としどころがなくなったことと、圧倒的な近代兵器投入で圧倒的に鎮圧する方法が利かなくなったので無理になってきました。
アメリカによる今回の「イスラム国」空爆は拠点を叩くには効果がありますが、拠点の分散が特徴であるゲリラ勢力にとっては、それほどの痛手がありません。
空爆の成果として発表されているのは、安物をいくつか壊した程度であって使用した戦闘機一機あたり百億円単位のコスト(撃墜されたわけではありませんが・・)と比べ物になりません。
現在の世界情勢は、中国の歴代王朝末期にあちこちで暴動が頻発して、収拾がつかなくなって来た状態と結果は似ています。
特に今回の「イスラム国」と言うスンニ派テロ集団の台頭になって来ると、敵味方が入り交じっていて、スンニ派を叩けばアメリカの敵視しているシリア政府が助かると言う状態で、アメリカがどちらの味方をして良いか「解」さえ見つからない程の混沌ぶりです。
本来植民地政支配の分捕り合戦の都合と、支配地内で部族・宗派に分かれて対立抗争を繰り返せば、植民地支配に好都合と言う思惑で、西欧列強が民族宗派の生活区域を意図的に無視して線引きした国境線に無理があります。
「イスラム国」はこの植民地時代の秩序そのものを壊そうとしていて、(日本で言えば戦後秩序の見直しにアメリカが必死になるのと同じです)従来のゲリラとは違うことから、欧米諸国は同ゲリラは如何に残虐かなど宣伝して、その鎮圧に必死になっているのでしょう。
これをどうするかは、現地人の主体的行動に任せておいて数十年〜百年単位の抗争が必要ならば、やるだけやって落ち着くのを待っているのが基本でしょう。
ただし、当然その責任は西欧元列強・・旧植民地支配国にありますが、武力介入で解決しようとするのは筋違いの責任の取り方ではないでしょうか?
欧米・・部外者にとってはこの「解」さえない・・到達点が決まらないのに、オバマは急いで空爆等を開始する決断をしてしまいました。
オバマ大統領は「やるべきときにやる決断が出来ない」と批判されたために、慌てて「やるべきではない決断をした」ことになります。
これが一般的理解ですが、もしかしたら、欧米の介入によって勝敗がつかない泥沼化を期待して、欧米の引いた線引き=秩序の修正を遅らせる・・ひいてはアラブ現地人による自律的解決を遅らせる深謀遠慮かも知れません。
アメリカのよろめき・・オバマの頼りなさを見て、すかさず中国(尖閣諸島や南沙諸島)やロシア(クリミヤ占領・ウクライナ)がアメリカに対して鼎の軽重を問う動きに出て来ました。
オバマ大統領は就任早々にノーベル平和賞を受賞しましたが、結果を見れば分るように平和論さえ唱えれば平和を維持出来るものではなく、逆説的ですが武力の裏付けがあってこそ平和維持出来ることがわかります。

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