世界の警察官不在と世界秩序維持2(トルコとロシア)

トルコ政府の隣国シリアの混迷に対するスタンスは反政府軍支持・現政権打倒が基本ですし、ロシアはソ連時代からの遺産・・シリアに食い込んだ既得権維持方針ですから、基本構造として相容れません。
トルコ政府のシリア現政権否定路線が転換されるまで、ロシアの対トルコ嫌がらせが続くと見るしかないでしょう。
歴史的に近代以降ロシアの南下政策の正面に位置するオスマントルコとは戦い抜いてきた仇敵同士であり(トルコはクリミヤ戦争以来英仏等西欧列強の支援でロシア南下を食い止めてきた歴史です。
第一次世界大戦でドイツと組んだために大打撃を受けてオスマントルコが崩壊して、現在のトルコ共和国になりましたが、ロシアが宿敵であることは変わらず第二次世界大戦後欧米で対ソ防衛網として結成されたNATOに参加して国防の基礎にして来ました。
多くのトルコ人をドイツ等先進国へ就労→移民させている他、熱烈なEU加盟希望・このためにも政治と宗教の分離を進めてきたり民主化を進めてきたことでも知られています。
国際政治的には、欧米のシリア政府の人権侵害批判に呼応してロシアと親しいシリア政権(トルコにとってもロシアとシリアに挟撃されるのは地勢上不利で落ち着かない)打倒の反政府軍支持をして来た経緯があります。
ところが、エルドアン氏の独裁傾向強化(クーデター騒ぎに始まり憲法改正に至る一連の)動きが西欧から批判を浴びたことに対する反発から、西欧離れに舵を切ったことによりロシアに付け入る隙を与えたことになります。
上記の通り歴史を見ると、ここ数年のエルドアン氏の方向転換は、長期にわたって民族一丸として西欧の仲間となるために約100年近く続けて来た方向性とは大きくかけ離れていてエルドアン個人権力欲維持のために、長期的国益・ロシアによる威嚇〜圧迫を防ぐ手立てを放棄・売り渡してロシア詣でを繰り返しているように見えます。
日清戦争時に李氏朝鮮王朝が日本が進める開化・民主化を嫌い自己権力保持のために清朝の属国化を進んで強化し、日露戦争時に開化派が期待する日本が勝って民主化するよりはロシアの属國化の方が良いとしてロシア勝利を期待していたことをポーツマス講和条約のコラムで紹介しました。
4月1のコラムでポーツマス条約に関するウイキペデイアの以下の記事を引用しましたがもう一度引用しておきます。

「1905年9月5日(露暦8月23日)、ポーツマス海軍工廠内で日露講和条約の調印がなされた。ロシア軍部には強い不満が残り、ロシアの勝利を期待していた大韓帝国の皇帝高宗は絶望した」

明治維新までの 朝鮮と清朝の関係は朝貢と王位継承の承認という形式関係に過ぎませんでしたが、日本の開化要求をはねつける名目として宗主国の同意が必要といって、何かと日本から共同歩調要請を拒否していましたし、これを利用した清朝が直接支配を強めて・・・進駐した袁世凱が高宗の父で実力者の大院君を中国連行する事件も起きました。
日清戦争の直接の契機は事大主義者によって、何かと清朝を引き合いにすることから決着をつけるために引き起こされた戦争でした。
June 20, 2013「日本対中朝対立の始まり2と根深さ」前後で清朝の朝鮮に対する属国支配強化を紹介しましたが、朝鮮は清朝の属国だから自由にできないという言い訳がありました。
朝鮮の独立が日清戦争の大きな争点であったので、戦後講和条約の最重要項目として、条約第一条に朝鮮独立が宣言されたのですが、朝鮮がその恩義に報いるどころか逆にロシアに頼るようなそぶりを見せなければ、日露戦争の必要がなかったかもしれません。
下関条約については江華島条約などに関連して以前紹介した記憶ですが、もう一度紹介しておきます。
ウイキペデイアによる下関条約に関する記事からです。

清国は朝鮮国が完全無欠なる独立自主の国であることを確認し、独立自主を損害するような朝鮮国から清国に対する貢・献上・典礼等は永遠に廃止する。(第一条)
清国は遼東半島、台湾、澎湖諸島など付属諸島嶼の主権ならびに該地方にある城塁、兵器製造所及び官有物を永遠に日本に割与する。(第二条、第三条)
以下省略

上記の通り、第1条に朝鮮の独立を書いていることから見ても朝鮮を清朝支配から切り離すことがこの戦争の最重要テーマであったことがわかります。
日本が関係する朝鮮半島の歴史を見ると(古代白村江の戦いでも秀吉の朝鮮征伐でも日清戦争1940年台の朝鮮戦争でもいつも大国同士で戦わせて自分は戦いの傍観者的立場で批判だけするずるい傾向があります。
今回の核危機騒動でも自分は米国が怒っているから仕方なしに従っているだけのような振る舞いです。
現在の文大統領に至っては、対北用の防衛設備工事を中国に反対されると一時凍結するなど、いつも当事者意識が低いのが特徴で、本音では北朝鮮に併呑されても良いような傾向がかいま見えるのは、独立より従属を好むDNAでしょうか。
ところで、エジプトやタイ軍事政権やミャンマーその他諸国の反民主化の動き、あるいはフィリピン大統領の刑事手続き不要の現場射殺命令等々は、それぞれの治安情勢や国情に応じた必要な政治形態のように見えますが、これに対する西欧の(自国社会を基準にした)人権批判は余計なお世話のような気がしています。
しかし、トルコの場合、着々と近代化合理化が進んでいて社会が独裁を必要としていたように見えない(ただし欧米系メデイア報道による知識だけなのでトルコ社会がEU加盟に向けて無理な近代化に対する疲れを起こしていた反動かは不明です)のにエルドアン個人の権力欲がいきなり独裁化方向へ引っ張っている点が異色です。
東南アジアでの軍事政権等を国情を無視して人権を重んじる欧米が批判する(経済・軍事支援など抑制する)とその後ろだてとして中国が付け入って代わって支援する・・勢力浸透しているのを真似して中東に頭を突っ込んでいるのですが、ロシアの場合、中国のような資金のばらまきもなく脅しだけですから、ちょっと無理な感じです。
ところで、ロシア中国の対外実力行使が始まった時期を見ておきますと、オバマがした「アメリカは世界の警察官ではない」と言う発言が13年9月10日で、ロシアのクリミヤ併合は14年2月、シリア介入開始は15年9月末でした。
南シナ海での中国による大々的な埋め立て工事に対してフィリッピンが問題提起したのは、14年はじめでした。
ウイキペデイアの記事からです。

2014年5月15日、フィリピン外務省が、中国がジョンソン南礁(赤瓜礁)を埋め立てているということを示す時系列の写真を公開し[5]、2014年に入ってから大量の土砂を投入しているということが判明[6][7]。同礁は2012年3月の時点では目立つものはなかったが、2013年2月の時点では建造物が確認でき、2014年3月の時点では、すっかり埋め立てられていた[5]。フィリピン外務省は、この中国の行為をフィリピンの領域内で行われているということから国際法に違反していると批判

国際司法裁判所判決で中国は完敗しましたが、そんなの「紙くず」だと言い放ち、完全無視してさらに埋め立て続行していた上で、今では巨大な要塞化して来ました。

世界の警察官不在と世界秩序維持1(ロシア🆚トルコ)

ロシアは2018-4-19「資源下落とロシア経済1」で紹介した世界ネタ帳のデータにあるように、農産物・・野菜果物等は西欧やトルコ等からの輸入に頼るようになっています。
4月21日のグラフで見たように14年ごろから始まった原油相場下落・・輸出減で苦しいのに外貨準備が増えているのは収入が減った分貯金を取り崩さないで、食うものも食わずに以前よりも必死に貯蓄に励んでいるパターンです。
欧米の対ロ経済制裁に対してプーチンはすかさず西欧からの食品輸入制限を発表したりトルコによる空軍機撃墜事件でトルコに対する制裁として直ちに輸入制限しましたが、そもそも食料品等を買う資金がないのが本音でしょうが、国民には経済制裁のやり合いだから(うまい果物等を食えなくとも)協力してくれということでしょう。https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM0602G_W4A800C1FF1000/

ロシア、農産物輸入を制限 制裁に対抗
2014/8/7付
【キエフ=小滝麻理子】ロシアのプーチン大統領は6日、ウクライナ問題を巡りロシアに対して制裁を科した国からの農産物などの輸入を禁止・制限する大統領令に署名した。欧米による本格的な対ロシア制裁が先週に実施されてから初めての対抗措置となる。ウクライナを巡る国際的な危機が一段と混迷を深め、ロシア経済にも打撃を与える可能性がある。

輸出禁止は輸入相手から言えば輸入禁止したのと同じですから、どちらが主導権を持ってやったかの違いでしかなく、内容が高度部品ではなく食料品の場合、我慢比べになれば(例えば果物野菜を買えなくとも買う方は困らないが売る方は売れなくなると困ります)買う方が耐久力があるのが原則です。
22〜23日から書いているように部品が買えないで性能の劣る国産に切り替えると輸出製品の性能が下がるので困りますが、野菜果物等は国民が我慢すれば済むことです。
この辺の意見はトルコがロシア空軍機を間違って?撃墜した事件での経済制裁合戦になれば食料輸入側のロシアの方が強いと書いていたとおりで、私の予想通りにトルコはすぐに屈服しました。
しかし、度重なるエルドアン大統領の訪ロにかかわらず、ロシアは農産物輸入規制を一部緩和しただけでいまだに嫌がらせが・これが続く限りトルコは度重なる表敬訪問(よく来たと厚遇だけするものの)・・ロシアの言いなりになるしかない属国的状況?陥っている様子です。
http://jisl.org/2017/03/post-2889.html

『ロシアいまだにトルコ農産品輸入禁止』
2017年3月13日
ロシアとトルコとの外交関係は、現段階では全く問題がないようだ。近くトルコのエルドアン大統領がロシアを訪問するが、ヨーロッパ諸国とは異なり、何の問題も無いばかりか、ロシア側はエルドアン大統領訪問時には、ヨーロッパとは異なり、最高のもてなしをすると事前に発表している。
しかし、ロシアのトルコとの貿易には、いまだに制約があるようだ。2016年初以来続いている、ロシア側のトルコ農産品輸入に対する制裁がいまだに効力を発揮しているのだ。
その理由は、植物衛生上の問題という事のようだが、トルコ側からそれまで輸入が認められていた、多くの農産品がいまでは輸出出来なくなっているのだ。例えば、イエロー・オニオン、一部フルーツ、七面鳥、鶏、塩、ベル・ペッパー、ターキッシュ・ピンク、ザクロ、オバジンといったものが輸入禁止品目だ。
ブロッコリーやカリフラワー、カーネーションもそうであったが、これらの品物は輸入が解禁になったようだ。
トルコにとっては、農産品は主要輸出品目であり、それが輸出不可能となることは、関係業者にとっては死活問題であり、政府にとっては外貨獲得が出来なくなる、という大問題なのだ。
ロシアのトルコ農産物に対する輸入規制は、単純に農産品の衛生上の、問題なのであろうか。そこにはいまだに、ロシアがトルコを恨んでいることによる、政治的な意味合いがあると思えてならない。(ロシアの戦闘機がトルコの戦闘機に、撃墜されるという事が起こっている)
トルコはいま、外貨の獲得が大問題になっており、エルドアン大統領は国民に対して、手持ちの外貨をトルコ・リラに交換するよう、呼びかけもした。しかし、そのことは、トルコ・リラの暴落を生んでいる。一時期は戻りかけたと思われたトルコ・リラは、最近では3・75レベルにまで、再度交換レートを下げているのだ。
もとは1ドルに対して3リラ程度だったものが、いまでは3・7リラ程度だという事は、大幅な落ち込みと言わざるを得まい。一時期戻ったのは、あくまでも投機家による、トルコ・リラ安買い狙いであったものと思われる。
ロシアが今後も、トルコからの農産品の輸入に、規制をかければ、ますますトルコ経済は悪化する、という事であろう。加えて、ロシアからの観光客が減ることも、相当厳しい状況を、トルコ経済に生み出そう。

http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/341341/
http://www.murc.jp/thinktank/economy/analysis/research/report_180423.pdf

トルコ大統領選前倒しの背景にある経済の悪化~意識される通貨危機のリスク
(2)マクロ経済に目立つ軋み
エルドアン大統領が想定以上に大統領選挙と議会選挙の実施を早めた背景には、景気が鈍化する前に選挙を行いたいとする意向があったものと推察される。
図表1にあるように、トルコの17年の実質GDP成長率は+7.4%と前年(+3.2%)から急伸した。
個人消費と総固定資本形成の好調が景気を押し上げたが、これは政府による経済対策によって実現したものである。
具体的には、白物家電や家具販売への減税措置が消費を刺激し、また政府保証の拡大を受けた銀行融資の増加が投資を拡大させた。
こうした財政頼みの景気加速を受けて、経済には様々な軋みも生じている。例えば17年の消費物価上昇率は11.9%と、中銀の掲げる物価目標(5%)を大幅に超えている。
エルドアン大統領が景気重視の姿勢をとる中で、中銀は物価が目標水準を超えても金融引き締めを行えない状況となっている。
また財政頼みの景気加速に伴い、足元にかけて財政収支と経常収支が悪化している。図表2で示したように、トルコの17年の財政収支の赤字幅はGDPの1.6%に、また経常収支の赤字幅は5.6 %にそれぞれ膨らんだ。こうした「双子の赤字」は2年連続で拡大しており、トルコ経済の不安定要因になっている。(図表引用省略)

こうした中で意識されるのが通貨危機のリスクである。
既に下落が続くリラであるが、再選後に政治経済運営の不透明感が増すことを嫌気した投資家がリラに売りを浴びせる可能性には注意を要する。

日経新聞でもトルコ選挙前倒しに絡んで同旨(経済が行き詰まっている)記事が出ていたので、日本での基本的理解になっているようです。

貿易赤字解消策(保護政策の功罪)3

最近では中国の部品製造能力が上がり単なる加工基地ではなくなりつつあります。
有名なアップル・アイフォンの生産国は主に中国にある・一種の常識ですが・・という以下の記事を紹介しておきます。

世界中で人気のiPhone! その工場とは?どこでつくられているの?


2015年11月15日公開 2017年9月14日更新

新モデルが発表されるたびに大きな話題となるiPhone。その大半は中国で製造されています。
台湾に本社を構え、中国に生産拠点を持つフォックスコン・グループの中心的存在で、電子機器の受託生産を行う世界最大の工場です。
受託生産とはAppleからの依頼で、iPhoneやiPadなどの製造を行います。iPhone6については、その6割の生産を鴻海精密工業が行っており、ほぼ独占的に製造しています。
なぜ中国でiPhoneはつくられるのか?
人件費は高い?安い?
著しい成長が続く中国では、人件費を引き上げる動きが相次いでいます。iPhone6をつくるときもiPhone5より生産難易度が高いため、賃上げが行われました。今の中国で人件費が安いということはありません。
それでも製造を中国で行う理由は、しっかりとしたサプライチェーン(原料の調達、製造から消費者のもとへ届くまでの流れ)が存在しているからです。しかも鴻海精密工業のサプライチェーンは質が高いことで知られます。たとえばディスプレイなら、原料の到着からわずか4日以内で1万台もの組み立てができる生産能力を備えています。
世界中でつくられるiPhone
では、中国以外ではどこでつくられているのでしょうか?中国に続く国として、最近はインドが注目されています。次はインドでの生産に焦点を当てて解説します。
2020年にはそうなる予定です。なぜインドなのでしょうか?それは、インドのスマートフォンの市場規模が世界第3位を誇るうえ、中国に比べて人件費などのコストを安くできるからです。Apple側も労働人口の多いインドで、コストを抑えながら現地生産できる強みは大きいと考えているようです。
iPhone以外の製造品は?
たとえば、Apple初のスマートウォッチとして発売されたApple watch。生産工場があるのはやはり中国で、江蘇(こうそ)省の常熟(じょうじゅく)にあります。ただし鴻海精密工業ではなく、MacBookやMac Pro、iPodなどを製造してきたクアンタ社の工場です。
日本メーカーもiPhoneにかかわっている!
製造拠点は中国にあるものの、iPhoneの中身は日本製の部品が採用されています。世界の中でも高い質を誇る日本の電子産業は、Appleの貴重な下請け企業として信頼されているのです。
カメラ機能
iPhoneの手ぶれ補正機能を果たしている部品はアルプス電気とミツミ電機という二社によってつくられています。暗い場所でも撮影が可能な「光学式手ぶれ補正用アクチュエーター」は欠かせない装置になっています。アルプス電気は中国へ、ミツミ電機はフィリピンへと生産拠点の移転を進めています。
ディスプレイ
4.7型と5.5型の両方の液晶パネルをつくっているのが、ジャパンディスプレイです。スマートフォンやタブレット、デジタルカメラ、カーナビなどのディスプレイを幅広く手掛けています。iPhoneだけでなく、中国メーカーからの受注が増加すると予想されています。
iPhoneの画面を点灯させるLEDバックライトをつくっているのはミネベアです。同社は中国だけでなくカンボジア、タイなどにも生産拠点を増やしています。

以上アイフォンを現在国際分業の代表的なものとして紹介して来ましたが、以上の通りで、今は単体の技術のみが競争力の源泉ではなく、人材の層の厚さ・スピード等の総合力に移っています。
日本は高度部品供給国としてアイフォン製造に参画していますが、高度部品を作れても・それに安住していると大変なことになります・・世の中は絶えず流動しているので・・発注後どのくらいの日数で大量納品できるかなどいろんな要素が競争力に関係する時代です。
分秒を争う時代になると加工組み立て工場近隣で高度部品工場〜研究拠点を持たないと納品競争に負けてしまう時代が来ています。
この結果「最終加工しているだけ」とバカにして来た中国その他の加工基地周辺に高度技術拠点(今は外資との合弁企業中心ですが)集積するようになって来ました。
複雑なサプライチェーンになっている現在、米国による中国からの特定品の輸入制限がどういう効果・・アイフォン等の先端商品生産工場の米本国回帰があり得るのか?となってきます。
中国の不公正貿易(先進国で(技術窃取を含め)自由に活動しながら自分の国には自由に入れない)を正す必要がありますが、それを一律の関税上げで是正しようとするのは無理がありそうです。
製造業者は、「最も良いものを作りやすい場所で作る」原理で動いているので、米国向けだけ別の国・・最適=ベストでなくても次順位・ネクストの国で作って(その分納品が遅くなるとか2級品?)米国へ輸出することになるのではないでしょうか?
プラザ合意以降日本を叩いても中国が出て来たように、せいぜいインドのような中国のライバル国を育てあげて成功しても、そこへ中国から生産基地移転可能かどうかだけでしょう。
軍事側面から見た対中抑止力としての関係で、インド抱き込みに日米が必死になっているのもわかりますが・・。
後白河が平家を利用して源氏を叩いても平家に頼るしかなく、次に平家を追い落とすと源氏がより強く育ったので、結局武士の時代・鎌倉幕府が出来てしまったし、英国がドイツの挑戦を気にしているうちにアメリカにヘゲモニーを奪われたような関係・米国が追われる立場・・歴史の繰り返しでしょう。
ロシア経済は、解放前の中国同様ソ連時代からロケットや戦闘機を作れても車や電化製品等の消費財をまともに作れない経済構造でした。
(ロケットなど大規模技術はスパイで何とかなりますが、洗濯機等消費財は単価が安いので従来型スパイになじまなかったことをSeptember 29, 2017,その他で紹介してきましたが、この点は解放前の中国も同様でした。
中国とロシアの違い・・ロシアが中国のように何故離陸できないかが気になります。
ソ連崩壊後ロシアになっても消費材製造に弱い構造のままで困っていたところ、2000年直前頃から資源価格急騰によって黙っていても売上2倍になって潤ってきた結果、資源を売って消費財をふんだんに買えるようになった結果、消費財製造能力が上がらないままになってしまい、まるで進化していません。
この辺の経済原理は以前からナウール共和国の例を引いて書いている通りで、現在でいえば資源頼りの経済脱却にサウジ皇太子が焦っている通りです。
一般製品国際競争力を基準にした為替相場よりも、資源輸出による黒字分だけ通貨が高くなります。
資源だけで大幅黒字を稼ぐ結果、資源以外の農産物を含めて製造コストからみたら割高な通貨設定になってしまう結果、消費材や工業製品の国際競争力がなくなってしまうので、資源の値上がり分だけ国内産業が育つどころか先細りになります。
中国のように部品の国内製造に離陸できない原因は民度レベル差もあるでしょうが、資源に頼りすぎるマイナスも大きいでしょう。

貿易赤字解消策(保護政策の功罪)2

19世紀型の貿易の場合・・例えば食料品・美味しい果物輸入の場合、大してうまくない果物を米国民だけ高く買うしかないとしても、それだけのことで国内産業競争力に響きませんが、部品輸入の場合に完成品性能に関係するので大変です。
中国が南沙諸島での埋め立てに異を唱えるフィリピンを黙らせるために、バナナ輸入規制しても国民が困らず、フィリッピンが根をあげたのもその一例です。
部品の場合、不良品でなくとも他国よりも25%も高く買うとコストアップになるし、それを嫌って性能の劣る国産部品を仕方なしに使うと品質低下分以上値下げしないと国際競争力を失います。
比喩的に言えば、ある部品が1%性能が劣り2%単価を低くしても、性能の良い部品を使った完成品の単価が2%高くても方が使い勝手が良いと何倍も売れるのが商品というものですから、ちょっとした性能差の為に5〜10%価格を下げないと売れない場合、少し高くても高性能部品を使うのが普通です。
人材で言えば、人種差別意識で有能な社員を採用できないと有能な社員を採用した企業よりも発展性が遅れます。
軍事戦略意図によって、情報収集ソフトが組み込まれるリスクを理由に中国国有企業の中国の華為技術や中興通訊(ZTE)との取引禁止命令(華為技術やは事実上の?)が出たようですが、両企業が世界席巻しているのは、中国政府の後押し的不純原因もあるでしょうが、それ相応の使い勝手の良さがユーザーを引きつけているからでしょう。
4月22日現在の中興通訊(ZTE)に関するウイキペデイアの記事です。

世界合計14ヶ所のR&Dの設備がある。2008年には売上が約443億元(約65億ドル)、利益が約16億6000万元(約2億4300万ドル)に達している[2]。
160カ国、地域でスマートフォンをはじめとする携帯電話端末を発売しており、2016年にはアメリカでのスマートフォンシェアが4位、スペインとロシアで2位、ヨーロッパ全体でシェア4位にランクされるなど、欧米でのスマートフォンの販売台数が増加していた。
2016年3月:アメリカ合衆国商務省が同社及び子会社に対して、2010年にイラン政府系通信会社や北朝鮮に禁輸措置品を納入し、またその事実を隠ぺいしたとして輸出規制措置とした。
2017年3月:上記の措置に関連し、アメリカ合衆国商務省は最高約1,300億円の罰金の支払いと、社内のコンプライアンス教育の徹底、今後6年間にわたり規制を順守したか年次報告を行うことなどの司法取引を行うことで、輸出規制措置を実施しないことで合意した。
2018年4月16日:アメリカ合衆国商務省は、前年の司法取引で合意した内容の一部を同社が実施していなかったことが判明したとして、米国企業に対し同社への製品販売を7年間禁止すると発表した。
・・・同社製品に使用されている米国製品の割合は25-30%に達し、この措置は同社事業に深刻な影響を与えるとみられている。・・・なお、アメリカ国防総省とアメリカ合衆国国土安全保障省にZTEが下請け経由で通信機器を納入していたことも問題となった[11]。
共和党のトム・コットン上院議員とマルコ・ルビオ上院議員は2018年2月7日、米当局者へのスパイ行為に対する懸念を理由に、ファーウェイとZTEの通信機器について、米国政府の購入やリースを禁じる法案を提出した[12]。

ウイキペデイアの華為技術に関する4月22日現在の記事です。

華為技術有限公司(ファーウェイ・テクノロジーズ、Huawei Technologies Co. Ltd.)は、中華人民共和国の通信機器メーカーである。スマートフォンにおいては、出荷台数・シェアともに世界3位。米キャリアのAT&Tが、ファーウェイのフラグシップスマートフォン『HUAWEI Mate 10 Pro』を取り扱う予定で、交渉も順調に進んでおり、2018年1月8日にラスベガスで開催されるCESで正式に発表されるはずだったが、直前になってAT&Tが白紙撤回した。白紙撤回の理由は不明だが、安全保障上のリスクを懸念する米国政府からの圧力という説が有力。

両社製品が世界を席巻しているのは相応の商品価値があるとした場合、米国企業だけ中国の両企業を使えないと、その分米国企業は損をします。
鉄鋼製品の場合、長期的には米国内生産で日本で作るより25%高コストでも価格競争できるようになるので国内生産に移行する期待があるでしょうが、物品販売の場合価格次第ですぐに輸入先を変えられますが、製品の場合技術水準の問題ですから国内業者に技術がない(から作れないのでしょう!)と、すぐには国内製造に切り替えられません。
この間米国企業だけ低レベル部品利用または高価格品利用になって国際競争力を失って行くのが普通です。
1985〜1990年頃のいわゆる日本叩きの攻勢によって日本の製造業叩きには成功したものの、結果的に米国企業は(日本の高性能部品を割安に利用できる)他国より割高かつ低性能部品を使うしかなくなったので国内産業の国外移転が相次いで国内空洞化・貿易赤字→衰退を早めただけでした。
米国の対中巨大赤字というものの米国企業の逆輸入がその大半とも言われるように(事実かどうか不明ですが)輸入規制すれば米企業自体が海外に出て行って良いものを使うしかなくなります。
以下の引用記事は古い・・対日貿易赤字になっている・・ここ4〜5年は部品の中国国内生産率が向上して対日貿易も黒字が続いているし、外資系企業の貿易黒字に占める比率が高いと書いている点も今は下がっているなど現状そのものではありません。
以上のように10年以上前の論文でかなり古いものの、今でも参考価値があると思われるので引用しておきます。

中国の対米巨額貿易黒字の見方

ビジネスレポート
2007年6月26日  馬 成三
米国の対中貿易赤字は米国企業の対中進出とも関係している。
米国系企業が中国で生産した製品の大半は、中国市場で販売されているが、中国での現地生産により、同製品の対中輸出を減少させているのである。また米国の対中投資のうち、付加価値の低い製品を中心に米国に逆輸入しているケースもある。
Made in China」よりも「Made in Asia」が多い中国の対米輸出中国の対米貿易黒字の拡大は、諸外国・地域、なかでも東アジア諸国・地域の中国大陸への産業移転によるところが大きい。対米輸出を含む中国の輸出を企業主体別にみると、外資系企業の割合が際立って高い。2006年の数字を取ってみると、同年中国の輸出全体に占める外資系企業輸出の比率は約6割、貿易黒字額に占める外資系企業の比率も5割を超えている(表2)。これに対して、国有企業や私営企業を含む中国資本企業の貿易黒字額は貿易黒字全体の半分以下(うち国有企業は赤字)にとどまっているのである。
中国の外国直接投資受入れの7割が、日本、アジアNIES(新興工業国・地域)とASEANを含む東アジア諸国・地域から来ている。長い間、日本、韓国、台湾など東アジア諸国・地域は対米貿易で巨額な黒字を抱えたが、その対米輸出製品の生産を中国大陸にシフトしたことで、中国大陸の対米貿易黒字となったのである。
中国が東アジアにおける加工基地となっている現状を踏まえて、研究者の間では中国の対米輸出製品(組み立て用の部品を含む)を、「Made in China」よりも「Made in Asia」と見なすべきだとの見方もある。
東アジア諸国・地域が生産拠点を中国に移しただけでなく、部品などを中国に輸出し、その加工製品を米国に輸出するといったケースも多くみられる。中国税関統計によると、2006年における中国の対米貿易は1,443億ドルの黒字を出した一方、日本、韓国、台湾との貿易には1,358億ドルの赤字が記録された。

上記は2007年の論文なので実情が様変わりですが、日米韓やアジア諸国の対中投資拡大が中国の対米黒字の大きな原因になってきたことは確かでしょう。

貿易赤字解消策(保護政策の功罪)1

トランプ氏がアメリカの貿易赤字を問題視していますが、特定の対米黒字国を叩いてもアメリカ人の消費を減らさない限り・モグラ叩きゲームと同じで赤字は減らないというのが経済学の帰結と言われています。
ただし上記は、いわゆるネット上の評論であって、日露戦争時の7博士意見書同様で部分的な現象を拡大して論じている無責任・一方的意見のようにも見えますが、本当のところ素人の私にはよくわかりません。
素人の私の疑問をここに書けば、内需を減らさない限り赤字は減らないという意見はわかったようでわからない・・一面から言えば国内生産以上の内需があるから赤字になるというのはその通りでしょうが、これを逆から見れば内需に見合った国内総生産・職場を増やして行き国際収支均衡に持って行く政策もあるという事です。
米の生産量が100トン足りない時に100トン輸入している時に、みんな少しずつ食べる量を減らして生産量と均衡させるか、国内の休耕田の売り100トンに匹敵する面積の作付けを許可して100トン分の生産を増やして、100トンの輸入を減らすかの2パターンが単純でわかり良いでしょう。
上記は需要見通しの誤り(天候不順による凶作)によって不足が生じて臨時に輸入をふやした場合には翌年増産すれば良いことで簡単な話です。
各種産業のトータル輸入超過の場合には、単なる見通しミスではなく国際競争力がないことによって、輸入品に国産品が押されて、いろんな分野で徐々に輸入が増えた結果赤字になっている場合に、簡単に国内増産をすれば良いと言っても(輸入品に負けていて)売れなければ、増産できません。
国内生産品の国内消費を(輸入品に負けないように)どうすべきか?、あるいは輸入額をそのままにして、輸出商品(得意分野)をもっと増やすにはどうすべきかの問題解決・処方箋は産業別に違ってきます。
この種実務的・・地に着いた議論は難しいので、この種議論を端折って「消費を減らせばいいんだよ!」と大雑把で大胆な!意見をネット上で吐いているものと思われます。
ネット上議論とかバラエテイー番組等では、何でも単純化して一刀両断「ずばっ!」が売りです。
専門外のことでよくわからない視聴者には、ああでもなくこうでもないとこねくり回す議論を聞いていても訳が分からなくなり聞いてられません・・素人や高齢者は(途中の議論はいいから・・と)すぐに結論を知りたがる傾向があります。
単純意見は分かり良くていいでしょうが、単純結論だけ求める議論展開になると、フラストレーションのあるテーマの場合、つい、「そんなの無視すればいいんだ!」「黒字国からの輸入を制限すればいいんだ式の「スカッとする結論」・対外強硬論を煽る意見に飛びつき易い傾向があります。
これが日露戦争以来、世論という名の単純・乱暴な意見が政局を煽りその都度政治を対外強硬論へと暴走させてきた原因です。
雨が降ってきたときに「傘を持っていくべきか雨合羽が良いか」の議論しているときに、「出かけなれば濡れないよ!と言うのは卓見のようでいて、出かけねばならない時の現実解決解決力のない道家的発想です。
平和論争も同じでどうやって平和を維持するかの難しい問題を端折って、「争わなければいいんだよ!」というのに似ています。
為政者としては内需を減らして貿易赤字を減らしていくのでは、国力の縮小再生産に陥るので、内需に見合った国内生産力維持ないし復活を図るのが合理的です。
「内需を減らせば良い」という縮小再生産的対応では、長期的に国力低下が免れない・・国民が不安にならないか?が素朴な疑問ではないでしょうか?
例えば1000億円分の超過内需=赤字の場合、赤字分の内需を減らせば収支均衡するに違いない・・例えば収入減に合わせて支出を切り詰める家計と同じで・均衡だけを求めるならば、それも一つの意見ですが、個人家計でも立ちすくんで食事の量を減らすだけでは将来がありません。
扶持米では生活に足りなくなった幕府御家人が傘張り等の内職に努めたように、一時帰休などで賃金カットになれば転職したり、副業を探すとか奥さんが働きに出るなど打開策を講じるのが普通ですが、国家の場合なおさら並行して収入をふやすために努力する方が健全です。
国家の場合、内需を単純に1000億円仮に減らすと同額規模の内需関連産業も縮小し内需関連業者や従業員の収入も減少する縮小スパイラルに陥りますが、内需をそのままにして輸入を減らしてその分国内生産に置き換えられれば、国内生産関連拡大の内需拡大誘発効果と相まって健全な展開になります。
貿易赤字を減らすには、内需をそのままにして国内総生産を増やす方が長期的に見て合理的ですが、そのためにはどうするかの処方箋の問題です。
国内技術者養成→国内産業の自力勃興ないし復興を待つか、後進国の国内産業保護政策のような強権発動に頼るかの違いでしかありません。
後進国の場合キャッチアップするまでの保護期間で離陸できる・・「中進国の罠」と言われるように中進国まで這い上がるにはかなりの国に可能性があることが多いので一定の国内産業保護が合理的なのでWTOルールでも認められています。
http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/wto/wto_agreements/kyoutei-gaiyou.pdf

(2)基本原則に対する例外
第一に・・・・・・
第二に、各国の経済の発展段階に応じて考慮する措置を設ける必要があることである。
この観点からWTO協定では、前述のとおり関税による国内産業保護を許容するだけでなく、規律に対する様々な途上国例外も設けている。

発展途上を個人に当てはめれば、将来のある若者に対して学業を修める期間や就職後も新人教育が必要なように小学生や中学生〜新入社員の頃から、経験豊富な中堅社員と対等な競争をさせると潰れてしまいますので研修チャンスを与えたり実務経験を積ませていくのが必要です。
これを発展途上国にも与えるのは公平であり合理的です。
高齢者が新技術や新思想・・例えばセクハラパワハラ等の基準が変化して行くのに適応出来ない場合、新技術や新基準習得を応援するのは良いことですが、その再教育期間中堅若手の採用や抜てき(適材適所配置)を先送りすべきではありません。
保護政策は、時間があれば追いつく能力のある国や青少年のために学習チャンスを与えるものであって、能力の落ちてきた高齢者が若手中堅が追いつくのを妨害するために・自己保身に使うと老害そのものであってマイナス効果しかないでしょう。
成熟国〜衰退の始まった国の場合、保護貿易・輸入制限政策は問題の先送りに終わるのが普通と思われます。
高関税その他輸入制限はまだ元気で競争力のある(輸出している)国内産業まで適正コストの部品等の利用制限・・割高部品利用強制になってしまいます。
トランプ氏の発動した鉄鋼・アルミ製品一律25%の高関税は、日本得意の高張力鋼板は米国内で生産できない為に輸入価格が25%高くなっても仕入れるしかなく、結果的に米国民は割高な車その他製品を買うしかなくなると言われています。
代替品を国内でも作っている場合・・国内市場占有率輸入品4〜5割の場合でも、それまで輸入品に5〜6割食われていた=食われていた分国際競争力がない→国内製品は高いのか性能的に劣るのか?ということですから、これが25%の価格下駄履きの結果国内品比率が上がる場合、ユーザーにとって言わば一種の不良品購入を強制されるような結果になります。