対外資産の内容(資金環流)2

今後日本の対米直接投資が進み他方でアメリカの対外直接投資が日本より少なくなって来ると、多分資本自由化に関するルール変更を仕掛けて来るでしょう。
大分前に日本が貿易赤字体質になって、資本収益に頼るようになるとその頃にはルール変更リスクがあることを少し書いたことがあります。
この何年か現在の国際的テーマであるタクスヘブン騒動や、法人税減税競争はこのリスクの始まりを表しています。
進出されている国が現地企業利益の本社吸い上げを権力的に妨害をしていませんが、アメリカが送金する側に回るとどうなるか分りません。
現在進出されている多くの国は新興国でもと被植民地国が多い・・ナセル中佐によるスエズ運河接収のような力を持っていないのですが、結果的に現地進出先での儲けの本国送金障壁になっている点は同じです。
地産地消と言うかけ声・・「地元での儲けは地元で使おう・・還元しましょう」と言う声が高まりこそすれ、縮小することはないでしょう。
アメリカが折角海外で儲けた資金が進出先に滞留したままになっている点を、問題にしていることが時おりニュースに出ています。
昨日アメリカの対外投資残が突出して大きいことを紹介しましたが、儲けが送金されないままでは、絵に描いた餅です。
本国送金時に法人税がかかる・・結果、アメリカの世界企業が、儲けの本国送金を先送りする・・儲けを出先現地国で再投資を繰り返す)運用になっているらしい報道です。
日本の租税条約や税制を見てもそう言う条文が出て来ないので引用出来ませんが、(日本ではやっていないアメリカだけの税制かも知れません)もしも条約ではなく国内法の問題であれば、不都合ならば勝手に法律改正すれば良いので国際問題化する必要がありません。
これをしないでアメリカが困っている理由が分りません。
ブッシュ政権のときだったかに、期間限定で(例えば200X年までに)国内送金すれば、この期間だけ免税または減税すると言う法律で還流を図って一時的にかなりの資金環流があったと言われています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/09/eu-39.php
米アップルは、アイルランドから受けている税制優遇措置が欧州連合(EU)から違法とされ、追徴税の支払いを求められた。この問題の副次的影響の1つとして、米企業が海外に滞留させている利益を本国に戻す動きが促進されるならば、ドルにとっては一方的なプラス材料になるだろう。
米企業の海外留保利益は、推定で2兆1000億ドルに上る。そして大統領選を争う共和党候補ドナルド・トランプ氏とヒラリー・クリントン氏はいずれも、こうした利益の還流を促す措置を打ち出すと公約している。
2005年には当時のジョージ・ブッシュ政権が制定した本国投資法で資金還流への適用税率が大きく引き下げられたため、約3000億ドルの海外留保利益が米国に戻った。この間、資金還流がどの程度為替レートに影響したかについて議論はあるものの、ドルはユーロで10%程度、対円で15%それぞれ上昇した。」
アメリカの税制については、以下の解説が見つかりました。
アメリカの条文に直截当たる能力が私にはありませんので、一応名の知られたプロの解説ですから、正しいものとしてお読み下さい。
https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190
日付:2017/01/24
森信茂樹 東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長
「米国は、全世界所得課税方式をとっており、海外での税引き後利益を配当として米国に還流させると、米国税率との差額を追加的に米国で課税される。このため企業は、米国に還流せず海外の低税率国・タックスヘイブンに利益を留保するという行動に出る。
具体例を見てみよう。昨年末に大きな問題となったのは、アイルランドがアップルに対してほとんど税金を払わなくてよいスキームを用意していたことである。アップルの実質的な法人税税負担率は、2003年に1%、2014年には0.005%に低下しているという。
これに対しわが国を含む多くの先進国は、「国外所得免除方式」をとっており、子会社が海外で稼ぎその国で税を支払えば、配当としてわが国に還流させても非課税としている。 – See more at: https://tax.tkfd.or.jp/?post_type=article&p=190#sthash.Y1qfGmMd.dpuf」
植民地収奪による世界支配が終わりを告げそうになると排日になって来たように、近い将来・・アメリカの資本収益が減少して日本へ払う方が大きくなって来たときに資金環流に関する紛争になると言うのが私の大分前からの予想であり、日本はその備えが必要です。
直接投資残高で日本がアメリカに肉薄〜追い越すまでには今後数十年以上かかるとしても、その間にアメリカが自国・本拠地に逆進出されて面白かろう筈がないので、アメリカは何かと難癖を付けて来ることについて相応の覚悟をしておく必要があるでしょう。
4〜5日前の新聞にダイキンがアメリカで大規模工場建設の記事が出ていましたが、世界最大手と言っても空調の本場であるアメリカでシェアーを上げないとどうにもならないと言う意気込みが出ていました。
工場建設→雇用増に対してトランプ氏は選挙公約どおりの展開ですから、感謝するしかない・・文句の付けようがありませんが、お膝元が日系企業に支配されるのは堪え難いところがある筈です。
当面考えられるのは、知財料金や収益の本国送金の規制・・移転税制規制でしょう。
アメリカ子会社から日本本社への技術料支払いに不正がある・・高過ぎるなどと言う税務調査などが、割に簡単な嫌がらせです。
アメリカの気持ちは、ルールさえ同じならば自分より相手が強ければ、負けても良いのではなく「負けるのはイヤ」と言うだけが行動原理です。
自分が勝てるルールだけが守るべき正義であり、自分が負けるルールは正義ではない・・相手が何か狡いことをしてると言う主張です。
アメリカはルールを守るベシと言いますが、結果として競争相手に負けて欲しい・・結果重視ですから、自分の作って来た貿易ルールはどうであれ、結果としての「アメリカの大幅赤字が許せない」と宣言すれば日本も中国も青くなるしかないのが現実です。
ところで中国の方が日本よりも対米黒字が大きいから、中国が先ず矢面に立つので日本はそれほど心配しなくても良いと思う方が多いと思いますが、内実を見れば違って来ます。
中国の対米輸出の中身には米系企業の子会社が中国で生産・逆輸入している場合(子会社かどうかは別としてアップル)が多いのですが、日本の対米黒字の場合、100%日本企業による輸出ばかりで、日本進出の米系企業が日本で生産して逆輸出している事例など想像すら出来ないでしょう。
それどころか中国の輸出には、中国進出日系企業の輸出が多くを占めている・・あるいは東南アジア諸国の対米輸出にも実は日系企業の輸出が多くを占めているなど、実質的対米輸出依存度は中国よりも大きい可能性があります。
民族系企業の黒字額比較で言えば、日本の黒字の方が中国よりも多い可能性があるので輸出規制によるダメージ度では日本の方が中国よりも大きい可能性があります。

対外資産の内容(日米比較)1

May 7, 2015,「主要国の金利差と国力差」に書きましたが、ある国の金利水準こそがその国の国際的地位を如実に表す指標です。
この低金利時代に中国が基準金利・4〜5%の高金利を維持せざるを得ないどころか更に金融引き締めるしかなくなったのは、(偉そうなことを言っていても)資金の海外流出が怖いからです。
高金利国はそれに比例した国力の弱さを表しています。
企業で言えば信用力に比例して有利な(低金利)資金調達が出来ますし、信用・・体力がないと他所よりも高金利でも借りるしかありません。
今のところアメリカの金利政策は日本を除く世界中に直接影響しますが、金あまりの日本には全く利きません。
アメリカ・トランプ氏はこれが口惜しい・・自分の方が金利を先に上げると経済論理的には日本は対米貿易黒字国なのに円がもっと安くなってしまっても平然としている→アメリカの貿易赤字が逆に膨らんでしまうのが口惜しいところです。
日本はアメリカ現地工場進出・投資を今後更に促進し黒字分を帳消しにすると言うのが戦略らしいですが、それではアメリカの雇用を守れても日本資本に支配されるばかりで本音では面白い筈がありません。
5月7日の日経新聞朝刊では、日系クルマメーカーのアメリカ国内生産台数が400万台に迫る勢いと出ています。
ところで、いろんなきれいごとを言っても外資に支配されていたい国はありません。
アメリカの本音は・・自分が勝ちたいと言う結果重視が基本です。
スポーツでも顕著でしたが・・日本が勝ち進むと次々とルールを変えることの繰り返しでしたが、挑戦者が日本だけではなくアジア全体のレベルが上がって来たのでこのやり方に無理が来て最近卒業しました。
国力差についてはまだ挑戦者が日本に限られていたので、自分が一強のときには自由競争を主張していましたが、競争に負け始めると何かと理由を付けてはスーパー301条のような法律を作っては日本に対して輸出自主規制を強制しました。
最近では挑戦者が日本だけではなくなって来たので、人種規制・・アラブ系入国禁止を主張したり何かと自分勝手な規制・保護主義に走ります。
今回のイタリアサミットでは、自由貿易の旗印を共同宣言出来ないほど・・アメリカの保護主義が露骨に主張されていました。
アメリカは、自分が資本進出するばかりのときには資本自由化を強調していましたが、今後日本企業に進出されるようになると面白かろう筈がありません。
ただし、今のところアメリカの方が対外債権・投資残が日本と比べて桁違いに大きいし収益構造も日本よりも桁違いに高率らしいです。
以下は、http://www.asyura2.com/11/hasan74/msg/602.htmの一部引用です。
「・・対外債権について。
米国: 2011兆円
イギリス: 945兆円
フランス: 884兆円
ドイツ: 625兆円
香港: 310兆円
中国: 265兆円
日本: 519兆円」
日本の対外資産は香港の1.6倍くらいであり、大雑把にえばイギリスの約半分、米国の4分の1である。日本は決して世界に冠たる対外資産国ではないのだ。」
ここで関心のある資本支配のテーマでは、対外資産内で直接投資残高が重要です。
日本の場合、民間部門の対外資産は、
・直接投資が、 → 『39兆円』
・株式投資が、 → 『38兆円』
・債券投資が、 → 『171兆円』
であり、・・アメリカの場合は、
・直接投資が、 → 『32900億ドル』
・株式投資が、 → 『25000億ドル』
・債券投資が、 → 『9000億ドル』
となっており債券投資が半分以上を占めている、日本とは異なり、アメリカの債券投資は、『1割未満』の水準になっている。
直接投資の比率が、日本では→『8.9%』に過ぎないのに対し、アメリカでは→『ほぼ3分の1』に達している。もちろん、株式投資の比率も投資先進国アメリカでは、『4割程度』を占めております。」
上記は出典を書いていないので、いつの統計か数字の正確性も不明ですが、参考までに上げると上記のとおりです。
債権投資・・米国財務省証券のように実際には売らせない・・イザとなればイラン禁輸のように対日・対中規制で凍結出来ますので、米国にとっては貰ったも同然の資金です。
イザとなれば、これは踏み倒せば終わりで簡単ですが、直接投資の方は、企業支配・・事実上自国民が支配企業の指導に従うしかない・・事実上の支配力を行使出来ます。
トランプ政権の副大統領ペンス氏はトヨタなど日系アメリカ工場所在地の元知事で親日家であることを期待する声が大きいですが、あまり直線的にうまく行くのはリスクがあります・・。
日本式経営・文化に現地人が同化して行く方向・・これが広がり過ぎると長期的には日系企業の集積していない地域では、反日気運が盛り上がらない保障はありません・・心すべきことです。
明治維新以降、外国資本支配を防ぐために必死になって民族企業を育成して来たのですが、中国の場合宗族優先で民族意識が元々ないので、アヘンでも何でも儲かりさえすればその手先になって売りさばく傾向がありました・・中国企業家を「買弁資本家」と歴史で習って来たところです。
これは5月24日まで書いたとおり、民族意識より宗族利益重視の性質がそうさせるのです
「買弁資本家」を検索すると意外に私の過去のコラムJanuary 13, 2012「海外投資家比率(国民の利益)1」その他が出て来ましたが、私の若い頃に仕入れた過去の知識がどのように変わっているかを他人の意見で見ておきましょう。
echon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20131129/319482/
中国社会の9階層(2)経済発展で消えた「買弁」
今月取り上げているのは『中国社会各階層分析』。中国社会を9階層に分け、それぞれについて解説した書籍である。
・・・本書で扱っている中産階級はこの記述よりもやや狭く、「資本家にはなれていないがまずまず豊かな層」程度の定義づけである。本書では、資本家は、1978年の改革開放政策の開始直後の、法や社会的ルールが未整備な状態で富を得た層の2代目という取り方をしている。それに比べ中産階級は比較的新しい階層で、自分の代で豊かになったものを指すのだという。
 それゆえ入れ替わりも激しく、中産階級層からは多くの破産者が出る一方で新しく中産階級層に入ってくるもの多い。また、他国の中産階級の人々は自分たちがこの後「資産家」になれる可能性は低いと考えているが、中国の中産階級はまだ今後自分たちも資産家になれると考えているそうである。」
しかし、この記述は1997年現在のものであるため、現在でもこのような分析が適当かどうかは再度考察すべきであろう。このように本書が最初に書かれた時点ではまだ中国社会も高度成長の初期であり(WTO加盟が2001年)、10数年後にGDP(国内総生産)で世界2位になるということを実感として予測していた人も少なかったのではないか。
・・・毛沢東の言う「買弁」は「外国人の手先となって国の利益を脅かすもの」という見方であったが、本書ではその見方は採らない。外国人の代理となって働く彼らがいたからこそ、外国資本などを受け入れ発展することができたと考えているからだ。」
・・・中国が計画経済から現在のような経済体制へと移行していく間にさまざまな業種などが消えていったが、買弁というのもそのような端境期の一種のあだ花であったのだろう」… さらに読む

中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)3

中国が外貨準備が3兆ドル割れに危機感を抱いているのは、対外債務1兆ドルあるのでこれ以上外貨準備が減ると対外債務1兆ドルの支払がどうなる?と言う論調が普通です。
この結果・・これ以上外貨準備を減らせないと言われていて昨年末から急遽外貨両替の規制が厳しくするなどなりふり構わない姿勢に転じたのですが、この流れ自体が不思議ではないでしょうか?
昨日紹介したように公表数字では差引対外純債権が192兆円もあるならば、(例えば2千兆円の対外債権と1808兆円の債務で差額約192兆円のプラスとすれば(1兆ドル=約110兆円あまりの債務全部の支払時期が同時に来る訳でもないので、)2千兆円の対外債権や株式の一部を売却すれば足りる筈・・・・何故1兆ドルの支払の心配が一般化しているのか分りません。
対外資産は直ぐには売れないからと言う説明ですが、同じことは中国の対外債務にも言えるので、例えばトヨタ日産などの対中投資企業がイキナリ全資本引き揚げを出来る訳ではありません。
純債権国かどうかの議論と3兆ドルの外貨準備割れを危機ラインとする一般的意見・・中国もそれを事実上認めて必至の対応中であることを組み合わせると、本当は1兆ドルの純債務国ではないか・・それを大手メデイアは言えないでそれとなく矛盾をほのめかしているのかも知れません。
今朝の日経新聞朝刊1面では、中国政府がこれまでの外為管理の手法を改めて前日の終値を参考にしないと言う発表が出ています。
重大過ぎるからでしょうが、第一面に出てます。
元々中国の資本出入りは、ホットマネーの流入を許さないなどの規制がある上に、通貨相場も市場で100%決まるのではなく政府が毎日基準値を決めて上下2%内での変動を認めると言うものですから、相場変動幅は1日4%だけ→言わば96%管理相場です。
96%の管理相場でも、前日終わり値を「参考に」(するだけでそのとおりにするのではないのですが・・)翌日の、基準値を決める制度運用でしたが、今朝の報道では、前日終値を「参考にすらしない?」と言う発表をしたと言う衝撃です。
中国はいくら法治国家ではないと言っても何らかの基準がないと引き現場は混乱しますが、新たな基準値産出方法は市場参加者に通知が始まっているらしいですが、日経新聞の記事では米国の次の利上げが目前に迫って来た(6月利上げ説が一般的です)→このときに人民元急落(暴落・収拾がつかなくなるの)を防ぐための布石ではないかと言う解説です。
96%の管理相場とは言え、前日終値が下限に張り付いた場合、それを参考にして翌日基準値を下げると分っている・・急落の連鎖になるのが怖いからでしょう。
為替相場や株式相場の大幅変動に対する規制は、突発的なパニック的誤った急落や急上昇が起きたときに沈静化を図るために認められていることですが、(この名目で中国は上下2%しか変動を認めないと言う制度採用をしていた筈です)が、今朝の報道は一時的下落ではない・・連続的下落・・本来の実力にあわせた下落が迫っていることを自白したようなものです。
ところで市場そのもの規制強化策は、15年夏の上海株式市場急落時の取引規制・・「これでは株式市場とは言えないのではないか」と言う一般的評価でしたがこれと同じことを先手を打って始めたことになります。
中国の場合にはドル金利が上がるのを放置しているともっと人民元が急落するの怖い・・対外債務支払に困難を来たすので防衛上金利を追随して上げるしかありません。
下がる前に早めに$を手当てしておけば良いと言うのが普通の行動→余計にドル両替需要が増える・・外貨準備が減る一方になり、政府がこれに耐えられなくなってこの動きに待ったを掛けて来たのが昨年末までの次々の規制強化策でした。
今年始めまでに資本流出強化が完成してこれ以上の規制強化が出来なくなったので、年末から金利上げ金融引き締めに入るしかなくなったのですが、アメリカの金利上げに備えて中国政府が通貨防衛・為替市場介入に必死なのは、際限ない追随金利上げを続けるには国内景気上無理がある・・・体力的について行けないので一種の資本鎖国政策に逆戻りを始めるしかなくなったことを表しています。
ソ連が、レーガンの挑戦に応じた軍拡競争について行けずに崩壊してしまった例を参考にしているのでしょう。
軍拡の方は市場のように直ぐに効果が出ないのでまだ拡大中ですが、市場相場は直ぐに結果が出るのでそうはいきません・・そこで事実上市場機能を空洞化して行く方向に邁進するしかないのです。
中国のGDP発表が電力・輸送統計問わないと指摘されるとその統計発表をやめてしまう・時間をかけて政府発表に合うように統計を作り替えて行く・・新幹線が事故を起こすと現場で土に埋めてしまうなどの報道が世界を賑わしましたが、体温計に当たる市場規制強化をドンドン強めると中国経済の体温を不明にするメリット・・逆から言えば、政府に取っても本当の国力が不明になります・これがソ連崩壊の基礎的事情でした。
入院患者の毎日の検温や脈拍数などを誤摩化しているようなものです。
話題が変わりますが、自由な取引が出来ない通貨を国際通貨・・SDRに採用したIMFの政治的偏りが明らかで、中国が将来覇権国の地位を確立すれば中国の地位向上に貢献した功労者としてラガルド専務理事は評価されるでしょうが・中国がここで失速・・デフォルト気味になって世界が大混乱した場合、IMFはどう言う存在なのか?政治責任問題になって来るでしょう。
昨日紹介した中国の所得収支から見ると、「貰う利息より払う利息の方が多い」と言うことは結果だけ見れば、正常債権だけで収支を合わせれば中国が純債務国かもしれません。
他方日本の場合以下の通り、所得収支だけで18兆円も稼いでいます・・海外投資は相応の利潤を生んでいると言うことでしょう。
https://mainichi.jp/articles/20170511/k00/00e/020/308000c
毎日新聞2017年5月11日
財務省が11日発表した2016年度の国際収支速報によると、海外とのモノやサービス、投資の取引状況を示す経常収支は前年度比13.1%増の20兆1990億円の黒字となった。
・・・16年度の第1次所得収支の黒字は、18兆356億円と07年度当時を約1.5兆円上回っている。」
中国の利回りが悪過ぎるのは、ベネズエラ〜アフリカ等の破綻国家?に対する投資を対外債権に計上しているからではないでしょうか?
ところで、貿易黒字と同額のドルだけ買えばトントンの筈ですが、それ以上に(貿易に有利)人民元相場を下げたい+表面上の外貨準備を大きくし国威発揚・・アメリカに対する発言力保持のために多めにドル買いをする・・結果的にドル建て外貨準備が膨らみます。
中国の外貨準備は上記のような演出の結果、内容実質が過去の貿易黒字の累積と大きくかけ離れていたと思われます。
貿易黒字額も相手国の赤字額と合わないなど以前から信用性がないことが指摘されていました・・ホットマネー・資本規制をくぐるために、輸出取引仮装による(貿易黒字の実質仮装取引がかなり含まれていた)資金流入が噂されていました。
今この隠れたホットマネーが輸入代金仮装した逆張りでこの数年逃げ始めたことになります。
昨年1年間の人民元防衛相場によって、こうしたメッキが剥げて来た(中国の外貨準備は張り子の虎であった)のが中国外貨準備急減の顛末でしょう。
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中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)2

中国国内事情からすれば金融緩和を続けたいところですが、アメリカが金利を上げれば中国が追随しないと資金流出リスク→人民元の下落・貿易黒字が更に増える・・これ以上の貿易黒字をトランプ政権が容認出来ません。
この3月以降の米国金利と中国の金利の流れは以下のとおりです。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017 年 5 月 9 日 15:27 JST 更新
 FRBは3月FOMCで政策金利の引き上げを決定。米経済が力強さを増す中、FRBが新たな政策局面に入りつつあることを示唆した。
http://jp.wsj.com/articles/SB10922328955711303277604581235571475256868
2017年3月16日 13:01 JST 更新日時 2017年3月16日 14:50 JST
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中国人民銀、オペ金利とMLF利率引き上げ-米利上げ後
人民銀はこの日、7日物と14日物、28日物リバースレポの利率をそれぞれ10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き上げた。引き上げ後の利率は7日物が2.45%、14日物が2.6%、28日物が2.75%。2月上旬にも10bpの利率引き上げに踏み切っていた。
 また、人民銀はMLFを通じ期間6カ月と1年の流動性供給も行った。利率はそれぞれ3.05%、3.2%と前回から10bp引き上げられた。」
上記のとおりアメリカ金利政策に追随するしかない中国経済は、一方でマネーサプライを増やして何とか凌ごうとしていますが、それが一方で商品・不動産相場過熱などバブルを煽ることになっています。
一方で紙幣大量発行しても金利引き上げ引き締め政策は、GDP比280%と言われる過剰債務構造を直撃します。
早速中国政府スジからは「金融引き締めはしない・中立だ」と言う発言が4月下旬ころに出たようです。
・・この人が発言した翌日から行方不明と言われてますが・・発言が原因の失脚ではなく、権力争いの彼・・李克強系実務官僚に及んだと言う憶測です・・。
中国としては、バブル崩壊も困るし・・引き締めしないままで資金流出加速も困るし(外貨両替規制の強権だけで凌げるのかの悩み)・・と言う板挟みで揺れ動く金融政策担当者の悩みを表しているのでしょう。
にっちもさっちも行かない・・政治と言うモノは「あちら立てればコチラ立たず」の矛盾関係こそを裁くべきものです。
これが政治の苦しいところですが、ときに引き締めを緩めたり引き締めたり・その合間にマネーサプライを増やしたりの試行錯誤している半年〜1年くらいの間に中国経済がどうなるかです。
すでに今年も5月末になりましたが、5月21日冒頭に書いたように上海デズニーに毎月に100万人も押し掛けているようでは、政府が困っていても個々人末端の懐具合がそんなに悪くなっているようには見えません。
日本の財政赤字と同じで、中国人民は懐に一杯資金を持っているが政府だけが苦しいのかも知れません。
もともと人民にお金がなければ巨額賄賂を出す原資がありません・・政府は税をあまり取れない・官僚の給与も高くない代わりに賄賂で賄って来たことをMarch 30, 2017,「騙しあい社会3(賄賂の基礎2)前後に書きました。
清朝時代には版図が最大であったと言っても支配下に入ったと言う名目だけで、今のようにマトモに税を取れていなかったと言われます。
ちょっと前に税収弾性値のコラムで書いたように、改革開放頃にも前近代のママで超税率がもの凄く低かったのが改革開放後年々徴収率上がっていたのでGDP比税収弾性値が高かったが、この数年は徴収率を上げるのが限界・・今後は今までのよう徴収率を上げられない・だから最近のGDP比弾性値が下がっているとも言われています。
人民はしこたまお金を持っている・・だからこそ人民がお金を持って外国へ逃げたくなる(人民元の外貨両替が多い原因です)し、人民が外貨に変えて逃げないように人民に対して外貨両替規制を厳しくしているのです。
昨年末からの急激な両替規制によって、海外への資金逃げ場失った個々人の資金が国内に出回って・過剰流動性になって、不動産・商品相場バブルを一時引き起こしていると言われました。
日本のいわゆる失われた20年・・・需要不足を下支えするための財政投入・・財政赤字の場合には、その間も国際収支黒字が積み上がり対外純債権額も積み上がるばかりでしたから、エコノミストが騒ぐような赤字国債累積とデフォルトの関連性がない・・と言う私の意見をJanuary 19, 2011,「失われた20年??1」以下で連載しました。
バブルの螺旋状繰り返しがいつまで続くかですが、過剰流動性供給で無駄遣いを続けられるのも国際収支次第ですから、中国の場合も結局のところ国際収支の内実がその限界を分けるでしょう。
中国国際収支の実際はどうでしょうか?
2017/04/30「中国やりくりの限界(税収弾性値1)3」の続きになります。
http://biz.searchina.net/id/1610739?page=1
日本は世界一の債権国!しかも25年連続、中国とは「資産の質が違う」中国メディアの騰訊は「日本の対外純資産残高が5年ぶりの減少となった」としながらも、日本国内の見方を引用し、外国人投資家が保有する日本の株式の価格上昇によって対外負債残高が増加したことが対外純資産残高が減少した理由と伝えた。
記事は、日本の対外資産残高は前年比0.7%増となり、7年連続で増加し、過去最高となったと伝え、日本企業の国外での買収や直接投資が増えたことが理由と紹介。
さらに、主要国の15年末における対外純資産は2位がドイツで、3位が中国だったとしながらも、中国は192兆3700億円と、日本の56%の水準にとどまっていることを伝えた。
中国は約2兆ドルもの対外純資産を有しているが、14年の経常収支における所得収支は298億ドルのマイナスだった。
これだけ巨額の対外純資産を持ちながら投資収益率がマイナスであることが「中国の資産管理における最大の問題」という見方もある。
日本の場合は対外純資産を通じて莫大な利益を獲得しており、中国と日本の対外純資産は「質」が大きく異なることが分かる。」
サーチナによれば上記のとおりですが、一般的に考えれば純債権国は利子・配当を受け取る方が多いの普通です。
例えば500万借りている人が800万投資している場合、受取利息配当の方が多いのが普通の資金運用と言うべきですが、中国の場合何故か収支マイナスと言うのですから不思議です。
借りるときは高い利息で貸すときは安い利息・・運用が下手と言わんかのような説明ですが、本当でしょうか?
最貧国等への投資の場合ハイリスクハイリターン・・利回りが高いのが原則です。
焦げ付き債権を損切りしないで持っているだけではないでしょうか?
元々中国の場合公表数字が当てにならないので、純債権国とは見せかけだけで純債権国の触れ込みが怪しいのですが、もしも数字が正しいとすれば、・・不良債権を消却しないで債権に含めているとすれば・・実質は純債務国かも知れません。… さらに読む

中国経済対策の成否(アメリカ金融政策と中国国内事情)1

話題が民族国家→民族文化の重要性にそれましたが、アメリカの金融政策の中国への波及効果に戻ります。
アメリカの金融政策から中国の受ける影響・・図体が大きくとも社会経済的には新興国の仲間である点は厳然たる事実ですから、アメリカの金利上げによって資金がアメリカに吸い寄せられる磁力に逆らえません。
・・日本は元々アメリカよりも金利が低い状態でここ20年あまりやって来ましたのでアメリカが少しくらい上げても日本には関係がありません。
逆に昨年1年間中国の対日資金「潜入」が増えていることを、「中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ」のテ−マで5月15日にに紹介しました。
中国は、これまで紹介して来たように長期にわたる構造改革中でその痛みに耐えるためには財政投資(内需拡大)や金融緩和を続ける必要がありますが、アメリカが金融引き締めに入ると中国独自に緩和を続けることが出来ない・アメリカの政策に追随せざるを得ない点は新興国同様です。
軍事力で周辺を威嚇していても、アメリカ軍が中国の領有主張している海域でアメリカが航行を開始すると追いかけて追い払う訳に行かない・・小さくなっているしかないのと同じで実は独立性がありません。
最近の北朝鮮有事・・米空母打撃群が2グループもやって来て日本海で大規模演習をしても中国は北朝鮮のために抗議1つ出来ないどころか、北朝鮮封じ込めに協力すると言わざるを得ない・・経済封鎖に加担実行開始するしかない状態です。
血盟を誇っていた北朝鮮を守れないどころかアメリカに従って北朝鮮包囲網に参加する意思表示に追い込まれているのですから、これほど頼りにならない同盟国・・屈辱的なことはないでしょう。
http://www.nikkei.com/article/DGXKZO16534010X10C17A5EA1000
北朝鮮包囲網ほぼ完成か 米、ミサイル300発で圧力    
真相深層 2017/5/18付日本経済新聞 朝刊
北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる米朝の対立が膠着するなかで、米国は北朝鮮の軍事的な包囲網をほぼ整えた。朝鮮半島近海に米国の空母や原潜を展開。北朝鮮が「レッドライン(軍事行動を起こす基準となる行為)」を越えれば即応できるように、推定で300発の巡航ミサイルが北朝鮮の地下施設などに照準を合わせている。北朝鮮の譲歩を引き出す圧力は確実に高まっている。」
toyokeizai.net/articles/-/159314 5月21日
中国、北朝鮮からの石炭輸入を全面停止
輸入禁止措置は19日から今年いっぱい [上海/ワシントン 18日 ロイター] – 中国商務省は18日、北朝鮮からの石炭輸入を全面的に停止するとの通達をウェブサイト上で発表した。北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁を強化する狙いがある。輸入禁止措置は19日から今年いっぱいとなる。北朝鮮は12日に弾道ミサイルの発射実験を行った。中国は昨年4月、国連の制裁を受けて北朝鮮からの石炭輸入を停止する方針を示したが、核やミサイル開発に関係せず人道上不可欠な場合は除くとしていた。」
5月22日の午前のMSNニュースです。
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/北朝鮮対応「100日猶予を」
-中国・習主席、米に要求/ar-BBBm7Hq北朝鮮対応「100日猶予を」 中国・習主席、米に要求 朝日新聞デジタル のロゴ朝日新聞デジタル8 時間前
「 北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が4月初旬のトランプ米大統領との会談で、米国が北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求めていたことがわかった。この会談で合意した両国の貿易不均衡是正についての100日計画と並行し、安全保障分野でも同じ期限を設定した格好。ただ北朝鮮は21日も弾道ミサイル発射を強行しており、どこまで効果が出ているか不透明だ。」
「関係筋によると、会談で両首脳は、北朝鮮による新たな核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を阻止することで一致。北朝鮮による「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意した。習氏は、中国国内の企業からの北朝鮮への送金規制や北朝鮮向けの石油の輸出規制などの独自制裁を検討していることも示唆したという。」
アメリカの金融緩和開始の憶測だけで16年中に中国から資金が逃げ続けて行き、4兆ドルに迫っていた外貨準備が1年間で3兆ドルを割るまでになりました。
中国の場合、新興国から逃げる一般的な資金逃避傾向と中国自身の内需拡大政策・・景気対策につぎ込むための資金浪費?懸念の両面から為替下落圧力がかかったことが、巨大な外貨流出を招いたことになります。
結果的に自慢の外貨準備も一時3兆ドルを割ってしまい、貿易量から見て安定的保有資産として必要な最低限・・危機的ラインに近づいて来ました。
そこで中国政府は昨年末から急激な外資流出制限を掛けているのですが、これで何とかなるかがこの半年〜1年の結果によります。
他の新興国と違い貿易黒字を維持したままですから、資金流出・・人民のパニック売りさえ防げれば、貿易決済に支障が出ることは本来ありません。
ここまで自腹(虎の子の外貨準備に手を付けても)を痛めても国民を失業させない(政権維持の自己目的とは言え)心意気は結果として大したものです。
ただ、対日資本流入が16年1年間では増えていることから考えると、イチガイにパニック売りばかりとは言えない・・投資価値の低いアメリから逃げて先進国企業買収による技術移転を狙った民間による合理的投資もかなりある筈です。
民間の方は、政府が資金不足になろうが、デフォルトしようが構わない・・自企業の利益のために行動しているとすればそれもあるような民族性です。
政府としては、外貨準備が減るのを惜しんで内乱になるともっと困るので、二者択一判断で外貨準備取り崩し・内需拡大策が結果を先送り出来るし、もしかして何とかなる可能性があるのでこれを選んだのでしょう。
昨年末まで頑張って来たものの外貨準備が3兆ドルを一旦割ってしまい、経済規模からしてギリギリになって来たのでこれ以上の買い支え=外貨準備取り崩しは出来ない状態です。
そこで昨年末頃から海外投資を規制したり短期金利を上げたりして打つべき手を打った挙げ句にFRBの金利上げですから、国内景気失速が心配などと言ってられなくなって・追随して金融引き締めに入りました。
・・FRBの金利上げが今後連続した場合、その都度追随して中国も金利を上げ・金融引き締めするしかなくなった場合には、国内景気に大きな影響を及ぼすのは必至です。
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO14873520U7A400C1FF2000中国、引き締め政策で金融市場が動揺 社債の発行停滞 2017/4/4 1:42
日本経済新聞 電子版
【上海=張勇祥】金融政策を引き締め気味に変更した中国で金融市場が動揺している。社債の発行延期、取りやめが相次いでいるほか、3月下旬には銀行間市場で債務不履行が生じたとの観測が浮上した。短期金利も乱高下している。金融政策の転換は不動産バブルや金融リスクの抑制が狙いだが、過度な引き締めは景気の失速を招きかねず、金融当局は難しいかじ取りを迫られている。」
http://tokua.wpblog.jp/2017/04/06/
【香港=粟井康夫】中国で金融引き締めへの警戒感が高まっている。日本経済新聞社と日経QUICKニュースが5日まとめた中国エコノミスト調査では、中国経済の先行きのリスクとして、金融当局による金融政策の引き締めをあげる回答が増えた。中国人民銀行(中央銀行)は資本の流出や不動産バブルを抑えるため短期金利を高めに誘導しているが、2017年下半期以降に中国景気の下押しに働くとの見方が強まっている。」
多くのエコノミストの見方は(貿易黒字を減らしますと言うトランプ習近平会談での対米約束)もあって、「金融引き締めするしかない」→そうすれば景気下押し圧力になると言う意見が多いことを上記記事は表しています。… さらに読む