戦争と平和3(非武装平和論6と民族自決3)

EUのように相互に軍備を縮小し、国境の壁を低くして行く相互関係があるならば非武装論も意味がありますが、極東の場合そう言う環境にはありません。
(それでもEUにはナトーと言う軍事同盟があって現に活躍しています・・ロシアの脅威にさらされるウクライナがこの軍事同盟に入って保護を受けたがっていることは周知のとおりです)
日本への報復感情を植え付ける教育をしている中韓が存在する環境下で、日本だけが軍事同盟を断り、非武装化して行くべきと言う意見は、国・民族の安全をどう考えているかを明らかにする必要があるでしょう。
憲法に書いてあると言うだけでは必要な議論を避けて・・逃げているとしか言いようがありません。
憲法解釈を主張するだけならば、憲法学者や弁護士は一般人よりは詳しいかも知りませんが、その結果どうなるか・・それが日本民族にとって好ましい結果どうかについての判断能力が優れている訳ではありません。
(2014/09/07「弁護士会の政治活動1」前後で弁護士会や学者が政治運動することに対する批判を書き始めていますが、このコラムもそのシリーズの途中です)
周辺に日本侵略を狙い現に竹島を占領し、尖閣諸島で実力行使を始めている国があるのに、非武装・非同盟を選択すると、どう言う結果を招来するかこそが議論の対象となるべきです。
現実に危険が発生している状況下で、非武装で且つ集団自衛権反対論者は、祖国を守るために戦うよりは、一戦も交えずに平和裏・・無条件降伏に導き異民族支配を望んでいる勢力ではないかと疑う人が多いのではないでしょうか?
主権国家の基本的定義の問題ですが、自国防衛権は主権国家→民族自決の基本的要件です。
異民族の武力支配下に入るのでは、国民主権国家でなくなってしまうからです。
ですから国連憲章でもどんな学者でも、主権国家である以上は自国防衛のための軍備保有を否定する意見を見たことがありません。
国連憲章を見ておきましょう。
以下は10月12日現在のウイキペデイアからの引用です。

「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
この自衛権の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に報告しなければならない。
また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持または回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」

— 国連憲章第51条

「常任理事国の拒否権制度が導入されたことから常任理事国の拒否権発動によって地域的機関が必要な強制行動を採れなくなる事態が予想された[4]。
このような理由から、サンフランシスコ会議におけるラテンアメリカ諸国の主張によって、安全保障理事会の許可がなくても共同防衛を行う法的根拠を確保するために集団的自衛権が国連憲章に明記されるに至った」

上記のとおり固有の自衛権も集団自衛権も国連憲章で保障されているし世界中で誰もこれに異論を唱えていないのに、日本だけが保障されていない・・その根拠は日本国憲法にあると言うのです。
ただ、非武装論者の拠り所は、その意見のもたらす結果を全く論じないで、日本に限っては「憲法で禁止しているから集団自衛権は、違憲だ」と言うに過ぎません。
日本の安全保障にとって集団自衛権行使は、国際法的にも死活的重要性があることは明らか・・不要とする意見は(日本左翼を除いて)世界中で皆無でしょう。

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