独裁体制と情報規制(ホットマネー)1

ホットマネー流入禁止は、言わば体温計を使うな、クルマのスピードメーターの取り付け禁止みたいなものです。
体温計を見なくとも体調悪化を防げる訳ではありませんし、メーターさえ見なければ、スピードが出ていないことにはなりません・・・本末転倒の政策です。
ホットマネーは相場に損益がモロに左右される資金のことですから、ホットマネー運用者の経済状況認識と予測が自ずから鋭くなってあわてて動くので、言論の自由がなくもの言わずともその動きから経済状況が素人・一般に拡散されます・・言わば経済動向ウオッチャーの関与禁止・・経済動向の外部漏洩禁止と同じです。
言論禁止の極まった形として、大惨事が発生したときに、大惨事発生を知られないために現場周辺を立ち入り禁止にしていると、報道の自由が保障されていても現場に行けないと報道出来ません。
今回の長江での客船沈没事故では大惨事自体はすぐに世界に知られてしまいましたが、事故が知られた後は政府報道機関しか周辺立ち入りできず政府機関の宣伝・・政府はこんなに頑張っているなどの宣伝しか報道されない状況になっています。
ホットマネー規制は報道規制している独裁国家の手法・・政府に都合の悪い事件報道をさせないのと同じ手法を経済界に及ぼそうとするものです。
報道規制しても実際に起きた事件がないことにはならないし、経済実態が悪くなっているのを国民に知られるまでの時間を稼げるだけで、駄目になった経済が良くなることもないし、ジリ貧になるのは同じです。
ホットマネー取引規制していても、金融その他現実取引している人は肌で分りますし、皮膚感覚で分る庶民による手持ち資金の国外逃避が始まれば経済界が浮き足立つ結果は同じです。
じりじり逃避資金が増えて来ると株価維持・買い支えのために財政出動しても、資金が続かなくなるので、中国の海外借入金が増えて来た原因かも知れません。
ホットマネーによる煽り立てがなくとも、支払能力がなければいつかは露見します。
半年〜1年後後の危機を察知してホットマネーが売り逃げを図り、売り浴びせられるのは、不都合を先送りしたい債務者には悪夢でしょうが、情報隠蔽は半年〜1年先につぶれるのを知らないで新たに貸し、投資し続ける人の被害を拡大することになります。
現在で言えば、庶民が危機状態を知らされずに政府勧誘によって株式投資に誘導される・・情報を得ているグループはこの間にリスク資産を高値で売り逃げすることが可能となっていることを見れば、情報隠蔽の恐ろしさが分るでしょう。
韓国のセウオール号沈没事件では情報のない客は船室待機を命じられて、そのまま放置されて大量死亡して情報のある船長や船員は先に逃げてしまったのもこの一例です。
6月2日ころの長江での客船沈没事件でも、船長や機関長が真っ先に逃げて助かっています。
期間長は職務柄、船の機関室・・奥まったところにいるのに何故真っ先逃げられたか(操作ミスなら真っ先に知り得る立場です・・)報道を見て、最初に感じた不思議でした。
ホットマネー流出入規制社会とは、特定情報にアクセス出来る特定の人(特権階層)だけが情報に従って予め自己利益を守るために行動出来るし、アクセス出来ない人は逆の楽観情報を意図的に振られて目前に迫っている危険に気が付かずに危険な投資その他に参入させられ、安心して踊らされてしまう社会です。
危機が迫った瀬戸際になって、始めて緊急対応が出来るだけ・・インサイダー取引を国が推進している社会・・このような情報格差社会を政府が強制して良いかどうかの意識・・その国の姿勢でしょう。
公正な競争を奨励する自由主義社会においては、競争の結果(勝敗の結果)格差が生じるのは論理必然ですが、格差を恒久化せず、出来るだけ速やかにその是正を図り、是正期間の短縮を図ることが求められていますが、政府が率先して不公正情報操作をして格差を形成しようとする社会は問題です。
イラクの元フセイン大統領に始まって現在中国の江沢民元主席周辺、共産党大幹部周辺、独裁社会ではその取り巻きが極端に良い思いを出来る社会になっていたのは情報格差による論理必然です。
強い者が(賄賂のとりたい放題を象徴として、)やりたい放題をして来た結果、何兆円と言う海外資産隠しが横行するなどの巨大な格差が中国で生じているのです。
独裁制=情報規制社会ですから、「民をして知らしむべからず」式になるのは理の当然です。
ホットマネー規制は経済面での情報規制の象徴(金利自由化規制・A株B株と言われる資本市場参入規制その他の多くの規制はその下部規制になります)であり・・独裁国家の本質であることが分ります。
上記のとおりホットマネー規制その他の多種多様な規制の結果、すぐには経済状態が外部に漏れ難いのが中国社会の現状ですが、日本人投資家が一刻も早く知りたいのは知りたいのは、経済の先行き・・進出予定業種の先行き見通しや金融界にとっては、中国借入金の支払不能・・デフォルトリスクです。
解放前には政府首脳の失脚などは天安門広場で並んでいる高官の顔ぶれ変化や立つ位置から政変を推測する時代が長く続きました。
最近でも、薄煕来や周永康の失脚などは長い間行事の表面から消えていろいろ憶測されていた挙げ句に大分経ってから裁判するとか取り調べ中と公表された程度です。
今でも北朝鮮高官失脚説が将軍様と一緒にテレビ映像に出なくなったとか言うことから推測を逞しくしています。
こういう国では、経済は人間の動きの基礎ですから、経済の動きだけ切り離して情報公開する・・一党独裁で市場原理導入するのは無理があります。

中国資本流入減(同胞意識と宗族意識)

話題を中国からの企業撤退問題に戻します。
私の想像だけでは間違いがあるので中国の現状に対する公的記事を期待していたところ、世論の批判を無視出来なくなったか?日経新聞にも日本企業撤退時の悲惨さに関する実態が出始めたので紹介しています。
中国びいきの日経新聞にさえ悲惨な撤退状況が出始めたことからも分るように、中国は、長年巨額の長期資金流入超過を前提に日本からの資金はもらったつもりで?経済運営して来ました。
(6月3日に紹介したように、「身ぐるみ剥いで裸で追い出す」やり方を前提にしていたのですから、本気でそう思っていたことが確かです。)
撤退企業は「命が惜しければ・・」と脅されて)裸同然で追い出されていますので、中国としては出て行っても資金流出がないどころか最新設備をただ同然で手に入れられたとほくそ笑んでいるでしょう。
このやり方を見ていると、これから中国ではこの分野は発達するであろうと期待する関連業界も、怖くておいそれとは進出したり追加投資出来ません。
怖々の進出ですから、本来の需要に対して何割減になって行きます。
関係ない筈の企業に対するひどい仕打ち・・脅しが次に進出予定の日本企業の投資意欲を引っ込ませている関連を、民族意識よりは一族単位の利害で考える中国人には理解出来ないのでしょうか。
中国人も立派な人がいるでしょうし理性的な人もいるのは確かですが、ここでは多くの中国人一般意識・・これが現場の動きを支配するので書いています。
人格者はどこにもいるのですが、(何万に一人いるかいないかの立派な人もいると議論しても意味がない・・)国民一般レベルが産業レベルを規定するので、平均レベルこそが現在社会では重要です。
日本では数百年単位の信用を重視するので相手の弱みに付け込むヤクザのような行為を原則として一切しません・・その場限りで相手の弱みに付け込んで不当な要求して暴利を得てもそれを見ていた無関係者までもが、その後で「あの人は・・・」と敬遠されてしまうマイナスの方が大きいからです。
(任侠系が影を潜めてゆすりたかり中心のヤクザが現在日本で何故はびこっているかですが、今では在日朝鮮人系が組織を牛耳っていると言われていることと関係があると思われます・・アメリカ政府発表のブラックリストに載っている日本ヤクザ幹部の多くが、在日朝鮮人であったことをこのコラムで紹介しました。)
相手が弱ったときにこそ、誠意の見せ所とばかりに最大限の応援をするのが日本的価値観です。
これが日本で顕著な助け合い精神の基礎になりますが、人の弱みに付け込んだ朝鮮半島からの引き揚げ時に受けた辛酸やソ連による条約破棄によるシベリヤ抑留・・敗戦後日本が弱ったことにつけ込んだ在日朝鮮人の暴虐ぶりの発揮などは、日本人の価値観からすれば、想定外の悪行を受けたものとして、数百年単位以上の記憶として心の奥深く刻み込まれてしまいました。
自分や家族が被害を受けなくとも自社に被害がなくとも、日本人は皆同胞としての被害意識(プラス面では感謝意識)を持つのですが、一族単位意識の中国人・韓国人はこの辺の道理が分りにくい人が多い感じです。
左翼系の常套文句ですが、「先生は理解があって良いのですが、他の人は・・」とか、「政府は敵だが、日本人民は敵ではない」・・最近では「安倍政権が右翼反動主義者で安倍政権さえ倒せば良い」とかの表現が多いのはこういう分断認識から来ています。
「パナソニックはもう用がなくなったから苛めても、お宅は大切にしますから来て下さい」と言う使い分けが通ると思っている・・日本人から見ればおかしな論法の国です。
6月3日に紹介したように、日本企業の撤退を阻止したい中国政府の意を受けたのか?「撤退すると大変な目に遭うぞ!という強迫的刷り込み記事が日経新聞に出るようになりましたが、これを読んだ日本人は「中国って恐ろしい国だ迂闊に進出出来ないな・・・」と逆に理解するのが99%ではないでしょうか?
反日暴動で「中国政府の言うことを聞かないと恐ろしい目に遭うぞ!」と脅したつもりだったでしょうが、その結果、新規資本流入が激減していることが明らかですし、他方で中国からの長短期の資金流出(みんながみんな裸同然で追い出されているのではなく、少しは持って出られた企業もあるでしょう)が始まっているのではないか・・資金枯渇→デフォルトリスクの可能性に話題を戻します。
デフォルトリスク関しては、見かけの外貨準備高よりは、債権債務の中身の分析こそが重要になってきます。
対外純債権債務の資産表は(長期資本でもあまり内容が悪いとパナソニックのように損切りしてでも逃げ出すので)長期的指標としての意味を無視出来ませんが、目先重要なのはいわゆるホットマネーや借入金等の短期資金の比率です。
日韓スワップ協定終了に関連したコラムで、韓国の外貨準備がアジア危機のときよりも大きいと言っても、外貨準備の内容を・・対応する負債との兼ね合いで見ないと意味がないと書いてきましたが、中国の場合も同じです。
資本自由化・外資導入が進む時代は、借金でも何でも外資さえ入れれば、その分名目上の外貨準備が増えますので、プラス面の指標だけ見ても意味がありません。
ホットマネーの大きさを重要ではありますが、これは動きが速い指標としての意味・体温計として重要性があるだけです。
ホットマネー自体はいくら相場が下がっても投機家が損してでも値下がりした価値で売り払って逃げるしかないので、(購入額の1割に下がっていても文句言えません・・その分に比例して)一刻も早く逃げ足が速い結果・下落基調になったときその動きを加速するので危険性がありますが、ただになっても文句言えないのでデフォルト危機そのものではありません。

資金枯渇4(流民・資金逃避と移民願望)

中国からの長短期の資金流出が始まる・・デフォルトリスクに関しては、見かけの外貨準備高よりは、債権債務の中身の分析こそが重要になってきます。
対外純債権債務の資産表は(長期資本もあまりにも内容が悪いとパナソニックやシチズンのように損切りしてでも逃げ出すので)長期的指標としての意味を無視出来ませんが、目先重要なのはいわゆるホットマネーや借入金等の短期資金の比率です。
日韓スワップ協定破棄に関連して韓国の外貨準備がアジア危機のときよりも大きいと言っても、外貨準備の内容を・・対応する負債との兼ね合いで見ないと意味がないと書いてきましたが、中国の場合も同じです。
資本自由化・外資導入が進む時代は、借金でも何でも外資さえ入れれば、いくらでも名目上の外貨準備が増えますので、プラス面の指標だけ見ても意味がありません。
緊急時に重要なのはいわゆるホットマネーですが、ホットマネーのように即時性がないとしても対外借入金の大きさは、期限に必ず返済しなければならない点では、デフォルト危険性指標としては大きな(死活的)意味があります。
韓国民も自国に見切りを付けている点は同じですが、資金逃避よりは、国外移住願望が高まっていることが知られています。
韓国の場合貿易黒字なのに(と言うよりは、国民犠牲による黒字演出の場合はこれに比例して)、国民の消費系債務や自殺増加、売春婦海外進出が増える一方ですから、言い換えれば、海外に資金を持ち出せる資金を持っている人が少な過ぎる違いでしょうか。
中国は経済危機状態になってからの期間が短いので、バブル期に儲けた人がまだ資金を持っている比率が高いことと、目先の利く人・・異民族支配に慣れていて時代動向を読むのにしたたかな人が多い違いでしょうか。
韓国の場合、アジア危機以降既に20年近くも国民犠牲・収奪オンリー経済構造で来たので、この間に国民の多くがすっからかんになってしまっている様子です。
20年近くも収奪されっぱなしで来た国民の弱さは、李氏朝鮮時代の庶民の弱さそのものを彷彿させます。
中国も韓国も歴史は繰り返されるものですから、それぞれに対する歴史認識が重要です。
中国王朝末期の流民化は同じ国内移動で簡単でしたが、今は国外逃亡するには言葉の壁もあって簡単ではないし、昔は農民でしたし歩く範囲ですから気候風土も大して変わらなかったでしょうから、避難した先で同じ仕事が出来ましたが、今では外国へ逃げても仕事は見つかりません。
韓国の場合、自分は年齢で勉強不能でも子供にはいつでも逃げられるように・・移民準備のために英語学習熱が盛んなのはこのせいです。
中国の場合、さしあたり裸官同様に資金から逃がし始めるのが(大した勉強・準備もいらないし)簡便ですから、資金逃避が国民意識を早く反映する・・中国政府発表を忠実に報道する日本のマスメデイア報道よりももっと深刻な国内意識を表していると見るべきでしょう。
外資のホットマネー(大口資金・・ゲンキン移動ではなく金融機関経由なので規制が簡単ですが・・)の移動を規制しても、国民の小口現金持ち出し・・国外資金逃避を防げません。
日本からの対中新規投資が激減していることを大分前から書いてきましたが、パナソニックのように進出済み企業でも大損してでも中国撤退を決める企業まで出て来ました。
これも古代からの命がけ流民化の現在企業版です。
6月2日の日経新聞朝刊2pには、「逃げるしかない」と言う大見出しでシチズンその他の企業が中国南方の工場地帯から、大損して撤退している状況が大きく出ています。
良く言われているように中国では撤退しょうとすると日本人が拘束されるので撤退が容易でないと言われていましたが、今では何十億投資した工場設備1式を僅か1万円前後で撤退屋と言うヤクザまがいの組織に売り払って、一切を任せて逃げて来る実態が書かれています。
「命が欲しければ裸で出て行け」(「命が惜しければ身ぐる脱いで・・」江戸時代のもの語りに出て来る追い剝ぎ同様の中国商法です・・)と言えば、資金の海外流出を防げるでしょうが、これでは次の投資をする企業が減るのは当然です。
続けて6月3日の朝刊2pに今度は大連の状況が出ています。
「逃げたいなら逃げろその代わり逃げたら、2度と中国に進出させないから」と言う中国人の脅し文句(新聞社の創作かも知れませんが・・そう言う雰囲気を伝えたいのでしょう)が掲載されています。
脅しが次の投資意欲引っ込ませている関連を理解出来ないようです。
古代の流民も一旦逃げた以上は、元の農地に戻れない・・命がけ・・破れかぶれになって命知らずの王朝打倒勢力に成長していったのは当然です。
日経新聞も最近中国賛美報道ばかりではなく、マイナス情報も書くようになったことを5月中旬以降このコラムで紹介していますが、今のところAIIBのような政治テーマは中国政府の意に沿うような形で、その他経済実態は政府発表と矛盾していてもある程度そのまま報道するなど、マダラ模様になってきました。
ただし、中国からの企業撤退は大変なことになっていると言う連続報道の意図するところは、撤退を考える企業が増えて来たので、「撤退しようと考えているならば、大変なことになるぞ!」と見せしめ的に脅し・宣伝をかけてくれと言う要望に従っているだけかも知れません。
・・元々報道は一定方向へ選別して一貫した誘導報道をする方が不正であって、多様な矛盾した状況をそのまま報道し、読者や視聴者がその中から自分のまとまった考えを導けば良いことです。
私も今のところ、「中国は今大変なことになっているのではないか!」と言う関心で連載していますので、このシリーズ中はその情報ばかり書いていますが、だから将来にわたって中国は全面的に駄目になるとまで思って書いているのではありません・・中国人にも立派な人もいるし、生活習慣や意識にも良い面が一杯あるだろうとは思っています。
それはそれでまた別のシリーズのときに書けば良いと思っていますので、誤解ないようにお願いします。
人にはいろんな考えが混在していて良いのではないでしょうか?
勿論優れた意見を聞いて考えが変わることもあり、(そうでなければ、進歩がありませんので)何ら恥ずかしいことではありません。

中国過大投資の調整9(資金枯渇3)

借入金だけで総額29兆ドルもあると、仮に5年もの国債ばかりでも、年平均6兆ドルの満期・返済期限が回ってきます。
しかもこれが過去の負債全部ではなく、07年以降増えた分だけと言うのですから、それ以前の負債全部になるとどうなっているの?払える訳がない巨額じゃないの?と疑問を持つのが普通でしょう。
07年以降増えた分だけでも支払期限が来るのが年平均6兆ドル=720兆円となり、天文学的数字ですから、(中国の・水増し?公称GDPでも2014年で約10兆ドルしかありませんし、我が国の14年GDPは、約4兆ドルあまり)GDP以上の数字を毎年払えない・・購入者がいないので借換債を発行出来る訳がない・・と推測出来ます。
統計数字は円(ドル)単位と千単位の2種類が多いのですが・・勝又氏の引用記事は単位「千」(ドル)かどうかの読み間違い・・3桁間違っている可能性があります。
数桁間違っているにしても、兎も角中国は対外借入債務を大幅に増やしていること・・これを関係のないドイツ財務相がよその国(アメリカ)で公式懸念発言していることが重要です。
数字の単位正確性を別として、国際金融界では中国のデフォルトリスク(借り換え困難懸念)が極秘で懸念・共有され始めているのをうっかり発言してしまったのではないでしょうか?
中国がデフォルトまたはデフォルト寸前になれば、国際経済に与える悪影響の大きさはギリシャやブラジルの経済危機の比ではありません。
中国のアメリカ財務省証券保有額減少が、アメリカ政府によって発表されて・・中国政府が外貨準備の取り崩しに走っていることをMay 4, 2015「覇道と日本の補完性1」で紹介してきましたが、独財務相発言とあわせて見ると中国の資金繰りが厳しくなっていることが明らかに見て取れます。
日米の国債は、ほぼゼロ金利ですから、市場調達の高利資金でゼロ金利のアメリカ国債を見栄で持ち続ける余力がなくなって来た・・逆ざや債券の保有を続ける体力がなくなったので減少に転じたのではないでしょうか?
元々高金利でしか経済が持たない中国が、日米等先進国の低金利国債を外貨で持つのは逆ざやで大変な損失が生じていることをApril 12, 2012「基軸通貨とは3(逆ざや)」に書きました。
このために中韓等高金利国(経済内容が弱くて金利を下げられない国)では、自国以上の高金利国の外貨を持つ誘惑が高まり・・ひいてはハイリスク・ハイリターンのジャンク債中心保有になる傾向が高いので、リーマンショック以降あるいは今回のロシア・ブラジル・インドネシア等新興・資源国の通貨下落が始まると外貨準備の劣化・・大損が生じている可能性が大です。
最近のギリシャ危機では、国民が自国金融機関を信用出来なくなって、預金払い戻しに走る結果、国内金融機関の資金が枯渇して更に金融危機が強まっている矛盾が報道されています。
ウクライナ危機後のロシアのルーブル急落も、国内からの(国民のルーブル信認喪失による)資金流出が大方の原因と言われているのと同じ現象です。
中国では、裸官と言う高官の国外資金逃避が従来から大々的に報道されていましたが、これは実は目くらまし報道であって、本当はちょっとした資金保有者による国外逃避のうねり・・これが深刻な状態になっている様子です。
経済実態・デフォルト危険感を身近に感じている庶民を虚偽統計発表では誤摩化せませんし、国際機関が極秘検討しているだけでは済まなくなってきます。
限られた大金持ちの資金逃避は規制が容易ですが、庶民大衆による資金の国外逃避が始まると庶民の場合は額は小さくとも大量なので総額では巨額になりますし、ザルから漏れる水のようでそれを防ぐ方法がありません。
国外向け景気の良い虚偽発表をし、海外マスコミを買収して世界を誤摩化していても、足下から資金が漏れ出るようになると、政府はどうにもなりません。
中国では古代から歴代王朝末期にいつも生じていた農民流民化の始まり・王朝崩壊が、最近では資金の国外逃避(特に容易な香港市場への参入)と言う形式で始まっている様子が報じられています。
王朝末期の流民化は同じ国内移動だったので難民化→流民化で自動的な関係でしたが、今は国外逃亡するには言葉の壁もあって簡単ではないので、さしあたり資金から逃げ始める時代・・国民意識を早く反映する・・中国政府発表を忠実に報道する日本のマスメデイア報道よりももっと深刻な自国不信を表していると見るべきでしょう。

中国過大投資の調整8(資金枯渇2)

長期資本収支・・例えば、トヨタ等の進出資金・・工場用地購入資金等がドルで入って来てこれが現地通貨・人民元に両替して購入することによって中国の外貨準備が増えている場合には、トヨタが現地工場を叩き売りして日本に資金を持ち帰るときにドルに両替するだけなので、滅多にドル資金を払い戻す事態が起きません。
余程の喧嘩でもしない限り永久に貰ったような気持ちで良いので、対外純資産がプラスかマイナスかは短期的には大した意味がありません。
中国としては、進出企業がある程度儲けている限り、損切りして撤退しないので、一旦捕まえた魚みたいなもので、無理難題が可能と言う意識のようです。
しかし毎年のようにあらたな進出が必要な社会構造となれば、一旦進出した企業に無理難題を要求しているとこれを見ている次の進出予定企業が進出に二の足を踏むようになります。
借金も借りてしまえば、借りた方が強いのですが、次々と借り換えなければならないとなれば、期限に払わなかったりごねて引き延ばしたりすると次に貸して貰えなくなります。
パナソニックの技術移転があらかた終わったので、今後用がないとばかりに暴動を仕掛けたのでしょうが、他の日本企業がそのやり方を注視していることに気が付かなかったのでしょうか?
長期関係も大事にしないと信用がなくなりますが、反日暴動後の日本からの投資急減によって、信用の重要さを中国は漸く学んだところでしょうか。
「韜光養晦」戦術も同じで、あまりにも目先利益重視・・ちょっと自分が強くなればすぐに威張り散らしても良いと言う思想であまりにも幼稚でゲンキン過ぎます。
孫氏の兵法を直ぐに持ち出して有り難がる傾向がありますが、孫氏の兵法の極意は、数時間後とか数日間後などの短期の時間軸を利用して相手を騙して有利な戦法に持ち込む戦略に過ぎません。
韓国では戦った後に和解したフリをして相手を安心させてイキナリ背後から切り掛かるようなことが賞讃されている社会・・これが日韓条約を結んでお金を受け取った後に慰安婦や徴用工問題を蒸し返して羞じない基礎・道徳心理の根拠)ですが、中国の「韜光養晦」戦術とは、時間軸を数日後の開き直りから、その期間を数年とか十数年にちょっと長くしただけで、韓国の卑怯なやり方と本質が変わりません。
レアアース問題も極端な安値販売で中国のレアアース製品が世界市場を席巻した後にイキナリ禁輸して・何十倍に値上げしたものすから、「韜光養晦」の応用編・・だまし仕打ちです。
人類何千年の英知の結晶として積み重ねて来た国際ルール(結局は信義を守りましょうと言う精神)を、中国が無視し破壊する行為に付いては、(親中派文化人は、欧米秩序に対する新興勢力の挑戦であるとして賞讃頻りですが)数日後に書いて行きます。
対外債権債務の話題に戻ります。
対外純債権債務のバランスが仮に同じであっても、あるいは純債権国であっても流入資金の多くが借りた資金の場合は期限があるので、マトモニ返さねばならない点が大違いである点をここでは、書いています。
比喩的に言えば、対外債務が10兆円で対外債権が15兆円あっても、対外債権がいつ返してくれるか分らない・・貧困国援助資金(言わば不良債権中心)や資源開発等の長期資金投資で対外債務がアメリカ等から借りた資金の場合で考えれば、借入金返済資金手当が出来ませんので、黒字倒産の危機に見舞われます。
貿易決済のように同時にアフリカ等への援助資金の大多数が返済されれば良いですが、後進国援助や不景気対策の国内投融資資金等・・本来倒産予定企業救済資金ですからこの種の返済約束は長期でしかも焦げ付き易い・・市場調達による借入金返済期限や金利とかみ合いません。
ですから対外純資産のバランスが合うかの問題ではなく、中国の資金枯渇リスクの可能性に付いて必要なことは対外債権債務の中身です。
中国が2007年以降29兆ドルもの巨額対外債務・・借入金(期限付き)を増やしたと言う勝又氏の5月18日付き記事によれば、総合黒字を続けているとする統計発表が仮に正しかったとしても、資金繰りが間に合っていなかったことを表しています。
一般的な2〜3年もの社債・国債等での資金調達を考えれば、年間10数兆ドル以上の返済が回って来る大変な自転車操業状態です。

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