暴力団お断り2(マネーロンダリング禁止)

アメリカを起点とするテロ防止機運が世界を覆っています。
テロの強調自体がアメリカによる世界支配の道具立てかも知れませんが、ここのテーマではないので、その点をおいて書いて行きます。
テロ組織封じ込めに対する有力な武器が世界的な金融取引禁止制度です。
組織活動には大きな資金の移動が必須です。
アメリカの指定するテロ組織と金融取引すると、アメリカ外の金融機関もアメリカで処罰(高額罰金)出来る仕組みで、これ応じないと当然のことながらアメリカ国内の金融取引禁止となり、国際金融機関としては致命的ダメージを受けます。
(イランやリビアのようにテロ国家指定されると金融取引全面禁止が知られています・・イランとの取引・違反がバレたフランスの大手銀行が兆円単位の巨額罰金を払わされたのは昨年のことだったと思います。)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM3000W_Q4A530C1EAF000
米、BNPパリバに罰金1兆円超検討 イランなどと取引
2014/5/30 10:41
フランス銀行最大手BNPパリバが米国の法律に違反してイランやスーダンなど金融制裁対象国と金融取引していた問題で、米司法当局は同社に100億ドル(約1兆円)超の罰金を科す検討に入った。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙(電子版)が29日、関係筋の話として伝えた。

その後の報道では、実際に罰金が似たような額で決まったと出ていたように思います。
以前アメリカで指定された日本の暴力団幹部氏名の公表を紹介しましたが、この指名を受けると日本国内金融機関も(上記のとおりアメリカでの業務停止になるので)取引出来ません。
この指名・・金融取り引き禁止を確かなものにするための装置が、本人確認法→犯罪による収益の移転防止に関する法律です。
(平成十九年三月三十一日法律第二十二号)
目的)
第一条  この法律は・・中略・・犯罪による収益の移転を防止すること(以下「犯罪による収益の移転防止」という。)が極めて重要であることに鑑み、特定事業者による顧客等の本人特定事項(第四条第一項第一号に規定する本人特定事項をいう。第三条第一項において同じ。)等の確認、取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることにより、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 (平成十一年法律第百三十六号。以下「組織的犯罪処罰法」という。)及び国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律 (平成三年法律第九十四号。以下「麻薬特例法」という。)による措置と相まって、犯罪による収益の移転防止を図り、併せてテロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約等の的確な実施を確保し、もって国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与することを目的とする。
定義)
以下省略(金融商品取引、銀行取引、不動産取引等が列挙されています)
第二十七条(なりすましや、通帳等の譲り渡し等に対する罰則)

以下平成27年6月27日現在のウイキペデイアの解説です。
※内容は平成平成13年施行前のようですが、今では6月30日に紹介したとおり一般の不動産契約書も暴力団排除条項が印刷されています。
概要[編集]
「従来、日本におけるマネー・ローンダリング対策の柱となる法律は、「本人確認法」と「組織犯罪処罰法」の2つであった。
しかし、2003年(平成15年)に改訂されたFATF「40の勧告」において、金融機関のみならず、非金融業者(不動産・貴金属・宝石等取扱業者等)、職業的専門家(法律家・会計士等)についても規制すべき対象として追加される。そこで、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、「本人確認法」と「組織犯罪処罰法」第5章を一本化し、対象業種を拡大する法案を作成すること、FIUを金融庁から国家公安委員会に移管することなどを決定する。
2007年4月1日に一部施行され、翌年3月1日の全面施行により「本人確認法」と「組織犯罪処罰法」を置き換える形となったが、金融機関との取引に際して行われる本人確認の内容は基本的に変わらないが、宅地建物取引業などが新たに確認対象業者とされた。
2013年4月1日に改正法が施行予定。確認が必要となる取引や、取引者の個人特定情報のほか、職業・事業内容、取引目的、支配的株主など確認事項が追加される。」

指定暴力団員になると、まさに自分の名義での経済活動が殆ど何も出来ない・・どころか、誰かの名義を借りて取引すると詐欺罪になる仕組みですから大変です・・誰かのヒモにならない限りマトモに生活して行けない仕組みが完成しています。
つい1〜2週間前には、九州で有名な工藤会会長が脱税で再逮捕されたと報道されています。
上記のとおり殆どの現在的取引が出来ない・・所得申告出来ていない工藤会会長が、贅沢な生活が出来るのは所得を隠していると言う前提の検挙です。
合法収益が納税義務があるのに不法収益に限って所得税を負担しなくて良いと言う論理は無理があるので、不法であろうと合法であろうと収益を認定される以上は納税義務があるのは当然です。
刑事犯罪を犯しているかどうかは別として、脱税から迫るのはこれまた新たで強力な手法です。
このように個人責任主義の悪用によって責任を免れて来たグループに対して、相応の責任を負わすべき仕組みがそろいつつあります。

独裁体制と情報規制(ホットマネー)1

ホットマネー流入禁止は、言わば体温計を使うな、クルマのスピードメーターの取り付け禁止みたいなものです。
体温計を見なくとも体調悪化を防げる訳ではありませんし、メーターさえ見なければ、スピードが出ていないことにはなりません・・・本末転倒の政策です。
ホットマネーは相場に損益がモロに左右される資金のことですから、ホットマネー運用者の経済状況認識と予測が自ずから鋭くなってあわてて動くので、言論の自由がなくもの言わずともその動きから経済状況が素人・一般に拡散されます・・言わば経済動向ウオッチャーの関与禁止・・経済動向の外部漏洩禁止と同じです。
言論禁止の極まった形として、大惨事が発生したときに、大惨事発生を知られないために現場周辺を立ち入り禁止にしていると、報道の自由が保障されていても現場に行けないと報道出来ません。
今回の長江での客船沈没事故では大惨事自体はすぐに世界に知られてしまいましたが、事故が知られた後は政府報道機関しか周辺立ち入りできず政府機関の宣伝・・政府はこんなに頑張っているなどの宣伝しか報道されない状況になっています。
ホットマネー規制は報道規制している独裁国家の手法・・政府に都合の悪い事件報道をさせないのと同じ手法を経済界に及ぼそうとするものです。
報道規制しても実際に起きた事件がないことにはならないし、経済実態が悪くなっているのを国民に知られるまでの時間を稼げるだけで、駄目になった経済が良くなることもないし、ジリ貧になるのは同じです。
ホットマネー取引規制していても、金融その他現実取引している人は肌で分りますし、皮膚感覚で分る庶民による手持ち資金の国外逃避が始まれば経済界が浮き足立つ結果は同じです。
じりじり逃避資金が増えて来ると株価維持・買い支えのために財政出動しても、資金が続かなくなるので、中国の海外借入金が増えて来た原因かも知れません。
ホットマネーによる煽り立てがなくとも、支払能力がなければいつかは露見します。
半年〜1年後後の危機を察知してホットマネーが売り逃げを図り、売り浴びせられるのは、不都合を先送りしたい債務者には悪夢でしょうが、情報隠蔽は半年〜1年先につぶれるのを知らないで新たに貸し、投資し続ける人の被害を拡大することになります。
現在で言えば、庶民が危機状態を知らされずに政府勧誘によって株式投資に誘導される・・情報を得ているグループはこの間にリスク資産を高値で売り逃げすることが可能となっていることを見れば、情報隠蔽の恐ろしさが分るでしょう。
韓国のセウオール号沈没事件では情報のない客は船室待機を命じられて、そのまま放置されて大量死亡して情報のある船長や船員は先に逃げてしまったのもこの一例です。
6月2日ころの長江での客船沈没事件でも、船長や機関長が真っ先に逃げて助かっています。
期間長は職務柄、船の機関室・・奥まったところにいるのに何故真っ先逃げられたか(操作ミスなら真っ先に知り得る立場です・・)報道を見て、最初に感じた不思議でした。
ホットマネー流出入規制社会とは、特定情報にアクセス出来る特定の人(特権階層)だけが情報に従って予め自己利益を守るために行動出来るし、アクセス出来ない人は逆の楽観情報を意図的に振られて目前に迫っている危険に気が付かずに危険な投資その他に参入させられ、安心して踊らされてしまう社会です。
危機が迫った瀬戸際になって、始めて緊急対応が出来るだけ・・インサイダー取引を国が推進している社会・・このような情報格差社会を政府が強制して良いかどうかの意識・・その国の姿勢でしょう。
公正な競争を奨励する自由主義社会においては、競争の結果(勝敗の結果)格差が生じるのは論理必然ですが、格差を恒久化せず、出来るだけ速やかにその是正を図り、是正期間の短縮を図ることが求められていますが、政府が率先して不公正情報操作をして格差を形成しようとする社会は問題です。
イラクの元フセイン大統領に始まって現在中国の江沢民元主席周辺、共産党大幹部周辺、独裁社会ではその取り巻きが極端に良い思いを出来る社会になっていたのは情報格差による論理必然です。
強い者が(賄賂のとりたい放題を象徴として、)やりたい放題をして来た結果、何兆円と言う海外資産隠しが横行するなどの巨大な格差が中国で生じているのです。
独裁制=情報規制社会ですから、「民をして知らしむべからず」式になるのは理の当然です。
ホットマネー規制は経済面での情報規制の象徴(金利自由化規制・A株B株と言われる資本市場参入規制その他の多くの規制はその下部規制になります)であり・・独裁国家の本質であることが分ります。
上記のとおりホットマネー規制その他の多種多様な規制の結果、すぐには経済状態が外部に漏れ難いのが中国社会の現状ですが、日本人投資家が一刻も早く知りたいのは知りたいのは、経済の先行き・・進出予定業種の先行き見通しや金融界にとっては、中国借入金の支払不能・・デフォルトリスクです。
解放前には政府首脳の失脚などは天安門広場で並んでいる高官の顔ぶれ変化や立つ位置から政変を推測する時代が長く続きました。
最近でも、薄煕来や周永康の失脚などは長い間行事の表面から消えていろいろ憶測されていた挙げ句に大分経ってから裁判するとか取り調べ中と公表された程度です。
今でも北朝鮮高官失脚説が将軍様と一緒にテレビ映像に出なくなったとか言うことから推測を逞しくしています。
こういう国では、経済は人間の動きの基礎ですから、経済の動きだけ切り離して情報公開する・・一党独裁で市場原理導入するのは無理があります。

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