資金枯渇6(一斉開花)

昨日紹介した5月31日の記事によれば、財政赤字も3%以内と言う不文律があるようです。
これを守って行くために、政府債務の過小発表をするか、GDPの水マシ発表に頼って来たのでしょうか。
しかし、5月31日に紹介したドイツ財務相の発言のように、対外債務は相手国の集計で分るので隠しきれませんから結局GDPの水増しかありません。
最近では、いろんな(合弁企業が多くなって)(スマホや自動車など)業界別データ販売が出るようになって来ると、GDPの誤摩化しも限界になってきました。
イオンやパナソニックのように一社だけの情報だと1社だけ負けているのか、あるいは特定地域だけの現象なのかも分りません・・いろいろな憶測が可能ですが、全国業界統計になって来るとある程度の景況感が分ります。
日本で言えば、昔はデパート売上が基準でしたが、スーパーや量販店等の比重が上がるとデパート売上増減だけでは、全体の景況感がはっきりしなくなるし、今ではコンビニやアウトレットもあります・・更にはネット通販があるし、単品統計で言えば、携帯やパソコンが売れなくともスマホが売れていることもあるので小売業界統計増減も一概に言えません。
とは言え、自動車や住宅販売などの売上増減は裾野が広いので、今でも社会全体の景況感そのものを表す比重が高いでしょう。
中国では、増加著しかった頼みのスマホも5月末ころには(4月分だったかな?)売上減が発表されてしまっていますが、まだこれに代わる通信機器が出ていないので単なる景気悪化と見るべきか、ある程度行き渡った結果の分岐点と見るべきかの評価次第です。
日本の過去のピアノ市場で言えば、みんなが買い始めたときはいくらでも売れましたが一定程度行き渡ると買い替え需要だけになるので、売上減少は、景気悪化の結果とは言えません。
しかし、景気悪化したから売れなくなったのではなくとも、今後買い替え需要だけになると・・(ピアノはプロ志望以外の家では一生に1回しか買いませんし、家も行き渡れば滅多に建て替えしません)生産減少が始まって景気が悪くなる将来性を表しているとも読めます。
スマホの買い替え期間が短いとは言え、買い替え中心になると需要が大幅減になります。
中国の消費市場が伸びているし、これからも伸びるだろうと言う予測は、ゼロから買う段階の分野が大きいので、短期に大幅に伸びていることを、永久に伸びる前提で予測しているキライがあります。
先進国の場合新製品開発されてから、普及期に達するまでの期間が長いのですが、新興国では一斉開花・普及するので、成長率はもの凄く高い代わりにあっという間に普及期が来ます。
新興国の経済成長は、北国の春・一斉開花方式であることを、May 20, 2015「中国バブルの本質2(新興国経済2)」で書きました。
安物から中級〜高級機種へと・・業態別に見てもデパート〜スーパー〜量販店・ドラッグストアー〜コンビニ・・郊外大型店→都市型小型店回帰など日本の場合数十年単位で移行して来たのが同時的進行します。
新興国モデルでは、短期回収が基本で10年かけて回収する企業モデルは成立しません。
(イオンやパナソニックの縮小撤退はこうした業態変化の早さの結果でしょう)
これが、社会の集約的結果となっているのが、超短期で到来した高齢化社会・環境破壊と言えるでしょう。
貿易輸出入合計や各種業界の前年比売上減が相次いでいるのに、(次の段階の高成長が始まっているとしてもトータルでマイナスっぽいのに)その集計結果である筈の成長率低下に戻しますと、政府のGDP発表だけが7%弱のプラス成長と言えば、多くのエコノミストはこれを前提に今年は6、5%も難しいのではないかなどとまじめな議論していますが漫画みたいです。
エコノミストの予測は政府発表どおりとすれば、・・政府はこの辺まで実態に合わせるのじゃないかと言う予測・・大まじめにやっている意味があるのでしょう。
中国は、資本流入・収入増を計るつもりが、・・その後反日暴動や国内不満吸収のための経済原理を無視した大幅賃上げの繰り返し→国際競争力衰退によって予想外に外資流入が減少し、当てにしていた外資を利用するもくろみが崩れてしまいました。
他方でリーマンショックの穴埋め資金投入政策は、上記のとおり僅か1年で3%弱にのぼる財政赤字転落ですが、1年ではとても景気回復するようなものではありません。

資金枯渇5(撤退加速と流入減)

中国は「アジア危機の教訓」と言う名目で、ホットマネー(短期資金)の流入(実は流入はいくらでも良いのですが、流出を恐れているのです)を厳しく規制していましたが、自由に任せる・・流出を恐れると言うことは、公表とは違う自国経済の脆弱性・信用力の低さを誤摩化そうとする意識があることを自白しているようなものです。
ポンド危機(防衛)の事例を紹介したことがありましたが、統計や為替・金利水準が実態経済と違っている場合に、ジョージ・ソロス氏のようなファンドから、大掛かりな売り浴びせを受けると大恥をかきます。
国民の海外移住を規制しているのは、自国政治に関する自信のなさの現れです。
報道規制している国は、国民に知られると、まずいことをしている国です。
「自由に撤退して良いですよ」と言って、初めて安心して資本も観光客も入れますが、「一旦入ったら最後無事に出られないぞ!」と言われたら誰でもおそろしくなるでしょう。
デフォルト危機の本質は危機を察知したホットマネーの動きがキッカケになるだけであって、ホットマネーさえ規制すればデフォルトを防げるのではありません。
ホットマネー規制は「体温計さえなければ熱が出ているか分らないだろう」と言う論理みたいですが、本来は借換債発行がどうなるかにかかっています。
中国では厳しい規制にも関わらず、貿易黒字を装った資金流入が大きかったことが(相手国の赤字額と中国の黒字額があわないことから)この数年以上前から明らかになっています。
この結果、中国の外貨準備には(統計誤摩化しの外に)貿易黒字によるものの中にホットマネー流入分が多く入っていたことが一因になり、(最近問題になっている個人資金国外流出にはホットマネーが紛れているでしょう)流入分だけ危機を察知すると流出が増えることになります。
中国は表向き禁止で輸入代金名目等で入っているので、ホットマネーの流入量については実態不明ですが、(反日暴動後資本流入が減少しても増加率が下がっただけで結果的に流入超過であったとの発表にも拘らず)2007年以降29兆ドル(この数字の翻訳に誤りのある可能性があるとして)も中国の借入金が増えたと言うことは、資本流入による補填では間に合わないほどの巨額の資金流出に直面していたことが推定されます。
本来ホットマネーが逃げるときは相場値下がり傾向のときですから、10万ドルで買った債券(やビル・マンション)が5万ドルに下がって逃げてくれれば中国人が半値で買い戻せるので、放っておいた方が得します。
(日本企業が捨て値で設備を売却して撤退している例を書きました)
ホットマネーが出て行くならば出て行かせれば良い・・その分外貨準備が減少するだけですが、借金せざるを得なかったのは何故でしょうか?
ホットマネーの流出の場合、株式や公社債等→人民元が大幅下落してしまうので、「ホットマネーが勝手に損すれば良いのだ」と放置できません。
買い支えた場合・・これの集約された取引が通貨下落に対する政府買い支えです・・これをやるとたちまち巨額の外貨準備金が出て行きます。
国内業者等の仕事がない場合も「企業はそう言うものだ・うまく行かなければ倒産すれば良い」と放っておけないので、公共工事等による財政支出増大・・一種の買い支えによって政府資金不足が起きた穴埋めとの複合要因が対外負債増大の原因だろうと推測するのが合理的ではないでしょうか?
リーマンショック直後の4兆元の国内財政出動決定までは良かったのですが・・当時は多分相応の外貨準備=自己資金があったでしょうし、不足分については潤沢な外資流入継続を当て込んでいたのでしょう。
5月31日日経新聞朝刊3pには、4兆元の財政出動表明の翌年・09年にはGDP(一応統計によれば)比で約3%弱の財政赤字になってしまっていると紹介されています。
中国では大事故でも20名以上の死者は認めないから、どんな大事故でもそれ以上の死者発生の事故発表はあり得ないと言われていました。(ただし6月2日報道の長江の客船沈没事故(500名弱の乗員)では乗客数を誤摩化せないので、限定しない様子です)
成長率も7%が死守ラインと決めれば何年もマイナス成長を隠してきましたし、今もニューノーマルと称して6・7%前後の成長を予定しています。
昨日・6月8日の日経夕刊3pによれば、中国の貿易輸出入総額が今年1〜5月合計で前年比8・0%減と出ています。
ちなみに対日貿易(輸出入合計)はこの間11、5%減になっています・・これも反日暴動以降毎年3割前後減少していましたから、減った分から更に11・5%%減り続けていると読むべきでしょう。
日本との貿易が減った分欧州で増やしているかと言うと、対欧州でも7%減と出ていますので、マスコミが言うように、欧州(技術)が日本の穴埋めで増やすどころか、欧州との取引も減少していることが分ります。
相手国によって違いますので、個別に取り上げてもキリがないですが、中国の世界全体との貿易総額が上記のとおり8%減(本当はもっと減っているかも?正確性はいつも書くとおり分りません・・)の結果です。
国によって自給率が違いますが、経年変化が傾向を表すことは否めませんので、貿易総額の前年度比増減はその国の経済活動の活発度の辺かそのままを表すものと言えるでしょう。
大分前の数字は忘れましたが、中国ではここ何年も貿易総額の前年比大幅減が続いていると思いますが、(資源輸入大幅減がブラジル等の資源国経済の変調を来していることは、顕著なことです)経済活動率がトータルで8%減っていても、成長率6・7%前後の主張はそのままですし、政府が決めたら成長率もそのとおりになると言う不文律(数学の公式のようなもの?)があるのでしょう。
上記5月31日の記事によれば、財政赤字も3%以内と言う不文律があるようです。
これを守って行くために、政府債務の過小発表をするか、GDPの水マシ発表に頼って来たのでしょうか。

既発債と借換債発行

ホットマネー規制から独裁制と情報規制が表裏の関係あることに話題がそれましたが、中国のデフォルトリスクに戻ります。
借入金の場合は額面保証債務ですから、満期が来れば、相場下落とは関係なく券額面を払うしかない・・1割でも不足すればデフォルト・企業で言えば倒産になります。
相場の重要性に付いて考えておきますと、ある企業が株や社債を一旦発行してしまえば、その後いくら相場が下がっても発行企業が手に入れた資金に変化はありません(下がっても満期が来るまで返す必要がない)ので、本来何の関係もありません。
購入者も満期まで持てば元利金保障ですから損がありませんが、満期まで持たずに転売したときに相場下落によって損するだけです。
損をしてでも早く売りたいのは満期になってから返済不能と言われると困ることや、この間の金利動向(金利が上がるともっと高い金利の債券に乗り換えたいこと)によります。
発行体も一旦発行して資金を得た後に、その後の社債や新株発行等による資金手当を必要としていなければ途中でいくら下がろうと何の関係もありません。
「釣った魚に餌をやらない」と言う中国式開き直りが通用します。
しかし多くの企業は絶え間ない投資金や借換債の発行を必要としているので、その後の新株発行や社債発行(借換債)は発行時の相場によるので、(相場が10%下がっていれば・・100万円額面でも90万円でしか売れない・・実質金利が券面表示プラス10%となってしまいます。)企業経営者はいつも自社株式相場に一喜一憂せざるを得ません。
これが10年に1回ならば気楽ですが、毎年10年債を発行していると年に1回期限が来ますし、仮に3〜5〜7〜10年満期国債・社債でも大量に発行している結果、一定期間ごとに絶え間なく償還期限が来るので、しょっ中次の発行に向けた準備が必要で、一定期間ごとに資金手当が必要です。
資金需要その他をならすためとリスク分散のために、企業でも国債でも(10年に1回にまとめないで)分散発行しています。
ギリシャ危機報道では、毎月のように次の◯◯日に来る期限をどうやってクリアーするか・・次の崖が話題になっているのはこの結果です。
社債、国債等の多くは、元金満額をこの発行期間中に儲けて返せる企業はなく、借換債の発行で手当てしています。
この仕組みは以前書きましたが、トヨタ等が工場進出資金を社債で手当てした場合、土地購入から工場建家建築〜機械類の設置などして動き出すのに2〜3年かかりますので、ある程度採算が取れるようになるのに数年かかり、更に利益が年1割前後出るようになってからでも全額=10割まで積み立てるには気が遠くなるほどの期間がかかります。
上記のとおり投資資金用の場合、3〜5〜7年満期で、投資資金全額を回収出来る訳がないことを見ても借換債の重要性が分ります。
ほぼ100%の社債や国債の満期償還資金手当が、借換債の売却金収入に頼っていることから、公開企業や国債発行体はその時期に向けた相場に神経質にならざるを得ない状況です。
新規借換債の発行価格が発行当時、半値〜3分の1に下がっているときには、同額でしか引き受け手がいないことになりますので、返済予定額面の2倍(表面金利プラス100%の金利)〜3倍(同300%金利)額面の社債・国債を発行しないと返済資金が足りなくなります。
この借換債の満期が来れば大変なことになりますが・・ここまで暴落すれば投資家は倒産リスクの方を重要視するので、社債の引き受け手が出ない・借換債発行不能でデフォルトになります。
中国が「一旦日本企業が進出してしまえばどうしようと勝手だとばかりに中国進出企業を痛めつければ、次の進出企業がこれを参考にする」と6月1〜3日に書きましたが、債券や株式相場の場合相場にモロに出る仕組みです。
支配下に入れば家畜同然・・やりたい放題・専制的に振る舞いたい中国政府が、相場感受性の高いホットマネー流入・・規制がなければ簡単に逃げられるのを嫌う理由です。
ホットマネーのように簡単に逃げられる資金の場合、・・資金流出が始まると勢いが付いて簡単には止まらなくなります。
ホットマネー規制は、それに耐える体力がないことと、高成長・・投資魅力を煽って資金流入させている手前、相場下落基調に入ってもそれを大っぴらに知られたくない・・実態と外見が合っていないからです。

独裁体制と情報規制3

預金金利が強制的に安く設定されていたことから中国のインフレ(成長)・物価上昇率等からして、預金の実質マイナス金利状態が続いていました。
これでは普通の人(まして中国人は利にさとい特性があります)が高利回りのシャドーバンキングへの投資?預金?に走ってしまったのは仕方のないことです。
規制された低金利では銀行預金が集まらないので、低金利で集まった?特定資金を国有企業中心に貸し出すことから、一般民間企業は殆ど銀行を利用出来ない・シャドーバンキングやヤミ金融に頼るしかないと言われていました。
シャドー・・まさに影のヤミ?高利回り保障の銀行?が発達してしまった結果、今やこの処理が大変なことになっています。
以前書いたことがありますが、中国民間企業は高金利借入金に頼っているので、一定の成長・・毎年前年比何割増の売り上げがないと高利を返せなくなる仕組みです。
これが、7%以上の成長が至上命題になっていると言われていた金利的基礎でした。
リーマンショック以降実質(公表統計が信用出来ないことを書いてきました)マイナス成長に陥って来ると、高金利を払えない・・ひいてはシャドーバンキング自体の経営が成り立たなくなります。
世上不動産バブル崩壊→シャドーバンキング倒産と言う図式で語られてますが、それは引き金になるでしょうが、その前に一般企業へ高利で貸していた資金が焦げ付くこと・・不良債権率の増大で体力消耗が限界に来ていると言うことです。
4兆元投資では収まらずに次々と大型国内投資連続で先送りして来た延命策でも、どうにもならなくなって来て、最近では統計誤摩化しも限界・需要の強制創造・過大投資継続による需要不足の先送りも限界になってきました。
超低利でうまいことしている国有企業や共産党幹部にコネのある企業グループと恩恵のないグループの二局化があっても、高成長期にはみんなが儲かっていたので、気にならなかったでしょうが、マイナス成長になって、バタバタ倒産・夜逃げが増えて来ると、2極化を是正して、市場金利・市場競争一本(公平)化していかないと国内不満が収まりません。
裸官等の巨額収賄が政府公認で大騒ぎになって行ったのも、同じく不公平感のガス抜き・是正圧力に苦しむ構図と見れば理解出来ます。
現在の収賄官僚の大規模摘発は粛正策・権力闘争であると同時に国内不満のガス抜き策でもあることは、周知のとおりです。
本音は、政敵粛清目的ではあっても、習近平周辺も大っぴらに賄賂収受が出来難くなりますから、不正・不透明収入分野は、粛清の嵐が終わった後も、大きく是正されて行くでしょう。
金融システムを正常化・・資金繰りを(コネの有無にかかわらせず)公平化するには基になる銀行預金金利を正常化するしかありません。
これに向けた第一歩として昨日紹介したウオールストリート記事のように昨年から徐々に金利の裁量幅を引き上げて馴らし運転をした上で、その内自由化するつもりでしょう。
(為替取引の変動幅を広げて来たのもこの流れです)
預金金利幅を需要実勢に応じて引き上げて行くと、銀行の仕入れ価格の上昇になるので、裁量の幅を引き上げられても銀行はすぐにはこれに応じられません。
預金金利が実勢近くなって来る→これに比例した融資金利引き上げとならざるを得ません。
国有企業・幹部コネのある企業だからといって、預金金利以下の低金利融資が出来ず、民間との競争条件が金利面で平等になって行き、この辺での経済民主化に資すること・・再編成に発展します。
超低金利貸し付け受けられるかどうかが死活的重要性があるとコネで借りられるかどうかは大きな意味がありました。
預金金利が市場実勢で決まる→貸し付け金利も預金金利の上乗せで貸すしかない・・市場実勢で決まる社会になれば、コネに頼って借りても、コネなしの借入企業も同じ金利であれば、大したありがたみはありません。
これが怖くて(幹部の影響力がなくなるので)国有企業や共産党大幹部が、金利自由化に反対する仕組みです。
日本でも、族議員が業界援助・・補助金削減に反対する・・農林系議員の例で分るように役に立たないと族議員支持のありがたみが失われます。
独裁政権=政権交代が予定されていない政体では、取り巻きの幹部に自然とコネ期待の特権が集中しますが、この特権維持に必須の装置があらゆる分野での規制による不公平チャンス制度です。
何らかの規制があると不透明なサジ加減が起こり、政権幹部周辺とのコネの恩恵が大きくなる関係・・維持には大きな効力があります。
自由化があちこちで進むと幹部の特権が次第に蝕まれて行く関係・・民主化が進みます。
社会の民主化は「民主化が必要」とか賄賂社会がいけないと言う正論だけで公正な社会に進むものではなく、地道な実態関係の変化があってこそ進むものです。
いろんな分野で外資への自由化があるとその取引に従事する人が実際の動き・・需給関係が肌で分りますが、自由がないと、たとえば、金利の動きが実際の資金需給を表さないので、統計を見ないと分らなくなります。
他方で民間企業がアングラ的シャドーバンキングに頼っていると本来の金利実勢が分り難くなります。
一方でいろんな公式統計は政府が操作し放題の傾向になるのがソ連や解放前の中国であったし、現在中国も同様・・独裁国家の特徴ですが、一部国外企業に解放している分、ウッチャーがその気になれば個別観察可能になっている程度です。
ホットマネー規制だけではなくいろんな分野での自由化・資本自由化、金利自由化、為替取引の自由化等々・・が進んでいないと、ウオッチャーの個別観察情報だけであると、部分からの判断になってしまうので、中国の本当の経済実態が大づかみで分りません。
それが中国の狙いでもあるでしょうが、ホットマネーを解禁すると全体の傾向を分り易く表し易いので中国は怖いのではないでしょうか?
明治時代までの漢方医の診断では、帝王の身体・玉体に直接触れるのは恐れ多いので直接脈が取れないので、糸脈による診断方法しかなかったのと同様で、タクシーで通りかかった工場敷地に輸入鉄鉱石が利用されずに積み上がっているなどの、偶然的現象把握から推測するしかないので、却っていろんな憶測がはびこります。
私のコラムでの中国経済の危険性・・ひいては政治暴発の危険性に関する懸念も、憶測の一種・・部分現象から全体を推測するものでしかなく根拠が薄いことも確かです。
正確な情報・統計がない結果、流言蜚語がはびこって(今風に言えば、百家争鳴で論壇を賑わして良いことですが・・)社会が混乱する原因になります。

独裁体制と情報規制2

中国は1980年ころから「竹のカーテン」と言われる閉鎖社会から解放に転じたとは言え、一党独裁政権時のママですから、独裁制維持のためには情報統制するしかありません。
経済統計・環境統計・事故による被害発表等々全ての分野で意図的にデタラメ発表していて、国民を含め幹部以外には結果的に秘密主義(賄賂やコネによる優遇措置や特権を知られたくないのが独裁制の本質)を維持しています。
(本当にデータがデタラメなのか外部発表用との二重〜3重帳簿式なのかまでは分りません・・ソ連の場合、ゴルバチョフによれば権力者も実態が不明だったと言われていますが・・。)
秘密を保つには味方から先ず欺く必要があると言いますので、積極的にデタラメ情報にしているのでしょう・・そうすればどんな腕の良いスパイが潜入しても、本当の統計を探せません。
統計だけ誤摩化せても現場に外資が入って来ると外資も経済動向を読まないと生産能力の増減や販売計画を立てられないので自然と経済状況に詳しくなり、外資駐在員等を通じて外部に漏れて行くのは防げません。
イオン等物販系が大量に進出するとイオンその他スーパーなどの売上動向・中国の消費動向などが日本に(理論上は)伝わります。
ただ、マスコミさえ抑えておけば、関係者だけの口コミに終わり、(日本の技術者等は口が重いので、家に帰っても聞かれないと中国の状況を自分からは言いません)イオンが1社だけ負けているのか全体の消費減退動向かまでは分りませんので、大規模な情報伝達は防げます。
文化大革命時にも細切れ的情報があってあったのですが、マスコミ報道の基本が賞讃一色だと日本人の大方がその宣伝どおりに受け取っていたのではないでしょうか?
今朝の日経新聞朝刊には大量出店していたイオンが北京で次々と閉店している状況が出ていましたが、マスコミが報道しないと無関係者はこう言う実態を知る機会がありません。
イオンも失敗していることを自分から宣伝しません。
ホットマネーを自由化すると相場の乱高下を招く傾向があって、世界の耳目を集めてしまうのでこれを規制せざるを得ない・・大規模な情報拡散を恐れていることになります。
中国が外資進出を求める以上は、そこから一定の情報が漏れるのは仕方がないとしてもそれは多寡が知れている・・日本(に限らず世界の?)マスコミさえ抑えて大規模な情報化拡散さえ防げれば良いと言う基本方針を開放政策決定時に決めたのでしょう。
中国が世界のマスコミ支配・・浸透に熱心な理由でしょう。
強いライオンやトラはしょっ中びくびくしていないことを見ても分るように、ハリネズミのようにびくびく警戒心満杯の動物は弱いからです。
中国は、何もかも隠したい心理・自由な行動を規制したがる傾向が強烈ですが、預金金利でさえまだ自由化出来ないほど経済が弱体で、1カ月ほど前に預金金利の設定可能幅を少し広げた程度です。
以下はウオールストリートジャーナルの日本語版の記事です。
WSJ日本版 LINE公式アカウントローンチ
2015 年 6 月 4 日 12:36 JST
 【北京】中国人民銀行(中央銀行)の盛松成・調査統計局長は、銀行預金金利の上限規制撤廃に近づいていることを明らかにした。第一財経日報が4日付で報じた。国内金利の完全自由化に近づくことになる。
 報道によると、盛局長は「預金金利の上限撤廃の時期はそれほど遠くないとみている」と述べた。
同局長は最近のフォーラムで「中国の金利自由化に向けた次の段階は、預金金利の上限を適切な時期に撤廃することになろう」と話した。
人民銀行は昨年11月以降、政策金利である銀行貸し出しおよび銀行預金の基準金利を3回引き下げる一方、銀行預金金利の上限を基準金利の1.1倍から1.5倍へ引き上げた。

6月4日付き発言で大ニュースのようですが、近いうちに預金金利を自由化することになるだろうと言う程度です。
解放後既に30年以上も経過していると言うのに預金金利でさえ自由に出来ない・・この程度の弱い経済でデタラメ統計を前提に世界の強国だと威張っているのですから、お粗末な実態・・矛盾している部分をマスコミは一切報道しないで新しいビルがドンドン建つ目立つことだけ報道して来ました。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC