既発債と借換債発行

ホットマネー規制から独裁制と情報規制が表裏の関係あることに話題がそれましたが、中国のデフォルトリスクに戻ります。
借入金の場合は額面保証債務ですから、満期が来れば、相場下落とは関係なく券額面を払うしかない・・1割でも不足すればデフォルト・企業で言えば倒産になります。
相場の重要性に付いて考えておきますと、ある企業が株や社債を一旦発行してしまえば、その後いくら相場が下がっても発行企業が手に入れた資金に変化はありません(下がっても満期が来るまで返す必要がない)ので、本来何の関係もありません。
購入者も満期まで持てば元利金保障ですから損がありませんが、満期まで持たずに転売したときに相場下落によって損するだけです。
損をしてでも早く売りたいのは満期になってから返済不能と言われると困ることや、この間の金利動向(金利が上がるともっと高い金利の債券に乗り換えたいこと)によります。
発行体も一旦発行して資金を得た後に、その後の社債や新株発行等による資金手当を必要としていなければ途中でいくら下がろうと何の関係もありません。
「釣った魚に餌をやらない」と言う中国式開き直りが通用します。
しかし多くの企業は絶え間ない投資金や借換債の発行を必要としているので、その後の新株発行や社債発行(借換債)は発行時の相場によるので、(相場が10%下がっていれば・・100万円額面でも90万円でしか売れない・・実質金利が券面表示プラス10%となってしまいます。)企業経営者はいつも自社株式相場に一喜一憂せざるを得ません。
これが10年に1回ならば気楽ですが、毎年10年債を発行していると年に1回期限が来ますし、仮に3〜5〜7〜10年満期国債・社債でも大量に発行している結果、一定期間ごとに絶え間なく償還期限が来るので、しょっ中次の発行に向けた準備が必要で、一定期間ごとに資金手当が必要です。
資金需要その他をならすためとリスク分散のために、企業でも国債でも(10年に1回にまとめないで)分散発行しています。
ギリシャ危機報道では、毎月のように次の◯◯日に来る期限をどうやってクリアーするか・・次の崖が話題になっているのはこの結果です。
社債、国債等の多くは、元金満額をこの発行期間中に儲けて返せる企業はなく、借換債の発行で手当てしています。
この仕組みは以前書きましたが、トヨタ等が工場進出資金を社債で手当てした場合、土地購入から工場建家建築〜機械類の設置などして動き出すのに2〜3年かかりますので、ある程度採算が取れるようになるのに数年かかり、更に利益が年1割前後出るようになってからでも全額=10割まで積み立てるには気が遠くなるほどの期間がかかります。
上記のとおり投資資金用の場合、3〜5〜7年満期で、投資資金全額を回収出来る訳がないことを見ても借換債の重要性が分ります。
ほぼ100%の社債や国債の満期償還資金手当が、借換債の売却金収入に頼っていることから、公開企業や国債発行体はその時期に向けた相場に神経質にならざるを得ない状況です。
新規借換債の発行価格が発行当時、半値〜3分の1に下がっているときには、同額でしか引き受け手がいないことになりますので、返済予定額面の2倍(表面金利プラス100%の金利)〜3倍(同300%金利)額面の社債・国債を発行しないと返済資金が足りなくなります。
この借換債の満期が来れば大変なことになりますが・・ここまで暴落すれば投資家は倒産リスクの方を重要視するので、社債の引き受け手が出ない・借換債発行不能でデフォルトになります。
中国が「一旦日本企業が進出してしまえばどうしようと勝手だとばかりに中国進出企業を痛めつければ、次の進出企業がこれを参考にする」と6月1〜3日に書きましたが、債券や株式相場の場合相場にモロに出る仕組みです。
支配下に入れば家畜同然・・やりたい放題・専制的に振る舞いたい中国政府が、相場感受性の高いホットマネー流入・・規制がなければ簡単に逃げられるのを嫌う理由です。
ホットマネーのように簡単に逃げられる資金の場合、・・資金流出が始まると勢いが付いて簡単には止まらなくなります。
ホットマネー規制は、それに耐える体力がないことと、高成長・・投資魅力を煽って資金流入させている手前、相場下落基調に入ってもそれを大っぴらに知られたくない・・実態と外見が合っていないからです。

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