留学目的2(日本の場合)

鑑真和上が日本へ布教のために難破リスクにめげずに遂に日本に渡った不屈の精神が有名ですが、その前提として彼が命がけで日本へ渡航しようとする決意をさせるに足る日本人がいたことを忘れてはなりません。
招請の任に当たったのは栄叡と普照と言う人物ですが、彼らを主人公とした物語(多分存在しないでしょう)を知らないので具体的メージが沸きませんが、彼らの不撓不屈の精神・・鑑真和上を説得して日本へ行く決意させるに足る傑物・魅力のある人物であったことが推定されます。
彼らは自己利益実現のために難破による命がけリスクを冒しながら渡航したのではなく、優れた人材を祖国に招請して祖国?のレベルを引き上げたいという一心で海外渡航して人生の大半を費やしたのです。
(当時今で言うところの民族国家意識はなかったでしょうし、祖国という概念もなかったでしょうが、このコラムで何回も書いていますが、白村江の敗戦後日本だけが、西欧に約1500年も先駆けて民族的意識が誕生していた結果でしょう。
世界中で万里の波涛をわたり、愛郷心に基づいて留学して先進知識を自国に持ち帰ろうと努力した民族は世界中殆どいなかった筈です。
(危険性に関しては、空海の渡航時でいえば、4隻の内2隻が難破しています(・・空海・最澄の乗った船が難破して死亡していれば真言宗の成立も天台宗もなかった可能性があります・・遣唐使船の難破率=死亡率がとても高かったことが知られています)
ただし、玄奘三蔵法師の天竺への留学が知られていますが、国家派遣ではありません。
こう言う制度(国をあげて派遣する制度)を創設すること自体、派遣者への信頼・・得た知識を持ち帰らず海外で安逸に暮らすなどの事態を全く想定しない信頼関係が確立していたことが窺えます。
このように書いていると、数年前だったかノーベル賞受賞者の一人がアメリカ在住・アメリカ国籍者と聞いてがっかりした人が多いのはこうした古代からの長い歴史・・暗黙の了解に反するからです。
この歴史・信頼感が現在の企業派遣留学制度にも繋がっているのでしょう。
もっと遡ればこの信頼がなければ、企業が莫大な費用を掛けて人材育成する制度自体も成り立ちません。
このように考えると、親が子供ためにお金を出して私費留学させるやり方・・語学留学や海外での就職や活動を有利にするための留学は、長い日本の歴史から見ると亜流・イレギュラーであったことが分ります。
アメリカなどでは資格制度が発達し、資格は個人が大学や専門学校等に行って取得するものですから、親の財力次第で次世代の生活水準が決まって行きます。
自己責任と言えば聞こえが良いですが、集団への帰属意識の薄さであり、弱い者はどこまでも弱くなる(・次の世代も・・)社会です。
公的援助制度は革命や反乱を起こすか、民主国家では野党が要求してやっと成立する国で、日本のように組織内で解決して行く仕組みになっていません。
日本の場合、素質がありそうであれば就職してから素質にあわせて教育してくれるので、アメリカほど地位の世襲性がありません。
空海の話題が出たついでに彼を例にすれば、最澄は当初からエリートとして遣唐使に入っていましたが、空海はその直前は何の身分もないいわゆる私度僧でしたが急遽抜擢されたものです。
資格制度と言えば聞こえが良いですが、企業に入る前に既に一定の仕事ができるようになった人材だけ雇用する制度ですから、自己投資できる階層が有利な世代繰り返しになります。
資格制度が発達した社会では、労働者も資格で動けばどこへ行っても仕事ができるので、転職に抵抗がありません。
日本では企業が資格を取らせてくれるので、資格を取ったからと言って恩に感じて転職しませんが、世界中と?真逆であるのは、相互信頼・・一体感社会の日本と信頼関係のない社会との違いです。
労働組合制度もアメリカでは企業別組合ではなく業種(資格)別組合が原則であり、ひいては人材の流動性が高いのは、こうした歴史意識・経験の違いです。

留学目的と外資流入減1

グローバル化以降の方が、それ以前よりも(企業派遣で)海外体験する若者が多くなっている筈ですから、これらを含めて考える必要があります。
高齢化の進む日本では、各世代ごとに三割増程度づつ成熟にかける時間を間伸びさせていますから、今の高卒年齢の成熟度は私たち世代の中卒程度のイメージです。
高卒段階の20歳前後ではまだ少年の域にとどまり若者の域に達しておらず、彼らの留学率低下をあげつらっても意味がありません。
今では3〜40歳くらいまでを日本の将来を背負って行くベキ若者と措定して彼らの海外体験の増減が日本の将来どのように影響するかを論じるべきです。
中国の場合、May 3, 2014「日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)」で紹介したように、大卒就職率の低下によって、国内就職活動に留学経験が有利に働かなくなって来た結果、留学熱が下火になりつつあるようです。
国内不景気と留学数増減が連動する理由は、日本と違って中国の経済発展は外資導入によるところが大ですので、就職条件の良いところ→概ね外資系企業に就職しようとすると留学経験が大きなウエートになっていることによります。
日系企業で言えば、現地人採用するにしても日本留学経験がある学生を優先的に採用したくなる心理・・これは欧米系企業も同じでしょうから、これを中国の留学者は利用しています。
日本企業がドンドン進出して規模拡大しているときは就職できるので、日本企業に人気が集まり、中国国内での日本語学習者が増えるし・・と言う関係で至極分りよい動きをする国民性です。
日本の場合、外資系に就職するのは二〜三流の人材と言う意識の国柄でしたので、欧米が憧れの的であった戦後直後でさえも、あるいは明治の開国時まで遡っても外資系に就職したくて英語を習ったり留学する人は誰もいなかったと言っても良いでしょう。
(そんな統計はないでしょうが実感を書いています)
幕末のカラユキさんや唐人お吉が今でも記憶に新しい・・繰り返し演じられるように、日本人にとって外国人に仕えるなどということは遊女でさえも、押し付けあい・・誰も希望しなかったことが分ります。
古代の遣唐使以来現在までの欧米留学熱は留学して先進地域の国民として仲間入りしたいとか、外資に就職するためではなく、先進知識を獲得して国内に持ち帰りこれを国内に普及させて日本国をより発展させたいという熱意がその基礎にあったことが間違いありません。
幕末長州出身の村田蔵六・大村益次郎は幕府の昌平黌教授職を棄てて、長州の寒村の医師になって戻って来ていますし、新井白石時代の雨森芳洲なども地元・対馬にいたままでした。
各地を旅行すれば分りますが、殆どの地域で郷土をレベルアップするために郷土で頑張った偉人の顕彰碑や展示品等を見ることが出来ます。
明治以降列島一体化が進んでからは、能力のある人が中央に出っぱなしで地元に戻らなくなったことが地方の疲弊に繋がるようになったのです。
最近でもフランスやイタリアの料理等いろんな分野でトップクラスになると、そこでの名声に安住せずに日本に帰って来て、国内レベル向上に努力するのが普通です。
古代遣唐使時代を振り返っても、そこで相応のトップレベルに上り詰めても格段に社会格差のある日本へ命がけでみんな帰って来ています。
折角唐で一定の尊敬を受けるようになっていても、(空海は唐でトップの阿闍梨位だったか?の灌頂を受けています)その地位をかなぐり捨てて格段に社会格差のある日本へ命がけでみんな帰って来ています。
阿倍仲麻呂は帰国を試みますが、難破して遂に帰国を諦めたことで有名ですが、日本人は古代から愛郷精神が強く自分の栄達を目的とするための留学ではありません。
(語学留学・・遣唐使が漢語を学んで来ても国内で良い就職が来た訳ではありません)
阿倍仲麻呂の故事は「天の原フリサケミレバ春日なる三笠の山にイデシ月かも!」と詠んでいるので、私のような庶民レベルにまで名を知られている訳ですが、この前提として、当時の唐・長安では満月になれば、今と違って公害もなく月が煌煌と照らしていたのでしょう。
いま左遷されたサラリーマンが望郷の念にかられて、阿倍仲麻呂の真似をして北京で月を見ようとしてもPM2・5の結果、おぼろにも見えないのではないでしょうか?
やはり時代にあわせて、別の風物を詠むしかないでしょう。

海外留学熱鎮静論6(社会人留学)

ところで、大学を出ただけでは(今の若者は未熟過ぎて)実社会では役に立たないので、企業は入社後の実務兼教育(ジョブトレーニング)に力を入れています。
大学の教育力が下がったという視点で議論されていますが、長寿化による成熟段階の間延びによって世上言われているように名目年齢に7割がけぐらいしか成熟していない実態を前提に資すれば、同年齢でも昔の基準の学力・思索力を期待するのは無理です。
大学は言わば中学生か高校生レベルの未成熟な学生相手に高尚なことを教えようとしているのですから、空回りにならざるを得ませんし、企業に入ったころから昔の大学生レベルの思考力になるのですから、企業はそのつもりで社員教育しています。
今でも一定水準のエリートは、従来どおり大学院レベルあるいは一定に研究者レベルに到達してから交換留学などを行なっている外に、企業派遣その他の理由で有名私立大学等に一定数留学し続けています。
我々弁護士の分野で言えば、大手法律事務所に就職して一定年限実務経験を経てから、アメリカなど留学してアメリカ(ニューヨーク州など州別資格)の弁護士資格を取得するのが普通ですし、いろんな分野の企業派遣留学者も一定の実務修練を経てから行なっていると思われます。
就職後30代前後の若いうちに現地事務所に派遣して現地社会の実態を体感させる試みを留学とは言わないのでしょうが、こうした数は、グローバル化に比例してマスコミの宣伝とは逆に増え続けている筈です。
話題が変わりますが、グローバル化対応とは単なる国内企業が国内に留まったままでの輸出企業に留まらず、現地経企業進出するということですが、現地進出とは日本企業の方が優れていることが前提です。
国外進出は強い方から弱い方へするものです。
現地進出して成功するには、日本企業のやり方を現地で指導定着させる必要があります。
指導者としては、一定の修練を経た中堅とその直前ころの若者の現地派遣が必要ですが、未成熟な20代前半の若者では役に立ちません。
先進国への旧来型留学形式の場合でも、基礎学力もない子供(夏目漱石の描く「三四郎」のような成熟した高校生は今ではいません)が留学・・学部留学しても、まだ一人前に成熟していないので、進路すらも定まっていないし、大したことになりません。
私の世界・・弁護士で言えば一定の水準・・弁護士資格取得直後ですらなく、一定期間国内弁護士実務を経験した後のアメリカや欧州諸国へ留学してアメリカ等の弁護士資格を取得させる方が・効率的・合理的です。
(まして司法試験すら受かっていない基礎レベルで学部留学しても何を学べるか?と言うことですし、高卒段階で留学しても海のものとも山のものとも分らないでしょう。)
医師で言えば、医学部に入ってもその時点では進路が定まっていないし、数十年前の例で言えば、心臓手術の先端技術を学ぶ留学経験が有名でした。
この例で言えば、医師資格を取らない高校卒でアメリカの医学部に入るよりは、日本で医師資格を取り多様な医学分野の中で心臓外科に進んだ医師の中で、一定の手術修練を経て適性があると分ってから、更に最先端技術修得するために先端手術をしている海外病院等へ留学をした方が合理的です。
今では、内視鏡手術が主流ですが、これは日本の方が器具その他で進んでいると思われますので、留学するどころか日本の医師が教える立場に逆転しています。
これを学びに来る外国人医師は、高卒学生→学部留学ではないので日本への留学者数にはカウントされていないのでしょう。
産業技術研究等になると、海外へ留学するどころか新日鉄やトヨタや東レの例を出すまでもなく、日本からの各分野での高度技術流出リスク管理・・秘密保護法制定の方に関心が移っています。
今朝の日経新聞朝刊には中国によるサイバー攻撃被害がアメリカ企業で激増していて、我慢できなくなって来たので、国防白書に明記するほどになって来たとのことです。
アメリカほど明白に発表しないものの、我が国も企業秘密流出被害はかなり深刻になっている筈ですから、技術防衛力強化の一環としての「国防特定」だけではない「一般」秘密保護法制の充実・強化が急務になっています。
話題を戻しますと各種研究分野でも高卒現役の学部生の留学では、海のものとも山のものともまだ分らない・・先が遠過ぎますので、今では一定の研究者レベルに達してからの留学の方が合理的ですし、これが主流になっている筈です。
スタップ細胞で世間を騒がせた小保方氏も大卒後の留学経歴です。
近年では社会人・・一定レベルに達した後の留学・社員の現地派遣(必然的に年齢も上がりますが・・今は若者の成熟が遅れている面もあってちょうど良いのではないでしょうか?)に比重が移っています。
マスコミや文化人は長寿化による成熟の遅れを見ないで(高卒現役)若者・・学部留学生数(私費が1割減ると全体では大幅減です・・と公費の分類すらしないで)総量減少を見て、若者が内向き志向になっているが、これで良いのかと大騒ぎしているように見えます。

海外留学熱鎮静論5

4〜5年前に文化政策関係のある委員会で一緒になっていた千葉大の若手学者に聞いてみると「留学したいとは思いません」とはっきり言っていました。
マスコミや識者?が心配するような「若者が海外雄飛する意欲・元気をなくしている」ことと留学熱の低下とは、あまり関係がないと以前から私は思っているので、上記若手学者に聞いてみたのです。
(彼は、不登校やニートあるいは引きこもりなど・・社会から阻害されている若者に対する政策学みたいな分野が専門らしく、阻害されている若者を公共政策でどうやって文化活動に参加させるかの視点でいつも意見を述べる人でした)
社会病理に関しては我が国は最先端社会になりつつあって、欧米ではまだそこまで進んでいないのかな?留学しても仕方のない時代が来ている様子です。
社会現象としては追いつき追い越してしまった分野が多くなっている外に、科学技術分野でも、逆に先端技術を盗まれる心配の方が大きくなったのが、各種研究者・技術者の世界です。
国防に関する国家機密に限りず、産業スパイを含めた秘密保護法制の充実が求められるようになっています。
情報が誰にでも入手できるようになって、欧米の生活実像が大したことがないどころか、庶民レベルでは日本以下の様子ではないか?と知られるようになったことが、私費留学する中底辺レベル(地方の誰も知らないような大学へ行く予定の)若者の留学意欲低下の大きな原因になっていると考えられます。
日本の田舎は有名観光地でなくともどこへ行っても、緑したたる感じで美しいですが、(震災前の飯館村の映像など・・)アメリカの田舎町の様子をグーグルで見ると夢も希望もなくすような寂れた町が大多数です・・。
アメリカの地方を見ていると、あちらでは自然が荒廃しているし、(自然を食い尽くして荒れ果てれば)ゴーストタウンにして逃げて行く無責任な意識を続けて来た点では、中国・漢人と同じ思想です。
日本人の場合、どんなに過酷な自然災害を受けても父祖の地をもう一度再生させたいと頑張るのが普通で、これが東北大震災に対する多くの人の心境です。
企業で言えば経営不振になれば、オーナー経営者は家屋敷を担保に入れても親族を保証人にしても何とかして挽回したいと死にものぐるいで努力します。
上場企業の場合、多くの株主は、半年〜数年先の見通しが暗いというだけで直ぐに売り逃げしようとしますが、アメリカ等が自然破壊するだけ破壊してはゴーストタウンにして棄てて行く社会思想の金銭的表現です。
自然をむさぼり尽くして自然が荒廃すれば、自然を回復することを考えてみんなで智恵を出し合う努力もしない・・何もしないで荒れる任せている・・最後はゴーストタウンにして逃げる前提でその間だけその土地に住んでいるのですから、人心も荒廃している状態が目に見えるような状態です。
我が国の留学とは遣唐使の昔から、明治の開国〜戦後の留学に至るまで、日本で文献を読むだけでなく、留学先の社会に根付いている思想・生活の仕方そのものを体得することに大きな意味があります。
目を背けたくなるような風景・・そこに敢えて移住したい人がいるのかなと感じますし、移住したくなるような場所でないのにそこへ何を学ぶために?留学したい人がいるのかな?となります。
そう言うところに数年留学させてアメリカの何を学ぶべきだと言うのでしょうか?
観光としてグランドキャニオンを見ている分には、奇抜な印象で、感動というより驚きますが、その周辺の自然もこれに類する荒廃した・・火星のような状態が延々と続いていることが分ります。
サンフランシスコやロサンジェルス等の郊外を見ても日本の景色に比べれば荒廃した状態にしか見えません。
こんなところに3〜4年間も留学しても、若者にとっては島流しにあったようなもので全然夢がないでしょう。
そこで今では、サーフィン三昧を楽しめるハワイ留学(東海大ハワイ校など)が人気ですが、(数年前にそこでの留学生同士の傷害事件を扱ったことがあります)それ以外の中西部の乾燥地帯や山岳地帯の田舎に留学するのでは夢も希望もありません。
この種留学生数が減少の流れになるのは自然のイキオイでしょうし、日本の将来を心配するようなものではありません。

国際情報の一般化5(海外留学熱鎮静論4)

最先端法律や経済の勉強する人材も必要ですが、グローバル展開が要請されている現在では、量的に見れば彼らを必要とする数は知れてます。
空海や道元のような英才が千人も万人もいる訳がないし、いたとしても本質をつかんで来る人は少数で充分であって、そんな大量に留学させる必要がないのは誰でも分るでしょう。
戒律を根付かせるための鑑真和上招聘策としては、日本側の計画では鑑真和上を中心に約10人必要として計画していたことが知られています。
戒律を実践するには議論や佛教理念の本質の移入そのものではなく、実践で示す必要がありますから、一定の人数が必要だったのでしょう。
中国等の工場へ出向いての日本向けの縫製や食料品などを現地指導をしていたころには、一人が出張して行って講義すれば済むものではないので一定数が集団で出向いて実地指導する必要がありました。
現在の現地進出して日本式製造工程を仕込むには、一人だけ行って講義すれば良い訳ではありません。
戒律が根付いて一定の下地が出来た後・・・平安時代に入って空海や最澄のような英才が本質を学んで来てこれを講義すれば、受容出来る下地が出来ていたのです。
種子島(火縄銃)が伝わって、これは売れると思ったポルトガル人が次に大量に持って来たときには、日本では既に国産化に成功していて、売り損なったと言われています。
少量の鉄砲が伝われば直ぐにこれを国産化して更に改良できる基礎技術が既に日本にあったからこそ、直ぐに国産化できたのです。
幕末に洋式帆船を見れば、経済力のある各藩が洋式船を自前で製造始めていますし、伊豆韮山に限らず薩摩藩や紀伊徳川家などでもで製鉄所を始めたのも良く知られているところです。
明治になって、蒸気機関車その他織機等の機械類が入って来ると各分野で直ぐに国産化したばかりか豊田佐吉の自動織機のようにもっと進んだものを作ることさえ出来るのが我が国の基礎レベルです。
平安時代以降の我が国は、少数エリートの留学生が新たな理論を学んで来れば、(その後の栄西道元の禅であれ、朱子学であれ・・西洋式画法であれ、)直ぐにこれを国内展開できる素地があったので日本での普及が可能になったのです。
グローバル化以降の日本では、日本企業が現地進出(日本の方が進んでいる関係)用の法律や現地商慣習を修得すべく留学?したり、海外進出草創期に工場長や店長・中堅幹部として現地指導に当たる数多くの人材を必要としています。
企業派遣の技術指導者等は従来の留学の範疇・統計には入らないないように見えますが、実際にはこの需要の方が大きく人数的にも大量です。
企業側では進出先の法制度を研究して社員に教えるなどの必要がありますので、現在では先進事例を学ぶためだけの留学・海外勤務ではありません。
6月10日の日経新聞朝刊では、日立グループが中国現地研究開発体制を拡大すると大きく出ていました。
平成2〜3年ころ千葉にいた修習生が東京の大手事務所に就職していて、その後直ぐに中国へ留学しましたと20年ほど前に書いて来たことがあります。
最近では、車その他の機械類でも現地の好みに合わせた仕様にする必要性から、現地生産の加速・・研究所を建てたりしています。
先端技術を吸収するために先進国に研究所を設けるのではなく、後進国でこれから車社会や紙おむつ社会になるという社会で売り込んで行くために現地の生活習慣や好みに合わせるために現地研究所を設置する時代でです。
法律や経済・金融等の実学的分野では、グローバル化に比例して企業派遣等の留学者・留学生?が増えているはずですが、これについてはこの次に書いて行きます。
日本国内の社会現象を研究する基礎的分野では、企業進出とあまり関係がないので、先進事例がない後進社会に留学して学ぶ余地がありません。
たとえば、少子高齢化問題で言えば、アメリカに留学して研究してもあまり意味がないでしょう。
社会保険の赤字解消策についてアメリカに留学しても、アメリカではそもそもそのような制度自体完備していません。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC