中韓両国の高学歴化1

2014-6-14「留学目的と外資流入減1」から話題が留学目的にそれてしまいました。
「外資流入減少」に戻ります。
外資流入減と表現すると・・一見お金の投資・動きだけ減少のように見えるので、これが就職戦線にどう言う関係があるか疑問に思う方が多いでしょう。
中国の場合、外資流入=投資とは新規工場進出等に資金を投資するものであって、これを資本収支と言う資金移動の側面からエコノミストが表現したものに過ぎません。
中国の場合、短期資金流入を禁止している(ヤミでしか短期資金は入りません)ことをアジア危機の教訓としてMay 15, 2012「短期資金(投機?)と長期資金(企業進出)」等で紹介したことがあります。
中国では短期資金は規制されているので、原則ヤミでしか入りませんので、(これが貿易収支黒字の水増しになっていることを昨年書きました)中国の場合、公式発表の外資流入の減少とは、長期投資資金の流入減を意味しています。
長期投資資金とは、工場やデパート等進出のための設備投資資金などですから、外資の流入減とは規模拡大や新規投資(工場立地や新店舗展開)用の資金流入が減少していることを意味しています。
新規投資=工場新設・店舗新設等の拡大が減少すれば、当然そのための新規雇用創出が減りますので、・・新規就職先が急減していることになります。
特に留学生は外資系就職目的が大半ですから、外資流入減→外資系就職先減→外資系就職目的の留学熱低下という図式です。
中国の場合、農村からドンドン労働者が流入するので年率8%以上の雇用増加(=経済成長)がないと治安を保てないから、これが生命線であると長らく報道(ですから根拠が明らかではありません)されていました。
と言え、今は人口増大圧力が減少してむしろ人口オーナス期に入ったと言われていますが・・それでも一定の経済成長しないと大変だと言われるのは、何故でしょうか?
あるいは最早雇用政策上では成長の必要がなくなっても、別の経済要因でなお経済成長が必要な場合がある点については、この後で書いて行きます。
May 3, 2014「日中の制裁合戦4(バブル崩壊1)」で紹介したように、大卒就職率の低下が大問題になっていることは確かです。
農村からの流入が一段落して一般労働者の就職問題はある程度解決しているものの、大卒供給の方は年率8%どころかもっとすごい勢いで増えているので、受け皿がなくて大変なのです。
この辺は韓国の大卒就職事情が大変なのと傾向が同じです。
例えば農民工等底辺層の失業者1000万人減少して、学卒未就職者が500万人増えた場合、失業率としては減少したことになります。
苦しい農民が都会に出て働けなくとも従来どおりの苦しい生活していれば良いのですが、学卒未就職者の増加は政権維持にとっては大きなリスクになります。
中国で今でも天安門事件に神経質になっているのは、大卒知識人の不満を相手にしているからです。
韓国ではいつも反日を大きな声で訴えないと政権維持できないのも、大卒の就職率の低さ、失業率の高さにかなりの原因があるように思えます。
韓国では、懐手していてまるで働かないヤンパンでなければ人ではないような時代が歴史の殆どでしたので、大学進学の主目的はこのような階層にアップすることでした。
従ってエリート的就職先がないと、中小企業等現場系への就職は絶対に断ってしまうそうです。
断ると失業者にカウントしないので、大卒失業率は統計上出難くなっていることが知られています。
韓国女性売春婦が世界中に進出している原因は、中堅〜貧困層が次世代のレベルアップのために借金して大学を卒業させて見ると、就職先がなくて借金を返せないことに原因があるとも言われています。
こう言う社会では、現在の苦しみから離脱するための階層アップへの夢がついえてしまうので、却って現実社会への不満が鬱積して行く一方です。

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