国際情報の一般化5(海外留学熱鎮静論4)

最先端法律や経済の勉強する人材も必要ですが、グローバル展開が要請されている現在では、量的に見れば彼らを必要とする数は知れてます。
空海や道元のような英才が千人も万人もいる訳がないし、いたとしても本質をつかんで来る人は少数で充分であって、そんな大量に留学させる必要がないのは誰でも分るでしょう。
戒律を根付かせるための鑑真和上招聘策としては、日本側の計画では鑑真和上を中心に約10人必要として計画していたことが知られています。
戒律を実践するには議論や佛教理念の本質の移入そのものではなく、実践で示す必要がありますから、一定の人数が必要だったのでしょう。
中国等の工場へ出向いての日本向けの縫製や食料品などを現地指導をしていたころには、一人が出張して行って講義すれば済むものではないので一定数が集団で出向いて実地指導する必要がありました。
現在の現地進出して日本式製造工程を仕込むには、一人だけ行って講義すれば良い訳ではありません。
戒律が根付いて一定の下地が出来た後・・・平安時代に入って空海や最澄のような英才が本質を学んで来てこれを講義すれば、受容出来る下地が出来ていたのです。
種子島(火縄銃)が伝わって、これは売れると思ったポルトガル人が次に大量に持って来たときには、日本では既に国産化に成功していて、売り損なったと言われています。
少量の鉄砲が伝われば直ぐにこれを国産化して更に改良できる基礎技術が既に日本にあったからこそ、直ぐに国産化できたのです。
幕末に洋式帆船を見れば、経済力のある各藩が洋式船を自前で製造始めていますし、伊豆韮山に限らず薩摩藩や紀伊徳川家などでもで製鉄所を始めたのも良く知られているところです。
明治になって、蒸気機関車その他織機等の機械類が入って来ると各分野で直ぐに国産化したばかりか豊田佐吉の自動織機のようにもっと進んだものを作ることさえ出来るのが我が国の基礎レベルです。
平安時代以降の我が国は、少数エリートの留学生が新たな理論を学んで来れば、(その後の栄西道元の禅であれ、朱子学であれ・・西洋式画法であれ、)直ぐにこれを国内展開できる素地があったので日本での普及が可能になったのです。
グローバル化以降の日本では、日本企業が現地進出(日本の方が進んでいる関係)用の法律や現地商慣習を修得すべく留学?したり、海外進出草創期に工場長や店長・中堅幹部として現地指導に当たる数多くの人材を必要としています。
企業派遣の技術指導者等は従来の留学の範疇・統計には入らないないように見えますが、実際にはこの需要の方が大きく人数的にも大量です。
企業側では進出先の法制度を研究して社員に教えるなどの必要がありますので、現在では先進事例を学ぶためだけの留学・海外勤務ではありません。
6月10日の日経新聞朝刊では、日立グループが中国現地研究開発体制を拡大すると大きく出ていました。
平成2〜3年ころ千葉にいた修習生が東京の大手事務所に就職していて、その後直ぐに中国へ留学しましたと20年ほど前に書いて来たことがあります。
最近では、車その他の機械類でも現地の好みに合わせた仕様にする必要性から、現地生産の加速・・研究所を建てたりしています。
先端技術を吸収するために先進国に研究所を設けるのではなく、後進国でこれから車社会や紙おむつ社会になるという社会で売り込んで行くために現地の生活習慣や好みに合わせるために現地研究所を設置する時代でです。
法律や経済・金融等の実学的分野では、グローバル化に比例して企業派遣等の留学者・留学生?が増えているはずですが、これについてはこの次に書いて行きます。
日本国内の社会現象を研究する基礎的分野では、企業進出とあまり関係がないので、先進事例がない後進社会に留学して学ぶ余地がありません。
たとえば、少子高齢化問題で言えば、アメリカに留学して研究してもあまり意味がないでしょう。
社会保険の赤字解消策についてアメリカに留学しても、アメリカではそもそもそのような制度自体完備していません。

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