海外留学熱鎮静論5

4〜5年前に文化政策関係のある委員会で一緒になっていた千葉大の若手学者に聞いてみると「留学したいとは思いません」とはっきり言っていました。
マスコミや識者?が心配するような「若者が海外雄飛する意欲・元気をなくしている」ことと留学熱の低下とは、あまり関係がないと以前から私は思っているので、上記若手学者に聞いてみたのです。
(彼は、不登校やニートあるいは引きこもりなど・・社会から阻害されている若者に対する政策学みたいな分野が専門らしく、阻害されている若者を公共政策でどうやって文化活動に参加させるかの視点でいつも意見を述べる人でした)
社会病理に関しては我が国は最先端社会になりつつあって、欧米ではまだそこまで進んでいないのかな?留学しても仕方のない時代が来ている様子です。
社会現象としては追いつき追い越してしまった分野が多くなっている外に、科学技術分野でも、逆に先端技術を盗まれる心配の方が大きくなったのが、各種研究者・技術者の世界です。
国防に関する国家機密に限りず、産業スパイを含めた秘密保護法制の充実が求められるようになっています。
情報が誰にでも入手できるようになって、欧米の生活実像が大したことがないどころか、庶民レベルでは日本以下の様子ではないか?と知られるようになったことが、私費留学する中底辺レベル(地方の誰も知らないような大学へ行く予定の)若者の留学意欲低下の大きな原因になっていると考えられます。
日本の田舎は有名観光地でなくともどこへ行っても、緑したたる感じで美しいですが、(震災前の飯館村の映像など・・)アメリカの田舎町の様子をグーグルで見ると夢も希望もなくすような寂れた町が大多数です・・。
アメリカの地方を見ていると、あちらでは自然が荒廃しているし、(自然を食い尽くして荒れ果てれば)ゴーストタウンにして逃げて行く無責任な意識を続けて来た点では、中国・漢人と同じ思想です。
日本人の場合、どんなに過酷な自然災害を受けても父祖の地をもう一度再生させたいと頑張るのが普通で、これが東北大震災に対する多くの人の心境です。
企業で言えば経営不振になれば、オーナー経営者は家屋敷を担保に入れても親族を保証人にしても何とかして挽回したいと死にものぐるいで努力します。
上場企業の場合、多くの株主は、半年〜数年先の見通しが暗いというだけで直ぐに売り逃げしようとしますが、アメリカ等が自然破壊するだけ破壊してはゴーストタウンにして棄てて行く社会思想の金銭的表現です。
自然をむさぼり尽くして自然が荒廃すれば、自然を回復することを考えてみんなで智恵を出し合う努力もしない・・何もしないで荒れる任せている・・最後はゴーストタウンにして逃げる前提でその間だけその土地に住んでいるのですから、人心も荒廃している状態が目に見えるような状態です。
我が国の留学とは遣唐使の昔から、明治の開国〜戦後の留学に至るまで、日本で文献を読むだけでなく、留学先の社会に根付いている思想・生活の仕方そのものを体得することに大きな意味があります。
目を背けたくなるような風景・・そこに敢えて移住したい人がいるのかなと感じますし、移住したくなるような場所でないのにそこへ何を学ぶために?留学したい人がいるのかな?となります。
そう言うところに数年留学させてアメリカの何を学ぶべきだと言うのでしょうか?
観光としてグランドキャニオンを見ている分には、奇抜な印象で、感動というより驚きますが、その周辺の自然もこれに類する荒廃した・・火星のような状態が延々と続いていることが分ります。
サンフランシスコやロサンジェルス等の郊外を見ても日本の景色に比べれば荒廃した状態にしか見えません。
こんなところに3〜4年間も留学しても、若者にとっては島流しにあったようなもので全然夢がないでしょう。
そこで今では、サーフィン三昧を楽しめるハワイ留学(東海大ハワイ校など)が人気ですが、(数年前にそこでの留学生同士の傷害事件を扱ったことがあります)それ以外の中西部の乾燥地帯や山岳地帯の田舎に留学するのでは夢も希望もありません。
この種留学生数が減少の流れになるのは自然のイキオイでしょうし、日本の将来を心配するようなものではありません。

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