労働分配率低下論3と外国人労働力

省力化努力・工夫努力の成果を結果的に批判することになる労働分配率低下論のメデイア上でのフィーバーは、日本社会の停滞縮小を目指す悪意によるものではないとすれば、「外国人を入れれば(個々の人件費が低くともトータルの労働分配率が上がるし省力投資を阻止できるので?)労働分配率が上がるじゃないか?」という意見に誘導する立場でしょうか?
EU諸国は省エネ努力を怠り外国人移民受け入れにより、どんどん(低賃金)労働力を取り込んだので日本にくらべてロボットや省力化投資が遅れ(労働分配率は下がらなかったでしょうが)今になってそのツケに苦しんでいます。
アメリカも伝統的に移民受け入れ=新規労働力増加政策でしたが、ついに移民規制をトランプ政権が公言するしかなくなりました。
トランプ氏の発言が過激なのでメデイアが批判していますが、労働力を引き入れる事による生産増加政策は中国の人海戦術に見習っているだけで将来性ないのですから、選別受け入れをするというならば、トランプ氏の方が正しいでしょう。
この辺の意見は、EU低迷の原因としてだいぶ前に書きました。
日本は中国の低賃金攻勢に耐えてその間必死に省エネに取り組んできたので、対中人件費格差を維持したままでも(欧米がやってきた中国に負けないように安い労働力輸入に頼らずに)いろんなロボット産業が発達しこの種機械の輸出によって、巨大な国際収支黒字が続き今の豊かな生活があるのです。
「外国人を入れろ」という議論の支持者は、企業の省力化努力・投資を敵視し(日本の国際競争力低下を狙う国のために主張でもしているかのような印象を受ける人が多いですが・・・)人件費・労働分配率アップを狙う意見は外国人労働力受けれ勢力の応援でもあるでしょうか?
メデイアで「労働分配率が下がっている」→上げろというイメージ報道があると、それとなく給与が下がっているかのようなイメージが定着し、給与アップ要求のようなイメージなので大衆受けしますが、労働分配率アップ論の目指す結果は逆です。
外国人労働力移入論で安い労働力・・日本人並み給与支払いが要求されることによって、表向き安い人件費ではないようですが、結果的に不足分の人数を投入することによって人件費単価アップを抑制する主張になります。
繰り返しですが、労働分配率論アップ論は人件費単価引き上げ論でないことに注意する必要があります。
労働分配率論は、収益に対するトータル人件費率論ですから.設備投資が増えれば収益やコストに占める人件費率=労働分配率が下がります。
設備投資の中でも省力化投資をして人手を増やさずに少しくらい人件費単価を上げても、総コスト・収益構造に占める人件費率低下・労働分配率の低下が大きくなります。
労働分配率を上げるには、低賃金でも労働者の数を増やして省力化投資比率を減らせば労働分配率が上がることに気をつける必要があります。
近代産業革命以降のトレンドは設備投資を増やして人件費率〜労働分配率を下げていき、その結果一人当たり所得を上げる事による個々人の生活水準を引き上げるというものです。
中国のように人口だけ増やして総生産量を増やしても個人は貧しいままです。
その中国でさえチャイナプラスワンの動きに驚いて、産業効率アップの必要性に迫られて日本のロボット産業は引き合いが多く活況を呈している原因ですし、ここ数年の中国の対日擦り寄り再開の基礎構造です。
この点で12月15日のコラムで紹介した労働分配率に対する以下の考え方には疑問を持っています。
「労働分配率とは、「付加価値額」に占める「人件費」を知ることです。これによって、会社に占める適正な人件費を知ることができます。」
上記によると先験的に不動の適正分配率があるかのような解説ですが、省力化投資オートメ化進展にともない収益・コストにしめる人件費率・労働分配率がどんどん下がっていくべき変動値である点を誤解?しているように思いながら、(私の方が素人ですので私の誤解によるのか?)引用しておいたものです。
私の意見は、生産力やサービスをアップしても省力化投資で労働者を少ししか増やさなくとも済む社会にして、その代わり高度な機械操作のできる人材の人件費「単価」をあげる(結果的に労働分配率は下がります)のが合理的という意見です。
中国並みの低賃金でなくとも国際競争できるようにするべきです。
従来システムだと100人の作業量が120人分に増えても省力化投資によって100人で間に合わせる代わりに高度対応できる100人の人件費をアップする政策が必要です。
そのためには、高度な設備を活用できるための労働者の質引き上げ(コンビニ店員の例で書きましたが)マルチ人間化・教育投資が必須です。
選挙目前から選挙中に「労働分配率が低くなっている」とメデイアでフィーバーした挙句に選挙が終わるとメデイアで全く取り上げなくなってしまったのが不思議ですが、政治的にうがった見方をすれば、「好景気というが、国民の実感がない」という根拠のない常套文句裏付けのイメージ強調に目立つフレーズだったからこの種議論が、メデイアのテーマに浮上してきたのではないでしょうか?
選挙期間直前から選挙中だけ尤もらしく騒いでおいて、「景気がいいと言っても労働者に恩恵がない」のかというイメージだけ国民に刷り込めばいいという戦略だったように見えます。
労働分配率は労働単価ではなく総人件費の収益に対する比率のことであるから労働総人口と設備投資額に関係するので、すぐに反論を受けるのがわかっているが、反論が出る頃には選挙が終わっているのでメデイアが反論を取り上げないでそのままそんな議論がなかったことにしてしまう・・・そのうち選挙さえ終わればそんな議論があったことは忘れてしまうだろうという思惑・・一定勢力応援戦略だった可能性があります。
選挙直前から選挙中怪文書が出回ることが数十年前には流行りましたが、怪文書がデマだったとわかった頃には選挙が終わり、落ちた方は切歯扼腕して終わりという構図でした。
怪文書ほど露骨でないのでわかりにくい・巧妙ですが、政権支持率をやけに低くしてみたり(ニコ動の支持率調査だけが選挙結果にほぼピタリあっていたことをNovember 5, 2017, に書きました)一定方向への誘導が顕著でした・・いろんな方法で公的メデイアが選挙を一定方向へ誘導するための方法)を駆使して選挙運動をしていた疑いがあります。
私もこのコラムを書いていて「選挙の頃にそんな報道があったなあ?」という程度の記憶で(数ヶ月前の新聞であれば廃棄しているのでそこから掘り出す・.図書館にいって探すのは大変な労力ですが・・)念のために検索してやっと思い出した程度です。
15日に紹介したhttp://www.toushin-1.jp/articles/-/4126によると第1回が9月12日と書いていますから、まさに総選挙・・解散日程直前の頃にメデイアでフィーバーしていたことが分かります。
それが選挙が終わった今ではまるで出てない・・変なカラクリです。
ネットの発達でマスメデイアが取り上げなくともネットでの反論や解説発表時点での記録が残るので、マスメデイアの言いっ放しの洗脳作戦の結果が残ります。
ちなみに選挙が終わって約2ヶ月経過の12月15日の日経朝刊9pの「21世紀の生産性を測る」というオピニオンには、いつの調査か書いていませんが、「中の上」と「中の中」意識が増えて「中の下」、「下」の意識が減っていることが主張されています。
町中を歩るくと若者の多くが好景気を謳歌している様子が見えますが、これが実態だったでしょう。
このように意識調査の報道は基礎データを誰もが簡単に見られないので、根拠不明の報道可能です。

労働分配率低下論2(省力化投資と人材レベル強化策)

企業は売れ行き不振対策として値下げ競争に突入すると、将来性がないので新製品工夫しか生き残りできないのと同様に人手不足だからと(省エネ努力しないで)単なる給与引き上げ競争に入るのでは先行きの展望がありません。
これは個別企業だけの問題ではなく、国単位の国際競争での生き残りの成否でも同じです。
人手不足対策として企業が省力化に躍起になっているのは合理的ですから、外国人労働者導入を極小にするために機械化が進む・人件費率が下がるのは当然です。
オートメ化どころかAI化が進むと人間の仕事がなくなるという意見もありますが、今のところ、日本社会は、失業の増大で困っている社会ではなく、人手不足で困っている社会です。
将来に備えるために人手不足の今こそ、このチャンスを生かして省力化投資→高度設備操作に対応・適応できる人材育成に力を入れるべきです。
身近なコンビニ店員で見ていても、商品配置場所案内等の従来型能力にとどまらず、ATM操作から劇場.航空券購入その他店員の対応能力の多様性・進化には驚くばかりです。
多様な処理能力が発揮される前提として、レジその他の処理が簡便化してかかりっきりにならなくて済む合理化・.これが失業になるのではなく、コンビニのマルチ化・サービス提供余裕を与えている・実態があります。
お陰で消費者はあんちょこに高度な利便性を享受できているのです。
省力化と人材レベルアップが一体化してこそ高度なサービス社会を維持できることが分かります。
AI化が進むと、知的レベルの高い人でも職を失うかのような意見がメデイアでは一般的で不安を煽っていますが誤導です。
最低作業とされていた現場系・土木工事現場でも(下水道やガス工事を通りがかりにのぞいてみると)パソコン画面を見ながらの工事が増えているし、コンビニ店員の例を書きましたがヨドバシカメラでも同じで高度な商品知識や、高度知的レベルがないと働けない時代がすでに来ているので人材の底上げ、高度化投資が社会にとって重要です。
この点では、国民の底上げ・従来型義務教育だけではまともに働けないのが常識ですから、高校授業料無償化などの政策は時宜にかなった方向性でしょう。
弁護士業務も従来型作業の多くの部分がAIにとって代わられるとしても、その代わりにさらにマルチ的な別の能力が要請される時代が来るはずです。
その代わり昨日書いたように高度作業に適応できる個々人の所得が上がっていくのが理想的です。
20代に名門大学を出て一流企業に大卒時に就職できたとか、ある資格を若い頃に得ているというだけで終生安閑とできる時代ではなく、働き方のレベルアップが日々要請される社会になるのは、技術革新のサイクルが早くなり日進月歩である以上・・我々の世界でも法令改廃がひっきりなしです・・仕方がないでしょう。
これからは、いろんな資格は運転免許証のように一定期間経過で再テストが必要な時代が来るべきかも知れません。
もちろん企業人も例えば10年ごとに再スクリーニングが必須の時代が来るべきです。
01/19/10終身雇用と固定化4(学歴主義3)」等の連載で定年延長ではなく、およそ10年程度に短縮すべきだと書いたことがあります。
人手不足で業容縮小するしかないほど困っている社会なのに、労働分配率にこだわり省力化投資を目の敵にする?マスメデイアのイメージ論調は、どのような社会を理想としているのでしょうか?
「人手不足対策の工夫するな!ただ困っていろ!」というのでは、日本社会が困ってしまいます。
いろんな企業で人手不足のために、業態縮小(閉店時間切り上げや配達時間限定•回数減など)を余儀なくされている企業の状態が日々報道されています。
たとえば以下の通りです。https://jp.reuters.com/article/japan-labor-shortage-idJPKBN19E0JA
2017年6月23日 / 15:44 / 6ヶ月前
焦点:広がる人手不足が企業活動圧迫、潜在成長率ゼロ試算も
東京 23日 ロイター] – 人手不足で生産やサービスを制限するケースが運輸業だけでなく、製造業も含めて広がりを見せてきた。このまま労働力不足が継続すれば、2030年には日本の潜在成長率はゼロ%ないしマイナスに落ち込むとの試算もある。

上記記事ではゼロ〜マイナス成長予測を書いています。
今の好景気循環は、国際競争に勝っていて競争力が高待っている状態で注文に追いつかない・.増産できない状態がそのまま続くと想定していますが、人不足→賃上げ競争による労働者奪い合いだけで終始していると、国全体で見れば増産対応ができません。
しかも、この方式に委ねると賃上げ→製造その他のコストが高くなりすぎて結果的に競争力低下・・注文が多くて納品待ちが続くのではなく、そのうち競合国に負けて注文がへっていく動的な面を軽視しています。
ゼロどころかマイナス成長になってしまうのが原則でしょう。
多分メデイアの論旨は、だhしめえtふぁら外国人労働者を早く大量に入れろということでしょうが、人件費競争をしている限り国民一人あたり所得が上がりません。
しかもて賃金労働として引き入れるとその家族・次世代の底上げ教育が必要で却って
トータルコストが上がります。
最近少年院で外国人少年比率が上がっていると言われています。
だいぶ前から書いていますが、子供の日本語能力が低いので、子供社会に馴染めないし社会人になり損ねているし家に帰っても親は殆んど日本語が話せない(親子の意思疎通もままならない)という状態で、どうして良いか分からないママ少年院を出て行く状態が言われています。
弁護士会としては今後福祉と連携していかないとどうしょうもない状態という議論が起きています。
学校現場ではだいぶ前から、日本語の殆んど分からない子供に対する教育の仕方について問題になっていますが、外国人の安易な(数万円人件費が安いからということで)雇用は社会に対して大変な負荷をもたらす危険をメデイアは何故か報道しません。
サービスを含めた商品供給が従来比2〜3割増えても人員を同率増やすのではなく、数%増で間に合うようなシステム構築などの成否が生き残りの明暗を分けます。
こうした工夫→システム刷新実行には数年単位の時間がかかるのでその間人材不足になるのでしょう。
この場合従来100人の仕事が120人必要になっても従来どおりの100人で賄えるようになると各人の給与を何割か上げる余地が企業に生じます。
従来基準で120人分の仕事が100人でこなせるのは省力化投資の結果でから支払わずに済んだ20人分の人件費のうち省力化投資の方に多くが吸収されますが、少しは賃上げ要因になるでしょう。
それでも、売り上げ増2割に対する労働分配率が下がることになります。
省力化投資にある程度比例して国全体で言えば総人件費・.労働分配率が減って行きますが、個々の労働者の所得水準が上がり国民は幸福です。
その代わりに20人失業するのでは困りますが、好景気下で拡大基調の現在、例えば好調な物流系で100人雇用が必要な時に省力化投資で80人で済むというだけで、解雇する訳ではありません。
雇用の奪い合いが緩和されるだけのことで、今では他産業でいくらでも募集があるので、その心配がありません。
人手不足の今こそ、このように省力化投資に邁進・誘導し構造転換させていくチャンスではないでしょうか?
スーパーレジが自動化されるとレジ要員が大幅減ですが、その空いた要員を別の部署の作業に振り向けられるようになるほか、新規採用が減った分は人手不足の他の業界の応募者になっていくでしょう。
こうした循環の結果、社会全体で人手不足解消される点が、企業の省力化投資の損益分岐点・均衡点になるでしょうから失業者が溢れる心配は論理的にはありません。
上記のためには人材市場が合理化(流動化に耐えるように)されていることが重要です。

労働分配率低下論1

ところで、好景気というが日本の労働分配率が減り続けているという煽り報道も時折見かけましたが、これもおかしな議論です。
これも「窮乏を極め」という意見の背景.互助会的応援報道の一種でしょう。
不景気の時には収益を犠牲にして社内失業(6〜7割しか仕事がなくとも解雇せず頑張る)を抱えてじっと耐えている企業が日本には多いので、その結果不景気下では売り上げや収益比で労働分配率が上がるのが普通です。
(社内留保のテーマでも書きましたが、こういう時のために一定の蓄積が必須です)
好景気になるとようやく(ラーメン店員で言えば、稼働率8割が損益分岐点をとすれば1時間に2〜3人しか客が来なかったのが2倍の5〜6〜10に人来ても店員の給与は同じで稼働率8割までは経営者の赤字補填が減るだけです。
分岐点の稼働率8割を超えてもなお2割の余裕があるので、定時勤務時間中の労力投入量が8割を超えて少し利益が出るようになってもこの段階では経営者が過去のマイナス補てんや将来に備えての利益蓄積〜配当資金段階となり人件費は上がりません。
稼働率10割を超えて残業が増えて従業員の収入が増え普通の利益配当を出せるのであって、それまでの景気回復局面では労働分配率が下がり続けるのは当たり前の原理なのに、なぜこれを大騒ぎしているかという疑問です。
私のうろ覚え記憶や素人考えのみでは頼りないので、以下の論説を紹介しますが、これによると今年の総選挙直前頃に騒ぎになってメデイアを賑わしてたことがこれでわかります。
http://www.toushin-1.jp/articles/-/4126

2017年9月19日
アセットマネジメントOneで調査グループ長を務めます柏原延行です。
・・・今回は、2017年9月12日付のコラム『労働分配率の低下を考える(1)企業利益は絶好調なのに…?』のつづきです。
労働分配率低下のもうひとつの要素である労働者の取り分(賃金)の上昇ペースが鈍い理由について考えたいと思います。
労働分配率の低下が意味するものは、企業の利益環境と比較して、労働者の取り分(賃金)の上昇ペースが鈍いことを示すことをお話ししたうえ、まず、企業の利益環境を整理しました。
「企業の利益環境が絶好調」、かつ「失業率が3%程度まで低下し、労働供給がひっ迫」していると思われる日本において、なぜ、賃金の上昇ペースが鈍いかは、「労働経済学上の大きな謎」といっていいのではないかと考えます。
労働経済学の先生方もこの課題に答えるべく、様々な研究成果を発表されています。
・・・・玄田先生からは、「①労働市場の需給変動、②行動経済学、③賃金制度、④規制、⑤正規・非正規問題、⑥能力開発・人材開発、⑦年齢」という7個のポイントをご教示いただきました。
代表的なイメージをご説明すると、
「①労働市場の需給変動とは、労働市場における需要・供給曲線の変化など」、「②行動経済学とは、賃金に下方硬直性があったことが、環境が好転しても上昇硬直性を生む要素となっていることなど」、「③賃金制度とは、1980年代との比較で2000年代の人事制度が株主価値最大化・市場価値重視型に変わった可能性があることなど」と捉えることができると思われます。

私の素人的着眼点は上記のうちの「②行動経済学とは、賃金に下方硬直性があったことが、環境が好転しても上昇硬直性を生む要素となっていることなど」に当たることがわかります。
特に我が国では大手に限らず小売業の店員など非正規でも簡単に解雇しないので、これが最大要因ではないでしょうか?
好景気になっても、繁忙性が一定限度を超えて(残業増で対処して)から、雇用増になるなどの時間差がありその次に雇用獲得競争が起きて募集賃金の上昇(現在はこの段階?)・同時的に人手不足解消目的で省力化投資・ロボット化進展など順次の連鎖がありコストに占める人件費率が下がる一方になるのは分かりきったことです。
そこで労働分配率とは何かの定義を見ておきましょう。
だいぶ前に書いた記憶ですが、労働分配率とは、収益との比率・・結果的に総コストに占める人件費率のことです。
例えば、http://www.first-kessan.com/category/1329922.htmlによると以下の通りです。

たとえば、商品を800円で仕入れ、1,000円で売るならば、会社が200円の価値を付け加えたことを意味します。
「付加価値額」とは、ほぼ「売上総利益」と同じと考えて下さい。
労働分配率とは、「付加価値額」に占める「人件費」を知ることです。これによって、会社に占める適正な人件費を知ることができます。
計算式は、以下のとおり。
労働分配率(%)=人件費÷付加価値額

上記例で200円の付加価値を生み出すコストと人件費率が何%かということですが、製鉄その他固定経費率の高い企業ほど人件費比率が下がります。
理想的形態である100%の全自動になると、製造原価に占める人件費としては、作業員ゼロになって製造システム監視部門やメンテナンス・.この辺もシステム設置企業への外注にしてしまうと人件費ではなくなります・・あるいはシステム更新などの企画部門その他の間接部門経費中心になります。
100%オートメ企業がないとしても、多くの事業主体ではこの比率をあげる工夫・その競争下にあること・・すなわち、人件費率低下競争下にあることが確かです。
我々弁護士のような時代遅れ業態でさえも、平成に入った頃からタイピスト不要になりファックスやメールの発達により、事務員が裁判所や相手方事務所へ一々書類持参のために行き来する時間を大幅節約しているので、中規模事務所で過去に10数人必要であったのが7〜8人で済むようになっている代わりに機器や通信コストがあがっているなど人件費率の削減に貢献しています。(サラ金事件の複雑な利息計算もソフトを使えば瞬時にできます)
下請け作業要員送り込みの「何とか組」などでは、人件費率が9割近い・.人件費以外のコストといえば事務所家賃や現場往復用送迎車のコストや電話コピー機くらいでしょうが、現場作業系でも職人派遣だけなく足場まで持つようになるとそのコストが増えますし、土木系も重機を持つようになると人件費以外のコストがグッとあがります。
商店では露天商の場合には人件費率が高いでしょうし、低単価の居酒屋でも皿洗い機次第で人件費率がまるで違うでしょうし、高級店になるほど出店料や照明や高級仕様の環境投資がかかるので人件費率が下がります。
国でいえば先進国ほど公園や街路の整備などインフラコストがかるのと同じです。
この10数年零細商店でも小綺麗にしているし、カード利用が増えるとスーパーのレジ要員を減らせる代わりにカード会社への手数料支払いが増え人件費比率が下がります。
このように工場のオートメ化、ロボット化が進展すればするほど人件費率が下がるのはあたり前・・元々人を減らすための電子化、機械化、ロボット化ですから好景気→人手不足になれば当然の結果です。
総収益が同じでもオートメ化が進み、例えば人手が100人から10人に減ると労働分配率が(ひとり当たり給与水準が同じとすれば)9割に下がります。
人件費率の低下は、国際競争上前向きの動きの結果であり、ちょっと考えればすぐバレるような変な意見を鬼の首でもとったようにメデイアで「なぜ賃金の上昇ペースが鈍いかは、『労働経済学上の大きな謎』と紹介されています。
専門家からすればいろんな微細論理が残っているでしょうが、素人的に単純に理解すれば謎でも何でもない、自明のことではないでしょうか?

日弁連意見書・日本の労働者は窮乏を極めているか?2

若者についても都市住民2〜3世のテーマで書きましたが、バイトで20万円しか稼いでいなくとも、親と同居で全額小遣いに出来る人は、形式上ワーキングプアーですが、実際には普通のサラリーマンよりは豊かな消費を楽しんでいます。
日本の場合、都市住民1世の比率が下がる一方ですから、このような比率の差・親世代の持ち家率なども重要です。
数年前に実質賃金が下がっているという報道が続いた時に書きましたが、好景気でそれまで働いていなかった主婦層が働きに出るようになると10数万〜20万前後の低賃金層が増えるのは当然ですが、それまでゼロ収入だった主婦の収入が20万円前後増えただけのことで彼女たちが貧しくなったのではなく、逆に働けるようになって家計が潤っているのです。
バイト先のなかった息子や娘が一日数時間のバイトできるようになった家庭も同じです。
個々の収入・・例えば、総支払額を就労人口で割る方法ですと、高齢者の職場でなかった分野でも高齢者が週2〜3日働けるようになり、パートや育児期間中の母親や身体障害者等弱者の就労環境がよくなればなるほどそうした就労者が増えるので一人あたり賃金収入が減る方向になります。
仮定の例で言えば、10年前には65〜70歳の9割が年金収入しかなかったのに対して、今ではその5〜6割が月収15〜20万円前後でも仕事があるとした場合、就労人口一人当たりで割ると非正規雇用が増え、一人あたり賃金が下がってジニ係数が悪化したことになるのでしょう。
今の統計方法では就労人口が増えれば増えるほど、国民が貧しくなっている・・格差が広がっているかのような逆転したイメージになります。
変に個人別に切り分けた統計を見て平均賃金が下がっているとか格差拡大していると言ってもほとんどの人は実際の生活実感と違っているので支持しません。
北陸地方の住みやすさ・幸福度指数が最高という報道がしょっちゅう行われていますが、それなのに北陸や東北などの地方から東京など大都会に何故出てくるのか?大都会から北陸地方への移住の方が少ないのかの現実との落差をメデイアは無視したままです。
それは都会に職があり、交通網が整備され学校がありいろんな設備が揃っていて便利だからだというのでしょうが、では何故職や大学や文化施設の有無をすみやすさの基準に取り入れないのか、なぜ評点が低いのか?の答えになっていません。
マスメデイアは、実態無視の基準で勝手に評価しているだけで、国民意見・疑問など無視したままです。
日弁連もメデイア受けに頼る傾向があるので、「窮乏を極めて」いるという唯我独尊的意見発表で満足しているのでしょうか?
メデイアの宣伝と実態の違いを知っている賢明な国民が多い結果、安倍政権になってからの国政選挙で自民党の連続勝利の結果に出ていると思われます。
生活水準・豊かさや窮乏の度合いは、個人単位ではなく世帯単位で見るのが実態に合っているでしょう。
夫の月収4〜50万円の家庭(日本での正規雇用では、500万円年後が最多階層?)でそれまで育児等賃金収入のなかった主婦が働きに出て月収15〜20万円でも増えればその分豊かになった気分でありその女性が窮乏化を極めているとは思っていないでしょう。
賃金労働者一人当たり収入比較・これは景気が良くなるとバイトなど低賃金層から雇用が増えるのが普通ですから、とこの種の人から仕事が増え収入が増えます。
技能関連で言えば、元々腕のいい人は不景気で滅多に職を失わず目一杯仕事をしているのでこの種の人は景気が良くなっても大して(残業手当増える程度・管理職になるとこの変化もありません)収入が上がりません。
技能レベルの低い順に不景気になると失業する代わりに好況になるとすぐに再就職するので好不況の波に影響され安い階層です。
この結果、景気が良くなると低賃金層に仕事が回るようになるので統計上平均賃金が下がり非正規雇用が増え、窮乏化が進んだことになります。
国民の豊かさ、窮乏度合いを見るには、家族全部含めた国民総賃金の推移・・総支払額と対応年度の労働力人口で一人当たり収入増減に引き直して貧しくなったか否かの議論をすれば、結果が違ってきます。
世帯収入の統計をどうするかですが、仮にその把握が難しいとすれば、・・労働力人口(就労人口でなく)が同じとした場合、(日本は少子高齢化で年々減っていますが・・)年間総人件費支払額・これは企業集計でやる気になれば可能でしょう・・が、喩えば200兆円の支払いだったのが5年間で190兆に減っていればその差額分賃金収入世帯全体が貧しくなり、200兆円が220兆に増えていれば、1割豊かになっていることになります。
これを就労人口で割ると高齢者がシルバーセンターなどで、月に数万円程度働くようになると平均賃金が下がり、窮乏化したことになってしまいます。
元々働けなかった人・障害者などが短時間でも働けるようになった分、その世帯収入が増えているのですが、統計では逆になります。
多様な人が生きやすい社会・・子育て中の母親や福祉政策が進むと病弱者や障害を抱えた人あるいは高齢者でも、日に数時間だけでも働く場が用意されるようになるので、低賃金層が増えますが彼らが働けるようになっただけ良くなったのであって働いたことによって貧しくなったのではありません。
お父さん一人しか働く場がなくて月収60万よりは、親子3人自由に働けて各30万の方が家庭は豊かです。
窮乏化が進んでいるかどうかは、個別収入の統計ではなく世帯単位の統計が必要ですが、企業の支給データでは個別支給額しか出ないし、税務や年金保険データでも同じです。
本当の姿を知るためには、日本全体での企業の賃金総支給額が、年度別にどのようなグラフを描いているかでしょう。
労働力人口の減少があるので、このグラフに対する修正要素として、対応時期の15歳以上65歳までの総人口で一人当たりの収入を割ってみれば国民の現金収入変化が出ます。
現金収入に限らず豊かさには、徒歩圏内に医療その他消費財が簡単に入手できる環境にあるかなど日常生活に必要なインフラも需要です。
ウオシュレット普及で代表されるように清潔さその他環境条件も(駅舎も綺麗になり、どこでもベンチがあって気持ちよく過ごせるなど)ダントツの日本のはずですが、日弁連はどこの国とと比べて「窮乏を極めて」いるのでしょうか?
よその国との比較の問題ではなく絶対的な貧困が需要なのだというのでしょうが、「貧困」という言語自体に比較の概念が入っています。
「富士山は日本一の山」という時には、誰でも知っている 公理みたいなもので証明不要ですが、日本の労働者は・・・窮乏を極めているという時には、世界常識と違うので変わったことを言う以上は、変なことを言う方に説明責任があるでしょう。
マス・メデイアが言っているから常識だ・・説明責任がないというのでしょうか?
統計では平均賃金が下がり続けている・.それだけで充分とでもいうのでしょうか?

労働流動性化1(反対論・日弁連1・「窮乏を極めて」る?)

以下は事業転換・人材入れ替えを容易にしようとする動きに対する反対論です。

解雇規制緩和のための「解雇の金銭解決制度」の導入の動きに反対しましよう

2015年9月1日
ニュース・トピックス ブログ
解雇規制緩和のための「解雇の金銭解決制度」の導入の動きに反対しましよう
企業が世界一活動しやすい国を目指す」と、安倍政権による労働者を犠牲にする「労働改革」が進められています。
ところで、政府の労働改革の一つに、無効な解雇でも使用者が金銭を支払えば解雇ができるようにする、金銭解決制度の導入が提言されています。
現在は、正当な理由がない解雇は権利の濫用として無効とされます。
ところが、政府・財界が企図している金銭解決制度が導入されると、労働者が解雇無効の裁判を起こしても、使用者が金銭で解決を図りたいとの申立があると、裁判所は違法な解雇であっても無効とはせずに金銭賠償を命ずることになります。」

ところで日弁連の意見はどうなっているのでしょうか?http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2013/opinion_130718_2.pdf

「日本再興戦略」に基づく労働法制の規制緩和に反対する意見書
2013年(平成25年)7月18日  日本弁護士連合会
・・・・「多様な働き方の実現」のためとして,多様な正社員モデルの普及,労働時間法制の見直し,労働者派遣制度の見直し等が検討対象とされている(日本再興戦略第II一2③)。規制改革実施計画においても,人口減少が進む中での経済再生と成長力強化のため,「人が動く」ように雇用の多様性,柔軟性を高めるものとして,ジョブ型
正社員・限定正社員(ジョブ型正社員と限定正社員はほぼ同じ意味で用いられている。・・・・,現段階では抽象的な記載にとどまるが,それらの議論の経過において解雇の金銭決消制度が具体的に検討されたように,労働者の地位を不安定にしかねない制度となる可能性も残っており,参議院選挙後に予定されている具体的な検討において,経済成長の手段として雇用規制の緩和を利用しようする議論が展開されるおそれがある。しかし,日本の労働者の現状は,非正規労働やワーキングプア問題の拡大に代表されるように,窮乏を極めており,雇用規制の緩和を経済成長の手段とするべきではない。
・・・・・そこで,当連合会は,国に対し,具体的な制度改革の実現に当たって,以下の諸点について十分に留意するよう強く求めるものである。
1 全ての労働者について,同一価値労働同一賃金原則を実現し,解雇に関する現行のルールを堅持すべきこと。
2 労働時間法制に関しては,労働者の生活と健康を維持するため,安易な規制緩和を行わないこと。
3 有料職業紹介所の民間委託制度を設ける場合には,求職者からの職業紹介手数料の徴収,及び,民間職業紹介事業の許可制の廃止をすべきではなく,労働者供給事業類似の制度に陥らないよう,中間搾取の弊害について,十分に検討,配慮すること。
4 労働者派遣法の改正においては,常用代替防止という労働者派遣法の趣旨を堅持し,派遣労働者の労働条件の切下げや地位のさらなる不安定化につながらないよう十分に配慮すること。

上記によれば立論の前提事実として
「日本の労働者の現状は,非正規労働やワーキングプア問題の拡大に代表されるように,窮乏を極めており・・」
というのですが、北朝鮮政府発言のように?決まり文句・・「全ての責任は〇〇にある」式の決まり文句さえ言ってれば良いという姿勢が顕著です。
「日本の労働者の現状は、・・窮乏を極めて」いるとは、どういう根拠に基づいて主張しているのでしょうか?
給与水準で比較しにくければ、簡単な基準である最低賃金水準で比較してもいいでしょうが、日本の最低賃金がどこの国に比べて「窮乏を極めて」いるのでしょうか?
最低賃金水準で見ても諸外国との比較で「窮乏を極めて」いるとは到底思えませんが、賃金水準だけでは窮乏状態をはかれません。
持ち家のある人の月収20万円と家賃を払う必要のある人の20万円では窮乏程度が違います。
高齢化が進むとその収入減少がもろにジニ係数に関係しますが、中韓と違い日本では年金制度が充実しているし、高齢者の金融資産や自宅保有率が高い(ほとんどの人はローンを払い終わっています)などの実情の違いを無視できません。
また高額金融資産のある人が高齢化したために月収がゼロ〜ほとんどなくとも、子供世代に小遣いをやったりして豊かな生活をしている人が一杯います。
これを前提に高齢者からの孫への教育費贈与や、子世代への不動産取得資金贈与についての贈与税減免制度が一般化しているのです。
日本の個人金融資産は近々2000兆円に迫る勢いです。
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDC17H0N_X10C17A3EAF000/

家計金融資産、最高を更新 16年末1800兆円
2017/3/17 10:41

上記は16年末集計ですから、好景気の続く17年末にはさらに増えているでしょう。
ちなみにちょっとデータが古いですが、世界のデータでは以下の通りです。
http://japanese.joins.com/article/072/221072.html

2016年09月26日14時32分
[ⓒ 中央日報日本語版]
26日、ドイツの保険会社であるアリアンツグループが発表した「アリアンツ・グローバル・ウェルス・リポート」によると、2015年借金を除いた韓国の純金融資産は1人当たり2万7371ユーロ(当時のレートで約360万円)を保有していることが明らかになった。2014年の2万4160ユーロに比べて約3000ユーロ増加した。ランキングも昨年22位から1ランク上昇した21位を記録した。
1人当たりの純金融資産が最も多い国はスイスで17万589ユーロだった。次いで米国(16万949ユーロ)、英国(9万5600ユーロ)、スウェーデン(8万9942ユーロ)、ベルギー(8万5027ユーロ)の順だった。
日本は8万3888ユーロでアジア国家のうち1位で、全体調査対象国家53カ国のうち6位だった。日本人は韓国人に比べて約3.06倍の金融資産を保有しているといえる。

国別金融資産でも世界的に見て遜色がないだけでなく、財閥寡占で知られる韓国など違い日本の場合、そういう格差も低い方ですから尚更です。
蓄積の有無が重要ですのでジニ係数など数字も国の総体力で見るべきなのに、ある国で妥当するかもしれない・一応の指標になるというだけでどこの国にも当てはまらないのかな?数字を持ってきて、日本を不利に評価する材料にしても意味が低いことを書いてきました。
体温計や脈拍数が健康管理の一応の指標としても、それだけで病気かどうか判断できないのと同じです。

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