騙しあい社会4(金利の駆け引き)

大名が自腹持ち出しだけではなくその家臣団も主君の命令があれば家の子郎党引き連れて自腹で軍役に参加するものであって、この生き方は末端まで行き渡っています。
日本では公的業務は、自己犠牲が原則であって上から支給されたモノを自分の懐に入れることなど出来るものではありません。
日本と社会の仕組みが根本から違う中国の歴史によれば、習近平氏による汚職摘発は元々民族・社会のトータル正義にあっていませんが、「政敵倒し目的」と「見えすいた名分」と分っている範囲が限界で、それ以上一般官僚にまでに進めると国民全部が対象ですから無理があってそれ以上進めません。
そこで、大物・即ち政敵粛清が終わった昨年半ば頃からは、汚職摘発が収束して来ました。
国民もこの辺で終わると想定して自分には及ばないと達観していたでしょう。
「習近平を批判した」かどうかが本来の基準・間違って検挙されても、表向きは賄賂をもらっていた以上は、言い開き出来ない基準なき社会・・これが専制支配の特徴です。
賄賂罪そのものは何十年も前からあるので、政権が変わった途端に(政敵支持を理由にする)処罰は形式上罪刑法定主義に反しませんが、本来の処罰基準が政敵かどうかにあるとすれば、ある政権のとき実質上非処罰だったのが政権が変わると前政権に協力していたことを実質的理由に「賄賂」罪で検挙されるのでは、一種の事後法処罰です。
要するに法・・ルールがないのと同じで国民・企業は安心出来ません。
結局旧政権近づいていても政権が変われば・恥も外聞もなく強い方に直ぐにすり寄る・旧勢力には手のひら返し・・保身のためには旧政権の秘密を売るしかないと言う程度の処世術が発達します。
権力者も権力を失えば最側近からいつ裏切られるかしれないので、権力を手放せなくなるし猜疑心ばかりでお互い心が休まる暇がない社会です。
汚職構造に戻しますと汚職をなくすには徐々に徴税率を上げて行き、その分給与をしっかり払って汚職を減らして行くべきでしょうが、これは相互性があって一方だけイキナリ出来ることではありません。
日本マスコミは賄賂の巨額さを騒ぎますが、実は国家財政的には大した資金ではありません。
曹操が兵糧不足を兵糧長官の不正の所為にして処刑した故事がありますが、個人のちょっとした汚職くらいで、曹軍百万と言われる大軍の兵糧がどうなるものではありませんから、言わば不満な兵の目くらましに使っただけです。
賄賂摘発は政敵粛清目的であって、その程度の国庫収入増ではどうにもならないので外需・・外資導入が減る+資本流出穴埋めのために何とか人民の金を吸い上げる必要に迫られています。
中国国内のバブルがガン細胞のように株式→マンションバブル→商品相場へと次々と転移して行くのは、政府と国民の騙し合いの戦場がドンドン移動して行くと見れば分りよい思います。
この一環として15年夏の株暴落直前まで政府系報道機関が率先して株式が儲かると煽っていましたし、これが15年夏に終わると株の売り逃げで儲けた人相手にマンション投機を煽ったりあの手この手の策を巡らしますし、人民はこれに乗せられたフリをしてうまく儲けて売り逃げしようと策を巡らします。
中国バブルは政府主導ですから、政府の動きを早く知る限り安心・幹部のコネさえあれば潮目がはっきり分ることです。
売り逃げ出来る自信のある情報にアクセス出来る層が厚い・・これを裏切ると大問題ですが・・のが特徴でしょう。
裸官と言って海外に逃げている層はそれほどでもない・・むしろバブルの波にのってうまく逃げられるグループの方が優秀・したたかです。
失業者が妻子を不安にさせないように貯金を取り崩して見た目の宴を派手に繰り広げているような状態ですが、その資金がいつまで続くかの心配を他人(外国人)がしている状態です。
日本的感覚で言えば、国民に対して実態を説明して質素倹約・海外旅行に行って不要不急のお金を使わないように要請するべきですが、それを頼めない・・弱みを見せると権力がおしまいになる・・政権の弱さでもあります。
弱さの原因は普段から政府が国民との信頼関係構築を怠って来た結果であり、日本流に言えば身から出た錆です。
3月18日の日経新聞記事を紹介していたように、国民の海外投資抑制を通り越して外国企業との企業間取引代金支払いまで待ったを掛けるようになると・国外企業は怖くて中国企業と取引出来なくなります。
尖閣諸島や南沙諸島のように腕力に任せて乱暴なことをすると廻りが怖がるし、韓国やフィリッピンや台湾等を威嚇するために観光客を絞ったりして、バナナなどの輸入妨害すればフィリッピン等がたちまち降参する・・勝ち誇っているつもりでしょう。
気に入らない企業には代金を払わせない・どうだこの強さは!と言うつもりでしょう。
この結果、自分自身が世界中から乱暴なことをするクニだと言うマイナス評価・効果を受けます・・。
北朝鮮のように国際取引禁止の制裁を自分で申告しているようなものですが、中国政府はその意味が分かっていないようです。
専制君主が「自分がどんな無茶でも出来る」と自慢しているようなものです。
ネット報道レベルでは中国危機説がしょっ中出ていましたが、ネットに留まらず大手の日経新聞が3月18日に日本企業への不払いが起きていると言う大ニュースを流す重みですが、取り付け騒ぎの風聞に類することを大手マスメデイアが公式に言い出したことになります。
政府が権力に任せてこんなことをしていると、いよいよ海外からの投資(回収出来ない投資をしません)が減る一方になるでしょうから、資金不足が加速します・分ってはいてもそうするしかないほど資金的に追いつめられているのでしょう。
これらの強制措置が功を奏したらしく17年2月末の外貨準備が久しぶりにプラスに転じたとの報道です。
国民が自由に資金を動かせないままで国民が黙っているとは思えません・・「下に対策あり」と言われる国民性ですから、時間経過で規制をくぐり抜ける裏技が出来上がって来るでしょうからイタチごっこになります。
2月末の外貨準備持ち直しの3月7日発表は、3月5日から始まったばかりの全人代向けお化粧の疑いもあり、この先どの程度続くか分りません。
もしかするとこんな無茶な規制は長く続かない・・続いても「下には対策」がありますので4〜5月末にはまた減少に転じるかもしれません。
3月27日に紹介した3月18日付日経新聞記事には、日本企業の決算による利益送金が集中する6月頃に大量送金不能がもしも起きると・・正念場が来るとも書かれています。
大手メデイアですから、まさか「デフォルト直前」とは書けません・・あっさりと書いているものの、ここまで来ると殆どデフォルト直前の様相をそれとなく報道していることになります。
この報道を見れば余程ノーテンキな企業でも、今後中国への進出あるいは受注活動を一旦中止して様子見に転じる筈です。
6月頃には「対策」が進んでまた外貨流出が始まっている可能性があり、別の規制が始まっているのかな?

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