中国外貨準備の急減3

March 22, 2017に出血輸出でも(輸入原材料以下で輸出するのではなく労賃の圧縮や赤字補填資金供給)貿易黒字になる仕組みを書きましたが、このやり方では資本・体力が続かなくなるのが普通です。
・・外貨準備を取り崩し・・ゾンビ企業への追い貸し・・出血輸出による中国の黒字もピークを過ぎつつあるのではないでしょうか?
国内完結であれば、国内でマネタリーベース拡大・・じゃぶじゃぶと資金供給すれば際限なく追い貸しが可能ですが・・実際に生産者・卸売り価格の急上昇が取りざたされています。
マンション投機だけではなく・・あるいはマンション相場が天井を打ちそうと思ったからか、幅広い商品取引にも余った金が流れ込んでいるらしいのです。
国内では花見酒経済同様で紙幣を印刷さえすればいくらでも回転出来ますし、国民には危機感が伝わらないでしょうが、対外取引には外貨が必要です。
3月18日の日経新聞朝刊7pには、「海外送金ストップ」の黒抜き見出しで中国による資本流出規制が最終段階に来ている・・日本企業・・あさひホールデイングスが中国子会社を現地民族資本に16年末に売却した代金が、政府の送金規制によって送金されないままになっている事例が紹介されています。
これでは追い出し攻勢に留まらず、嫌がらせで(あさひに対してあったと言う意味ではありません)二足三文で買い叩いた代金さえ払わせないでただ・裸で追い出す事態です。
中国の外貨持ち出し制限が今年に入って厳しくなっていることは報道されていましたが、現地企業売却金・・損切り・撤退金の支払をさせなくなったとなれば部分的デフォルトあり、大ごとです。
17年3月7日には、外貨準備3兆ドル回復の発表が出ています。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM07H9Z_X00C17A3FF2000
中国外貨準備3兆ドル回復 2月末、資本規制強化で2カ月ぶり 2017/3/7 20:16
「金融当局は16年以降、銀行への窓口指導を通じ海外送金に対する規制を繰り返し強化してきた。17年に入ってからは個人の外貨両替に申請書の提出も義務づけた。送金や両替を先送りする企業や個人が増えており、元売りの動きがいったんは収まった。人民銀は元買い・ドル売り介入を抑制でき、外貨準備の増加につながった。」https://zuuonline.com/archives/135606
中国のなりふり構わぬ「資本流出規制」17年震源地の恐れあり
記事内容を省略しますが、上記のとおり年末から厳しい資本流出規制が始まっています。
上記各記事と日経新聞18日掲載の不払い記事を総合して簡単に言い換えれば、「中国に進出した企業が採算割れで撤退するときに当初投資資金の何十分の一で売却し撤退しようとしているときにその売却金さえ払わせない」「中国人の売った代金は回収するが中国企業の買った代金は払わせなかった」結果とすれば、外貨が入るだけで資金が出て行かないのでは外貨準備が増えるのは当たり前でしょう。
自由な取引で外貨がたまっているのか減って行くのか・・これが実力であり、経済活動する人にとっては実際を知りたいのです。
不払い基準は何か?どんどん拡大されるリスクがあるならば、対象になっていない今の内に売り抜けようとする動きが出て来ます。
以下によると米国債を若干買い戻し出来たようです。
 https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-02-15/OLFQBN6KLVR5米財務省が15日発表した昨年12月の対米証券投資動向によれば、中国の米国債保有残高は1兆600億ドル(約121兆円)と、前年比で1880億ドルの減少となった。前月比では91億ドル増加し、昨年5月以来のプラス。
日本の米国債保有は5カ月連続で減少し、前月比178億ドル減の1兆900億ドル。前年比で316億ドルの減少だった。」
民間の資本流出を厳しく規制しているものの政府が米国債を買う方向への流出・・外貨準備だけ増えた状況を無理して演出している様子です。
日経新聞3月18日の記事を紹介したように、企業で言えば外注支払を先送りさせて手元預金を増やしたと言うことでしょう。
当初GDPアップ率と電力消費が整合しないことが問題になり、その次はトラック輸送実績とGDPが合わない・・等々次々の関係ですが、これもそういった小手先細工の一環でしょう。
この数ヶ月米国債保有残高減少が焦点になって来たのですが、保有額発表は米国政府ですから電力統計のように発表を操作出来ませんので、資本流出規制の強化・・外資への支払を止めてその分米国債を買い増したと言うことでしょうか?
米国債保有額の数字自体の操作はないとしても、経済の自然の流れを権力で歪めている点は同じですから、今後は米国債保有額の動きを見ても経済活動に応じた自然な資本の動きを計れなくなったと言うことです。
今後は・・外国企業へ不払いの動きがどの程度起きているか等の現場情報で中国の危険度を憶測するしかありません。
権力の脅しで未払いを公表出来ない企業には、支払を先送りするなどのいろんな仕組みがあるのでしょうが、不透明基準で払ってくれたり払ってくれなかったりするのでは進出企業にとってはリスクが高過ぎます。
中国に法の支配がない・・民主国家ではないとしても、国家が約束を守るべきかどうかは民主制と本来関係がありません。
国家の国民に対する約束を法とすれば、法の成立手続きが選挙の洗礼を受けているか否かで民主国家かどうかを区別しているだけで、国家の約束を自ら明らかにして国家が率先して守るべきは民主国家か否かに関係がありません。
諸葛孔明が泣いて馬謖を斬った故事はこの原理を表しています。
約束・契約を守らない個人がいる場合に(代金を払えと言う制度を設けて・・社会あるところ秩序維持に一定の裁定制度があるのはそのためです)これを守らせる(犯罪を取り締る)のが政府の役割・猿社会もボスがこの役割を果たしてこそボスです。
中国政府のやり方は政府自体が約束を守る意識がない・高官が賄賂次第で動く・・賄賂がないと動かないのは有名ですが、政府が民間の約束を守らせるように努力するどころか積極的に介入して約束どおりの支払をさせないとなれば文字どおり世も末・・社会組織崩壊です。
共産党政権は民主的洗礼を受けていないので正当性が弱いと一般的に言われていますが、国家の約束=広義の社会秩序維持義務を果たせているかどうかこそが政権の中核的存立基盤です。
これある限り強権支配かどうかで政権の存立が左右されることはありません。
しかも支払を止める基準がない・・破産等は完全ストップで画一的で公平ですが、政府の決めた相手だけ払わせないとなれば社会秩序が成り立つかの疑問です。
公になれば政府が公式にそんな命令していないからタマタマ何かの間違いだろうと言い張る・・政府はきちんと秩序維持の役目を果たしていると言うのでしょうが、(日経に報道されたあさひホールデングスへの不払い問題は購入企業が「政府の所為にして噓を言ってただけ」と言う決着をするのでしょうか?
結果的にこう言うことがどれだけ増えて行くかでしょう。

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