政治は政治家に!2(王道政治1)

アメリカの国力低下によって1対1の取引外交が出来なくなって多角外交時代に入ったものの、欧州や日本と違って複雑な外交経験がない結果、ブッシュ〜オバマと外交成果がジリ貧〜進退窮まっているのを見て、話し合い解決のオバマ流儀を「弱腰」と批判して元の一方的交渉形態に戻そうと宣言してもないモノねだりです。
王朝末期・衰退に比例して強圧より微温策が取られますが、抵抗分子が力を持つばかりでうまく行かなくなって、強行策に戻ると大方大動乱になって崩壊に繋がります。
権威が落ちた・一睨みで黙らせられないから不満分子が遠慮なく発言行動するようになるし政権も微温策をとっていたのに、もっと体力が落ちてから強行策に戻るのは無理があります。
幕末安政大獄と桜田門外の変〜その後の幕府崩壊がその1例ですし、中国歴代王朝の崩壊や多くのロシア革命その他王朝崩壊はいつもこのパターンです。
この辺は地域大国で上から目線の歴史経験しかない中国による、中華の栄光復活=威圧外交復活」願望も同じです。
実力がないから侮られるのであって、実力不相応に威張れば栄光が復活するものではないことが分らないのです。
王道と覇道の違いを強調する文化に親しんでいる日本人からすれば、これを本家本元の中国が知らない・・観念では知っていても実践しようとしないのを不思議に思う人が多いでしょう。
王道についてウイキペデイアでみれば以下のとおりです。
「孟子によれば、覇者とは武力によって借り物の仁政を行う者であり、そのため大国の武力がなければ覇者となって人民や他国を服従させることはできない。対して王者とは、徳によって本当の仁政を行う者であり、そのため小国であっても人民や他国はその徳を慕って心服するようになる。」
以上の基準を今の我が国の状況に当てはめてみると、世界から信用され、尊敬されている・・まさに王道を実現しているように見えます。
ただし当時(春秋戦国時代)覇を競っていた諸候の耳に孟子の教えは現実的でなかったので、孟子の主張に実際に従った諸候はいなかったと言われます。
そんなことよりも「強い方が勝ち」と言う社会の結果・秦始皇帝による統一・・専制支配が確立してしまいます。
習近平はこの歴史に学び、王道などの空理空論論は何の役にも立たない・・それよりは合従連衡策を勝ち抜いた始皇帝の方針・・周辺国の各個撃破を踏襲しているように見えます。
中国地域では人民が弱過ぎていくら隣の君主の政治が良くても、人民は君主を選べなかった・・そんなことより問答無用の強迫政治・・イザとなれば何十万人でも何のためらいもなく穴埋めして殺してしまうような野蛮社会であれば、道義など言ってられなかったからでしょう。
漢楚の攻防で有名なとおり、秦朝末期の反乱軍を次々と打ち破った勇将章邯が却って,趙高らに疎まれるのを嫌気して項羽に20万の兵を持って降伏したところ、楚の兵よりも圧倒的多数の降伏兵20万の寝返りを恐れた項羽によって、一夜にシテ?秦人20万将兵が抗(穴埋め)されてしまった事件があります。
南京大虐殺でっち上げ運動を見るとこの有名な20万の数字を踏まえて、自分ならこのようにするだろうと言う想像の産物です。
上記のように問答無用の苛烈な社会では、道義など【空理空論」を言っているヒマがないのが現実です。
折角の王道論が空理空論として顧みられなくなっていて、1000年以上経過した北宋の時代になって漸く孟子の教えが脚光を浴びます。
北宋時代は中国には珍しい非軍事・文化国家で、清明上下図で知られるように民が豊かになり、開封(汴京府)は殷賑を極めていたことで知られてます。
また最後の徽宗皇帝派、文物を愛した文化人で徽宗皇帝作の桃鳩図は日本に渡って来て今では日本の国宝になっているほど(まだ本物を見ていませんが、我が家に鳩やヒヨドリが来て庭木の枝にとまるのを見るたびにその絵を思い出す気入った絵です)です。
上記のとおり粗暴な中国社会では文治政治は無理があって、北宋はすぐに金に滅ぼされ徽宗皇帝は捕虜になって連れ去られてしまいました。
その後専制支配と相容れないからか中国世界では結果的に王道が顧みられることがなく現在に至ったようです。
ちなみに日本に孟子の思想が伝わったのは宋時代以降ですが、西欧から民主主義や人権主義が伝わる前から動物愛護(生類憐みの令)弱者をいたわる社会であり、ボトムアップ社会であったのと同様に日本社会は元々根っからの性善説社会であり、王道政治でしたから、孟子の王道政治はしっくりしたので普通の思想になって根付いていました。
いわゆる仁徳天皇と言う呼称が古くからあり、仁徳天皇が「民のかまど」を気に掛けていた故事があるように(ここでは上記が事実かどうかではなく、勇猛で何人人を殺したと言う英雄譚よりは仁や徳のある人が立派と言う神話・・価値観が古代から根付いていると言うことです)日本では、孟子の思想が入る前から仁徳政治こそが理想とされていたことが分ります。
思想はその社会に受入れる素地があってこそ根付く・・日本では普通のことですが、思想家による体系化がなかっただけで、受入れるには社会の基礎的思考方式が先に必要です。
神社信仰には自然保護・環境保護・弱者保護などの体系的文言がありませんが、これらを昔から畏敬し弱者を慈しむものでした。
立派な古典を読んでも読み手の受入れ能力・年齢によって、何を学ぶかが違って来ます。
大人になって読み返してみると違った奥深い意味に気が付く人が多いでしょう。
中国では折角立派な思想家がいたのに、これを受入れて自家薬籠中の物にしたのは日本であり、中国では受入れる素地がなくて根づかなかったのです。
この辺は高給な芸術作品が出来ても中国では買い手がつかないので、良い焼きものなどが出来ると隠しておいて真っ先に日本へ輸出してと言われるのと同じです。
中国に良いものが(文物)殆ど残っておらず日本にしかないと言われるのは、このような受け入れ能力によります。
現在アメリカ発祥のジャズ文化が日本に来て盛んであることや、欧米系文化人の講演やコンサートその他が日本人を優良顧客になっていることもこれを表しています。 
話題がズレましたが、王道・本当の栄光とは周囲から(我が国政治のように慈しみを持って接し)尊敬されることですが、アメリカは建国以来、中国も二千数百年間も実は威圧外交しか知らない・尊敬される必要がなく尊敬されたことがないのかも知れません。
もう一度廻りから恐れられる・腕力で屈服させる時代に戻りたいと言うのならば、中国も米国も間違いではなく一貫しています。
アメリカは国際連盟を提唱したのに自分が参加しないとか、国連を作ったものの大勢の交渉は苦手なので拒否権を行使するしか能がない・・拒否権のないユネスコ等ではボイコット状態です。
http://blog.livedoor.jp/kaigainoomaera/archives/33929772.html
「ユネスコ=国連教育科学文化機関がパレスチナの加盟を認めたことに反発し、アメリカとイスラエルが2年間にわたって分担金の拠出を凍結したため、両国は規定に基づき、ユネスコでの投票権を失いました。
教育の普及などに当たるユネスコはおととし、総会での圧倒的多数の賛成を受けてパレスチナの加盟を認め、これに反発するイスラエルとイスラエル寄りの立場をとるアメリカは和平を阻害すると批判し、対抗措置としてユネスコへの分担金の拠出を凍結してきま した。ユネスコには加盟国が分担金の拠出を2年間怠った場合、総会での投票権を失うという規定があり、8日、アメリカとイスラエルは期限までに分担金を拠出しかったとして自動的に投票権を失いました。」
「アメリカは以前までユネスコの予算のおよそ5分の1を拠出してきました。このためユネスコは人員の削減の検討を余儀なくされており、世界各地で行われている子どもたちへの教育支援活動などへの影響も懸念されています。」NHK

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