中国外貨準備急減2

外貨準備とは国際取引決済に必要な資金準備であり、長期貯蓄目的資金ではありません。
企業で言えば手元資金として一定額保有している流動資金と同じ原理です。
中国の外貨準備発表の内訳不明ですが理論的には米ドルだけではなく、円やユーロなどの外アフリカ諸国の国債に分散保有していること自体は虚偽発表ではないとしても、本来の即時決裁資金目的用途としてはドル・円・ユーロ・ポンド等の国際通貨以外の外貨を保有していても意味のない数字です。
だから昨日紹介した記事では、中国の外貨準備額発表が当てにならないとは公式には言いませんが、「米国債の保有額は中国の為替介入の本当の余力を示す・・」と言うのが大方の見方です。
ちなみに日本円保有・・日本国債金利が世界最底辺ですので、保有するメリットが低いので日本との直接決済用に最低必要な程度の資金にとどめているのは世界中の国の保有態度として共通でしょう。
中国がドル以外ユーロなど一杯保有しているとしても多くは最低限資金保有ですから、人民元買い支え用に使うわけには行きません。
本当にドル以外の外貨を2兆ドル近くも保有しているならば、公表すれば良いでしょうがそれが出来ない様子です。
アメリカ金利上げが日程に上っていることによる損失発生(金利が上がると低金利で買った債券価値が下落します)を緩和するために政策的に米国債を減らしていると言う見方もあります。
ところで、アメリカ国内だけで見れば金利が上がって債権評価が下がるのは損失ですが、金利が上がれば既存債権評価が下がると言うのは金利以外の与件が一定を前提にしている議論とすれば、金利が上がればドルも比例して上がる理屈・・金利の低くなった国の通貨は下落しますから、ドル評価で債権評価1割下がっても自国通貨が1割下がっていれば、自国通貨換算では評価減・損失はありません。
日本等米国債大量保有国にとってはドル下落・・円上昇の方が評価減損失の方が大きい筈です。
中国が日本の金融資産保有額を増やしている様子は以下のとおりです。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20161222-00010000-moneypost-bus_all
「中国は外貨準備におけるドルの比率を下げ、通貨の分散化を図ろうとしている。2016年第2四半期における日本の国際収支状況で中国との金融収支を見ると、5兆8989億円の流入で、前年同期と比べると4.1倍に増えている(データは日本財務省)。中国からの資金流出入は2015年第1四半期から流入に転換、金額は四半期ごとに増えている。」
ドル換算では約500億ドル分の日本流入が原因となりますが、昨日紹介したとおり、中国の米国債減少額は通年では3200億ドルの減少ですから、日本円保有増は年間減少額の6分の1強の寄与です。
ユーロへの分散はどうでしょうか?
ネットで見る限り中国は25%をユーロに振り向けていることを前提とする記事はありますが、データとして引用している記事は見当たりません。
ただ中国の貿易収支の黒字は続いているのですから、本来資本収支はその分マイナスにる筈・外貨準備が増える筈です。
これが増えないで外貨準備が底をつく心配が何故あるかの疑問です。
(貿易収支ばかり報道されているものの資本収支その他詳細が出て来ないので本当は不明です)
経験のない成金が高層ビルを買うようなもので対外投資で損ばかりしている場合もあるでしょうし、中国ダメ論の期待先行論・・貿易黒字は噓だと言うのかどちらかでしょう。
http://mainichi.jp/articles/20170114/k00/00m/020/050000c
中国貿易額2年連続前年割れ 対米摩擦でさらに悪化も
【北京・赤間清広】中国税関総署が13日発表した2016年の貿易統計によると、輸出と輸入を合わせた貿易総額は前年比6.8%減の3兆6849億ドル(約423兆円)だった。輸出入がともに落ち込み、2年連続で前年割れした。
輸出は7.7%減の2兆974億ドル。東南アジア諸国連合(ASEAN)向けが7.8%減と大きく落ち込んだ。日本と欧州連合(EU)はともに4.7%減、米国は5.9%減と先進国向けも低調だった。一方、輸入も中国経済の持ち直しの鈍さを反映し、5.5%減の1兆5874億ドルにとどまった。」
上記のとおり、輸出が減る以上に輸入が減っている・・世界中の国際取引が減少している中で、(中国の爆買い・輸入減少が原油を始めとする資源価格下落の始まりでした)中国の黒字が増えている・・アメリカを初め多くの国が赤字を押し付けられている状況が見えます。
トランプ氏の対中不満は世界の不満の代弁でもあるので支持が高いのでしょう。
https://www.hoxsin.co.jp/hadoutenbou/data/x/jp/tradechi.pdfからの引用です。
対中貿易収支 財務省
単位 億円
 1月    2月    3月   4月     5月    6月     7月    8月   9月   10 11月   12月
2014年 
-10,470  -1,14 -5,545  -4,615  -3,710   -3,721  -3,237  -2,362  -6,729  -5,901 -5,986   -4,460
2015年
-7,381  -7,727  -1,788  -4,779 -3,843  -4,137  -4,747   -4,881  -7,356 -5,414  -5,941 -4,042
2016年
-8,149  -3,833  -3,526  -2,963  -4,017   -3,358   -2,671   -3,445  -5,477 -3,426   -3,852 -1,827
2017年
-9,093
前年比
-944
上記のとおり今年1月までは日本の対中貿易では赤字が続いていましたが、17年2月には黒字転換しました。
http://www.asahi.com/articles/ASK3Q2JM8K3QUTFK001.html
財務省が22日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた「貿易収支」は8134億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶり。中国の大型連休が明け、輸出が大きく伸びたため。対中貿易収支は5年ぶりに黒字に転じた。」 対中貿易収支は1118億円の黒字だった。財務省関税局は「春節の日程は毎年変わる。今回の黒字は一過性のものだろう」としている。一方、対米貿易収支は6113億円の黒字だった。自動車部品の輸出が好調で、2カ月ぶりに黒字に転じた。(鬼原民幸)」
上記の解説によれば対中黒字は一過性のものかも知れませんが、15〜16年の推移を見ると徐々に対中赤字が減って来た(素人判断ですが)趨勢が見えます。
ちょっとした商品をネット注文するとベトナム製が多くなったのに驚きますが、輸入先が変わりつつある・・一過性ではない印象を受けます。

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