外貨準備とスワップ2

私が日頃から書いているように中国が外資導入で成り立っていることは明らかで、(外貨準備の実質がない?)外資が中国の健康診断なしでも、闇雲に投資してきたのは中国の成長期待によるもの(20代の若者を雇用すればすぐ働けるのが普通)です。
この期待が薄れてくるにつれて体温計等のデータが外資にとっても欲しくなる状態になってきている・体温計や脈拍数、各種健康診断結果の公開を拒否したままでは、不安に感じる外資が増えつつあるのを無視できないでしょう。
5月13日の日経新聞朝刊6pに「中国マネーの巨象と虚像」という大きな見出しで、国際収支が怪しいというイメージ程度?記事が出てきました。
15年以降の国際収支発表によれば誤差脱漏が2000億ドルもあることを指摘しています。
項目記載であればその項目の動き等をある程度チェックできますが、項目不明なのでいわばブラックBOX化=チェック拒否です。
不明金が毎年二千億ドルもある・・企業でいえば収支不明金(収入源不明)が2000億ドルもある会計帳簿であったということです。
もともと項目別の数字自体が怪しいというのがもっぱらの噂の上に、もともとブラックボックスになっている数字が年間2000億ドルあるのでは、4〜5年の累積で約1兆ドルの誤差です。
中国贔屓が強いと言われる日経も国民関心を無視できなくなったのでしょう。
韓国経済に戻りますと韓国その他新興国の場合、内部の経理処理の透明性が低いのですが、その代わり自由化に踏み切った国では市場の反乱というか、投機筋の売り浴びせと隣り合わせのリスクがあります。
突如の大暴落が恐ければ日常的に透明な会計処理をしていればいいのですが、それはしたくないが暴落は嫌という得手勝手な論理です。
(エンロンだって粉飾に手を染めていなければ、いきなりの大規模倒産にならずに早めに修正できたでしょうし、仮に方向転換失敗しても小型倒産で済んだでしょう)
長期支配体制を確立していた独裁者がある日突然暴動の嵐が起きて一族皆殺しになることが多いのですが、これが嫌ならば国民支持が日々反映されるようにして選挙で負ければ退陣するシステムにしておけば大きなリスクを免れられるのと同じです。
大型スワップ協定を完成させて、経済データ不透明性行き過ぎに対する市場の反乱・通貨の売り浴びせをできなくすれば、市場是正機能が働きにくくなります。
デモが起きたら、必ずデモ隊の数倍のカウンターデモ動員協力システムを作ったようなものです。
デモの場合カウンターデモの方が多くても、正規のデモ参加者に損がありません・・規模が大きくて目立てば目立っただけメリットがあるでしょうが、投機筋の通貨売り浴びせの場合、買い支え筋に負けるとつぎ込んだ巨額資金が全部パーになるリスクがあります。
(普通は空売りですので、仕手戦に負ける・・想定通り下がらないと大変です)
デモ参加しただけで臓器的摘出されるのと同じ制度が為替市場にできたと言えるでしょうか?
市場の反乱は独裁国家で大暴動がいきなり広がるのと同様に急激ですが、ダムの決壊になる前に、経済指標公開によって徐々に投資家が手を引いていく結果、徐々に株価や為替が下がっていく方が合理的です。
自国通貨大暴落・・例えば(ベネズエラのように)自国通貨が5〜10割一挙に下がると輸入物価が5〜10割上がって国民生活が大変なことになりますが、数年かけて1〜2割の下落=輸入物価同率アップの場合、その間の輸出競争優位に立てた貿易上の利益の方が大きいので国民は不満を持ちません。
数年かけてじりじり下がる場合、その間の貿易上の利益の還元・・給与や残業が増える私企業も売り上げ増があるので、仕入れ代金や負債返済額アップにも耐えられます。
コントロールされた自国通貨安のメリットが大きいのでどこの国でも緩やかな通貨安誘導の誘惑があります。
中国も韓国も日本の円高逆利用の為替操作して輸出を伸ばしてきたと一般に言われますが、かといって行きすぎた大暴落は困るという実はきわどい線を歩んでいます。
こんな都合の良い際どい線を歩めたのは、韓国の場合日本による巨額スワップ保証があったから・・中国の場合、発展可能性がまだ高いという大方の想定に乗っていたからと言われています。
韓国の場合、スワップ保証がなくなるとうっかり為替操作・意図的にいじると下落が止まらなくなり本当の暴落の引き金になる危険を犯しかねないリスク隣り合わせになります。
そこで昨年秋には不景気下なのに利上げをせざるを得なかったのは、さらに景気を冷やす痛みを我慢してでも暴落リスクよりは良いという選択に至ったからのようです。
11日に紹介した日経の再紹介(引用部分は少し違います。)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38387840Q8A131C1FF8000/

韓国の外貨準備高は10月末時点で4000億ドル(約45兆円)と潤沢だ。ウォン相場も安定している。ただ、韓国当局は1997年のアジア通貨危機の際、資本流出で国際通貨基金(IMF)への支援要請を強いられたため、米韓の金利差には敏感になっている。
米国の9月の利上げ以降、外国人による韓国への証券投資は2カ月連続で純流出となった。10月は42億7000万ドル(約4840億円)の純流出。新興国株の世界的な調整の一環とみられるが、韓国銀関係者は「米国との金利差拡大の影響がないとはいえない」とみる。
利上げは減速感が強まる韓国の景気には重荷だ。統計庁が同日発表した10月の景気動向指数(15年=100、速報値)は、景気の現状を示す一致指数が98.4と、前月比で0.2ポイント低下した。マイナスは7カ月連続だ。利上げは景気をさらに冷え込ませるおそれがあり、30日の金融通貨委員会では2人の委員が金利の据え置きを主張した。

とあるようにマイナス傾向を強めつつある状況下での近来上げによって、さらなるマイナスになっても苦しいだけでなんとか乗り越えられるが、いきなりが暴落が始まったら取り返しがつかないから・・という意見が大勢を占めたということらしいです。
この辺の内情をhttps://shinjukuacc.com/20181123-01/は以下のように引用しています。

ハンギョレ新聞によると、韓国銀行の関係者は
「金利引き上げが景気に良くないとしても、0.25%の利上げが沈滞を招きはしない反面、外国人資本の流出は万が一起きれば深刻な問題になる」

と述べているようです。

外貨準備とスワップ1

スワップ拡大傾向の結果、スワップさえあれば政府は経済政策の失敗を隠すために安心して外貨準備やGDPの過大発表が安易に行われるようになって来たように思われます。
比喩的に言えば、真水の外貨準備が緊急時に脱出しそうな外債より500億ドル足りない時に(500億ドル分粉飾していても)スワップ協定の枠が500億ドル以上あれば安泰ですから、スワップ分だけ粉飾許容範囲が広がる仕組みです。
スワップとは、経営者相互扶助同盟のようなもので経営者が自己保身のために粉飾を重ねていてこれがバレて株暴落局面がくれば、経営者連合が買い支え資金を出してくれるので仕手筋との資金投入競争に打ち勝てる仕組みです。
言わば企業が粉飾決算しても倒産しないし責任者処罰もないように保証され、粉飾し放題になったようなものです。
流石に私企業にそんな仕組みは許されない・・これでは株式市場が成り立たないのでそういう発想をすることすら許されないのですが、国家経営の場合だけ人民がかわいそうとか、国際経済秩序大混乱を防ぐという名分で行われるようになってきたように見えます。
上記のうち大混乱を防ぐという点は企業の場合「大きすぎて潰せない」という論理と同じでしかないし、大企業ならどんな不正をしてもいいのか?という論理に勝てないのが一般的です。
企業の場合いかに規模が大きくても、国家全体の粉飾と違って法的開示義務情報が多い上に株式市場・債券市場の相場に日々反映されるので国家のデフォルトと違ってバレるまでの時間差が短いので2000年代に入ってからもエンロン粉飾等々時々世界を騒がせてきました。
リーマンショックも結局は潰すと影響が大きいとの理由では、政府が救済できないという判断でした。
この結果、企業では「大きすぎて潰せない」という過去の(大きさにあぐらをかく)変な風潮は一掃されたように思われます。
ところが国家の場合、この風潮が今だに強固に残っているので無責任な国家運営が行われ財務諸表?粉飾が横行する土台になっているように思われます。
国家を企業に置き換えれば、倒産すれば露頭に迷う従業員がかわいそうという論理でしょうか?
異民族に支配されていたならば別ですが、民族国家であればこそなおさら過去の粉飾を許し・・いわば詐欺商法でうまい汁を一緒に吸い、受益したのもその国民ですから、受益した国民が責任をとるべきでしょう。
30年以上前のことになりましたが、豊田商事という大規模詐欺商法事件がありましたが、この企業を潰すと詐欺商法に関わっていた多数従業員が可哀想だから、破産させない方がいいという意見があったでしょうか?
ベネズエラが今年1月には、何万%というインフレ率になっていると紹介しましたが、メデイア論調の主流は現政権が権力にしがみつくことに対する姿勢批判のみですが、まともに働かずに高騰した原油収入に奢って国際常識無視で突っ走る政権を支持してきたのは、その国民だったのではないでしょうか?
企業倒産の多くが積年の弊の積み重ね(過去のブランドに頼ってダラダラと働く社員が増えて)でじりじりと競争力を失い倒産するのが普通ですが(例外的に特定トップの暴走もあります)、その弊を積み重ねてきたのは従業員一人一人です。
5月11日の日経新聞2p「文在寅政権の2年」に出ていますが、ルノーサムスン工場では昨年10月から、60回以上のストライキを実施したとか、現代自動車労組の法外な?要求が代表例として紹介されています。
仮に現代自動車が倒産した場合、最大の戦犯は経営者と労組でないかと思う人が多くなるでしょう。
ルノーサムスンが、工場閉鎖し労働者が仕事を失う場合、労働者を税金で救済する必要があるかの問題に置き換えたらどうでしょうか?
国家破綻の場合も、無責任な行動を支持してきた国民が相応の責任をとるべきです。
過去の政策を支持してきた国民も一定の責任を負うとしても飢え死にするような最悪自体は別途人道的救済対象でしょうが・・。
スワップの拡大は、その限度で無責任同盟のような効能があります。
大きすぎて潰せないという言葉がバブル前に日本ではやりましたが、バブル崩壊では山一証券その他国策大手銀行も姿を消したように、国家運営破綻の場合も、影響の波及をどう防止するかの知恵をしぼるのとは別に、国家会計の明瞭化システムを国際的に整えるべきでしょう。
これに応じない国は、国際決済取引から除外される国家扱いでも仕方ないのではないでしょうか?
戦争原因の多くは国内政治・国民困窮化に由来する(トップの暴走もありますが)ものですから、経済情報を透明化して健康診断のように早期に国内経済の病根を明らかにして国際社会からノーハウ提供を受けるのが合理的です。
不都合な事実を覆い隠す口実として、国際評価を受けるのを国辱として隠蔽するため、対外強硬論や隣国非難に没頭するのは邪道です。
企業粉飾動機同様に、国家運営がうまくいかないのは指導者の無能によることが多いのですから、経営がうまく行ってない評価を市場で受けるのは政権担当者にとっては恥でしょうが、国辱ではありません。
国辱ものとメデイア総動員していきり立つのは自己責任のすり替えです。
韓国では、アジア通貨危機を乗りきれずIMF管理になったのを政治責任としないで?国辱として、これの再来防止を最大の政治目標化しているようですが、指導者責任の問題を「国辱」という民族の恥意識にずらし、国家運営管理をしたIMF支配に対する怨念に変容させているようです。
外国や国際機関の指導・支配?を受けるのは国政運営能力が1人前でないことを赤裸々にされることですから、政権担当者にとっては文字通り赤っ恥をかかされた思いでしょうが、これを国辱問題にすり替えているのではないでしょうか。
こういう争点ずらしは、日本の明治維新頃以降の李氏朝鮮の右往左往ぶり・朝鮮民族は欧米列強到来にうろたえるばかりで日韓併合に至ったのですが、一人前の政府のテイをなしていなかった結果亡国に至ったのですが、この歴史も自己反省よりは、相手批判ばかりです。
当時の世界大激変の嵐の中で、清朝の縋ったりロシアについたり、自己統治能力がないから世界中が放置できない状態になっていたのが諸外国の介入を招く原因でした。
今でも朝鮮問題が複雑化する一方なのは、自分たちの問題を自分で解決しようとしないで周辺大国を巻き込んでうまく・ずるく立ち回ろうとするから混乱するのです

この10年〜20年の動きを見ると関係国が皆辟易して手を引き始めると見捨てられるのが怖くて核兵器やロケット開発等で注意を引く小細工の繰り返しです。
最近では対米交渉が行き詰まったのでロシアを巻き込もうとして金正恩が4月末頃にロシア訪問しましたが、相手にされなかったようでした。

中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ

ところで、日本では中国スジ保有の日本社債や株式が16年も大幅買い越しになっているようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYDMR6KLVRD01
中国の対日債券投資、再び増える公算-16年の買越額は記録更新か      2017年1月18日 12:27 JS
「中国による日本の債券購入は2015年と16年1-6月(上期)に記録的規模に達したが、その後は一服していた。だが日米の金利差拡大が日本国債の魅力を再び高めることから、中国による買い入れがまた活発化しそうだ。」
中国が米国債を売り、韓国への投資を引き上げて利子配当利回りの低い日本企業へ投資する魅力・必要性は何でしょうか?
ちなみに10年もの国債の日米金利差はhttp://lets-gold.net/chart_gallery/chart_gb_yield_ja-us.phpによると以下のとおりです。
日米10年債金利の推移チャート

日米10年債金利の推移

上記のとおりの金利差があって、今後米国金利上げが始まる・・更に差が開くのに、金利の安い日本の債券を何故中国が買うかです。
その理由は以下のとおりらしいです。
MIZUHO CHINA MONTHLYみずほチャイナマンスリー2017年3月号
中国アドバイザリーの現場から
「中国企業による『Made in Japan for Chinese』の動き」
みずほの解説記事引用を省略しますが、これを読むと、中国は中間品の自製・産業構造を高度化するためには単純な日本企業の中国進出・誘致策の限界が来ている状況が論じられています。
すなわち・・最終製品が日本企業名でも中国国内生産品では消費者が買わなくなっている・・どこで作ったかが重要・・消費レベルが上がって本当の品質重視になって来たことが窺われます。
日系企業名だけでは現地企業製と大差ないと言う認識・・日本企業進出による現地生産が限界に来ているようです。
これが訪日観光客の爆買いの基礎です。
それだけ中国民族企業のレベルが上がったと言うことでしょうし、日本人が食品や衣類等を国産でければイヤと言う意味・・見た目が同じでもちょっと違うど・・その違いが中国人にも分るようになったと言うことです。
そこで、・・単純な日本企業誘致や企業買収策から、中国資本によるOEMや業務提携など日本国内生産「made in jyapan for Chinese」のブランドをつけて逆輸入政策になって来ているとなっています。
消費材・・健康食品ベビー食品や医薬品・・肌に触れる衣類や漢方薬などでは顕著らしいですが、中国企業が日本で製造することによって中国(資本)企業でありながらメイドインジャパンを名乗れるメリットに傾斜していることが、日本への投資・・日本は資本完全自由化していますのでスキなように市場で株や債券を買えます・・株主や債権を入手して徐々に企業買収のチャンスを狙っている段階です。
そのためには日本人の嫌中意識・対中アレルギーを薄めるしかありません・これが対日強硬意見が減って来た背景でしょう。
親台湾国民感情に目を付けて?台湾資本であるものの、中国政府の息のかかったホンハイによるシャープ買収はこの流れの一環でしょう。
中国としては資本流出危機があるとは言え、環境技術その他まだまだ必要とされる高度技術部品だけではなく消費者の要望を汲み取ると、身体に直に触れる・・ソフト面に広がる日本の高度技術吸収に努めるしかない実態が見て取れます。
中国政府の国際政治上の意図は別としても政府がいくら反日教育をしても、人民の日本製品に対する信用が高い・・評価力・・消費者の目が上がっていることを表しています。
消費者の目次第で中国の企業製品も向上します。
こんなわけで、資本流出危機がありながらもここ数年中国資本の日本流入・・日本の不振企業に目を付けて企業買収の前段階である資本注入に熱心になっている原因らしいですが、日本とすれば、余計な資本が入って来る分円相場が上がってしまうデメリットがあります。
企業にとっては株が上がって嬉しいでしょうが、(裏返せば公然たる「いつでも回収出来る」賄賂みたいなもので保有比率が上がると反中的言動すると、売り浴びせられると怖いので親中的になって行かざるを得ません・・)金あまりの日本全体としては、事実上の賄賂の役割を果たす外資が入って来るメリットはありません。
ただ、ホンハイによるシャープの黒字化や日産傘下(ゴーン流経営革新)に入ることによって、三菱自動車の再生が軌道に乗って来たように、「現在流御雇外国人・・違った血を入れる)違った目での運営によって生き返る・・従業員が職場を失わないで済むメリットがあります。
中国向け輸出に特化する場合、日本資本のママであっても現地責任者を中国人にするだけではなく経営トップも日本人経営者よりは中国人にした方が合理的かもしません。
国内工場・・生産維持のためには、輸出先の資本・経営者の方がニーズをつかむのに長けているので、合理的でしょう。
日本企業が中国の解放後中国へ進出したときには、日本向け野菜・餃子あるいは縫製工場等でしたが、日本市場向けである以上日本の市場動向・嗜好に詳しい日本人が行って指導した方が売り易いに決まっています。
パリでファッション製品を売るならば、パリの事情に通じた人・・パリ人を現地人の目利きによる商品を送った方が普通は良いでしょう。
中国資本による支配?を不愉快に思う人がいるかも知れませんが、それの逆張り・・中国向けに特化するならば、中国向け製品を作るのに何百人の日本人がうまく中国人をトップに使って作ると思えば良いでしょう。
源氏や平氏の貴種を地元武士団が棟梁に担いだり、親王を総大将に担ぐのと同じことです。
サッカー等で外人を監督にし、フィギアースケート等で外人コーチを頼むのと同じです。
高校野球でも関係者全員が、甲子園に出たいのであって、地元出身監督で県内のリーグ戦で負けてしまうよりは、監督が県外から来ても地元チームが甲子園まで勝ち進めた方が良いに決まっています・・武士団としてもその合戦に勝って生き残ることが先決であって、団結して勝てる旗印になるならば、お飾りの総大将など見たこともない親王サマでもは誰でも?どこから来ても良いのです。
日産や三菱自動車の例を見ても、従業員を養ってくれるならば外資でも社長が外人でも良いのです。

民度を上げる→外貨準備減少2

高度成長期以降の地価高騰で潤った千葉の近郊農家の結果を見ると(全部を知っているわけではありません知っている人だけのことです)多くの農家では一時的に羽振りが良かっただけで元の木阿弥になっている印象です・・。
地方に大手工場などが進出した場合、その中で技術を磨いて地元で創業出来る人がいるかと言うとなかなかそうは行きません。
とは言え、日本のゴールドラッシュ時代の安土桃山時代・・今考えると金の大流出・・貿易大赤字時代があってこそ、絢爛豪華な時代の幕が開いたのですが、みんながみんな等伯や永徳、宗達のような芸術家になったのではなく、裾野が広がった結果とすれば、傑物はひと握りで良いのです。
消費生活向上・・遊びの中から、工夫や新しい芸術や新製品が生まれる関連があることは確かでしょう。
日本の現在の世界的評価は、安土桃山の後を受けた江戸時代に庶民の消費生活が世界に先駆けて充実していた結果によると思われます。
消費経験が将来の民度にどう言う影響が出るかは別として、(私なりに最大限中国寄りの意見を書くとすれば)兎も角外貨準備が底をつくまで歯を食いしばってでも人民に消費経験させない限り前に進まないと覚悟を決めたのが中国ではないでしょうか?
雄安新区建設の新バブル構想が今朝の日経新聞にも出るようになりましたが、箱物や土木工事で貴重な資金を使い、人民も金儲け・投機的売買にうつつを抜かしていて健全な消費者が育つかの疑問がありますが、日本でも豪壮な城郭建築が豪華なふすま絵を誘発した例があります。
ところで北京に関しては私は元々北方民族・・女真族が南下したときに侵入した入口に当たる場所・北京を首都としたのは合理的だったでしょう。(北条氏が関東へ進出したときに入口の小田原を本拠地にしたのと同じ)
しかも清朝の支配は、遠くの異民族が服属意思表明していただけで直截支配していなかったので全体の端っこに首都があっても間に合っていました・・。
対外経済中心時代で且つ直截支配下に置く現在国家の首都としては、北京は地理的に偏り過ぎている外、国際交易にも不便・・このママでは無理があると言う意見を元々持っていました。
習近平は鄧小平の深圳特区・江沢民の上海特区の向こうを張って、これに負けないレガシーを残すために雄安親区を計画したもので、(ネット報道だけではなく日経新聞がが報道するようになった以上は)早速権力に媚びる多くの関係者が動き出した模様です。
深圳特区や上海開発は相応の地の利を踏まえて開放政策にマッチしたので成功したものですが、新首都?雄安親区は北京から更に内陸に入っていますから、経済原理からして・・今時可能なの?と言う第一印象を抱くのは私だけでしょうか?
この種の意見は、これまでネットでも出ていませんし、日経新聞にも出ていません・・当面世界的な関心は新バブル創出がうまく行くのか?そんなことばかりで中国経済の先行きがどうなるのか?ひいては世界経済に与える影響に関心であって、外野にとっては「地の利がどうの・・」と言う先のことまで心配してやる必要のないことはそのとおりです。
話題を外貨準備減少に戻しますと、日本のゴールドラッシュのような蓄積がないのが中国の苦しいところで、そのために気前よく使い切れない・・その間の人民元防衛策に必死ですが、内需拡大→貿易赤字ですから、人民元は下がるしかない・防衛するのは元々無理があります。
貿易黒字とは何か?ですが、難しい説明は専門家に御任せするとして、あっさり言えば、国内利用以上のもの生産している国と言うことでしょう。
これを売るのに忙しく折角作ったものを自分が充分に消費出来ていない社会とも言えます。
アメリカの場合巨額貿易赤字を続けて来た・・働くより消費優先だからこそアップルその他新しいものが生まれているとも言えるでしょう。
医者の不養生といいますが、他人の医療に忙しくて自分の健康管理する暇がない状態です。
植民地支配経済・・宗主国向け生産をさせるが植民地下の奴隷的労働階層は自分の作っている物を消費する権利がない・・解放当初の中国は日本の植民地ではないのに日本向け輸出製品専用工場を誘致していました。
多くの後進国政府が外資進出許可するときに、「先進国企業が国内市場を席巻してしまうと困る」と言う理由で国内販売を許可しないか、許可するときには外資の比率を半分以下の合弁しか認めないなどと制限して民族資本が学ぶ機会を与えろと言う条件付きで許可しています。
リーマンショック後の中国の内需拡大政策は、今後は自分が作っているものを自分も消費したいと言う意欲表明とすれば合理的です。
中国が内需拡大に舵を切った以上は、黒字が縮小し外貨準備・蓄えが減って行くのは仕方ないと言うか自分で選択したことです。
内需拡大をやめて経済パフォーマンスを良くしない限り奇策や規制では一時しのぎでしかない・・基礎にある人民元安の流れを止めない限り資本流出圧力をいつまでも塞き止めることは出来ません。
ところで以前出血輸出の構造を書いたとおり、出血輸出をるのは仕入れ資源輸入代金を払うしかないので、付加価値をつけた人民の労賃を減らすしかないので出血輸出などしていられません・・内需拡大=人民に豊かな消費をさせる以上は、貿易黒字が減るのは当然の帰結です。
外貨準備の続く間に消費生活を充実させて消費材を作れる民度に引き上げる・・民度レベルアップ・・これが間に合うかのテスト中と言うところでしょうか?
この覚悟をすれば中国の外貨準備急減を騒ぐことではありません。
転売目的のマンションや鉄道ばかり作っていて民度が上がるかの心配があるでしょうが、この後で書くようにこの数年で中国消費者の消費レベルが上がり・・日本国内製品でないと信用出来ない・・と言う選好が増えて来たことから見ると、短期間に民度アップ出来る可能性がないわけではありません。
この間の食いつなぎ・・外貨準備のうちで(ベネズエラ債?のように売るに売れないものが多いので)市場で売れるものから売って換金するしかないと言う姿勢ではないでしょうか?
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170107/Recordchina_20170107010.html
2017年1月4日、韓国金融監督院が発表した統計から、2016年1~11月末に中国人投資家が韓国の株式市場で売却した株式の総額が1兆5000万ウォン(約1500億円)に上ることが明らかになった。環球網が伝えた。」
表向き韓国のサード配備に対する嫌がらせっぽいですが、韓国には義理を欠いても失うものが少ない・・(韓国の中レベル技術移転はほぼマスターした・今後は韓国企業は競争相手でしかないと言うゲンキンな読みで)と言う切り捨て対象にしただけ・5月6日に書いた北朝鮮切り捨て政策と同じ文脈で見るべきでしょう。
中国は民度レベルアップ→内需拡大による貿易黒字減少は仕方がない・この間のつなぎとしては、換金可能で今後技術移転の旨味のない国の外貨から順に売れるものから売りたいだけではないでしょうか。

消費経験が民度を上げる→外貨準備減少

世界的に資源国や新興国通貨下落が進行している状況下で、ローエンド生産に頼る中国経済の限界を見た世界が、資本流出を始めたのですから、資本取引の規制さえ強化すればどうなるものではなく、ハイテク製品に挑戦する力があるかを世界は見ています。
スマホで言えば、中国企業がアップルに負けない新製品を仮に作って世界を席巻しても、その製品工場として最低賃金で働く工場しか中国に作れないのでは、ベトナム等に工場立地を奪われてしまいます。
このシリーズの関心である・・結局は民度次第と言うことです。
一握りのエリ−ト研究者や資本家だけが潤う社会では、豊富な労働力が売り物の中国の金看板がどうなるか?と言う疑問です。
多くの国民がローエンドからセカンド〜ハイエンド製品生産に従事・参画出来ないと平均を引き上げられません。
13〜14億人と言われる巨大人口を皆ハイテクレベルに引き上げるのは無理でしょうから、これまで「売りもの」であった巨大人口・低賃金労働者が逆に足かせになって行きます。
巨大人口はこれからの時代には足手まといになるだけで、シンガポールのように100万前後のコンパクト人口で優秀人材を集めた方が有利な時代が来ます。
アメリカもニューヨークをシンガポールのような都市国家にして独立した方が有利・・アメリカの格差問題の本質は個々人間の格差に矮小化した砂粒の問題ではなく地域格差・・ニューヨ−クその他の大規模都市国家とその他ローカルの格差でしょう。
これを正面のテーマにすると、もともと民族国家の歴史のないアメリカ合衆国の分裂に結びつくので、メデイアその他文化人が個人問題に誤摩化しているのではないでしょうか?
19世紀から第二次政界大戦までの正義より武力中心の大鑑巨砲主義の時代には、国家組織・GDPは大きいほど有利でしたが、平和=正義が守られる時代になると小回りの利く組織が有利で、今のところシンガポール程度の規模が一番合理的な感じがします。
19世紀型思想に特化したアメリカやロシア中国は、人口を増やし過ぎたので時代遅れの規模の大きさを持て余している・・実は困っているのを格差と称しているように見えます。
この数十年で見てもロシア、中国、アメリカは19世紀型腕力時代の名残にこだわっていて失敗を繰り返しています。
例えばいくらイノベーションを活発化しても・・アップルのように大ホームラン級の新製品開発に成功しても、あるいは金融で大儲けしても、生産の方は賃金の安い中国等の工場でつくるしかないので大量の国民を養うのは無理・利子配当所得しかないから、資本保有しない国民はそのおこぼれに頼るしかない・・寄付や社会保障等の善意に頼る階層が増える一方です・・。
この辺は日本の国際収支の紹介で10年ほど前から書いてきましたが、国際収支の黒字内容が貿易黒字から所得収支に移って来る・・所得収支黒字が基本になると資本蓄積の格差に比例して(利子配当収入のない階層には国際収支黒字は関係がありません)格差が生じて来るのは必然です。
02/11/09 「バブル崩壊後の自己資本比率規制2 05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」前後の連載で、当時の過去10年間の国際収支表を紹介して、この間に貿易黒字の比重が下がり、所得収支黒字が経常収支・約20兆円の黒字の約半分を占めるようになっていること・・海外現地生産拡大で労働による生産収入比率が徐々に下がって行く一方・・利子配当収入比率が上がって来ていると書きました。
当時は約20兆円黒字の半分を所得収支・利子配当送金が占めていることを前提に意見を書いたのですが、18年5月11日(2日前)のコラムに久しぶりに日本の国際収支を紹介しましたが、これを見ると同じく約20兆の総合黒字の内、実に18兆もの、利子配当等の(不労?)所得になっていることが分ります。
こうなると高成長期を経験している間に資本収入層に脱皮出来た階層と資本所得層に参加出来なかった階層との格差が広がるのは当然です。
個人の一生で言えば、バリバリ働ける若い間に資金を蓄えて労働による収入が激減して来る老後には自宅にローンも割り住居費ただで利子配当(民間年金や家賃)収入で悠々自適出来ている人と蓄積して来なかった・アパートの家賃払わねばならない上に預貯金も少ない階層との格差が次世代に及んで来たのです。
この10年ほどでまさに親世代の格差が次世代に及んで来たと言うことでしょう。
この辺は親の家に同居出来る(家賃不要の)恩恵や保有アパートなどを相続出来る都市住民2〜3世と自分で新規取得しなければならない都市住民1世の格差・・その他いろんな角度から喩えば、February 5, 2011,「都市住民内格差7」等で連載して来ました・・。
赤字国債を次世代に負担させるのか?と言うスローガンも「国債保有者から相続する人」と負債を相続するだけの人との格差であって世代間対立の問題ではありません。
各種社会保険赤字問題も同じで、世代間対立の問題ではなく富裕高齢者と貧困高齢者の格差を緩和するためにどれだけ社会的負担するか→結局は富裕層の負担問題です。
これがアメリカでその他先進国で格差問題になっている元凶でしょう。
中国はチャイナプラスワンの挑戦を受けるようになって、民度の引き揚げが急務になって来ました。
ローエンド製品の場合、外資の指示どおり作れば良いだけですが、製品開発となると消費者経験がないと、消費者目線での開発が出来ません。
そこで先ずは内需拡大・・消費経験させるのは正しい選択ですが、それは必然的に貿易黒字の縮小赤字体質に変わって行きます。
国民をレベルアップするには営々と積み立てた外貨準備を取り崩してでも、外貨準備のあるうちに何とかなるのでしょうか?
国民が豊かな生活をしないと質の高い商品を工夫出来ないのですから、先ずは良い生活をさせることから始める・・内需拡大の方向は正しい選択です。
ただ土地成金がイキナリ文化的生活を出来ないように、マネーサプライを増やすとバブル・・不動産転がしに走ってしまうのは順序としては仕方がないのかも知れません。
もしも、外貨準備を食い尽くしてバブルで終わってしまうと何も残らない・・少しは文化受容の方に行く人もいるでしょうが、(そう言う人は文化の成熟した国へ逃げ出し)多くの国民には何も残らない可能性があります。
億単位の人が海外旅行出来ただけでも、何か残ったことになるのかな?
安土桃山文化は世界有数の金産出によるバブル景気によるものだったと言い得るでしょうが、この金の輸出による贅沢が、絢爛豪華な文化を生み出したのです。
この担い手は国民全部ではなくホンの一握りであったとしても、後の時代に大きな影響を与えるのですから、それでも良いのかも知れませんが・・。
中国の場合、一握りの影響を受けた折角の人材が海外に逃げてしまう可能性が高いのでそこが心配です。
当面の国力底上げには結びつかないで終わると、バングラデシュやベトナムミャンマーなどと低賃金競争を繰り広げるしかない・・解放前の14億の貧民が残る・元の木阿弥になる可能性があります。
一方で苦し紛れに国威発揚に励む・・軍事力強化・・周辺威嚇にエネルギーを注いでししまうのは長期的にマイナスにこそなれ何の価値もありません。
ローエンド製品レベル〜セカンドエンド〜ハイエンド製品へと経済底上げの必要なときに権謀術数や軍事力に人材投入が偏ると将来性が限られてしまいます。
兎も角今の外貨準備減少は、将来のために貯金を崩しても息子を大学にやるのと同じで雌伏のときとして頑張るしかないでしょう。
これはこれで正しいのですが、ナケナシの貯金をはたいて都会へ遊学させたのに息子娘らが勉強するか、遊びほうけるかの瀬戸際です。
それを決めるのは数千年単位の基礎レベルの問題です。

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