サービス社会化1(貿易依存度1)

WTO違反の裁定などどうせ時間がかかるので、その前に日本が屈服して来るだろうと言う実力主義・・WTO裁定(負けるのが分っていても)の結果を中国は気にしない態度を明らかにして来ましたが、僅か1年で大規模訪日団を送るところまで追い込まれたのは中国の方でした。
レアース禁前後には、事前に決まっていた訪中使節その他ありとあらゆる日中交流日程を予定が立たないなどと言う理由で次々とキャンセルして来たことから見れば、自分の方から訪問して来るなどは180度の方向転換です。
ただ、この辺はそれほどメンツにこだわらない中国人民の柔軟性で、韓国のようにトコトン修正出来ない硬直民族との違いです。
いろんな事象に対するネットコメントを見ると、韓国人のコメントでは北朝鮮政府声明のようにいつも決まりきった反日意見しか出て来ませんが、中国人のコメントはネット検閲が厳しいと言われる割に、自国を客観的に見るコメントが多いのをみるとこれが、政府の柔軟性と繋がっているのでしょう。
もしかして柔軟性と言うよりも実利100%の国民性・・恥も外聞もない・・実利優先と言う方が正しいのかも知れませんが・・。
中国地域は異民族支配の方が長い・現在でも多民族社会ですから、物事を相対的に見る習慣が本来あるとも言えます。
専制支配が長かった印象から外れますが、異民族・多民族社会であるから自由に意見を言わせると百家争鳴でまとまらない・・強権支配しか出来なかったとも言えます。
巨人と言われたチトー死亡後ユーゴスラヴィアが解体に向かった例でも分りますが、余程の指導者か強権支配しか社会が持たないのかも知れません。
低レベル社会では落ち着いたが話し合い解決が不可能なので、議院内閣制ではなく大統領制でないと国家運営出来ない原理に繋がっています。
大統領制とは専制支配の民主的修辞です。
元々漢民族自体が黄河中流域の洛陽〜開封までの盆地・・中原地域を囲む四囲の個性の異なった民族・・北狄(高原・山麓の狩猟民族・西戎(荒涼たる砂漠の騎馬民族)・南蛮(江南・湖沼水郷系民族)、東夷(黄河デルタ地帯の民族)が、市場交易を求めて渡河の容易な黄河中流域に集まって混合した民族がその原型です。
時代の進展により、狭い中原から交易圏が広がり、(春秋戦国時代に新興勢力楚王が、周王室の鼎の軽重を聞き、秦末漢楚の攻防も結局は長江流域が交易圏に組み込まれて来た時代を表しています)今では何千km単位の広大なイメージの西戎(アフガニスタン付近まで含む)南蛮(ベトナム〜インドを含む)東夷(朝鮮日本を含む)ですが、元は洛陽あたりを中心に目に見える範囲の周辺山地・原野・デルタ地帯の先を指していた言葉です。
交易権が広がると水運に便利な便利な下流に中心地が移り、洛陽から開封に都が移って行きます。
日本でも壬申の乱の頃の東国とは、今の岐阜県あたりを指していたのですが、中世では箱根以東をさすようになったように、周辺呼称の範囲は行動圏の広がりに連れて広がります。
レアアース禁輸に話題を戻します。
レアアース禁輸後約1年経過で勝負がついて中国経済代表団が訪日せざるを得ない結果になったのは、WTOの裁定(正義)によったのでなく、日本の技術力・抵抗力が上回ったことによります。
中国は嫌がらせで日本企業を閉め出したつもりだったのに、日本の高度技術が必要なので日本からの投資減退で参ってしまったことによります。
(穴埋めにドイツ誘致を計画しましたが補完し切れないことが分ったので、手のひら返しに訪日団を結成するしかなくなったのです。)
現在韓国が中国の締め上げに参っているのは、フィリッピン同様に韓国には代替の利かない高度技術が少ないのでスキなようにやられている原因です。
日本もBtoBではなくBtoCあるいは訪日中国人観光客や現地スーパーのような代替性の高い分野に頼る業界が増えると、中国が何か要求を通したくなるとイキナリ対日観光客を絞ったり、現地日経コンビニなどを標的の不買運動など嫌がらせが始まるので、リスクが大きくなります。
フィリッピンのバナナの通関手続を故意に遅らせて腐らせてしまったりしていましたが、レアアース事件のときにもこの味を占めてたのか?日本からの輸入品の通関手続を故意に遅らせるイヤガラセをしていましたが、部品は腐らないし困ったのは輸出向け工場で日本製部品の早期組み込みを必要としていた中国民族企業の方でした。
現在中国の対韓嫌がらせも観光・韓流その他消費系が困っているだけで、今朝の日経新聞によるとサムスン・SKなどの対中半導体輸出は今年二月は前年比5割増メモリーは8割増とかで好調らしいです。
今後中国の内需目的の進出企業が巨額投資してしまうと、フィリピンのバナナのように何をやられても我慢するしかない・・かなりのリスクが生じます。
ここからサービス経済化にどのように対応するべきかテーマに入って行きます。
3月11日日経新聞朝刊7pには、米雇用23.9万人増の見出しとともに「完全雇用の死角」の題名で1990年から2016年までに民間雇用者総数は3000万員増えたが製造業では500万人減り代わりにサービス業では2500万人増えている」
「長い目で見ると給与の高い製造業の減少傾向が続き給与水準の低いサービス業へシフトが進んでいる」
となっています。
その記事の冒頭に建設現場では、給与を2〜3割上げても人手不足のままと言う現象を紹介しています。
如何にも白人・中間層は元々3K職場・建設現場に来ない・・移民労働者が入って来ないとどうにもならないと言うイメージ操作っぽい記事でもありますが、一応こんなところです。
全体の論調は(移民に職を奪われたのではなく)完全雇用下なのに多くの人が不満を持つようになったのは、サービス業シフトが賃金低下・生活水準低下を進めたから・・と言う説明です。
先進国の発展過程は、一般的に地場で成功した企業が県外等へ輸出し、次いで◯◯地方から全国規模輸出となるに連れて工場も域外に作って行く、最後に海外展開して行くのでこの間に儲けの還元などで自然と内需・サービス業も追いついて行きます。
AI化やロボット化オートメ化進展で製造業の発展に連れて成長していたサ−ビス業が、(工場周辺飲食店ではなく)製造業と切り離して独自に必要な時代が来たのです。
中国、韓国などの中進国の足踏み現象を経済的に見ると、この順次発展の過程を経ていない分、より大きな構造問題が起きるように見えます。
自発的発展ではなく、低賃金を武器にした世界の工場機能を果たすときには、元々ゼロのところに先進国から先端的近代工場が進出して来るので後進国の前近代的生産性から見ると百倍?規模で生産性アップする上に、誘致にあたっては国内産業保護のために当初100%輸出用生産しか認めないことが多い・・国内需要無視の輸出型工場誘致ですので先進国本社で輸出先を用意してくれる・・作った分だけ売れます。
中国開改革開放後に日本向け野菜などの(日本人好みに合うように)生産指導が盛んでしたが、全量日本のスーパーなどが引き取る契約でした。
毒餃子事件の騒動の報道もこの種の流れは分るでしょう。

政治と信頼2(ルール違反・実力行使)

直ぐ見える単純利害レベルでは・・アメリカが日中対立に関わって軍事支出が増える・人命損がはっきりしている割に、目に見えるメリットが少ないのでこれを対中密約で譲る可能性を否定出来ません。
日米安保がアメリカのサボタージュにより実効性がないとなれば、アメリカの世界的信用下落その他複雑・間接的影響は大きいものの、複雑系に弱いトランプ政権のレベルからすれば、サボタージュのレベルを外見上分り難くして誤摩化す程度の裏取引がありそうです。
結局はアメリカ国内の鉄鋼業界救済・進出済みの自動車業界等救済のために、日本を売る・・アジア安保を(裏で)放棄することになる可能性があります。
その上、中国(との裏約束を言わないで)も45%の関税その他の要求を中国が飲んだのだから、日本も相応の高関税または輸出制限をのんでくれと言う要求に使って来るでしょう。
これを防ぐために安倍総理はトランプ氏の懐に飛び込んだのですが、彼はいくら約束してもその場の目先損得で動く・・これを行動原理にしていますから実は信用出来ません。
長年掛けて成立して来たWTOの約束を簡単に踏みにじることも厭わないと言い、アメリカ自ら推進して来たTPPを何の根拠もなく反古にすることを何と思わない人物です。
WTO違反を問題にしないと言う意味は、その前に実力行使してしまった方が勝ち・訴えられてもそのときのことだ・・アメリカは強いんだぞ!と言うことでしょう。
反日暴動時の中国によるレアアース禁輸も同じ論理・・日本がWTO違反と訴えても結果が出るまで数年以上かかる・・その間日本が持ちこたえられなければ、屈服するしかない・・訴え取り下げを強要出来るだろう」と言う読みによる実力行使でした。
戦国時代に小さな城が何故あるかと言うと簡単に占領されると応援部隊もどうにもならない・・互角に戦えないまでも、少なくと応援部隊が来るまで持ちこたえられる程度の防衛力が必要とされていたからです。
戦国時代の物語では、応援部隊が間に合うと双方大軍同士のにらみ合いでちょっとした小競り合い程度で一定期間経過で双方退陣する流れですが、応援軍が到着前に城が落ちてしまうと、応援軍はなす術がなくそのまま帰ってしまうパターンです。
双方が主力軍の激突を辞さない覚悟のときには川中島の合戦や長篠の合戦みたいになりますし、イラクのクエート侵攻のように勝負がついた後でも米軍がこれを奪い返しました。
そこまでやる気がないと、ロシアのクリミヤ併合のように、既成事実を作ってしまった方が勝ちです。
このように、日米同盟と言っても米軍到着まで日本が一定期間自力で持ちこたえるのが原則です。
WTO違反で訴えるにしても裁定が出るまでの間、自力抗戦能力がないと絵に描いた餅になります。
フィリッピンは折角国際司法裁判所の判決で勝っても、勝訴の効果を主張出来ないほど弱いことが明らかになりました。
たとえば、レアース禁輸時の時間軸・帰趨を書いておきます。
.中国レアアース禁輸に関するhttp://www.h-yagi.jp/00/post_231183.htmlの記事からです。
「WTO(World Trade Organization:世界貿易機構)紛争解決制度は3月26日、中国がレアアース(希土類)の輸出に課している関税や割当量制限を「不当」と認める裁定を下しました。
日本や米国,EU(European Union:欧州連合)は平成24年6月に中国へ共同提訴。日米欧勝訴の正当な裁定が下されましたが、中国は裁定を受入れるか、控訴するか中国商務部は裁定内容を評価中。フィナンシャル・タイムズ紙は「今回の判決で片付きそうにない」と評しています。」
「スマートフォンやHV(ハイブリッド)車に欠かせないレアアースは、中国が世界をほぼ独占状態の生産量で日本は中国からの輸入に約9割も依存。平成22年9月に尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件を機に中国は,対日経済制裁ともとられる一方的なレアアースの禁輸措置をとりました。」
「中国のレアアース禁輸措置を受け、米国やオーストラリア、太平洋の海底など鉱床開発が進められ生産は広がり価格も下落。さらに、日本では先進技術でレアアースに頼らない技術も開発するなど、中国は自らの行為で立場を弱めた結果となりました。」
上記記事は2014年4月1日の記事ですが、平成22年の禁輸措置=2010年のことですからWTO裁定まで約4年かかっており、しかもWTOは2審制ですから、控訴して最終決着までには更に数年かかかってしまいます。
(最近最終決定が出たように記憶していますが、最早ニュース価値が低いからかネットですぐに見つかりません)
南沙諸島を巡る領土紛争を有利に進めるためのフィリッピンに対する中国のバナナ輸入規制等の嫌がらせでは、フィリッピンは簡単に屈服しました。
折角国際司法裁判所で完勝したのに、ちょうど政権交代があって就任したばかりのドウテルテ大統領はこの効力を主張しない・・屈服を選ぶしかなかった印象です。
レアアース問題が実際に解決したのは、WTOの裁定によるのではなく輸入の9割も中国生産に頼っていた日本が新技術開発に成功したことによって、中国の方が禁輸を続けられなくなったことによります。
国際関係は戦国時代がちょっと良くなった程度・・正義が貫徹する社会はありません。
日本は充分な在庫があり素早く技術革新出来たので、逆に中国が在庫増加に困って勝負がつきましたが・・。
ついでに同サイトの[2013.9.30」の記事もお浚いをかねて引用しておきましょう。
中国当局:尖閣領土問題でレアアースの日本輸出を制限

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日中関係の悪化は平成22年、尖閣諸島での中国漁船衝突事件から始まり、当時弱腰だった民主政権は海上保安船へ衝突させた中国人船長らを逮捕するもののあっけなく釈放。領土問題が勃発し中国当局は、ほぼ独占輸出品であるレアアース(希土類)の対日輸出を制限しました。
日本企業は、代替国からの輸入や技術の力で代替品、リサイクル技術の向上で中国産レアアースのニーズを急減させました。結果、昨年の中国のレアアース生産量は、ピーク時の平成18年の16万トンから半減。日本への輸出量は平成22年からわずか2年で4分の1に減少しました。日本の技術革新が中国の外交カードを打ち消し、中国当局にとっては大きな誤算となりました。日中関係の冷え込みが続くなか、中国を代表する金融グループや通信企業のトップら11人が9月25日、首相官邸を訪れ菅官房長官を表敬訪問。中国のトップらは、「日中の企業同士での交流を深め、日中関係を良くしたい」と述べ、民間交流の重要性を強調しました。
チャイナリスクを痛感!技術革新こそが日本の外交力
昨年(この記事は23年9月です)の尖閣諸島国有化では、相変わらず中国当局の嫌がらせは続くものの外交カードは切ってきません。外交カードを安易に用いたことで日本企業にチャイナリスクの恐ろしさ知らしめ、その対抗策に技術革新が日本の外交力であることを気づかせました。」

日中関係悪化の影響:貿易は1割減、中国への投資は3割減
JETRO(日本貿易振興機構)によると、今年上半期(1月~8月)の日中貿易は、前年同期比10.8%減の約14兆5,290億円。4年ぶりの減少を記録しました。中国向け直接投資も同31.1%減の約4,900億円まで落ち込みました。中国経済の需給バランスは日本企業の影響だけでも痛手となったはずです。」

政治と信頼1(意思表示の責任)

不確実性とは何か?要は相手が何をするか分らない・・下の者は何をすれば良いか分らない不安・信用出来ないと言うことです。
昔から政治には周辺者の支持が必須ですが、その支持は約束を守る信頼の上に成り立っているモノで、これ形式化・・「見える化」したの中国古代の韓非子・法家の思想であり、西欧近代の法の支配です。
現在で言えばマニュアル化でしょう。
法とは、国家・為政者の支配・命令の意思表示ですが、仮に一方的に制定されたものであっても、この命令に従った者に相応の恩賞を与えたり、処罰出来ない(罪刑法定主義)など君主自身の行動も縛られる・・国民との約束です。
国家が個別国民と個々に約束出来ないので、公布と言う形式で国民全部が拘束される約束・対世効があるのが「法」であり、個別意思表示でも相手方に対して法律効果が出る・・守らねばならないのでこれを法学用語で「法律行為」と言います。
民法
第五章 法律行為
    第一節 総則
(公序良俗)
第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
(任意規定と異なる意思表示)
第九十一条  法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。
(任意規定と異なる慣習)
第九十二条  法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。」
「法」とは国民が守るべきモノと言う意味であり、個人の意思表示に法律効果があると言うことは、意思表示したことは守るべき義務・責任が生じると言うことです。
企業が消費者の意見を聞かずに一方的に示す(民主的手続がなくとも)約款やレストランのメニューであっても予め示した取引条件・意思表示に企業自身が不特定多数の顧客に対する効果が出る・・縛られるのは「法」と個別「意思表示」の中間的場面です。
一方的命令・・通告であっても実効性を持たせるには、命令・ルール通りにしたことが褒められ、処罰されない・・しょっ中変えない・安定性・信用が重要です。
店舗も定休日や執務時をその都度変えると、せっかく行ってもお休みだったら困るので、客は安心てその店に行けません。
約束は守るが自分に不都合になると朝令暮改では、いつ変えられるか心配で国民や相手は安心出来ません。
議会制民主主義とは君主が勝手に国民に命令・約束出来ない・・側近に諮問していたのを民選の議会で作るようになった内部手続の問題であって、これを経ていない時代でも公布したり命令した途端に国民や官僚に対する約束になる点は同じです。
政治が機能するには、国民が法(政府の約束)に従っていれば大丈夫・政府を信用出来ることが大前提です。
「綸言汗の如し」言われて来た所以です。
これを世界規模に及ぼすと国際合意の重みです。
世界の覇者が法・・過去の国際合意を好き勝手に変更するのでは、民(世界の弱小国)は何を信じてよいか分りません。
アメリカは近年国力の衰えが見えるとは言え、今なお世界最大の強国ですし、アメリカの大統領は世界最高の権力者です。
この最高権力者がアメリカ主導で決めて来た過去の国際合意を自国都合で一方的に変更すると宣言しているのですから、今後アメリカ主導の国際合意をしても彼の気持ち次第で一寸先が見えないとなると、国際合意の価値が減少します。
トランプ氏は、「過去の合意をちゃぶ台返しするが、自分がした合意は守る」と言うのでしょうが、彼の任期は最長でも8年しかありません。
国際合意は長期間の行動指針ですから、大統領が変わる都度変更になるのでは、安心して長期的関係を築けません。
合意だから変更要請を断れば良いかと言うとそうは行かない現実があります。
アメリカの圧倒的影響力があって、高関税や輸入禁止、日米安保ももっと費用負担しないと撤収すると言われれば、日本は拒み切る力を持っていません。
戦前日本がアメリカの不当な要求に次々と屈服・受入れて来たのに対して最後にハルノートを突きつけられて遂に妥協の限界が来て日米戦争になりました。
戦後も自由貿易と言いながら繊維交渉、電気交渉、鉄鋼・半導体・プラザ合意などなどその他全て無理な要求全部受入れて来た歴史です。
日本は無茶な要求されれば、大方飲まざるを得ない弱い関係・・変更交渉に入れば思うままに変更出来る日米の力格差があります。
合意の変更を求めると言うのは一見公平そうですが、力関係に格差がある場合、強い方が言い出すのは一方的変更になり勝ちです。
これを横で見ている韓国がアメリカのように、日韓条約や過去の合意をスキなように反古に出来ると思うようになったように見えます。
韓国の主張や動きを見ると、オブラートで包んでいるアメリカやユダヤ系の本音をそのまま言って来る便利な存在です。
世界中が(3月11日に書いたように中国はかなりの抵抗力がありますが・)一強のアメリカから過去の合意変更を強要されると日本同様に拒み切れない関係ですから、過去の合意を変更したい・アメリカが高関税を掛けると言われるとみんな困ります。
関税を一方的に上げれば報復合戦になるとメデイアは言いますが、日本はとても報復する力を持っていません。
企業で言えば社長が変わる都度、弱い下請けに対して前社長時代の合意を下請けの不利な方向へ変更してくれと言って良いのかと言うことです。
世界最高権力者がこんなことを言い出せば、折角時間をかけて合意してもいつ変更してくれと言って来るか分らない・・権力者への信頼が失われます。
言わば事実上の強制ですから一方的に約束を破るのと結果が変わりません。
政治・権力は支配下の信頼によって成り立っているのですから、横紙破りの一方的なことを宣言すると一見権力誇示で強そうですが、アメリカ自らの世界支配構造をぶちこわす方向へ働くことになります。
国益・・王権維持のために王様は無茶しないのが鉄則です・・勇ましく荒っぽいことを主張すると一見強そうに見えますが、ヤクザがすごむのと同じでそのときの被害者一人に対しては強権を振るえますが、多くの人が眉をひそめる・・結果的に多くの信頼を失う結果になります。
アメリカにとっても長期的には損することですから、アメリカのメデイアは、国益を守るために政権の足を引っ張る方向よりは、政権を軟着陸させる方向へ協力すべきでしょう。
日本にとってもっとも危険な想定・・南シナ海や尖閣諸島問題放任政策への転換は単純レベル・アメリカンファーストの応用編でいえば、トランプ政権にとってあり得る選択肢です。

素人政治の限界6(プロの流出)

3月7〜8日頃に出した第二次入国禁止・大統領令では、施行まで1〜2週間の猶予期間を置く外、グリーンカード保持者・イラクなどを除くようにしていると報道されています。
報道なのでその他の修正部分までは分りませんが、(今回は如何にアラブ系のテロが多いかの資料をある程度集めているでしょうが・・実は大したことがない可能性がありますので、)この程度で「明白且つ現在する危険」法理の要件を緩和出来るかの読み次第でしょう。
今度は予告期間があるので、到着空港で入国拒否されるリスクを知りながら、もめ事を起こしてまで観光旅行したい人はいない・・あえて飛行機に乗って来る人はいない・・「具体的に入国禁止される人がいなければ「執行停止の裁判にならない」と言う技術的読みがあるかも知れません。
人権団体が(訴訟目的で費用負担して)エジプトなどの誰か(・・予め出来るだけ入国拒否が人道的に問題のありそうな人を選んでいるでしょう・・米国在住の子供の急病で駆けつけるとか自分自身の医療の予約で来たとか・)を入国させようとして拒否されたら待ってましたと提訴するパターンを防げません。
これを防ぐために海外大使館では多分新規ビザ発給停止しているのでしょうが、大統領令署名前からビザを持っている人の入国手続を防げません。
今回の大統領令でこう言う人を(正当な事由がある場合を除くなど抽象的に)除外しているか一律禁止かどうかです。
裁判所で「こんなレベルではダメ」となってまた違憲決定になると、関与した弁護士が恥をかく・・実務家無視の強行策が続くとこんな無茶な事件を受任していると弁護士キャリアーに傷がつく・・恥だとなって、有能な人から順に政権から逃げ出して行きます。
「自分は反対だったが意見が通らなかった」・・と言う言い訳が通用しない・・意見が違うならやめるべきだった・・居残っていた以上は連帯責任と評価されます。
行政実務家・政治任用官僚にとっても同じですから、対外行為その他無茶をすればするほどプロの官僚が恥をかき・・その都度逃げて行きますので、内部から政権弱体化が進行します。
アメリカ政界人脈は回転ドア形式・・政権交代と当時に民間に戻る仕組みですから、4年〜8年しかない政権に協力して、へまなことばかりやらされる(我々弁護士で言うと負けそうな事件ばかりやらされると)とその後の経歴に傷がつくリスクを怖がります。
政権入りすること自体が評価を下げるようになる・・「俺は誘われたが断ったよ」言う話が一般化するようになると大変です。
第1回目の大統領令が出た直後に顧客のブーイングを受けて、ウーバーの社長が大統領との◯◯委員会参加を取りやめたと報道されていました。
政権就任直後だからチームが弱体なのではなく、時間経過でやればやるほど逆に弱体化進行のリスクを抱えている印象を受け始めると雪崩を打って行きますので・・その進行を防がねばなりません。
3月12日日経新聞5p【日米の死角」では政治任用官僚約4000人で議会承認必要数は、約600人とされ3月6日現在で承認されたのはまだ16人しかないと報道されています。
トランプ氏は「厳選しているから」と主張しているらしいですが、人材確保に苦労している印象です。
人材確保・流出が気になっていて、昨日からこのテーマで書き始めていたのですが、タマタマ昨日出た新聞記事から見ても世の中の関心が私同様に人材がどうなっているかに向かい始めた・メデイアはこぞって人材供給妨害して、政権の根を枯らせる作戦に出ているのかも知れません。
ただしマスメデイアは政権が実務家不足でガタガタになることを期待しているようですが、私は逆の視点です。
この後で書きますが、世界的に製造はロボット任せの時代が来て、社会構造のサービス化進展を避けられない・・これこそが豊か社会実現ですが、そのときにどのような社会を構想するかと言う考えから見れば、彼の主張やその背景にある庶民の不満は(短絡的フラストレーションの爆発に過ぎないとバカにしないで)導き方によれば新しい社会のあり方を暗示している可能性があります。
今のところ表現や行動が乱暴過ぎて無理があるのは確かですが、思想的にうまく説明出来る人がいて、他方でこれを実現するために有能な実務家がきちんと道筋をつけてやれば新しい地平を開く1つの道になる可能性を秘めていると思われます。
この辺は後で書くとしてここでは先ず、政治意思実現には信頼が必要と言う視点で書いて行きます。
政治は信頼が基礎ですが、支持者に約束したことを本気で実行しようとシテ努力したものの、利害調整に失敗して政策を実現出来ないと結果重視の有権者からは「嘘つき」となって信頼を失います。
実務能力がなくてスローガンを実行出来ない政治家は「噓」を言わなくても、信頼を裏切った・・次から言っていることが信用されない・・信頼を失います。
従来路線踏襲でも有能な実務家に支えてもらう必要があるのに、路線大幅転換の実現には、よりいっそう実務を知り尽くした多くの有能な実務家が必要です。
就任後1ヶ月半以上経過してスローガン的発言などよりは、実際政治に関心が移って来ると実務能力に対する疑問符・・実務家がいなくてマトモな政治が出来るのか?に関心が移って来たように見えます。
私は元々アメリカの大統領が政治的にはセミプロ程度の政治経験しかなくて直截選挙でムード的に選ばれて大丈夫か?と言う心配があるのに、これを補佐すべき実務官僚1400人も大量に入れ替えてしまう制度で本当にスムースに継続的実務をやれるかの疑問を何回か書いて来ましたが、今回はその補佐すべき官僚の応募者難となれば、もっと大変なこととなります。
一般的に政権末期に発生する人材流出現象が、政権開始直後から始まっているとすれば大変です。
日本としては、折角政権の懐深く飛び込んだ以上は、折角日韓合意までこぎ着けたのに失脚した朴大統領のようになるのでは困りますので、トランプ氏が多様な意見を聞く柔軟路線にうまく切り替えて盤石の政権を作って欲しいところです。
(トランプ氏の代弁する庶民の気持ちを大事にする必要があると言う私の意見ではなおさらです)
ただし、相手の意見を聞きながらやる政治に切り替えるのはトランプ氏にとっては一種の撤退ですから、メンツもあるし旧支持者を失うリスクもあるし非常に難しい作戦です。
これについて日本的政治経験の豊富な安倍氏が、内政干渉にならない程度にどうやってうまく応援してやれるかでしょう。
兎も角トランプ政権がガタガタになって苦し紛れに取引外交に入るのは日本にとって大きなリスクですから、そうならないように、日本は政権を応援して行くしかないでしょう。
取引にはいるとどうなるか・これがトランプ流取引外交に対して日本が脅威を感じている真の危機感です。
トランプ氏は1対1の取引ならば、見えないところで譲歩することが可能・・自信があると言うイメージで、(裏返せば複雑な利害調整が苦手)これが世界を不確実性の不安に陥らせている原因です。

素人政治の限界5(「明白かつ現在の危険」)

トランプ氏は政策実行の過程で対内政策であろうと対外政策であろうと、全ての分野で利害調整無視の単純主張では何も出来ない現実に直面して行くしかないでしょう。
自分の得意とする対外強行策で相手が強い(米国内関係者が多い)からと尻込みするとメンツを失い支持を失うリスクがあります。
ここで中国の抵抗(実はアメリカ国内企業のロビー活動)が強いからと対中高関税を引っ込めると鉄鋼労働者の支持がなくなる・・この種の政権は激突しか解決の道がないのが普通です。
内政の場合には前年末予算編成時・年初には景気中立的予算で秋頃になって海外情勢の急変に合わせて補正予算で追加財政出動したり金利上下するなど時機に応じた政策発動が予定されています・・景気の足腰が弱いのに年初から金利上げするのではなく、過熱気味になるまで待つなど機動的決断が期待されています。
対外強行策スローガンの場合,経済のような情勢変更は理由になり難い・・相手が強くて歯が立たないと言う理由での方針変更は、(「少なくとも県外へ!」と言っておきながら、どこの県も手を上げてくれないからとやめるのでは、)前もって根回ししていなかったのか?嘘つき呼ばわりされかねません。
弱腰・腰砕け・足下が揺らいだと政敵から見透かされ、国内支持者を失いかねません。
敵を迎え撃つために出陣したのに方針が変わったと戦わずに城に逃げ帰るようなものです。
1月末の入国禁止令の不発以降勢いづいた反トランプ陣営の嵩にかかった攻撃で、大統領補佐官フリン氏の就任前のロシア大使との秘密交渉露見による辞任、その他政権内部もガタついて来ました。
3月4〜5日ころからは、折角議会承認を受けて正式就任した司法長官の就任前ロシア関係交渉疑惑が持ち上がっています。
1月20日就任以来まだ2ヶ月半しか経過していませんが、政治経験のない者の集団ですから、粗雑対応中心・・やることなすことミスが多くて虎視眈々と狙っていた反対派の標的になる例が増えて来ます。
このまま引き下がるわけに行かないので、入国禁止大統領令の再発行が3月7日頃に発表されていました。
これに対してハワイ州が執行停止を申し立てると言う報道が8日夕刊に出ています。
今回も違憲決定がもしも出ると政権のメンツは丸つぶれです。
今回は前回の大統領令意見決定を踏まえて修正したものですから、大統領独断ではなく、議会承認された国務省、司法省長官その他政権幹部・支配下の官僚を巻き込んで訴訟対策を考慮して修正した大統領令を発布したのですから、それでもダメとなれば政権チーム全体の実務能力に大きな疑問符がつきます。
次々と未熟な政策を打ち出すと時間経過で逆に矛盾激化も進みますので、それまで政権を持ちこたえられるかが心配です。
半年〜1年経過で政権に人材が集まれば政治能力も少しは身に付くでしょうから、逆から言えば陣容が整うまであわてて新機軸を打ち出そうとしないでじっとチャンスを待つのも政治のあり方ですが、こう言う冷静な判断すら出来ないほど未熟なのかも知れません。
分ってはいるものの、マスメデイアとの対決を煽って耳目をしょっ中引きつけることが政権維持の基礎構造になっているので、やめられないのかも知れません。
政権実務家を掌握して官僚が動き出す前に慌ててスローガンそのまま実行して失敗ばかりしていると折角入りかけた有能な人材が恥をかかないように政権から逃げ出すし、新たな就職者も2流〜3流人材にドンドン劣化して行きます。
トランプ氏は選挙用のスローガンどおり政策実行すると無理があるのを知っている・・実務家に検討させると出来ないことばかりで鳩山民主党のように行き詰まるのを恐れて、実務家チェックが入る前に敢えて拙速承知で第一次入国禁止大統領令を発布したのが真相ではないかと思われます。
1月の入国禁止・大統領令の高裁審理でのやり取りを「February 12, 2017」のコラムで
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaokanozomu/20170210-00067544/トランプの研究(6):控訴裁判所での大統領令を巡る訴訟でトランプ大統領敗北、トランプ政権に大きな打撃」の記事を一部引用しながら紹介しました。
そのとき全文を紹介しませんでしたが、その中に「緊急入国禁止しなければならないほどの危険が実際に起きているかの主張立証が足りない」点を裁判官から指摘されたときに政権側弁護士が、(急な異議申し立ててだったので?)「証拠収集する時間がなかった」と答弁していて、「準備不足だったのですね」と共和党系裁判官から優しく声かけされて弁護士が何も言えない様子が出ています。
正確なやり取りを知りたい方は上記引用記事に直截当たって下さい。
しかし、イキナリの入国禁止・人権制限をする以上は、訴訟に発展するのを想定しておくべきですし、その場合には、表現の自由規制に関して発達した「明白且つ現在の危険」のルール応用が必須でありそうなことはプロから見れば「イロハ」です。
担当弁護士としては、(異議申し立て段階での受任なので?)弁護士としては、第一審決定後短期間の異議申し立て(日本の場合2週間しかありません)だったので準備する時間がなかったと言うのは、プロ・弁護士としては一貫しています。
しかし、政権のあり方としてみると訴訟社会のアメリカで、大統領令を発布した場合99%訴訟になるのが見えているのに、訴訟になった場合の先読みをしないで実施に踏み切っていたとすればお粗末過ぎます。
プロの意見を求めると反対されるのが目に見えているので、あえて意見を求めないまま実施したのか?と言う私の憶測になるわけです。
ところで、「明白且つ現在の危険」の法理は、ウイキペデイアによれば、以下のとおりです
「明白かつ現在の危険」の基準は、1919年のシェンク対アメリカ合衆国事件(Schenck v. United States, 249 U.S. 47 (1919))の連邦最高裁判決において、ホームズ裁判官(Oliver Wendell Holmes)が定式化した。」とされています。
我が国では、
最三判決昭和42年11月21日刑集21巻9号1245頁
公職選挙法138条1項は、買収等の「害悪の生ずる明白にして現在の危険があると認められるもののみを禁止しているのではない」として、戸別訪問禁止規定に「明白かつ現在の危険」の基準の適用を否定した。」
とあるように、我が国でも知られた法理です。
ただし、憲法事件に関する素人の私にはどこまでこの法理の応用が利くかまでは知りません。
法案のように審議会や公聴会を経て議会で時間をかけて議論する場合にはいわゆる「立法事実」があるかどうかの議会判断(規制必要性が議論されます)ですが、大統領令でイキナリ実施するのは議会を経ていない分よりいっそう厳格な「明白且つ現在の危険」法理の応用・・主張立証が必須です。
実施にあたってはこの流れを読んでその準備をした上で、この資料で「行ける」と言う確信を得てから実施すべきだったでしょう。
法律家が前もって大統領令の法的成否を相談された場合、「アラブ系新規入国者に限定したテロ発生事例をあまり聞いたことがないので無理じゃないか?」・・「やるならば「◯◯等の資料を蒐集してみてそう言う資料が出れば別だが・・資料を見てからでないと分らない」と答えるのがほぼ100%でしょう。
時間を十分にかけて準備してからの大統領令の発布であるべきですから、高裁審理で1審決定後異議申し立て期間が短かったので資料準備時間がなかったと言うのでは、素人の集まりか?・漫画的です。
このやり取りの紹介文の正確性は分りませんが・・・・これを見る限り、大統領と側近はプロの意見を敢えて聞かないで・無視して強行したのじゃないかの疑念・・印象を受けます。

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