健康寿命と自立可能年齢3

マスコミが健康寿命の紹介だけではなく非自立期間の計算期間だけ紹介すれば良いかと言うと、そうでもありません。
非自立期間の算定は、生まれつきの難病等で医療や介護の必要な障害者(10〜20台で亡くなるまでの全期間)等もカウントし、4〜50台の数週間単位の入院期間などをカウントしているので、高齢化してからの・・一般に関心のある人生最後の要介護期間とは大きくズレてしまいます。
国民が素朴に本当に知りたい人生最後の要介護期間の統計ならば簡単に出ます。
全国自治体ごとに毎月のように新規介護認定していますので、仮に60歳以上の人だけ集計(調査する気になれば)をすれば、ほぼリアルタイムに60歳以降の介護開始平均年齢・・母数の人口比何%かが分ります。
しかも交通事故による臨時入院と違い、高齢化によって要介護2以上になっていた人が介護1に逆戻りすることは滅多にないでしょうから精度が高いでしょう。
介護2では、ある程度自分で出来るのであまり気になりませんが、(ある程度手伝いしてもらうのではなく)70歳代の人は自分でトイレに行けなくなる平均値はいつころかを知りたい人が多いので、介護3〜4段階ごとで何歳で何%と言うように統計化して,これをマスコミが発表してくれれば分るようになります。
敢えて?これをやらずに生まれつきの身障者まで含めて自立期間を算定していると自立期間のトータル期間が、大幅に低年齢化してしまうので、高齢者の知りたいニーズにあっていません。
次に健康概念で集計すると、女性のように健康に関心が高くなればなるほど不健康と答える人が増える結果(厚労省のPDFの解説にも女性は20台で不健康と回答する率が男性よりが高いと書いています),健康寿命経過後の期間と高齢化による自立不可能期間の差が大幅に長くなります・・。
以上複合の結果、健康寿命が男71、19歳と言う結果になっているらしいのですが,これは高齢化による要介護開始年齢との関連がかなり遠くなっていることが分ります。
要介護になる開始時期とは全く関係がないと言うのではなく、高齢化した後の要介護に関する正確な統計データがあるのですから,下の世話までなるのがいつかを知りたい・・これをイメージして議論したいならば、政府発表の中から、要介護情報だけをマスコミが取り出して報道すべきです。
マスコミがこれを怠り、大幅にファジーな概念である健康寿命をあたかも寝たきり開始と直結しているかのように政府発表に合わせて大宣伝するのは、単なる不正確・怠慢報道を通り越した非中立報道の意図が感じられます。
マスコミが健康寿命の定義が自立期間とは違うことを親切に紹介しないで、「寿命が伸びるのは目出たいが健康で長生きしたいもの」と言う意見を付して、「健康寿命と平均寿命の差がこんなにある」とキャンペインを張るのは国民を特定方向へ誘導しようとする意図(報道の中立性違反)の疑いがあります。
昨日紹介した各社の見出しを見れば、マスコミが一般国民の注意を引きたい方向性は老後の自立可能期間にあるのが明白です。
定義の方は厚労省の書くとおり「 健康寿命とは、健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態を指す。」と噓を書いていませんが、国民に関心のある「高齢化後の自立期間とは違う」・・ズレている点を紹介していません。
この違いを紹介しないまま、昨日紹介したネット記事の一部を再引用しますと、「そのゴールは、人間が自立して人間らしい生活を送れるという意味で、平均寿命ではなく健康寿命の …」と言う人生最後の自立期間のテーマに誘導しています。
これを平成28年1月17日にクリックしてみると以下のとおりです。

http://diamond.jp/articles/-/60223
「男性71.19歳、女性74.21歳。
「健康寿命」を伸ばすにはどうすればいいか」
厚生労働省の発表(10月1日)によると、2013年のわが国の健康寿命は、男性が71.19歳(対2010年比+0.78歳)、女性が74.21歳(同+0.59歳)に伸びたそうだ。
健康寿命とは、健康上の問題がなく日常生活を普通に送れる状態を指す。健康寿命と平均寿命の差は、男性で9.02年、女性で12.40年あるが、この期間は介護など人の手助けが必要となる可能性が高いということだ。わが国は高齢化については世界の先頭を走る課題先進国だが、そのゴールは、人間が自立して人間らしい生活を送れるという意味で、平均寿命ではなく健康寿命の延伸にあると考える。いくら平均寿命が伸びても、晩年は寝たきりという社会を、私たちは望んでいるのだろうか。」

上記引用のとおり、「人の手助けがいる可能性が高いと言うことだ」と可能性でしかない逃げ道を書いていますが、(20台でお化粧のノリが悪くなって不健康と自覚している女性と寝たきりになるまでの期間にはもの凄い期間・・ハバがあるのに、この点に触れないで一足飛びに)「いくら平均寿命が伸びても、晩年は寝たきりという社会を、私たちは望んでいるのだろうか。」と繋いでいて、全体の論調は如何にも「健康寿命終了後→寝たきり直結」・・高齢者の最も知りたい方向へイメージ操作しています。
寝たきり期間を如何に減らすかのテーマで意見を書く以上は、健康期間の紹介ではなく、厚労省PDF中にある筈の年令別要介護度2〜3〜4開始時期がいつかを紹介してこのデータに基づいて論じるべきしょう。
介護認定の年齢別データが仮にないならば、「ムード的発表では、国民が不安を持つだけだ」と厚労省調査を批判するのがマスコミの役割ではないでしょうか?
マスコミの多くが故意に?引用を間違えていた結果、健康寿命終了=寝たきりのことかと私が誤解していた・・私自身の言い訳・マスコミへの責任転嫁です。

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