弁護士会執行部の支持基盤4(派閥・政党の効用2)

民事・刑事訴訟法の運用・規則や細則に関する委員会のように、細部にわたる専門技術的委員会の場合、その委員会に関与していない一般会員は、自分に経験に即してこう言う場合どうなるのかなどちょっとした質疑をする程度で、後はお任せして行けば良いでしょう。
憲法問題等の政治的決議になって来ると「専門」に取り組んでいる人たちが(運動家=戦術論の専門?かも知れませんが)法律論の専門家と言えるかどうか疑問なしと言えません。
聞こえて来るのは、今の国会の動向からいつころに集会場所予約をしておくか、デモする必要があるなどの戦術論や街頭デモをやるにはどう言う許認可がいるか、担当を決め、どんなマイクや横断幕が必要かなどであって、誰がどのような議論で決めたのか不明ですが、先ず反対論がある印象です。
法案に反対すべきかどうかの緻密な議論を済ませているから「部外者は黙ってろ・・」と言われるほど、専門的研究が進んでいるようには見えません。
配って来るビラ等を見るとせいぜい(秘密保護法案の場合)「近代法の法理に反する」とか(集団自衛権に関しては)「憲法違反」「戦争法案」と言うスローガンばかりで、(私が無学なだけかも知れませんが・・)何がどうなっているかの具体的説明を聞いたことがありません。
素人には分る訳がない・・スローガンだけ教えれば充分・・納得しない人にはせいぜいこう言う立派な学者も反対していると言うコケおどしで充分だと言う態度が基本だと思いますが、弁護士にも分らないような高邁な法律の議論ってどう言う議論なのか不思議です。
反対運動の集会での結果を見ると、戦争中の体験談に感動したような報告です・・これが安保法案が戦争法になる根拠となる説明だったのか因果関係がさっぱり分りません。
戦争を防ぐために同盟関係が必要かどうかの議論が求められているのです。
ロシアが公然とクリミヤやシリアで軍事介入を始めたのは、オバマが戦争反対・・介入しない(悪く言えば弱腰)と表明しているから、やりたい放題になって来たと言うのが国際政治の現実です。
何をされても反論も反撃もしないと前もって決めておけば、やられっぱなしになるのが国際政治の現実だと慰安婦騒動で分ったばかりです。
安保法制で重要なことは、反対か賛成かのスローガンばかりではなく、法案内容の危険性の内容・・有無です。
単一色の委員会決議に左右される弁護士会の運営に話題を戻しますと、アメリカの茶会党やドイツの緑の党あるいは大統領候補に名乗り出ているトランプ氏などなどワンイシューでの主張は分りよいですが、仮に単一主張の政党が政権をとるとその他の政策をどうするのかがまるで見えません。
現実政治は無限に多様な問題を抱えていて、(一日も停滞が許されない・・)日々決めて行く必要がありますが、「公約に掲げた以外は何も知りません」と言うのでは無責任です。
その他は白紙委任を受けたと言う主張になるのでしょうか?
仮に白紙委任を受けとしても他分野での経験がないのではどうやっていいか分らないでしょう。
ワンイシュー選挙でなかったから安保法案は信任されていないと言うマスコミや左翼系の主張はこのような無理な政治制度・・非民主的政治運営を前提にしていることが分ります。
民主党は政権について実務を担当してみると、無限に存在する他分野での利害調整能力が元々なかったことが国民に知られてしまい大ダメージを受けています。
この批判を受けているのに、野に下ってからもなおその反省をせずに、今またワンイシューにこだわっているのでは政党としての先がありません。
勿論各部門・委員会別に充分な議論を尽くしている・・私の推測は推測に過ぎないと言う意見もあるでしょう。
しかし、反対運動が弁護士会の枠を越えた政治運動になるかどうかは、専門部会内で充分に検討すれば足りることではなく、会員の一般意思によるべきことです。
会員一般の意見を募る程度のことをしてから、執行部が総合判断するのが民主運営の基本ではないでしょうか?
たとえば、民事訴訟法の細かい運用関係を裁判所と協議している委員会でも、(一般弁護士から見てかなり専門的に特化しています)現在の検討状況を配布して会員に何か意見がありませんか?としょっ中意見照会文書が回って来ます。
特別な専門的知識不要・・・・・「◯◯反対運動して良いか否か」程度の◯×方式の回答を求める簡単なテーマについて、会から何の意見照会も回って来ないのが不思議です。

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