弁護士会執行部の支持基盤2(会員構成の変化)

ここ20年くらいで新設・躍進して巨大化している各種委員会では、個別の被害救済事件をやっているだけで政治色をあまり出していませんが、たとえば原発被害救済・・反原発色彩がないとは言えませんが・自宅に帰れない避難民の苦しみ・相談をやっていると自然に原発の所為で酷い目に遭ってる・・反原発心情が醸成される・・その程度です・・。
外国人の人権も似たようなもので、偽装難民であろうとなかろうと目の前で困っている人を見れば、救済したくなる心情・・惻隠の情・・自然にそう言う方向へ流れます。
偽装難民が押し寄せるのは困ると言う一般論の人でも、目の前に強制送還される人がいると同情が先に立つのが人情です。
生活保護不正受給は論外としても、窓口で断られる人の相談に関与すると社会的弱者の心情も理解出来ます。
以上はホンの一例ですが、ここ20年近い消費者系・・消費者被害救済系活動の隆盛が、日常業務を介して左翼系の格差反対その他基礎意識がじわじわと浸透しているでしょう。
弁護士は弱者救済が基本的存在意義ですから、弱者に寄り添う活動自体は良いことです。
近代以降弁護士はブルジョア同士の争いの解決をとおして日常生活のルール化に寄与して来たことが多く、我々も中小企業同士の争いなどの解決に尽力して来たのであって、人権擁護に関係する事は日常業務の「ついで」程度だったことを反省する必要があります。
ついでであってこそ、無償または持ち出し行為が出来たのですが、支援センター業務が膨らみ弱者救済が主要業務になって来ると弁護士は従来の所得を維持出来ません。
弁護士大量供給と平行してタマタマ社会構造変化が進み、労働者も正社員とその他、企業も中小企業も大手の孫・ひ孫会社化で二極化が進み個人企業が減ってくるなど個人企業経営者相手の従来型、弁護士業務が急速に減ってきました。
弁護士大量供給以降、従来型弁護士は企業法務に特化出来る人は特化した人と、無償に類似する最低生活費が保障される程度の弱者業務に特化するその他弁護士とに、2極化が進んでいるように見えます。
弁護士の意識が左傾化して行く背景としては、委員会活動活発化が先か後かは別として、この10数年で弁護士になった若手多数・約2万人が観念的弱者救済から自分自身弱者の仲間入りしてしまっている状況変化が大きいでしょう。
自分は高みにあって、時々体験的に貧乏経験して観念的に可哀相だと主張していたに過ぎないベンゴシが、自分自身貧困層になったことによる社会的インパクトは大きい筈です。
毎年約1600人もの意識の高い貧困層を政府が生み出して行けば、社会変革圧力に点火して行くのは当然でそれ自体社会の進化によい結果をもたらすかも知れません。
弱者救済系活動日頃どっぷり浸かっていると、この活動の中核的指導者が支持している政治意見に共感し易い状況・・・個人的に世話になっている・・親しくなっているし・・とじわじわとした勢力浸透に成功していると見るべきでしょう。
政府は弁護士大増員で反政府色の強い弁護士会の弱体化を図ったつもりだったでしょうが、逆に左翼系が水面下で勢力を伸ばす下地を作っていたことになります。
今回の安保法政反対運動に弁護士会が前のめり的に積極化して行った背景は、民主党政権の大失政によって、社会全体での左翼勢力退潮による焦りがあって、他方で弁護士会内での勢力拡大成功による自信過剰(最後の砦!と言う過信・焦り?)との複合が、政治発言・行動等に対する自己抑制が利かなくなって来た背景ではないかと推測されます。
それにしても、政治運動をしたい人は自分で政治団体を組織したり政治家の応援をすれば良いことであって、何故弁護士会の名を使う必要があるのか理解出来ません。
比喩的に言えば、仮に会員数の1割の人数で、(実際にはもっと比率が高いかも知れませんが・・)政治的委員会を牛耳って、会の名で行動すれば10倍の人数を誇示出来るからでしょうか?
会の名を使えれば、弁護士全員が反対しているかのような宣伝効果を得られます。

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