弁護士会執行部の支持基盤1

ここで、弁護士会執行部のリーダーシップについて考えてみます。
東京の場合、昔から派閥が成立していて派閥の支持によって会長選挙に出馬するので、派閥の機関決定を得ていることに関しては強固な支持基盤があるので、会長がリーダーシップをとり易いでしょうが、その分他派閥との軋轢が生じるので派閥間のスリわせで結論が事実上決まって行く関係になります。
地方の場合人数が少ないことから派閥は成立していません。
私が弁護士登録したときの千葉県全体の弁護士数は90人台でした。
年功に従って持ち回りで決まって行く関係の場合、強固な支持基盤がない代わりに集団的対立がなく個人的もめ事程度ですから、もめ事を起こさない・・うまくまとめて行くのが会長の人徳と言う評価社会です。
その代わり会員も、会長が困らないようにあまり政治的テーマを持ち出さない傾向があったように思います。
いろんな意見の人が個人的に参加している前提の町内会なども同じです。
このような社会では、会員も政治論を持ち出さないように自制するのですが、仮にある程度の集団意見を背景にセンシブルなテーマを出して来ると、居合わせた人は面と向かって否定し難いので事なかれになり易い傾向があります。
20年ほど前までは出身委員会とは関係なく何となく分っている会員の思想分布に合わせて、大雑把に言って保革(主として代々木系と保守系)と民社系が仲良く執行部を形成して・・年功によってあるときはどちらかが会長になる代わり副会長には別の政党系を入れるなど)それぞれ政治発言を自制していたような・・取り決めがあったのではなく阿吽の呼吸)関係でした。
この20年程は、ソ連の消滅によって、55年体制が崩壊し、この構図がなくなって来たのですが、代わりに会員数が増えたこともあって、各種委員会の巨大化が進みました。
最近弁護士会の対外政治活動が活発になって来たように見えるのは逆説的ですが、政治発言・行動の自制・相互牽制が崩れ始めたからかも知れません。
現在では憲法問題や公害関係の委員はそれぞれホンの10人いるかいないかですが、55年体制崩壊後左翼系弁護士の多くは消費者系・外国人人権や生活保護受給支援等に流れ、現在はこれら委員会の中核指導層を占めています。
これは私の身近な知り合いの流れを観察した個人的意見を書いていることですが、実際に消費者系応援で日弁連会長選挙で当選した宇都宮健児氏は、日弁連会長退任後左翼系から推されて都知事選に出馬していることから見ても本籍がどこにあるか世間では周知のことでしょう。
これら新たな委員会の特徴は事件受任と結びつく点で、これがちょうど大量供給で仕事が欲しい若手の吸引力になっているし、委員会委員同士の結束強化にも繋がっています。
ちなみに私が数十年関係している懲戒や修習、選管委員会等は、事件受任や同士的結合と関係がありません。
4〜50年前にフォークソング等を利用して「歌って踊って」で若手勧誘に大成功した民青(共産党系)の勧誘同様に、事実上の取り込みに大成功している状態の再現と言えるかも知れません。
この種の委員会に入ると何か事件が起きると直ぐに原発問題の相談会・◯◯被害電話相談・◯◯被害対策委員会→◯◯弁護団等々の具体的事件での打ち合わせ等の会合がしょっ中あります。
数年がかりの大きな弁護団掛け持ちになり、共闘して夜昼なく打ち合わせをして行く・・飲食も共にするのが普通です・・と当然仲間意識が強固になって行きます。
所属事務所に忠誠を誓っていても独立するチャンスがない・・これら委員会の仕事を熱心にしている方が単価が安いとは言え、日銭がはいるし、弁護技術の熟練・事務所のカラにとらわれない幅広い人間関係の構築にもなっています。
左翼系と関係のない事務所に就職した場合でも、所属事務所は、独身者が寝に帰るだけのアパートとさして変わらない・・日常活動の殆どが委員会系の打ち合わせ等に時間を取られている若手が増えています。

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