サイレントマジョリティ6(会内合意のあり方2)

一般人・一般弁護士会員は、深刻な人格攻撃に発展し易い政治対立に巻き込まれたくないのが人情です。
一般学生は学生運動に深入りしない・・弁護士の場合東京大阪などを除けば、規模の小さい顔の見える集団が大多数ですので、その後人格的対立関係が残ると窮屈です。
千葉県弁護士会は会員数約750人もいて、大単位会のグループに入りますが、それでも実際の活動区域は松戸支部や佐倉支部等の地域別に分かれているので、(私が松戸支部や八日市場支部あるいは館山支部や一の宮支部等の事件を受任するのは10〜20年に1回あるかないです)日常的に顔を見る相手は千葉市周辺の弁護士に限られています。
建築業者が百件受注しても同業の建築士と相見え・交渉することは1回もないかも知れませんが、弁護士業務は紛争事件が中心ですから、受任するといつも相手があり・・その殆どに弁護士がついています。
経験・・受任した数だけの相手方がある・・。
ですから、(佐倉支部や木更津支部等はそれぞれ10数人〜20人規模かな?)同一地域で4〜50年も弁護士をしていると大方の弁護士が相手方になる経験をする可能性があり、しかも繰り返し出会う可能性がある狭いムラ社会です。
大量に弁護士が供給されるようになったのはここ20年ほど前からのことですが、当時千葉県全体の会員数は250〜300人前後でしたから、この10年あまりで増えた若手を除けば、地域弁護士関係は濃密なムラ社会的人間関係になっています。
今回のTPP交渉を見ても交渉が厳しく長かった分に比例して甘利氏とフロマン氏とは信頼関係が生まれていると言われるように、シビアーな交渉を誠実にやればやるほど相手との信頼関係が重要ですので、密接な人間関係が構築されるし、必要な関係です。
一般の同業者同士・・同業組合の会合で顔を合わせる幹部同士だけではなく、弁護士をやっている限り若手中堅を問わずに日々相手と接触があり、濃密になる必要があるのです。
昔の農民同士・・ムラの中で時々顔を合わせて挨拶する程度の関係よりも、もっと濃密な関係です。
新規参入したばかりで顔と名前が結びつき難い若手は、どこの事務所所属・・あるいは所属していた人と言うことで、(名刺にも◯◯事務所と肩書きを表示する仕組みです)これまたすぐに人間関係が分る関係です。
こう言う狭い社会・集団内では、政治意見を戦わせて対立するのは社会的ロスですから、出来るだけ触れないのが大人の智恵です。
町内会でどこの政党を支持するべきかや、隣人と政治論争をする必要がない・・むしろ害があるのが常識でしょう・・「良いお天気ですね・」「お元気ですか」程度のお付き合いが妥当です・・。
この結果、色分けの決まっている弁護士会の政治的委員会に、少数意見を言って対立するためにワザワザ入らない流れになっているように思われます。
戦後70年近くこれの繰り返しをしてきた結果、学生運動や弁護士会の政治的委員会活動の純化を強める結果にもなって来ているのではないでしょうか?
繰り返すように、この辺は会が何故か全く会内意識調査をしていないので、仮定・・もしかしたら・・の意見です。
意識調査をするのは、思想信条の侵害だと言う意見があるからでしょうか?
マスコミ等の行なう世論調査が憲法違反と言う人がいるのでしょうか?
意識調査してみたら、もしかしてイヤだからはいっていないのではなく、政治的委員会に入りたいが、定員オーバーになったので仕方なしにはいっていないと言う人が圧倒的に多いかも知れません・・・アンケーとその他簡単な意識調査すらしていないので、仮定の議論しか出来ないのが残念です。
もめ事を起こしたくないから反対意見を敢えて言わない・・・一般会員の気持ちがそうであれば、これに支えられる執行部も同様です。
余程の自信がない限り、委員会から上がって来た政治的な会長声明、研修会活動(会場費や講師謝礼等)あるいは反対運動等費用の支出要請・・委員会予算要求に抗えません。
各種委員会はまとまった委員数を擁し、しかも何十年も継続しているその道のベテランである上にしょっ中会合を開くなどの運動していて同志的人間関係も濃密ですから、団結力・政治力・運動力も大きいのに対して、1年ごとに選任され、しかも(千葉の場合)4〜5名しかいない執行部は、政治基盤が弱く、各種委員会の主張に圧され気味になります。
執行部は出身委員会内では強固な支持を得ていると思われますが、他所の委員会提案に対する関係では統一見解を持っていないので、団結力・戦闘力を持っていません。

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