法網をくぐる2(租税回避)

以下は租税回避に関する最近の国際的潮流を見るためにNHKからの引用です。
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3353_all.html(NHKクローズアップ現在)013年5月27日(月)放送
 “租税回避マネー”を追え 
  ~国家vs.グローバル企業~
 世界最大のIT企業アップル。
 先週、アメリカの議会で税金を巡って厳しく追及されました。
 議長
「この5年、法人税を申告していませんね。」
 アップル ティム・クックCEO
「今の税制は時代遅れです。
(税率が)高すぎるのです。」
アメリカでは税金をほとんど納めず、税率の低い国に10兆円を超える資産を蓄えていたのです。
去年(2012年)12月、イギリスで行われたデモに参加したスティーブン・リードさんです。
デモの対象になったのは、大手コーヒーチェーン・スターバックスでした。
「税金を払え!税金を払え!」
イギリスで700店舗以上を展開しながら、法人税をほとんど納めていないことが発覚したのです。

記憶が定かではありませんが、このデモの結果、スターバックスはイギリスで何かの還元策を発表せざるを得なくなったと報道されていました。
「法を守る可シ」「遵法精神」とは、個別の法基準をスレスレ研究して守れば良い・・法の抜け穴を探して税を払わなかったり、実質違法行為をすることではありません。
刑事処罰されない程度に人の悪口を言いふらして歩くことではありません。
法スレスレの行為をするのは、非道徳者のすることです。
ヤクザが「街のダニ」と言われるのは、毎回刑事処罰されるような脅迫をしているからではなく、刑事処罰スレスレの嫌がらせ繰り返すから「ダニ」と言われるのです。
ともだちにお金を借りて「借りた証拠があるなら出してみろ」と言うような人は嫌われます。
挑発だけしておいて相手が怒って殴りにかかって来たら、相手が先に手を出したから殴り返したと言う人も同じです。
ただし、より良い物を作ろうとするときに現行基準に抵触する場合があって、仕方なしに法基準に合致するようにギリギリの研究をすることもありますから、ギリギリの研究すること自体が悪であるとは言えません。
スターバックスやアップルの例で分るようにソモソモ巨大企業が殆ど税を払わなくて良いようにする目的で研究するのは、その研究目的自体が「悪」であると言うことです。
ただし、個人の脱法的脱税は共同体コストを免れる行為であって「悪」ですが、法人・企業体は利益がなくて税を納めなくとも、ある地域で1万人を雇用していれば(従業員が所得税等を払い消費する)企業活動を通じて各種需要を生み出して(その需要によって税収が上がります)地域経済に大きな貢献をしています。
そのうえに、法人の所得は最終的には株主個人に帰するので、その段階で税を取れれば良いと言う考え方もありますが、ここでは「脱法的節税の非」として書いているだけです。
近代法の原理である法治国家思想の表裏の関係で、法に触れなければ何をしても良いかのような副作用の方を悪用して羞じない人が増えて来た・・従来の善悪の基準を気にしない輩が増え過ぎて来たように思われます。
法はこれまで問題になった事例に基づいて出来て来た行動目安の基準でしかないのですから、まだ基準を作っていなくとも、共同体維持に悪いことをしてはいけない・・みんなのためになることを心がける必要性を忘れている人が幅を利かすようになり過ぎて来たように見えます。
昨日最後に書いたようにモノゴトは法を守るかどうかだけではなく、価値ある行為かマイナス価値行為かの判断が必要です。
節税が盛んに宣伝されていますが、1つ1つは当時の税法の細かい仕組みをそのまま利用工夫しての節税ですから、合法である・・裁判すると勝つ関係でしょうが、名誉毀損罪で処罰されない程度に抑制して?人を悪口を言うのと似ていて善良な人のすることではないでしょう。
ある共同体の役割分担でも同じで、懲罰を受けない程度の最低の義務しか果たさない人を立派な人とは言いません。
この街には「ポイ捨ての刑事罰条例がない」からとゴミをそこらに捨ててあるく人が良い人でしょうか?
ゴミ箱を探してる友人に向かって「お前バカだな・この街には刑事罰がないからその辺に棄てれば良いのに!と言う人が利口だと言われる時代が良い社会でしょうか?
人は生まれつきの能力によって、刑事罰則制定前から「やって良いことと悪いこと」の区別がつくのではないでしょうか?
性善説と性悪説の争いのようになりますが、近代法の原理に毒されている文化人には、自分で善悪を考える必要がない・・法に書いてあるかどうかだけだと言う傾向が強いように見えます。
人としての道に関係なく、法の抜け穴探しに成功すれば儲かるし、これに成功した人が英雄?視されるようになってくると、租税回避その他法網をくぐることに対する批判が起きて揺り戻しが起きているのです。
元総理鳩山氏が、わざわざロシア訪問して「クリミア併合は住民投票に従ってやったので、何ら問題がない」と言うようなことを言ったと報道されていましたが、法形式主義とらわれている悪しき左翼文化人の特徴そのままです。
近代に入って、宗教の存在意義がもの凄く縮小しています。
全て法が決めてくれるので、人は自分で善悪を考える必要がないと言う宣伝に負けたからでしょうか?

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