通貨安競争2(国民疲弊政策)

韓国が急激なウオン安政策で貿易黒字を稼いでいますが、その代わり韓国の支払に関しては他所の国はウオン建てでは輸出に応じなくなります。
輸出入が均衡していれば、ドルまたは円代金を1割下がったウオンに両替して1割多くのウオンを受け取っても、その代わり輸入代金を上がった円やドルで支払うために国内ウオンを1割多く使って両替すればトントンですが、輸入物価上昇の結果輸入が減る・・国民はその分消費抑制=耐乏生活を強いられます。
戦後ずっと続いたイギリスポンド下落によるイギリスの耐乏生活を想起しても良いでしょう。
通貨安政策は結果的に国民に我慢を強いる政策だと言うことです。
アメリカは国民生活を豊かにするため・消費の活発化のために住宅ローン債権の買い取りを始めたのですが、この政策が時間の経過でドル安になって来るので、結果的に輸入価格の上昇・・ひいては輸入品購入減少・・生活を圧迫し始めるジレンマに陥ります。
国民は自分の働き以上の生活は出来ない・・目くらましの政策でうまいことは出来ません。
1割の貿易赤字国で1割の通貨安になるとどうなるでしょうか?
例えば輸入代金の両替が1億円で輸出代金の両替が9000万円・・1割赤字の国とした場合で考えてみましょう。
輸出入数量が同じと仮定した場合、円が1割安くなると輸入代金の両替入金は1億1000万円必要になり、輸出代金の両替は8100万円しか入金しません。
赤字額が上下約1割ずつ膨らんでしまいます。
国際収支赤字国にとっては通貨安は損なことになりますが、苦しいならば通貨安を受入れれば良いだろうという意見が多いのは、この機会に競争上有利になって輸出数量がそれ以上伸びることを期待していることと、対外債務支払に行き詰まった場合通貨下落を強制されて輸入物価上昇の結果国民消費が減退する・・耐乏生活を強いられても仕方がないと言うことになるからです。
韓国のように輸出の方が仮に多い場合に、自国通貨が1割下落するとどうなるでしょうか?
輸出代金ドルの両替によって得る資金が1億ウオンであった場合、1割の下落で1000万ウオン手取りが増えることになります。
輸入代金の支払い債務が下落前には9000万ウオンであった場合、(通貨下落前に1000万ウオンの貿易黒字であった場合)ウオンが1割下落すると外貨に両替する分が1割増えても900万しか要りませんから、100万ウオン分だけ得する勘定になります。
(輸入代金が1億1000万ウオン入って、輸出代金が9900万ウオンで足りるので下落前に比べて100万ウオンの儲けです。)
これに加えて通貨安による競争力アップで輸出数量が伸びるのでその分の手取りが増える外に、輸入物価上昇による輸入量の減少の結果支払債務が減る3重の利益になります。
ただウオンが1割下落すれば、国内輸入物価も時間の経過で同率で上がるので、国際競争力としては結果的には同じことになる筈です。
円高の場合還元セールがありますが、円安やウオン安の場合企業の儲けが増える分直ぐには従業員給与に還元しないでしょうから、通貨安政策はどこの国でも国民・労働者が割を食う関係です。
通貨安によって輸入物価上昇→輸入が減るということは、国民の消費レベルを下げて国民に我慢を強いる政策です。

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