年金赤字6とマイナス金利7

投資用資金需要から消費信用にシフトして行く低成長社会では、実物同様に保管期間が長ければ長いほど管理コストがかかり目減りが大きくなります。
今のように融資期間が長ければ長いほど利率が高く利息が多くつくコンセプトは(消費信用時代には)間違っています。
利回りについて自信がない分を加入者増で誤摩化したり、インフレを期待するのは邪道ですし、こんなことでは将来支払に行き詰まることになります。
資金運用のプロが主催している投資信託だって、ホンの短期間でさえ利回り保障出来ないのに、天下り官僚の素人が運用している年金基金関係者が50〜100年単位の超長期の運用について一定率の利回り保障をすること自体神を恐れぬ所行(良くそんな約束が出来るもの)です。
払うときには自分はとっくに退職して(死亡して)いるという無責任感覚で制度設計したのではないでしょうか。
バブル崩壊後我が国では超低金利政策の続行ですし、リーマンショック以降世界中が順次低金利に向かっています。
高成長中だった中国でさえも不況対策として、今年に入って金利を下げ続けています。
今後は新興国も低成長時代に突入するしかないかもしれない予兆です。
高成長は生産性の急上昇に比例してこそ成立し得ますし、高金利も高成長があってこそ成立するものです。
金利はその社会の成長率に規定されているので、低成長社会では、金利も低下するしかありません。
更新投資しても1〜2%しか利益アップしない社会では金利はその1〜2%の利益から経営者と出資者とで分配するしかありません。
近代産業が全くないところで、イキナリ日本などから先進工業技術が導入されるとその組み立て加工をするだけでも、前近代社会から見れば超高度成長になりますが、これが一通り行き渡った後では、設置した機会を少しレベルアップする改良投資くらいでは、成長率が鈍化するのは明白です。
山道を迂回していたところでトンネルを掘って貫通すれば10倍の時間短縮になりますが、貫通後そのトンネル周辺道路の改修工事をいくらやっても効率上昇は微々たるものです。
「中進国の罠」として、新興国の所得・賃金水準が上がって次の新興国に地位を脅かされることだけをマスコミが報じますが、そんなことは大きな問題ではありません。
新興国自身の諸設備が一定水準に上がってしまうと導入した技術の改良投資をするのがやっとですから、それ以上の上昇率を描けなくなることが主たる原因です。
自国水準から隔絶した最先端技術を先進国から導入し続ければ急成長出来ますが、先進国では、自国よりも格段に進んだ国がないのでよそから画期的技術の導入が出来ず、自前技術の改良研究くらいしか出来ないので、生産性上昇率は微々たるものにならざるを得なくなるのは理の当然です。
先進国だけではなく、韓国台湾、その後の中国、インド、ブラジル等の新興国も既存設備の更新需要程度しかなくなって成長率が低下して来ると世界中で投資用資金需要が縮小する一方となります。
こう言う社会になると投資してもそれほどのリターンが見込めないのに、高い金利を払ってまで借金で投資する人が少なくなります。
世界中に近代産業が行き渡るまでは、新規導入国では高成長出来ますが、全世界に産業革命後の工業水準が行き渡った後には、画期的技術革新が新たにない限り亀のあゆみのような微々たる技術改良の繰り返ししかありませんので、高成長が再度始まることが期待出来ません。
中国やインド、ブラジル、インドネシアなど人口大国の近代化が一定程度まで進めば、その後は改良程度の生産性向上しか出来ないので、(その後小国のいくつかが近代化に離陸しても世界の大勢に影響がないので)その後は世界中が西洋中世のような、あるいは日本の江戸時代(西洋中世とは違い江戸時代は改良工夫が進み・文化も発達しましたが・・)のような安定社会になってしまう可能性があります。
マスコミは失われた20年など言って世界の成長に日本は遅れを取っているとしきりに主張しますが、私は安定成長社会が悪いことだとは思っていません・・他所と張り合う楽しみ方は中国や韓国に任せておいて、安定成長社会で豊かな生活をするのは良いことだと思います。

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