通貨安政策4(資本逃避)

為替相場が人為的介入によって実勢と相場が長期間乖離し続けると、ジョージソロス氏のような投機筋・仕手筋に狙われてしまう筈ですが、こうしたリスクなしにウオンの下落が長期間続いていて、むしろ売り浴びせを防ぐために必死に買い支えている状態です。
(最近の報道ではウオン買い支えのために外貨準備が急減している・・その結果純債務国に転落したり純債権国に復帰したりの繰り返しのようです)トータルでは赤字なのではないでしょうか?
日本のマスコミは、韓国政府のウオン安政策が成功していると格好を付けて報道しますが、実際には安くなるべき要因が内在してどうにもならない状態の言い訳になります。
いくら儲かっているとか、格付けがどうのと言っても(そう言う宣伝工作にエネルギーを使っても)実際にその国の通貨が上がって行くか下がって行くかこそが誰のコネも効かないのでその国の国力のバロメーターそのものです。
ちなみに「格付け」とは大金を払ってして貰うものなので、依頼者の希望によっていくらでも上下するもので何らの信用性もありません。
貿易黒字だけでは資金繰りの状態が分らないことのたとえとして、日本の例で言えば原発事故以降貿易赤字傾向ですが、外国投資による利益送金収入が大きいのでトータル収支ではなお何兆円という黒字です。
逆に外資導入が多い貿易黒字国では、トータル収支では赤字となっている国もあります。
対外純債務国と似通っていますが、債務支払時期が必ずしも一致しないので(その年度内に全部返す債務は珍しいので)支払う債務と債務額は一致しません。
外資による多額の資本出資を受けている韓国の場合、ドルや円で持ち込んでウオンに両替した投資ですから、ウオンの下落によって投資金が目減りして行くのでウオンが際限なく下落するとなれば、早く売って逃げようとなり兼ねません。
これがアジア通貨危機、欧州通貨危機が来るたびに問題となる韓国通貨危機発生の構図です。
たとえば、トヨタなどがアメリカに1000億円投資した工場を持っていて、年間売上げ50〜100億円だった場合、これがドルの1割下落によって評価が1割下がると100億円の評価損失になります。
ドル下落によって景気が良くなってアメリカ工場の売上が1割=5〜10億円上がって、純利益がその10%として0.5〜1億円増えても、企業評価としては約99億円マイナスになります。
これが分っているのに通貨安が進行する国に対して行った投資資金をそのままにはしておけません。
通貨安競争にはこのマイナス面・副作用があります。
うまい物を食いたければ、その代わり代金としてお金が出て行くような物で何事もいい面ばかりではありません。
通貨安競争が世界の潮流になると、世界的投資資金の引き上げ競争が加速して行くことになります。
行き過ぎたグローバル化の反省と言うか逆グローバル化時代が始まりかけているのです。
世界中から引き上げた資金をどうするかとなると安全資産に逃げる・・通貨安になりそうもない国の紙幣に交換しておけば損がないと言うことから日本の円が急激に上がっているのです。
下がりそうもない国の株式購入でも同じように見えますが、円が上がればほぼ反比例してその国の企業業績が下がる=株価下落しますので差引同じ結果ですが、国債の場合円が上がった分だけ得するので外資は国債に集中します。
現に中国、韓国からの欧米資本引き揚げが加速していて、上海株式相場は大幅に下落し、且つ人民元相場も弱含みで、中国は資金不足で困っている筈です。
中国からは資金引き上げラッシュなのに、今なお中国への新規投資をしようとしているのは、主要国の中では日本だけです。
中国はこのため日本の新規投資を切望している状態なのは韓国同様ですが、必死であればあるほど低姿勢になるのではなく強硬姿勢で来るのが中国、韓国のやり方です。
(中・韓の品性が卑しいのではなく)日本の歴代政権の対応がこうした習慣にしたのでしょうが、今まで味を占めた経験で中国はイキナリ尖閣諸島で、韓国は竹島で挑発するなど言いがかりをつけ始めた構図です。
日本は投資資金の人民元・通貨下落による一般経済的損失だけではなく、今回の尖閣諸島問題を契機とした反日騒乱によって、中国投資の危険性が追加認識されれば、遅ればせながら世界の潮流に日本も加わって行くことになるでしょう。
(必ずしも世界の潮流に乗ってれば良いとは言えませんが・・・中・韓に関してはこの機会を好機として中韓に義理立てする必要がない・・今回の騒動は中韓政府の煽りで行っていることは明白ですから、・・遠慮なく資本を引き上げるべきだと思います)
従来の自民党政権時代のように安易な妥協・・相手が何か言いがかりをつけて来ると黙らせるためにその都度何かお土産をやる方式をしない方が良いでしょう。
我々弁護士業務に置き換えれば、ヤクザ相手でも同じですが、こう言うやり方は相手がエスカレートするばかりでいい結果になったことはありません。
工業投資は相手も撤退されると先端技術導入が出来ずに困るのでなお何とかなるが、サ−ビス業の投資はいつでも邪魔になれば口実を付けて追い出されるので、あまりしない方が良いと以前から書いてきましたが、イオン店舗など襲撃されているニュースを見るとこの危惧が現実化し始めています。
これ以上新規投資で深入りしないで一日も早く中国・韓国から資本を引き上げるべきです。

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