少子化と 年金赤字3

4人の子供に300万円ずつ分散投資するよりは一人の子に1200万まとめて投資すれば、その子には4倍以上のリターンがある計算で今の親達は頑張って来ました。
森鴎外の「阿部一族」あるいはタワケ(田を分けること)の語源同様に、どうせならば分散するよりは束ねた・・集中投資の方が有利な結果になるのが普通です。
学歴で言えば4人の子供を小学校や中卒で終わらせるよりは、一人っ子に集中して大卒〜院卒まで仕上げたいのが親心でしょう。
学力がなければ能力に応じて各種専門学校へやって、何らかの資格を取らせてやりたいものです。
こうした親の行動は9月2日に書いたように種の存続発展の原理にも叶っている行動です。
親は、将来子供に損をさせるために高学歴(高学歴だけでは飽き足らずに1級建築士や測量師・薬剤師等々の資格取得・・)あるいは専門学校等へ通わせて保育士や介護士や理学療法士、理容師、自動車整備士等の資格を取らせているのではありません。
少子化で集中投資を受ける代わりに多くの負担を引き受けるのと、多産多死型でこれと言った教育を受けなかった代わりに負担が少ないのとどちらが子供にとって有利・得かの問題です。
課長、部長、役員更に社長になれば名誉も収入も多い代わりに責任も重くなるので、出世した方が良いかしない方が気楽かの問題に似ています。
安定成長になってからの江戸時代では、子沢山で能力分散するよりは一人っ子に集中教育投資する方が良いとなって、人口調節に成功して江戸時代の高度な文芸が発達出来ました。
平和な時代が到来して途中討ち死にのリスクがなくなった・・・タマに途中病死があってもそのときは親戚から養子を貰えば間に合いますので、子沢山の必要性がなくなりました。
こうなれば分散よりは集中投資の方が、子孫繁栄のために合理的であることは誰でも分ることです。
「少人数で親世代の世話をするのは損だ」というマスコミは多産多死型が正しい・・これと言った教育投資が不要・・子供にとって出世しない方が気楽で良いと言う意見なのでしょうか?
子供が4人いれば親の世話をする負担は4分の1ですが、親が死亡するまでの親からの各種援助も4分の1に留まりますし、最後の相続財産も4分の1しかありません。
独りっ子あるいは2人の場合、親の愛情に始り教育投資・婚姻とその後の自宅新築援助金・車を買って貰うなどその都度の受益は独り占めまたはたった2人で受益出来ます。
・・今の若者は一人っ子あるいは2人しかいないので夫婦双方の親から、2分の1ずつ貰えるので結局一人当たり100%相続出来ます。
全体として人口減になるということは、子供のいない夫婦や単身者が多くなって来ることですから、国全体では一人が100%以上(子供のいない伯父叔母の遺産相続をする人も出て来るので)の相続出来る時代が来ているということです。
一人〜2人で100%以上相続する以上は、家の修理や固定資産税等のコストも一人〜2人で払うべきですし、両親や伯父叔母の面倒を一人〜2人で100%以上見るべきです。
少子化の結果負担者が減って大変だという論理は、負担する面だけ取り上げて一人〜2人で見るのは大変だと言うのに等しくって偏頗な議論ではないですか?
「国債残高1000兆円を次世代に負担させるのはけしからん」と言う論法(それ以上の金融資産を相続出来る面を言いません)に似ていて、次世代が受益する面を無視したバランスの崩れた議論です。
次世代が損だという論理は、少子化の結果、養育段階から結婚や住宅購入の資金援助など全部・貰うものだけ4人分を独り占め、あるいは2人で得て来たことを捨象している一方的な不公正な論理です。
「1000兆円もの巨額債務を次世代に負担させるのか」というキャンペインは、同時にその国債保有権・・赤字財政によって蓄積した国富も次世代が相続する点を故意に隠してるとJul 15, 2012「マスコミによる世論誘導の害2(不毛な財政赤字論1)」のコラムで批判してきましたが、少人数で負担するのは損だという主張も同様の思考方式です。
親から貰えるだけ貰っておいて、負担するときになると1〜2人で4人〜2人分負担するのはイヤだと主張し・・あるいは(非正規雇用者は)一人分の負担能力さえないのを威張って言えることでしょうか?
投資の例で言えば、投資には成功も失敗もありますが、2〜4倍も投資したのにリターンが一人分にすら及ばない子供の方が多かったということであれば、親世代の投資判断が間違っていた・・何も投資しないで自分でお金を握っていた方が良かった・・・子供はゼロの方がよかった・・・結婚の必要性を感じなくなる若者が増えてきます。
この点は後に投資効率のテーマで書いて行きます。

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