アメリカ金利上げと円高(基軸通貨とは?)1

アメリカ発の金利変動の場合、世界規模で始まるのですから大変な事態です。
ついでに、10年ほど前からこのコラムで書いているように、日本は約20年間以上も最低金利国ですから、実は日本が経済連鎖の頂点に立って久しいのです。
(大きな声では言えませんが,アメリカは実は2位です)頂点の日本が,中国が偉そうなこと言うならば、金利を少し挙げたら、すぐに参ってまう仕組みです。
日本に原爆がなくとも、金利さえ上げれば(表向き威張っていても中国を含めた本来の)弱小国はひとたまりもないことが明らかです。
中国が参ってしまうと影響が大きくて大変だからと、(大き過ぎて潰せないだろうと言う聞き旧した中国の開き直り論で)アメリカが猶予して来たのですが、中国が実力もないのに世界支配意欲を引っ込めないことから、遂に満を持してアメリカは昨年12月に金利引き上げ断行しました・・。
それでも世界に対する影響を考慮して1回に予定どおりに大きく上げずに來年内に4回に分けて行なうと言うものでしたが、それでも中国にとって劇薬のようでした。
中国はすぐに始まったドル流出に耐えきれなくなって、(12月だけで1000億ドル超の流出と言う公式発表・・1説には1900億ドルとも?・・・実態はもっと多いでしょう・・ですから大変です)年明け以降中国発の経済危機が始まりました。
この危機勃発によって・世界中から連鎖的資金流出→アメリカへの資金還流が始まった=ドル高ですが、(ユーロも近日中の金利下げ発表で、ユーロ切り下げが始まっています)日本円だけが逆に円高基調になっています。
この円高とはドルに対する円高ですから、アメリカが金利を上げても元々アメリカより金利の安かった日本の円保有の方がまだ有利であると市場が判断していることを表していますし、危機混乱時の世界の資金の逃げ場として絶大な信用があると評価されていることが分ります。
アメリカの方が日本より信用があれば、(経済状態がよければ・・)日本より元々金利の高かったアメリカに資金が逃げれば安全な上に高い金利をもらえて有利です。
言わば(こんなことを言うとアメリカににらまれるので大きな声で言えませんが、波乱になるとアメリカより金利の安い日本に資金が逃げて来る事態は、経済実態から見ると)世界の基軸通貨の地位が日本に移動したかのような現象です。
10年ほど前のコラムで国の力は金利動向で現れる・・日本より金利を低く出来る国はない・・もしも日本が金利を上げて日本より金利の低い国になったら、世界中のどこの国の経済も持たないだろうと言う趣旨を書いたことがあります。
そのころから、既に日本は実質世界一の強国・・押しも押されもせぬ世界支配者になっていたと言う意味でかきました。
基軸通貨とは、中国のように?自己宣言・・威張ったり(昨年秋にIMFの公式通貨に採用されましたが・・)政治工作さえすればなれるものではなく、世界の通貨市場で最も信用のある通貨と認めて成立するものです。
市場評価・・これはどんなにマスコミが一致してデマを流しても市場は自分のお金がかかっているので義理や政治力・・デマに従いません。
日本マスコミが如何に日本が駄目だ「失われた20年」と事実に反した宣伝し,世界のメデイアがこれにに協力して一致した言論を展開していても(違う意見をマスコミのせない)事実に反している限り、イザとなれば投資家は損してまでこれに合わせた動きをしません。
マスコミ・エコノミストの一致した意見に反して、逆にこの20年間で日本が世界における盤石の経済的地位を確立していたことが市場の動きから読み取れます。
東京株式市場では、株式が乱世の円高想定の結果下がっていますが、日本・日本企業の評価が下がってのことではなく、逆にイザとなれば頼りになる・・日本に対する高評価による現象です。
株式下落の結果だけ見て日本のエコノミストやマスコミが「それ見たことか!」と騒ぐのでは、「ミソも糞も一緒にする」と言う無知蒙昧な人間のようです。
株価下落には、経済基礎が駄目でドンドン資金が逃げて行く倒産危機の下落と、日本のように危機時の緊急避難先として資金が集まる結果、円高になって株価が下落する場合の2通りがあります。
円が対ドルでⅠ割上がると外資にとっては株価が1割下がって、手取りドル評価がトントンです。
もしも東京市場の株価がそのままだとドル表示で1割暴騰したことになるので,「今のうちに」と利益確定売りが出て均衡点に落ち着きます・・これが株価下落の原理です。
これに対してブラジルのように通貨が3割下がって株価が同じか下がった場合、投資家にとってはダブルパンチ・悲劇的結果になるので、売り逃げに殺到して収拾がつかなくなり大混乱になります。
上海市場で年明け早々、売りが殺到してサーキットブレーカーが連続したのはこの原理によります。
日本の株価下落と中国のように人民元買い支えに必死の株価下落とは意味・原因が違います。
リーマンショックでも日本の被害が一番少なかったのですが、資金避難先として円高になった結果、日本企業が苦しみましたが、将来の見込みなくて下がったのとは違うので、約7年経過してみるとやはり緊急避難先としては世界で最も頼りになる国だったとして今回も選ばれています。
「イザというときの友こそ真のともだち」と言われるように、危機に際して頼られる国が本当の実力者です。
反日暴動以来、日本が急速に投資引き揚げをした結果、今では日本の対中貿易比率はGDP比2、44〜3%未満(いろんな数字が出ていますがこんなところです)に下がっていて、日本が貿易比率を下げた後で、中国に深入りした韓国(貿易比率30%台?)、ドイツ、欧州諸国や豪州その他新興国の被害(デフォルトになっていませんが、急速な貿易縮小による被害)は計り知れません。
この煽りで原油その他資源が暴落に近いほどの下落に見舞われ、資源国は通貨下落・・軒並み経済危機直前状態になっています。
(韓国も大変な事態でしょう)
勿論回り回って貿易縮小の被害を日本も受けますが、直截被害を受けた国とは桁違いの軽微さです。
リーマンショック〜中国危機など世界危機が起きるたびに日本の実力はいやが上に増して行く・・傷が浅くて資金を持っている「日本に頼るしかない」と言う認識を世界中が新たにするより外ありません。

上海株暴落〜通貨切り下げ6

この辺で今年6月から始まった上海株暴落後の流れのおさらいをしておきましょう。
2ヶ月も経つと何月何日に何があったか忘れてしまいましたので、
以下引用です。
①勝又壽良の経済時評http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/entry-12046021863.html
2015-07-06 03:56:10
「中国、「株価暴落」バブル経済体質に「断」再起不能
6月26日、上海総合株価指数は7.39%もの急落になった。中国人民銀行は27日急遽、株価テコ入れで貸出基準金利を0.25%引き下げた。その効果もなく29日、前週末より3.34%値下がりだ。そして、7月2日終値は前日比3.48%の下落。4000ポイントを割って3912へ落ちこんだ。最近の高値である6月12日の5166からの下げ幅は24%である。
「この高値に達するまでの1年間で、上海総合指数は約2.5倍にも跳ね上がっていた。急騰した株価は皮肉にも、急落によって幕を閉じようとしている。今回の急落によって、上海株式市場は最後のとどめを刺された格好である。世界から注目された上海株式市場は、個人投資家が6~8割を占めている。いわゆる機関投資家が存在せず、株価は一方的に振れるという不安定構造だ。信用取引が頼りで、ここまで上昇してきた。それも終末を迎えたことは疑いない。」
官製メディアは、意識して「株価下落ニュース」を流させないという統制を加えている。英国『BBC中国語サイト』(6月23日付け)によると、中国国内メディアを管轄する政府機関・国家新聞出版広電総局が、各メディアに対して株式市場に関する報道を控えるよう通達を出した。「臭いものに蓋」である。一番、馬鹿な目に遭うのは名もない庶民達である。」
中国経済は株式バブルの崩壊で、だめ押しを食らった形である。野球で言えば、7回コールド負けを喫したようなものだ。不動産バブル崩壊の影響は、日に日に強くなっている。中国GDPで、最大の需要項目である固定資産投資は、不動産バブル崩壊で低迷している。ここに株式バブル崩壊の悪影響が加わる。株価上昇による「資産効果」とは真逆の事態のマイナス効果が現れるのだ。個人消費がさらに落ちこむであろう。」

② http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201507060085
015年07月06日09時54分
【経済】中国:当局が空売り規制か、「貸株業務を一時停止」とのうわさ
株価の急落に歯止めをかけるため、中国当局が空売り規制に乗り出すもようだ。近く証券会社に対し、貸株業務の一時停止を求めるという。一部ブローカーはすでに、本日から業務を暫定的に停止しているようだ。現地メディアが3日、消息筋情報として伝えた。
本土マーケットで株価が急落するなか、当局は矢継ぎ早の対応策を実施。今月1日の夜には、現行の担保比率(※)について、証券ブローカー自らが決定できるように修正。A株取引所税や名義書換料を引き下げる方針も明らかにした。これに先だつ6月27日には、中国人民銀行(中央銀行)が景気のテコ入れと株式相場の安定化を狙い、政策金利と預金準備率の同時引き下げを発表している(28日付で実施)。ただ、その後も株価は下げ止まらず、上海総合指数は本日(3日)も一時7%超の下げを見せる場面があった(日本時間午後2時5分現在は1.31%安)。

③ http://solife-a.com/12593.html2015/07/10 からの引用です。

「6月中旬から始まった、中国株価の下落はとどまることを知らず、中国政府は、一気に390兆円の損失を被ることになったのです。
事態を重く見た中国政府は、2015年7月7日に、株式市場としては異例の、『売却禁止』や『売買停止』の措置を取り始めました。
この、株式市場の機能を完全に停止させるという対策によって、中国経済には、一体どのような事が起こりうるのでしょうか?」

④ http://www.asyura2.com/15/hasan98/msg/598.htmlからの引用です。
(ブルームバーグ):中国証券監督管理委員会(証監会)は企業の大株主や経営幹部、役員を対象に、持ち株の売却を6カ月禁止した。
証監会の声明によれば、経営権を握る株主や発行済み株式の5%以上を保有する投資家は6カ月間、持ち株を減らすことができなくなる。
原題:China Bans Stock Sales by Major Shareholders for Six Months(抜粋)

⑤ Business | 2015年 08月 4日 15:09 JST[香港 4日 ロイター] – 4日の中国株式市場は反発して前場を終えた。中国の上海、深セン両証券取引所が空売り規制の強化を発表したことが背景。空売りは先月の市場急落の一因とされている。

※ 追記 空売りは反逆罪?で処罰する仕組み?が出来たらしく、暴落が一時的に収まっている状態でしたが、上海総合が18日6、15%安で今日(19日)の夕刊によると3、12%安と出ています。
8月20日の日経朝刊3pによると新興国全般に資金流出が深刻な状態になっていることが書かれていて、中国に関しては、人民銀行が18日に短期市場(公開市場操作・オペ)で半年ぶりの1200億元の資金供給をしたばかりなのに19日には、14の国有銀行中心に1100億元(2兆1000億円)もの大量資金供給をしたと報じられています。
これまで紹介して来たように今年に入ってからの毎月のように行なわれて来た金融緩和ではどうにもならなくなって、直接資金投入しかなくなった状態が見て取れます。
人民元はいくらでも印刷出来ますが、これではその場の(幹部にコネのある国有企業等の)支払が出来ますが、外資が余計逃げ出すようになります。
結局は、外資不足に(生産に必要な輸入が出来なく)なるので・・これを補うには国を挙げての出血輸出による外貨補充しかないと考えたのが切り下げの理由でしょう。

以上のように連日の大規模な規制連続の挙げ句の8月11日以降3連日の為替切り下げでした。
そして、4日目には人民銀行によるドル買い介入による切り下げ政策終了でした。
昨年秋からの中国経済政策の動きを見ると、素人目にもドタバタ劇の連続で、プロ政治の態をなしていないというべきでしょう。
江戸時代吉宗の米相場対策程度の動きですが、日本とは約300年の経験差があるようです・・当時と違って国際経済は複雑・即時性がありますから、効果がすぐに劇的に出ます。
中国の将来がないと言う(偏った?)立場から見れば、6月以降の中国の政策を見ていると泥縄式を通り越して断末魔の様相を呈し始めたと言うべきでしょうか?
繰り返し書いていますが、中国は大言壮語している割には、真水の外貨準備が少ないし、比例して技術蓄積も殆どありません。
それまでの蓄積を使い尽くすまで?あるいは外国から借りられる限度まで借りて?際限のない穴埋め投資・過剰供給・借金の拡大再生産を続けて行くしかない・・破綻国家ギリシャの大型版?・・を狙っているのが習近平政権の基本姿勢でしたが、その行き詰まりが思ったよりも早く来た感じです。

上海株暴落〜通貨切り下げ5

内需拡大には買い物するだけの資金蓄積(輸出よりも輸入を増やす・・貿易赤字の覚悟が必要ですが・・真水の外貨準備が少ない?)これがないので資金不足対策として昨年秋から毎月のように金利引き下げその他金融緩和してきましたが、どうにもならなくなって来たようにみえます。
このギャップに苦しむ現政権は、長期的視点による政治をする余裕がなくなって、国威発揚(中華帝国の栄光復活)を宣言したり・・反日暴動や海外向けに軍事強迫したり、資金対策として次々とAIIBやブリックス銀行・中央アジア何とかなど国際機関を設立しては外資導入をはかっていましたがうまく行かず、最後は人民元引き下げによる開き直り策の併用しかなかったのでしょう。
苦しくなると一致団結する社会・・信頼で成り立っている日本とは違い・・国民同士と国民と国家間で信頼のない中国・・強権社会の弱みです。
通貨の切り下げによって輸出を増やしても、経済減速の緩和程度がやっとで成長までは期待出来ない・・比喩的に言えば1000万人失業発生を900万人に押さえる程度?・・で、他方で結果的に国民全般が輸入物価高に困る状態に陥る可能性があります。
輸入物価上昇・・購入を手控えて生活水準低下に終わる・・クルマもスマホも買えない階層が増える(・・・4月以降実際大幅販売減少になっています)結果になるだけかも知れませんが、それが実力ならば、悪あがきしないで大人しく受入れるしかないでしょう。
不満のはけ口として中華帝国の栄光を宣伝するのは逆効果・・国民に「自分たちの実力はこんなものだ」と実態を素直に理解してもらう努力の方が必要です。
ただし、プロの間では中国の将来性がないとしてジリジリと資本流出が続いていた・・人民元実勢相場は下がっていたのですから、どうせ実勢を反映してジリジリと資本流出が続いているなら、「この際思い切って、公式レートを実勢に合わせた方が輸出が増えて徳だから!」と言う読みで公式レーを連日下げ決定の理由なのかも知れませんが・・。
あまりにも今回の切り下げは世界的ショックが大きく=巨額資本流出に繋がったので(すぐには分りませんが大分後になって、この1週間でどれだけの資本流出があったか明らかになるトキが来るでしょう)驚いて3日で中止するしかなかったと推測されます。
今回株価暴落と通貨切り下げ騒動の教訓は、「市場のことは、市場に任せた方が合理的だ」と自己証明した結果になります。
以前からネット上で危険と言っている人はミニコミでしかなく、マスコミは中国礼賛一色でしたが、今度こそはマスコミも「窮余の策」とかの表現で中国の苦しみを正面から報道するしかなくなったようです。
マスコミ報道を信じている人の方が多いのですから、株式暴落と人民元切り下げショックは中国に対する世界的評価の切り替えエポックになった筈です。
アメリカの信認が下がった金ドル交換停止のニクソンショック〜変動相場制移行のスミソニアン合意みたいな効果があったでしょう。
今回の切り下げ騒動で8月14日には、早速原油相場が大幅下落に転じています。
即ち中国の経済活動と原油相場は、見事に連動して来たのですが、(この辺の意見は11日に書きました)為替を露骨に切り下げるしかないほど国内が追いつめられている・・経済実態が悪いと世界的に認識された結果、原油需要も相当下がる見通しになって来たことによります。
欧米的・・自由主義経済政策に対する中国独特の政策ドクトリン(社会主義市場経済と言う1党独裁下の市場)があると強弁していましたが、今回の株価暴落と通貨切り下げ騒動はその敗北を証明することになります。
私には、権力者が勝手にやりたい・・専制王朝を共産党の1党独裁・集団指導体制に変えただけのように見えていましたが、中国礼賛論者は・・ブリックス銀行設立や中央アジアなんとか機構〜AIIB設立など全て、欧米的価値観への挑戦として賞讃していました。)
勿論合理的視点・中国政府の名分で言えば、為替相場実行レートに合わせた・・国際経済ルールに合わせただけで何が悪いの?・・遂に中国の限界が来たと騒ぐのは中国キライの悪乗りが過ぎると言うことでしょう。
しかし実効レートに合わせたと言うならば政府が好きなトキに決めるのではなく、それこそ自由な市場取引に任せるべきです。
日本等先進国が行なっているような変動相場制を基本にし、急激な相場騰落に臨時にブレーキをかける程度にすべきです。
独裁政権も専制君主も絶対王制や戦国大名も長期的には民意無視することが出来ないことは歴史が証明していますが、だからこれも民主主義制度だとは言いません。

上海株暴落〜通貨切り下げ4

対日関係で言えば日本は対中巨額赤字ですから、中国は「日本から買ってやらないぞ!」と言うわけにはいかずに、仕方なしに反日暴動したりレアアースの禁輸で締め上げるつもりが、逆効果になってしまったのは記憶に新しいところです。
昨秋から中国の日本へのすり寄り開始以降、日本への旅行を推進して爆買いの恩恵を誇示していますが、日本全体では、大した効果がないのでマスコミ宣伝にもかかわらず国民の多くは冷めていて・・「来たくなければ来ない方が良い」と言う人が今でも大多数でしょう。
折角心を癒すべき落ち着いた観光地が、けたたましい中国人ばかりでは、旅行意欲が失せてしまうマイナスの方が大きいかも知れません。
中国人が多く行くような店には日本人が敬遠して買い物に行かないようになります。
言わば自宅の風通しの良い部屋や居間を泊まりに来た客がいつも占拠していて、住んでいる人が家の隅で小さくなっているような印象です。
上記のとおり顧客であってこそある程度のわがままが効くのですが、露骨なダンピング競争を始めて輸入を減らせば国外への発言力が低下するのが目に見えていますが・・そんな先の心配などしていられない程政権が追いつめられている・・・・中国政府は目先の金が欲しいのかも知れません。
海外発言力低下分補充のために軍事予算を増やすのでは悪循環ですが、国内でも公安予算を増やして不満を押さえつけるしかない状態のようです。
生産力維持のために無駄な鬼城建設や鉄道工事をしたり需要不足分は出血輸出して何とかしていましたが、一方では、地方政府救済→シャドーバンキング救済→結局は資金不足になりますから、金融緩和を繰り返したのですが、金利が下がれば逆に資本が流出します。
今度は資金集めのために株式ブームを煽って庶民から資金吸い上げをはかったのですが、これも限界が来て(戦時中お寺の鐘まで供出していたことを思い出します・・いつか底をつきます)大暴落になってしまい、人民元買い支えのドル資金に困って実勢にあわせるべく公式に切り下げるしかないほど追い詰められていたと見るべきでしょう。
(数十年前のポンド防衛失敗と同じです)
通貨切り下げを数日やってみたら、巨額資金流出が始まったので、大慌てで3日でやめたと言うところでしょうか。
内需拡大で間に合わない不満に対しては、何をやってもうまく行かないので、今後も公安予算を増やして対応する・・海外にも軍拡による威嚇で適応して行くつもりでしょうか?
中国がどんなに威張っても自前の技術力で発展したのではなく、輸出前提の組み立て工場の誘致(経済特区)・・新興国経済型経済成長パターンで成長して来た事実は争えません。
中国は工場誘致を利用した成長限界に直面して踊り場にさしかかっている(中進国の罠)基礎的状況から逃れられません。
成長の踊り場にさしかかったことによる停滞・急ブレーキによる急激なマイナス成長・・国民不満に直面しているならば、今後中国の進むべき道は、国内に公平な制度の構築をするとともに輸出主導経済から内需拡大・・人民の生活水準向上策しかありません。
急成長時には、特定幹部が巨利を貪ってもまだ何とかなっていましたが、低成長になると幹部が巨利を貪る弊害・不満がも目立ってきます・・出来たおできを潰すような汚職取締よりは、社会の基礎たる公平な制度構築が必要です。
いろんな意味での転換・・中進国並みになるためには国民の技術レベルアップ・公平な制度と資金力が必要で、大量生産工場のように、企業誘致(資本導入による国内資金流通の1石2鳥効果)さえすれば直ぐに転換出来るものではありません。
大量生産工場誘致で急膨張・急成長した成果の裏腹の関係ですが、巨大な工場労働者をレベルアップに成功した少数の新規産業がそのまま全員吸収出来る訳がありませんし、巨額外資を必要としないので出て行きます。
日本企業の対中投資で言えば、大規模工場閉鎖→新規立地する東南アジアへ資金流出の動きが始まっていて、これに対する穴埋めが出来なくなって、資金不足に悩む・・これまでの逆回転が始まっています。

上海株暴落〜通貨切り下げ3

従来から政府公式発表とは違う実態経済の減速を反映した資金引き揚げがこっそりと進んでいて、中国は資金繰りに窮していることを「資金枯渇6(一斉開花)」2015/06/10を中心に連載中で、横にそれていましたが、2015-8-10「中国過大投資調整10(資金枯渇9)』以来このテーマに戻っている途中です・・・。
(中国の外貨準備の急激な減少はアメリカ財務省証券の大幅売り越に現れています)
それでも「習近平のアメリカ9月訪問までは政府が頑張るしかないから、元安にはならないだろう」と言う期待で持ちこたえている面がありました。
アメリカ訪問後まで我慢出来ずに人民元基準値の公式切り下げが行なわれると、「そこまで内容が悪いのか?」と言う元安方向を嫌気した外資の引き揚げが加速しますので、国内資金も窮屈になって行くこともあって国内景気はもっと悪化します。
8月12日の日経朝刊の解説では、2%切り下げによる貿易収支改善効果については、SMBC日興證券チーフエコノミスト牧野淳一氏の意見として「経常収支増加効果は50億ドル、(資本逃避による)資本収支減少は300億ドル、差引流出超になる」と予測しています。
国内資金不足緩和のために昨年来矢継ぎ早に金融緩和して来たのですが、それでも追いつかなくて株式暴落になり今回の切り下げになったのでしょうが、この結果外資引き揚げが加速すると大変な事態になります。
中国が公表しているような外貨準備が本当にあるのかの信用不安にまで発展するでしょう。
この段階の強制切り下げは「百害あって一利なし」の印象ですが、そこまで政権が追い詰められていて・・やるしかなかったのでしょう。
切り下げ騒ぎは3日で幕を閉じました・・資金流出加速を無視出来なくなって切り下げを打ち止めにするしかなかったと言えますが、中国による空威張り・大言壮語の底が見えてしまった大騒動でした。
この打ち止めにあたって人民銀行によるドル買い介入が行なわれたと報道されていましたが、通貨価値を実力以上に維持しようとすると外貨がドンドン流出します。
外資流出を防ぐために政府資金を使って高値買いするしかないと言う皮肉ですが、(株であれ何であれ、市場実勢を無視した買い支えと言うのそう言うものです)これが過去にイギリスがポンド防衛し切れなくなった歴史経験です。
(ポンド防衛の歴史については、このコラムで紹介したことがあります)
為替切り下げ政策は日本のように資金余剰国でこそ自由に出来ることであって、資金不足国で自国通貨が下がり始めると→資金流出=デフォルト危機に発展しますから、韓国が日本の円安を批判しながらも切り下げ競争が出来ないのは、この理由によります。
日本の場合は純債権国ですから円が下がるとその分配当等の手取りや国外資産の評価益が逆に増えるメリットがあります。
負債や外資の多い国は為替が下がると貿易競争では有利ですが、その効果が出るには年単位の時間がかかるのに対して、通貨が下がり始めるとその国に対する投下資本の評価が下がるので投資家は投資資金売却・回収に走ります。
下がるとなれば急いで資金流出が始まるし、売らないで持っているとしても金利等支払期限や満期は毎月のように来ますのでドル建て債務の支払額が増えてしまい・・支払金利や返済額が上がって大変になります。
日本の円安による史上最高益企業続出理由は、すぐには輸出数量増しませんので、主として海外資産評価アップ益や同じ配当や金利でも円に換算すると大きくなるメリット等によるものです。
債務国はこの逆になる・新興国は概ね外資導入で成り立っている結果、アメリカの金融緩和がいつ終わるか・金利上げ=ドル高=自国通貨下落不安で大騒ぎ・・一喜一憂している原因です。
中国経済悪化の顕在化によって、ここ数日周辺新興国通貨や株式相場が急激に下がっているのは、資源爆買いしてくれるどころか更に中国の輸入が減ることが(私のような個人コラムの噂ではなく公式に)明らかになり、かつ、中国の通貨安につられて自国通貨も下がるしかないと言う不安によっています。
中国にとっては、為替基準値切り下げによって少しは輸出が増えるでしょうが、内需拡大には逆効果です。
内需拡大=国民がその分豊かさを感じられますが、為替安政策は内需を絞って輸出で稼ぐパターンですから・・黒字拡大が国威発揚になるかもしれませんが、国民の実生活は却って悪化しますし、海外に対する影響力も悪影響(中国が大量に買ってくれるから中国の不当な行為があってもある程度我慢している効果が薄らぎます)ばかりで却って国威発揚どころではありません。
国内的にはスターリンが戦前に国民を餓死させて食糧輸出していたのと同じで、出血輸出=原価割れ販売しても出血輸出企業は苦しくなるばかり・・これを国民全般に広げる政策になります。
対外的には8月10日に書いたように相手からの輸入額の方が多いと大きな顔が出来るのですが、輸出の方が多いと逆に弱い立場になります。

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