通貨安政策3

通貨切り下げは、貿易赤字国がデフォルトを避けるために仕方なしに国民に我慢を強いる政策であり、国民の福利増進のために存在する政府である以上は、一般的には経済危機時の緊急避難行為としてしか取れない政策です。
円高で言えばこのコラムで何回も書いて来たように、国民が得して企業が損する関係ですからこの逆として考えれば分りよいでしょう。
貿易黒字国はその儲けを国民に分配して国民生活をその分豊かにすべきですが、韓国は貿易黒字(それほど困っていない)にもかかわらず、何故国民に耐乏生活を強いる通貨安政策を長年継続採用しているのでしょうか?
こうした通貨安政策の結果、現在の韓国国民個々人は、悲惨の極みにあることは世界周知のとおりです。
(韓国国民の海外脱出願望の強さ・・世界に広がる韓国売春婦問題・・売春婦が世界に広がるほど出身国の悲惨さを示す指標はありません)
通貨安・輸入価格上昇の結果、韓国でも時間の経過で国内物価が上がって来るので、人件費も少しは上がってきます。
(つい最近現代自動車でのストが収束しましたが、なかなか人件費を上げない・労働条件改善に努めないから通貨安のメリットが大きいのが韓国です)
しかし、韓国は鉄鉱石や原油等の原材料輸入代金にとどまらず基幹部品輸入が必須の状態ですから、それらの輸入価格上昇を輸出価格に転嫁するしかありません。
直ぐに価格転嫁しないで先送り出来るのは人件費と国内消費の縮小しかない→国民生活水準の低下で対応するしかない・・ウオン安で儲けているのは、この差額だけしかないのが実態でしょう。
国民に窮乏化を強要して得た儲けの大部分が大手企業の大株主である外資への配当として消えて行くのですから国民は悲惨です。
(韓国銀行その他大手企業の外資比率については January 14, 2012「海外投資家比率(国民の利益)2」で紹介しました)
以前どこかで書いたと思いますが、欧米諸国の非公式植民地になっている悲惨さが如実に現れています。
韓国は強がりを言っていますが、結果を見るとデフォルト寸前の国が通貨安に見舞われて苦しんでいるのと状況が同じです。
国民の賃金アップを少しでも遅らせる・タイムラグメリットに頼る場合、直ぐに追いつかれてしまうと通貨安の効果が薄れるので労働条件を劣悪に据え置くか際限のない通貨安政策を連続するしかありません。
この場合、いつまでたっても通貨安による国民不利益・・ウオン安によって国民(労働者)が安く使われる損失解消が追いつかない・・先へ先へと逃げて行くので、国民疲弊・・犠牲による企業利益追求政策とになります。
(その間の儲けは、大手企業の主たる株主である外国資本家への配当になって消えて行きます)
通貨安によってせっかく国民疲弊策・国民の犠牲の上に貿易黒字を積み上げても、(利子その他の支払を総合した)経常収支赤字国の場合トータルとしての支払額の方が大きいのですから、この逆になって(貿易赤字国の通貨切り下げ同様に)却って損してしまいます。
ところでウオン安政策が何故韓国で何年も続けられているかの疑問ですが、トータル黒字で外貨がドンドン入って来ていれば自然にウオンが上がる理屈です。
(短期間ならば為替介入が可能ですが、年単位で際限なく実勢に反した相場維持は無理です)
ちなみに韓国の公定歩合は今年の3月で3、0%です。
日本のように超低金利ならばキャリー取引による資金流出を原因とするウオン安が理解できますが、日本やアメリカに比べて約3%近くも金利が高いのに何故長期的にウオン安になるのかあるいはそれが維持出来るのかということです。
周辺に比べて高金利なのに長期的にウオンが下がり続けているのは、貿易黒字とは言うものの実際にも外貨が足りない状態に陥ってることを表しているのではないでしょうか?
公称されている外貨準備高というのは、ジャンク債のような売れないものが大半とも言われています。
自国基準金利が3%・・すなわち市中金利は5%前後になっているのにアメリカの1%前後の国債等を買っていると逆ざやで参ってしまうので、信用力の低い高金利の債権を買っているからです。
中国、韓国等の自国金利高による逆ザヤ運用については、April 27, 2012「国債運用益2」前後で紹介したことがあります。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC