マイナス利回り4(消費信用3)

話題をマイナス金利に戻します。
全く劣化しないように思われる金貨の保管でも、その管理費・・警備その他に年間1%コストがかかるならば、金貨の価値が年1%ずつ(経費として金貨をカジって行くしかないので)目減りして行くべき筋合いです。
ウラン等放射性物質も半減期が長いのですが、その間の保管・管理コストが莫大です。
(結果的に原子力発電は安くないじゃないの?と言う疑問が噴出しています)
種モミのように生産に利用しない限り万物は時間の経過で価値が目減りするのが原則です。
元々お金でも何(家)でも本でも道具でも貸すのは、お願いされて「貸してやる」と言い、「お貸し下さい」と言うように、消費目的の場合目減りを前提としているので貸すのは本来的に「恩恵関係であって」金儲け目的ではあり得ません。
建物に関しては高度成長期以降、ビジネス(商)としての賃貸ビル等が発達しましたが、それまでは、家作と言って余裕のある人が恩恵的に貸してやる(民法の人間)関係でした。
大正から昭和に掛けて出来た借地法や借家法では、借り手を弱者として保護する法律になっているのはこうした現実を前提にしています。
他方で、平成に出来た借地借家法では、恩恵ではなく業として経営する人が増えて来たので、借りる方が顧客として強い場合があることを前提に定期借地権や定期借家制度が創設されました。
スーパーやファミレス等の出店にあたって、1000坪単位の土地を借りる場合、恩恵ではなく、投資資金の運用として土地購入資金としてまとまったお金を使うよりは借りる方が得だからか借りるに過ぎず、企業にとっては一種の投資行動になります。
生活必需品としての土地貸借・消費から投資になって来た分野も出てきました。
農地で言えば企業参入の必要性が出て来て、小作制度復活阻止至上命題の農地法(戦後直後はこれで良かったのですが・・)とは違ったコンセプトに切り替える必要が出て来たのと同じです。
貸金と金融の違いを見ると、消費目的に貸すのが貸金であり、投資資金として貸すのが融資(資本の融通)という棲み分けでしょうか。
種モミの供給のように何かを生み出す資本の融通ならば、元金プラス利回り回収を期待するのが当然ですが、消費目的の貸金は恩恵・・消費してしまう目的である以上、元金回収や利息を期待するのは無理があります。
この無理を通すために親族を連帯保証人にしたり、(黙っていると返せる訳がないので)自ずから取り立てが厳しくなるので余計金貸しは嫌われます。
金貸しが忌み嫌われるのは、消費目的で貸した以上は元本でさえ回収を期待するのは不合理である・・恩恵で(元本の何割かが帰ってくれば上出来)しかないのを承知で貸しておきながら、これを金儲けにしようとしているところに無理があるからです。
返す当てがないからこそ懇願されて貸すのですから、返せないことを知りながら恩を着せて貸しておきながら、満期が来たら鬼に変わって、厳しく取り立てるのでは一種の詐欺みたいなものです。
金貸し(あるいは個人の小金持)に言わせれば「あれだけ毎晩のように来て泣いて頼んだから貸してやったのに・・」返すときになって返さないのは詐欺じゃないかと言い募るのですが、上記のとおり元々返せっこないのが分っていて貸しておいて、満期が来たら約束とおり返せ」という方が、だまし討ちみたいなものです。
僅かの貸金で返さないなら家を渡せなどと強欲な要求する例が増えたので、これらは民法90条の公序良俗違反として無効にする判例が昭和30年代に出そろいました。
その後(無効にするだけでは借金と不動産価格のバランスが極端に違うときだけしか救済されないために、判例による解決には限界があるので)50年代に入って仮登記担保法が出来て不動産を取るときには無効まで行かないときでも借金と清算をしなければならないことが法で決められました。
(この法律は不動産価格がうなぎ上りに上がっているときに意味がありましたが、平成に入って下がる傾向になって来たことと、殆どの人が先順位で住宅ローンによる抵当権が設定されていて超過債務状態が増えたので実際的意味を失っています。)

仮登記担保契約に関する法律
(昭和五十三年六月二十日法律第七十八号)

最終改正:平成一六年一二月三日法律第一五二号

(趣旨)
第一条  この法律は、金銭債務を担保するため、その不履行があるときは債権者に債務者又は第三者に属する所有権その他の権利の移転等をすることを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件付代物弁済契約その他の契約で、その契約による権利について仮登記又は仮登録のできるもの(以下「仮登記担保契約」という。)の効力等に関し、特別の定めをするものとする。
(清算金)
第三条  債権者は、清算期間が経過した時の土地等の価額がその時の債権等の額を超えるときは、その超える額に相当する金銭(以下「清算金」という。)を債務者等に支払わなければならない。

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