企業買収→自国企業に技術移転出来るか?

日本企業を買収しても高度製品は日本でつくるしかないとした場合、折角日本に資本進出・企業買収しても中国人労働者がローエンド製品しか関与出来ない・・アメリカがアップルの生産を中国工場にほぼ100%取られているのと同じで・・国家的には資本所得しか増えません。
中国の資本進出パターンが成功した場合中国社会・労働の質がどうなるかの疑問です。
資本参加すれば高度企業秘密を取り込めるかも知れませんが、文字化出来ない現場のスキルを取り込めるかは別問題です。
日本の場合、高度技術を前提に後進国への合弁進出・指導ですから、後進国に日本が技術移転しても現地生産分だけ国内生産が減る程度に過ぎないうえに、なお(15日紹介した中国人のように日本本国生産品にこだわる高レベル消費者が一定量いる結果)一定のメイドインジャパンの輸出が残る・・貿易黒字が残ります。
アメリカでの日系自動車の現地生産車が400万台に迫ると報道されていることを紹介しましたが、それでもメイドインジャパンにこだわるユーザーがいるので対米輸出が残っています。
これが11日紹介した16年度の国際収支で(巨大な資源輸入した結果でも)なお2兆円に上るサービス・貿易黒字が残っている原因です。
中国の場合国内では、ローエンド〜セカンド製品しか作れないままで、買収によって資本所得だけ増やして行くとまさにアメリカのアップル現象に似て来ます。
アップルのように独自開発でさえ組み立て生産の99%をローエンド国にたよるしかない・・多数労働者を養えない結果、格差拡大でアメリカが困っているのに、独自開発したわけでもなく資金力に任せて買収しただけの中国資本が、どうやって本国の労働レベルの底上げに結びつけることが出来るかです。
アメリカよりも比較にならないほどの巨大人口を抱えている中国が、折角買収した日本企業自身が普及品生産をもっと人件費の安いチャイナプラスワンに工場を移して行くとどうにもなりません。
せいぜい資本所得で儲けられた人だけが、高所得を満喫出来るだけ・・アメリカ以上の格差拡大になるだけでしょう。
これが民間企業家ならばアメリカ同様の能力差によるものですが、国営企業関連の日本投資となれば、結局は共産党幹部の不当・・不明朗収入源にしかなりません。
人民の職場創出のために折角日本企業を買収した以上は・・と、経済原理に合わない割高な中国現地生産を続けると、中長期的には中国資本の入っていない競合他社に負けてしまいます。
日本の民族企業が、已むなく現地生産・後進国に進出しているのと同じで日本資本か外資によるかの違いは、進んで海外進出するか仕方なしにやるかの違いでしかありません。
国際競争に生き残るには工場労働者のレベルをローエンドからセコンド〜ハイエンドレベルに高めて行き、買収企業製品の中の高級品生産を中国へ少しでも移管して行くしかありません。
日本企業を買収した方が中国人を日本本社に送り込んで訓練させるチャンスがあるのでレベル引き上げに資するとは思いますが、全国民をハイエンド向けに引き上げるのは無理なので、どの比率まで引き上げられるかに掛かります。
中国資本が買収したボルボ自動車が中国向け現地生産だけでなく、輸出用高級品生産を始めると出ています・このためスエーデンから技術者を中国勤務を命じて?中国人指導に精出させているとも言われます。
高級路線化に成功すれば、中国にとって画期的なことになりそうです。
シャープ・東芝であれ、その他企業であれ、チャンスさえあれば買収して10に1でも技術移転に成功すれば儲けものでしょうが、(日本人の場合そうなれば、やめる人の方が多いでしょうが・・それでも10人に一人協力する人が出るでしょう)これがうまく行かない場合のこです。
技術導入するにしても高度技術者はそんなに多くいりません・・人口数が多いことは消費大国としての発言力があるとは言え、生産国としてはメリットではない・・人材レベルが重要な時代になって来ましたので、19世紀の延長でヤミクモに人口を増やして来た米中が困っている筈ですが、その原因に気が付いていないようです。
米中共に5月13日に書いたようにシンガポールのように社会組織を適正規模に作り直して独立させて、それぞれのレベルにあった生き方にすれば良いのですがそこが分らない・・分りたくない。
大きな田舎の屋敷よりは、都会のマンションの方が機能的で住み易いのですが、過去の栄光にこだわって大きな屋敷を棄てられない状態・・・「中華の栄光の回復」も同じ発想です。
アメリカは、January 22, 2017「新興国台頭と日本の進むべき道2」前後で書いたように流れ作業の発明で熟練工を不要化する方向へ舵を切るなど食品であれ衣料品であれ、質より量・・粗放・大量生産に特化して来た・・人材も質よりも量・・移民流入奨励が国是でした。
西欧のEUの拡大政策も戦争をなくすなどのきれいごとを言うものの、その本音は米中同様に規模の利益を追うものであって、時代錯誤だと言う批判意見をJuly 3, 2016,「欧米と日本の対応2(EU→一体化・対外障壁) 前後で書いて来ました。
質より量の19〜20世紀型に特化し過ぎた点で、アメリカも中国も困っている点は同じです。
アメリカの場合、資本進出(海外進出・・例えばGMは中国での製造販売が利益の殆どと言われています・・)による国外からの利子配当収益が大きいメリットがありますが、中国の場合まだ所得収支は(クルマその他まだ多くは外資中心社会ですから)大赤字のママとの違いがあります。
アメリカの場合国外からの資本収益だけでは飽き足らず・・と言うより、13日に書いたように資本収益に頼ると国内で資本収益に関係しない階層との格差拡大するので)国内生産回帰を言い出したのですが、中国の場合はまだそこまでも行っていません。
中国の格差発生の主な原因は、海外収益に関与出来るかどうかではなく、共産党幹部・高官による天文学的な賄賂収益によるものでしょう。
国内生産が細って行くと巨大人口を抱える米中両国が困り・・そのストレスを諸外国にぶつけているのが中国の近隣国威嚇であり、トランプのアメリカ中心主義宣言でしょう。
時代遅れの国家形態・・巨大人口を抱えた米中両国が、「大き過ぎて潰せない」を絵に描いたような世界の波乱要因になって来たことになります。
アメリカ中心主義・・国内生産に合理性があればアメリカ企業がトランプに言われるまでもなくそうしています。
どこの企業も自国から出て行って、制度習慣の違う国外でそこの権力に気兼ねしながら生産したい企業はありません。
ローエンド品を作るにはアメリカでは人件費が高過ぎるからローエンド生産をアジアに移転し・直接投資による資本収益構造に切り替えて来たのはアメリカ企業自身の選択でした。
誰でも本質は自己中心主義ですが、相手のある相互関係ですから身勝手なことは出来ないと悟るのが、社会性の問題です。
「アメリカ中心主義」と怒鳴られ・高関税をかけると言われるとさらにどんな嫌がらせがあるかもしれないので経営者は一応恭順の意を示しますが、経済合理性に反した保護主義・自分勝手主義は中期的には無理があります。
保護主義が仮に成功すると国際競争力のない企業温存に繋がり、(国民は世界先端ではない劣化版の商品サービスを買わされるので)結果的にアメリカの消費水準を落とします。
巨額貿易赤字(資本収益等による還流による穴埋めで)・・消費水準の高さがアップルのような新しい産業創出の原動力ですから、消費レベルが下がると開発力も下がり、単に消費するだけの国になります。
トランプ政権の保護主義政策が成功すると国際競争力の低下を招く一方になり、輸入が減れば国際的発言力が下がります。
それが我慢出来なくなると、時々ヒステリー的武力に訴える威嚇外交に戻るのでしょうか?

中国が米韓の国債を売って日本に資本投入するワケ

ところで、日本では中国スジ保有の日本社債や株式が16年も大幅買い越しになっているようです。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-18/OJYDMR6KLVRD01
中国の対日債券投資、再び増える公算-16年の買越額は記録更新か      2017年1月18日 12:27 JS
「中国による日本の債券購入は2015年と16年1-6月(上期)に記録的規模に達したが、その後は一服していた。だが日米の金利差拡大が日本国債の魅力を再び高めることから、中国による買い入れがまた活発化しそうだ。」
中国が米国債を売り、韓国への投資を引き上げて利子配当利回りの低い日本企業へ投資する魅力・必要性は何でしょうか?
ちなみに10年もの国債の日米金利差はhttp://lets-gold.net/chart_gallery/chart_gb_yield_ja-us.phpによると以下のとおりです。
日米10年債金利の推移チャート

日米10年債金利の推移

上記のとおりの金利差があって、今後米国金利上げが始まる・・更に差が開くのに、金利の安い日本の債券を何故中国が買うかです。
その理由は以下のとおりらしいです。
MIZUHO CHINA MONTHLYみずほチャイナマンスリー2017年3月号
中国アドバイザリーの現場から
「中国企業による『Made in Japan for Chinese』の動き」
みずほの解説記事引用を省略しますが、これを読むと、中国は中間品の自製・産業構造を高度化するためには単純な日本企業の中国進出・誘致策の限界が来ている状況が論じられています。
すなわち・・最終製品が日本企業名でも中国国内生産品では消費者が買わなくなっている・・どこで作ったかが重要・・消費レベルが上がって本当の品質重視になって来たことが窺われます。
日系企業名だけでは現地企業製と大差ないと言う認識・・日本企業進出による現地生産が限界に来ているようです。
これが訪日観光客の爆買いの基礎です。
それだけ中国民族企業のレベルが上がったと言うことでしょうし、日本人が食品や衣類等を国産でければイヤと言う意味・・見た目が同じでもちょっと違うど・・その違いが中国人にも分るようになったと言うことです。
そこで、・・単純な日本企業誘致や企業買収策から、中国資本によるOEMや業務提携など日本国内生産「made in jyapan for Chinese」のブランドをつけて逆輸入政策になって来ているとなっています。
消費材・・健康食品ベビー食品や医薬品・・肌に触れる衣類や漢方薬などでは顕著らしいですが、中国企業が日本で製造することによって中国(資本)企業でありながらメイドインジャパンを名乗れるメリットに傾斜していることが、日本への投資・・日本は資本完全自由化していますのでスキなように市場で株や債券を買えます・・株主や債権を入手して徐々に企業買収のチャンスを狙っている段階です。
そのためには日本人の嫌中意識・対中アレルギーを薄めるしかありません・これが対日強硬意見が減って来た背景でしょう。
親台湾国民感情に目を付けて?台湾資本であるものの、中国政府の息のかかったホンハイによるシャープ買収はこの流れの一環でしょう。
中国としては資本流出危機があるとは言え、環境技術その他まだまだ必要とされる高度技術部品だけではなく消費者の要望を汲み取ると、身体に直に触れる・・ソフト面に広がる日本の高度技術吸収に努めるしかない実態が見て取れます。
中国政府の国際政治上の意図は別としても政府がいくら反日教育をしても、人民の日本製品に対する信用が高い・・評価力・・消費者の目が上がっていることを表しています。
消費者の目次第で中国の企業製品も向上します。
こんなわけで、資本流出危機がありながらもここ数年中国資本の日本流入・・日本の不振企業に目を付けて企業買収の前段階である資本注入に熱心になっている原因らしいですが、日本とすれば、余計な資本が入って来る分円相場が上がってしまうデメリットがあります。
企業にとっては株が上がって嬉しいでしょうが、(裏返せば公然たる「いつでも回収出来る」賄賂みたいなもので保有比率が上がると反中的言動すると、売り浴びせられると怖いので親中的になって行かざるを得ません・・)金あまりの日本全体としては、事実上の賄賂の役割を果たす外資が入って来るメリットはありません。
ただ、ホンハイによるシャープの黒字化や日産傘下(ゴーン流経営革新)に入ることによって、三菱自動車の再生が軌道に乗って来たように、「現在流御雇外国人・・違った血を入れる)違った目での運営によって生き返る・・従業員が職場を失わないで済むメリットがあります。
中国向け輸出に特化する場合、日本資本のママであっても現地責任者を中国人にするだけではなく経営トップも日本人経営者よりは中国人にした方が合理的かもしません。
国内工場・・生産維持のためには、輸出先の資本・経営者の方がニーズをつかむのに長けているので、合理的でしょう。
日本企業が中国の解放後中国へ進出したときには、日本向け野菜・餃子あるいは縫製工場等でしたが、日本市場向けである以上日本の市場動向・嗜好に詳しい日本人が行って指導した方が売り易いに決まっています。
パリでファッション製品を売るならば、パリの事情に通じた人・・パリ人を現地人の目利きによる商品を送った方が普通は良いでしょう。
中国資本による支配?を不愉快に思う人がいるかも知れませんが、それの逆張り・・中国向けに特化するならば、中国向け製品を作るのに何百人の日本人がうまく中国人をトップに使って作ると思えば良いでしょう。
源氏や平氏の貴種を地元武士団が棟梁に担いだり、親王を総大将に担ぐのと同じことです。
サッカー等で外人を監督にし、フィギアースケート等で外人コーチを頼むのと同じです。
高校野球でも関係者全員が、甲子園に出たいのであって、地元出身監督で県内のリーグ戦で負けてしまうよりは、監督が県外から来ても地元チームが甲子園まで勝ち進めた方が良いに決まっています・・武士団としてもその合戦に勝って生き残ることが先決であって、団結して勝てる旗印になるならば、お飾りの総大将など見たこともない親王サマでもは誰でも?どこから来ても良いのです。
日産や三菱自動車の例を見ても、従業員を養ってくれるならば外資でも社長が外人でも良いのです。

民度を上げる→外貨準備減少2

高度成長期以降の地価高騰で潤った千葉の近郊農家の結果を見ると(全部を知っているわけではありません知っている人だけのことです)多くの農家では一時的に羽振りが良かっただけで元の木阿弥になっている印象です・・。
地方に大手工場などが進出した場合、その中で技術を磨いて地元で創業出来る人がいるかと言うとなかなかそうは行きません。
とは言え、日本のゴールドラッシュ時代の安土桃山時代・・今考えると金の大流出・・貿易大赤字時代があってこそ、絢爛豪華な時代の幕が開いたのですが、みんながみんな等伯や永徳、宗達のような芸術家になったのではなく、裾野が広がった結果とすれば、傑物はひと握りで良いのです。
消費生活向上・・遊びの中から、工夫や新しい芸術や新製品が生まれる関連があることは確かでしょう。
日本の現在の世界的評価は、安土桃山の後を受けた江戸時代に庶民の消費生活が世界に先駆けて充実していた結果によると思われます。
消費経験が将来の民度にどう言う影響が出るかは別として、(私なりに最大限中国寄りの意見を書くとすれば)兎も角外貨準備が底をつくまで歯を食いしばってでも人民に消費経験させない限り前に進まないと覚悟を決めたのが中国ではないでしょうか?
雄安新区建設の新バブル構想が今朝の日経新聞にも出るようになりましたが、箱物や土木工事で貴重な資金を使い、人民も金儲け・投機的売買にうつつを抜かしていて健全な消費者が育つかの疑問がありますが、日本でも豪壮な城郭建築が豪華なふすま絵を誘発した例があります。
ところで北京に関しては私は元々北方民族・・女真族が南下したときに侵入した入口に当たる場所・北京を首都としたのは合理的だったでしょう。(北条氏が関東へ進出したときに入口の小田原を本拠地にしたのと同じ)
しかも清朝の支配は、遠くの異民族が服属意思表明していただけで直截支配していなかったので全体の端っこに首都があっても間に合っていました・・。
対外経済中心時代で且つ直截支配下に置く現在国家の首都としては、北京は地理的に偏り過ぎている外、国際交易にも不便・・このママでは無理があると言う意見を元々持っていました。
習近平は鄧小平の深圳特区・江沢民の上海特区の向こうを張って、これに負けないレガシーを残すために雄安親区を計画したもので、(ネット報道だけではなく日経新聞がが報道するようになった以上は)早速権力に媚びる多くの関係者が動き出した模様です。
深圳特区や上海開発は相応の地の利を踏まえて開放政策にマッチしたので成功したものですが、新首都?雄安親区は北京から更に内陸に入っていますから、経済原理からして・・今時可能なの?と言う第一印象を抱くのは私だけでしょうか?
この種の意見は、これまでネットでも出ていませんし、日経新聞にも出ていません・・当面世界的な関心は新バブル創出がうまく行くのか?そんなことばかりで中国経済の先行きがどうなるのか?ひいては世界経済に与える影響に関心であって、外野にとっては「地の利がどうの・・」と言う先のことまで心配してやる必要のないことはそのとおりです。
話題を外貨準備減少に戻しますと、日本のゴールドラッシュのような蓄積がないのが中国の苦しいところで、そのために気前よく使い切れない・・その間の人民元防衛策に必死ですが、内需拡大→貿易赤字ですから、人民元は下がるしかない・防衛するのは元々無理があります。
貿易黒字とは何か?ですが、難しい説明は専門家に御任せするとして、あっさり言えば、国内利用以上のもの生産している国と言うことでしょう。
これを売るのに忙しく折角作ったものを自分が充分に消費出来ていない社会とも言えます。
アメリカの場合巨額貿易赤字を続けて来た・・働くより消費優先だからこそアップルその他新しいものが生まれているとも言えるでしょう。
医者の不養生といいますが、他人の医療に忙しくて自分の健康管理する暇がない状態です。
植民地支配経済・・宗主国向け生産をさせるが植民地下の奴隷的労働階層は自分の作っている物を消費する権利がない・・解放当初の中国は日本の植民地ではないのに日本向け輸出製品専用工場を誘致していました。
多くの後進国政府が外資進出許可するときに、「先進国企業が国内市場を席巻してしまうと困る」と言う理由で国内販売を許可しないか、許可するときには外資の比率を半分以下の合弁しか認めないなどと制限して民族資本が学ぶ機会を与えろと言う条件付きで許可しています。
リーマンショック後の中国の内需拡大政策は、今後は自分が作っているものを自分も消費したいと言う意欲表明とすれば合理的です。
中国が内需拡大に舵を切った以上は、黒字が縮小し外貨準備・蓄えが減って行くのは仕方ないと言うか自分で選択したことです。
内需拡大をやめて経済パフォーマンスを良くしない限り奇策や規制では一時しのぎでしかない・・基礎にある人民元安の流れを止めない限り資本流出圧力をいつまでも塞き止めることは出来ません。
ところで以前出血輸出の構造を書いたとおり、出血輸出をるのは仕入れ資源輸入代金を払うしかないので、付加価値をつけた人民の労賃を減らすしかないので出血輸出などしていられません・・内需拡大=人民に豊かな消費をさせる以上は、貿易黒字が減るのは当然の帰結です。
外貨準備の続く間に消費生活を充実させて消費材を作れる民度に引き上げる・・民度レベルアップ・・これが間に合うかのテスト中と言うところでしょうか?
この覚悟をすれば中国の外貨準備急減を騒ぐことではありません。
転売目的のマンションや鉄道ばかり作っていて民度が上がるかの心配があるでしょうが、この後で書くようにこの数年で中国消費者の消費レベルが上がり・・日本国内製品でないと信用出来ない・・と言う選好が増えて来たことから見ると、短期間に民度アップ出来る可能性がないわけではありません。
この間の食いつなぎ・・外貨準備のうちで(ベネズエラ債?のように売るに売れないものが多いので)市場で売れるものから売って換金するしかないと言う姿勢ではないでしょうか?
http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20170107/Recordchina_20170107010.html
2017年1月4日、韓国金融監督院が発表した統計から、2016年1~11月末に中国人投資家が韓国の株式市場で売却した株式の総額が1兆5000万ウォン(約1500億円)に上ることが明らかになった。環球網が伝えた。」
表向き韓国のサード配備に対する嫌がらせっぽいですが、韓国には義理を欠いても失うものが少ない・・(韓国の中レベル技術移転はほぼマスターした・今後は韓国企業は競争相手でしかないと言うゲンキンな読みで)と言う切り捨て対象にしただけ・5月6日に書いた北朝鮮切り捨て政策と同じ文脈で見るべきでしょう。
中国は民度レベルアップ→内需拡大による貿易黒字減少は仕方がない・この間のつなぎとしては、換金可能で今後技術移転の旨味のない国の外貨から順に売れるものから売りたいだけではないでしょうか。

消費経験が民度を上げる→外貨準備減少

世界的に資源国や新興国通貨下落が進行している状況下で、ローエンド生産に頼る中国経済の限界を見た世界が、資本流出を始めたのですから、資本取引の規制さえ強化すればどうなるものではなく、ハイテク製品に挑戦する力があるかを世界は見ています。
スマホで言えば、中国企業がアップルに負けない新製品を仮に作って世界を席巻しても、その製品工場として最低賃金で働く工場しか中国に作れないのでは、ベトナム等に工場立地を奪われてしまいます。
このシリーズの関心である・・結局は民度次第と言うことです。
一握りのエリ−ト研究者や資本家だけが潤う社会では、豊富な労働力が売り物の中国の金看板がどうなるか?と言う疑問です。
多くの国民がローエンドからセカンド〜ハイエンド製品生産に従事・参画出来ないと平均を引き上げられません。
13〜14億人と言われる巨大人口を皆ハイテクレベルに引き上げるのは無理でしょうから、これまで「売りもの」であった巨大人口・低賃金労働者が逆に足かせになって行きます。
巨大人口はこれからの時代には足手まといになるだけで、シンガポールのように100万前後のコンパクト人口で優秀人材を集めた方が有利な時代が来ます。
アメリカもニューヨークをシンガポールのような都市国家にして独立した方が有利・・アメリカの格差問題の本質は個々人間の格差に矮小化した砂粒の問題ではなく地域格差・・ニューヨ−クその他の大規模都市国家とその他ローカルの格差でしょう。
これを正面のテーマにすると、もともと民族国家の歴史のないアメリカ合衆国の分裂に結びつくので、メデイアその他文化人が個人問題に誤摩化しているのではないでしょうか?
19世紀から第二次政界大戦までの正義より武力中心の大鑑巨砲主義の時代には、国家組織・GDPは大きいほど有利でしたが、平和=正義が守られる時代になると小回りの利く組織が有利で、今のところシンガポール程度の規模が一番合理的な感じがします。
19世紀型思想に特化したアメリカやロシア中国は、人口を増やし過ぎたので時代遅れの規模の大きさを持て余している・・実は困っているのを格差と称しているように見えます。
この数十年で見てもロシア、中国、アメリカは19世紀型腕力時代の名残にこだわっていて失敗を繰り返しています。
例えばいくらイノベーションを活発化しても・・アップルのように大ホームラン級の新製品開発に成功しても、あるいは金融で大儲けしても、生産の方は賃金の安い中国等の工場でつくるしかないので大量の国民を養うのは無理・利子配当所得しかないから、資本保有しない国民はそのおこぼれに頼るしかない・・寄付や社会保障等の善意に頼る階層が増える一方です・・。
この辺は日本の国際収支の紹介で10年ほど前から書いてきましたが、国際収支の黒字内容が貿易黒字から所得収支に移って来る・・所得収支黒字が基本になると資本蓄積の格差に比例して(利子配当収入のない階層には国際収支黒字は関係がありません)格差が生じて来るのは必然です。
02/11/09 「バブル崩壊後の自己資本比率規制2 05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」前後の連載で、当時の過去10年間の国際収支表を紹介して、この間に貿易黒字の比重が下がり、所得収支黒字が経常収支・約20兆円の黒字の約半分を占めるようになっていること・・海外現地生産拡大で労働による生産収入比率が徐々に下がって行く一方・・利子配当収入比率が上がって来ていると書きました。
当時は約20兆円黒字の半分を所得収支・利子配当送金が占めていることを前提に意見を書いたのですが、18年5月11日(2日前)のコラムに久しぶりに日本の国際収支を紹介しましたが、これを見ると同じく約20兆の総合黒字の内、実に18兆もの、利子配当等の(不労?)所得になっていることが分ります。
こうなると高成長期を経験している間に資本収入層に脱皮出来た階層と資本所得層に参加出来なかった階層との格差が広がるのは当然です。
個人の一生で言えば、バリバリ働ける若い間に資金を蓄えて労働による収入が激減して来る老後には自宅にローンも割り住居費ただで利子配当(民間年金や家賃)収入で悠々自適出来ている人と蓄積して来なかった・アパートの家賃払わねばならない上に預貯金も少ない階層との格差が次世代に及んで来たのです。
この10年ほどでまさに親世代の格差が次世代に及んで来たと言うことでしょう。
この辺は親の家に同居出来る(家賃不要の)恩恵や保有アパートなどを相続出来る都市住民2〜3世と自分で新規取得しなければならない都市住民1世の格差・・その他いろんな角度から喩えば、February 5, 2011,「都市住民内格差7」等で連載して来ました・・。
赤字国債を次世代に負担させるのか?と言うスローガンも「国債保有者から相続する人」と負債を相続するだけの人との格差であって世代間対立の問題ではありません。
各種社会保険赤字問題も同じで、世代間対立の問題ではなく富裕高齢者と貧困高齢者の格差を緩和するためにどれだけ社会的負担するか→結局は富裕層の負担問題です。
これがアメリカでその他先進国で格差問題になっている元凶でしょう。
中国はチャイナプラスワンの挑戦を受けるようになって、民度の引き揚げが急務になって来ました。
ローエンド製品の場合、外資の指示どおり作れば良いだけですが、製品開発となると消費者経験がないと、消費者目線での開発が出来ません。
そこで先ずは内需拡大・・消費経験させるのは正しい選択ですが、それは必然的に貿易黒字の縮小赤字体質に変わって行きます。
国民をレベルアップするには営々と積み立てた外貨準備を取り崩してでも、外貨準備のあるうちに何とかなるのでしょうか?
国民が豊かな生活をしないと質の高い商品を工夫出来ないのですから、先ずは良い生活をさせることから始める・・内需拡大の方向は正しい選択です。
ただ土地成金がイキナリ文化的生活を出来ないように、マネーサプライを増やすとバブル・・不動産転がしに走ってしまうのは順序としては仕方がないのかも知れません。
もしも、外貨準備を食い尽くしてバブルで終わってしまうと何も残らない・・少しは文化受容の方に行く人もいるでしょうが、(そう言う人は文化の成熟した国へ逃げ出し)多くの国民には何も残らない可能性があります。
億単位の人が海外旅行出来ただけでも、何か残ったことになるのかな?
安土桃山文化は世界有数の金産出によるバブル景気によるものだったと言い得るでしょうが、この金の輸出による贅沢が、絢爛豪華な文化を生み出したのです。
この担い手は国民全部ではなくホンの一握りであったとしても、後の時代に大きな影響を与えるのですから、それでも良いのかも知れませんが・・。
中国の場合、一握りの影響を受けた折角の人材が海外に逃げてしまう可能性が高いのでそこが心配です。
当面の国力底上げには結びつかないで終わると、バングラデシュやベトナムミャンマーなどと低賃金競争を繰り広げるしかない・・解放前の14億の貧民が残る・元の木阿弥になる可能性があります。
一方で苦し紛れに国威発揚に励む・・軍事力強化・・周辺威嚇にエネルギーを注いでししまうのは長期的にマイナスにこそなれ何の価値もありません。
ローエンド製品レベル〜セカンドエンド〜ハイエンド製品へと経済底上げの必要なときに権謀術数や軍事力に人材投入が偏ると将来性が限られてしまいます。
兎も角今の外貨準備減少は、将来のために貯金を崩しても息子を大学にやるのと同じで雌伏のときとして頑張るしかないでしょう。
これはこれで正しいのですが、ナケナシの貯金をはたいて都会へ遊学させたのに息子娘らが勉強するか、遊びほうけるかの瀬戸際です。
それを決めるのは数千年単位の基礎レベルの問題です。

両替制限→人民元取引急減

たまたま5月8日の中国政府発表4月の貿易収支の発表が8日日経夕刊その他でニュースになっています。
コピペし易いネットで見ると以下のとおりです。
http://jp.reuters.com/article/china-trade-april-idJPKBN1840CD
Business | 2017年 05月 8日 17:18 JST
中国の4月貿易統計、輸出入ともに予想以上に伸び鈍化 黒字拡大
[北京 8日 ロイター] – 中国税関総署が8日発表した4月の貿易統計によると、輸出と輸入ともに予想以上に伸びが鈍化した。国内外の需要低迷とコモディティー価格の下落が背景にある。
4月の輸出はドル建てで前年比8.0%増と、伸び率はロイターがまとめた市場予想(10.4%)を下回った。
輸入は同11.9%増。こちらも、伸び率は市場予想(18.0%)に届かなかった。
3月の輸出は16.4%増、輸入は20.3%増、貿易黒字は239億3000万ドルだった。 」
上記のとおり黒字にはなっていますが、5月8日の日経新聞夕刊3pによると内需拡大・輸入拡大により前年同月よりも黒字幅が16、5%減となっています。
黒字維持とは言え黒字幅が減り続けているので、このまま政府主導のバブル拡大→輸入拡大をいつまで続けられるのでしょうか?
夕張市の財政制破綻や国鉄の赤字累積など見れば分るように、無理な投資はいつか資金が続かなくなります・・規模の大小は時間差でしかないでしょう。
5月6日の記事では既に中国の金融機関を除く民間債務はGDP比200%超(日本のバブルブル末期並み)になっていることも書かれています。
ただし、勝又氏の記事では民間債務は対GDP比280%ですし、アチコチのネット記事ではそうですが、日経は全て抑制気味です。
http://ameblo.jp/katsumatahisayoshi/day-20170510.html
「社会主義市場経済」は機能していたならば、債務総額の対GDP比が280%にまで膨張するはずがない。事前に、調整されずここまで膨張させたのは、中国の経済システムに自律的な調整機能が欠落している証拠であろう。」
実はこの外中国はシャドーバンキング・・理財商品の莫大な(簿外?)リスクを抱えていますが、大手新聞なのでそこまでは書けていません。
外貨交換を規制して当面外貨準備縮小や人民元急落を凌ぐとしても、人民元安の下地になっている巨額民間債務をどうするかの処方箋が見えて来ません。
政府としては先送りの限界が来たので?国際標準の法的整理を避けて不明朗な共産党主導の債権委員会方式で何となく巨額債務を棚上げする方向に進み始めたようです。
どのようにしても結果的に金融機関の不良債権は貸し倒れ処理しかないのですから、この時点で金融機関の財務に大きく傷がつくのを防げません。
日本では金融機関の資金不足が健全な融資を損ない長年の日本経済の大きな重しになりました・・・どこかでいつかは痛みを外に出すしかないことは確かです。
以下の通り中国の外貨準備減少は小康状態・・3ヶ月連続増加とは言え3兆ドルギリギリ維持している・・もしかして数字合わせに必死なのかな?)苦しみが出ています。
今のところ規制は成功していますが、人民による抜け穴探しがまだ出来ていないことによるのでしょう。
euters.com/article/china-economy-forex-reserves-idJPKBN18313I
[北京 7日 ロイター] – 中国人民銀行は、4月末時点の外貨準備高が210億ドル増加し3兆0300億ドルとなったと発表した。3カ月連続での増加で、市場予想を上回る増加だった。資本規制やドル高一服により、資金流出が抑えられていることが示された。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は110億ドル増の3兆0200億ドルだった。
3月末時点では3兆0090億ドルと、前の月から39億6000万ドル増加していた。
国家外為管理局(SAFE)は声明で、外貨準備の増加は基本的に外貨需要供給の均衡や、対ドルでの人民元上昇に伴うものだと説明した。」
15年夏の株式相場急落以来政府が取引制限した結果、本当の株式相場が不明になっていましたが、今年に入ってからの為替取引制限の結果、人民元の本当の実力・評価が分らなくなっていますが、国際取引での人民元取引量の変動を見れば、人民元の実際評価を表しています。
1昨年秋に折角IMFのSDRに人民元が採用されて国威発揚したつもりだったのですが、人民元の信用が下がり交換がスムースでないことから?国際取引では人民元利用シェアーが急減しています。 
国威発揚どおり経済界が動きません・・経済実力は、結果から見ればカナダ以下と言う評価です。
一時日本を追い越したのは、将来性を世界中がはやし立てていただけ・・国際社会にデビューしてみると適応力がないことが分った・エコノミストの見通しが悪かったことになります。
昔「眠れる獅子」と恐れられていたのにいざ日本と戦ってみるとあっさり負けてしまって恥をかいた・同じことの繰り返しです。
当時最新の戦艦を入手していてこれ見よがしに日本を威嚇していたのに、それを動かす人民の能力が違っていたのです。
国土ばかり広く、人民の数だけ多くても、最後の決め手は民度・内容実質です。
http://www.sankei.com/smp/world/news/170204/wor1702040030-s1.html
人民元、カナダドルに追い抜かれ「決済通貨」6位に転落 成長鈍化で国際化戦略に急ブレーキ
2017.2.4 10:50更新
【上海=河崎真澄】中国の人民元が貿易や対外投資の決済に使われる通貨として昨年12月、カナダドルに追い抜かれて6位に転落したことが、銀行間の送金ネットワークを運営する国際銀行間通信協会(SWIFT)の調べで分かった。通貨別の決済シェアで、元は2015年8月に日本円を上回り、ドル、ユーロ、ポンドに次いで初の4位につけた。だが、経済成長鈍化や元安でシェアが低下。再び円を下回って15年12月段階で5位になっていた。
また、16年通年の元建て決済総額は前年比で29・5%も減少した。元は昨年10月に、国際通貨基金(IMF)の仮想通貨「特別引き出し権(SDR)」に組み込まれたが、評価は上がらず、習近平指導部が目指した元の国際化戦略に急ブレーキがかかった格好だ。
 元をめぐっては、SDR入り後も為替相場の形成を市場に委ねる通貨改革は進まず、国際通貨としての信頼性や利便性は向上していない。さらに中国を「為替操作国」に指定すると主張したトランプ氏による米政権の動きも不透明で、環境は一段と悪化している。
SWIFTによると、通貨別の代金決済シェアは昨年12月の段階で、米ドルが42・09%。ユーロが31・30%、ポンド7・20%、円3・40%、カナダドル1・93%だったのに対し、元は1・68%にとどまっている。」
習近平が主席になり、中華の夢を唱えた頃が最高・・ドっ天井で、その後は人民元の国際評価・・利用率が下がる一方・・ムキになって国威発揚で威張れば威張るほど実力がバレて行きます。
これだけ人民元利用の取引量が激減しているのにIMFが人民元を国際通貨に認定した「裏で何があったの?」と言う例の中国流の画策が疑われるのは仕方のないことでしょう。

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