社会保障や国債と世代間損得論2

話題が国債日銀引き受けからハイパーインフレの原因・金利競走に飛びましたが、国債に戻ります。
内部的リスク・・喩えば、国債に頼るとデフォルトの危険・収入以上に無駄遣いしてしまう・・債務膨張するかのような議論もあります。
これもベネズエラの例を見れば分るように債務超過国の例を超優良資産家・・喩えば、百億前後の資産家が、5〜10万円程度の日用生活品をカードで購入すると知らず知らずの間に無駄な買い物をして借金が膨らんで危険だと議論しているようなもので・・当面と言うか中期的には全く意味のない議論です。
今のところ、赤字国債発行が危険だと大騒ぎすること自体が何とかして日本の内政混乱させたいと言う?「ためにする議論の疑い・・」ではないかの疑いがあります。
官僚の立場を勘ぐれば、古代から続く徴税仕組みを守りたいと言う郷愁が、官僚を奮い立たせているだけではないでしょうか?
強制徴収の税の比率をドンドン下げて税の比重を最低限にして行き、何かのプロジェクトごと・・補助金ごとに国債で賄う比率を上げて行く・・特定目的の国債発行で信を問う方が納税者の意見反映が容易で合理的ではないかの意識でこのシリーズを書いています。
プロジェクトごとの国債が各分野に広がると社会保障税も出来るだけ民営化して行く・・民間保険に委ねる方向に繋がるでしょう。
飛行機にエコノミーからビジネス、ファーストクラスがあるように、保険加入レベルに応じたサービスがあってもいいように思えます。
強制徴収による公営保険は最低限の医療や介護を保障するもので良い・・最高レベルの医療まで含めるのは社会保障の枠組みを越えています。
国債の場合、払いたい人に払ってもらう・・その代わりいつでも返す・・市中売却による回収仕組み・・評判が悪いと市中売却値が下がる・この評価システムが何故悪いのか不思議です。
官僚や為政者にとっては税の強制徴収・税率さえ決めてしまえば、税の場合何に使おうと事実上勝手です。
(国会審議が間接的にあるだけ・保険で言えば、給与天引きの保険料率さえ決めればその先何を保険適用にするかは審議会で決める・・国民の直接意見は無視出来ます)
強制出来る税や保険方式の場合、個別政策に対する市場評価を無視出来る便利な点が好ましいのでしょうか?
5月4日の日経新聞5p「中外時報」で地方自治70年のテーマの記載を読むと、大規模施設建設などの場合に住民投票制度創設案を総務省が作ったが自治体首長の反対で立ち消えになっている例が出ています。
(博物館・美術館学校設備ではリターンは無理がありますので、十字軍遠征のファンドやスエズ運河開設のように目的別国債と言うわけにはいかないでしょうが、非営利分野は神社仏閣の新造営のために行なわれてきた「勧進」のように篤志家の寄付で良いのではないでしょうか?
寄付や国債の任意購入に頼るには、所得税を安くして寄付出来る程度の資金余力を国民が持てるようにする必要があります。
町内会館の建設資金や、近所の私鉄駅の改造請願のために私も微力ながら応分の寄付をしましたが、全て税で賄うよりは出したい人が出す・・合理的です。
株式や社債を買いたい人に買って貰う・・途中換金したければ市場で売って回収出来る・・政府の国債も企業同様に政策に信用があれば優良株式同様に買って貰えるし、売買の対象になるべきでしょう。
社債発行するとその企業に借金が残り将来が危険と言う人がいないのに、(社債集めた資金で何に投資するかが重要であって社債の規模そのもを「悪」とは言いません)国債を社債と何故違った目で見るのかの問題です。
市場評価を経ていない税よりは・・将来の心配・・社債・国債のリスクは買った人の自己責任の問題です。
まして全量日銀引き受けになって行けば、民間の購入者がいないので暴落による損が起きません・・結局は日本の円通貨の信用性問題に帰して行くでしょう。
通貨の信用性は国際収支の長期的結果によるのであって、国債発行残額によるものではありません。
財務官僚が将来が心配・・と必死になるのは、税で取る方が便利で民間に頭を下げる必要がない・・と言うに帰するように見えます。
税金の場合には、過去にいくら多額納税していても何の実績にもならない・コマたっときにその一割も還付してくれるわけではありませんが、軍功があれば子孫まで領地保障してもらえたようなギブアンドテイクがありません。
国債購入で貢献しておけば豊かなときにはそのまま保有していて、イザとなれば子孫の代でも売却回収して生かせるメリットがあります。
寄付した人には応分の名誉が刻まれる・その程度で良いのです。
良い政治をしていれば、投資した国債をお金にして欲しいと言う人もいても、もっと買いたいと言う人の方が増える・・株式相場と同じで何の心配もない筈です。
政治に緊張感を持たせるには国債相場で使い道を監視するのが合理的です。
日銀の国債引き受けは相場の影響を受けない・・民意無視出来る点が、これまで書いて来た効用とは違って来ます。
日銀引き受けが常態化し、且つ新規発行国債だけはなく既発国債の市中売買にもアタマを突っ込むようになると、市場評価・市場性が完全になくなります。
満期が来てもその借換債を際限なく日銀が引き受けるようになると、政府としては有期限の国債を無期限化した・・政府が紙幣発行権を取得したのと同じです。
紙幣発行権を乱用することがあるとハイパーインフレになると言う心配が旧来理論ですが、私はそうは思っていません。
何回も書いて来ましたが、供給不足の場合に紙幣発行を2倍にすると価格が2倍になる論理ですが、供給過剰下では紙幣だけ増やしてもより多く買いたい人は滅多にいない・・どこの社会にも貧しい人がいますので、少しは購入量が増えますが、先進国ではその程度では工場増産+輸入の容易な現在では増産処理で間に合ってしまいます。
だからいくら紙幣発行しても豊かな社会では物価は上がらない・・その紙幣は円キャリー取引(日本は世界最低金利ですから日本で借りて海外運用したら利ざや分だけ簡単に儲けられる)によって、国外に流出して行きます。
これが資本収支上「円」の流出を通じて円独歩高を防いでいる仕組みですし、アメリカの貿易赤字によって流出したドルがアメリカ国債購入を通じて還流・ファイナンスされている関係です。
中国の場合、自国の経済力を反映して当然アメリカ国債より国内金利が高いのですから、アメリカ国債を買うのは逆ザヤですが政治力学上+人民元を割安にするために無理して買っていた損な関係になることも大分前に紹介しました.。
以下は16年10月までのデータですが、アメリカは0、5%中国は4、35%で約4%以上の逆ざやです。
国債や銀行金利と基準金利とは同じではありませんが、ほぼ比例して行くとすれば、仮にアメリカ国債を1兆ドル保有するだけでも年間400億ドルずつ利息で損をする関係です。
chuugokuhahttps://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「アメリカの政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月   2月   3月    4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月   11月   12月
2016年  0.5   0.5   0.5   0.5   0.5    0.5   0.5   0.5    0.5   0.5
2015年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.5
2014年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25  0.25

中国の政策金利の推移


中国の政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月     2月   3月   4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月
2016年  4.35    4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35  4.35   4.35
2015年  5.6     5.6   5.35   5.35   5.1   4.85   4.85   4.6  4.6    4.35   4.35  4.35
2014年  6     6     6    6     6    6    6    6    6    6   5.6   5.6

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