中国バラまき投資の限界1(ベネズエラ危機2)

中国が逆ざやのアメリカ国債を買わされるのは不満ですが、買わないで貿易黒字だけを積み上げるのではアメリカが怒るし・・かと言って、資本流出に直面していて人民元を買い支えるしかない・大暴落では現在のベネズエラのような事態が待っています。
逆ざやにならないように自国金利を日本のようにアメリカ以下に下げられれば良いのですが、金利を下げると資本がさらに逃げて行くのでそれが出来ないので「どうにもならない状態です。
中国は仕方なしにアメリカの顔色を窺っていたのですが、この1〜2年資本流出が激しいことから、人民元防衛のためには背に腹は代えられない・人民元の買い支え用資金としてアメリカ国債をドンドン売ってしまい、今では日本よりも少なくなってしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6565.php
「米国債最大保有国が中国から日本に、元安防衛で外貨崩し」
2016年12月17日(土)20時37分
中国が世界最大の米国債保有国の座を日本に明け渡した。下落が続く人民元を支えるために外貨準備を取り崩しているからで、円安が進むのを好ましく思っている日本と正反対の事情が背景にある。
投資家は中国の米国債保有動向から目が離せない。もしも大規模な売りがあれば、ただでさえ上がっている米金利に一段の上昇圧力が加わり、それがドル高/人民元安の加速をもたらしかねないからだ。」
シンガポールのフォーキャストPteのエコノミスト、チェスター・リャウ氏は「中国は人民元相場維持のためにドル(資産)を売っているが、日本は円安を喜んで放置している」と指摘した。
人民元の対ドル相場は15日、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げと来年の想定利上げ回数の上方修正を受け、8年ぶり余りの安値に沈んだ。」
中国としては南シナ海問題で中国の主張を認めないアメリカに対する意趣返しもあったでしょうが、アメリカ国債をドンドン売られるとアメリカは黙っていられない・・「黒字だけのいいとこ取りは許さない」(「黒字を減らすかアメリカ国債を買いますか!いやなら関税45%」)と言うトランプ氏の強烈な対中批判になって来たことになります。
中国はオバマの弱腰を前提に南シナ海で中国批判するならば・と言う脅し?でドル売りを仕掛けて見た積もりだったでしょうが、トランプに一喝されてみると、中国としては年間6000億ドルも黒字を稼ぐアメリカ市場を無視出来ないので・・引き下がるしかありません。
しかしアメリカ国債を売らなければ資金繰りがつかないし、輸出を減らすわけにも行かない・・どちらも出来ず進退窮まっていたのですが、北朝鮮情勢緊迫化を利用してアメリカの言うことを聞くカードを切れたことによって、為替操作国認定を避けるのに成功しました。
経済原理に基づく解決の道を探せなかったので、政治の場での譲歩・・・南シナ海の譲歩よりは傷の浅い北朝鮮を渋々切り捨てたことになります。
遂に切り捨てられた北朝鮮が正面から中国批判を始めたことがこの数日出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170504-OYT1T50079.html       
圧力強める中国に北朝鮮の不満爆発…対立激化2017年05月04日 23時08分
【ソウル=中川孝之】北朝鮮の朝鮮中央通信が3日、中国の政治家らが「敵対勢力とぐるになり、残酷な制裁にしがみついている」と異例の名指しでの中国批判を展開したのに対し、中国政府が4日、「我々は公正だ」と反論するなど中朝対立が激化している。 トランプ米政権に同調して圧力を強める中国に対して北朝鮮が不満を爆発させた形だ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7540.php
北朝鮮が初めて中国を名指し批判
5月3日、北朝鮮中央通信社(朝中社)が中国を名指しで批判した。北朝鮮が中国を批判するのは、これで3回目。しかし、名指し批判をしたのは初めてのことだ。
アメリカ景気の底堅さ・失業率改善などを背景にアメリカ連邦準備理事会での金利上げ決定近し・・とマスメデイアが15年来囃し立てていますが、経済原理によれば経済力差に金利が連動すべきであってこれを無視してアメリカ連銀が低金利政策を長期間維持するのは無理なことが下地にあります。
経済力(実際には償還能力)がなくとも旧家・名門であると言うだけで安い金利で借りている旧家のようなものです。
日本の異次元緩和には、アメリカと違って出口戦略がないことを批判するのが一般的論調ですが、日本経済が世界最強経済である以上最低金利しかないと言う根本が無視されています。
・・・もしも逆に世界最強の日本が金利を上げると世界中の資金が(円キャリー取引の逆張り)日本へ吸い寄せられてしまうので世界中がこれに負けずに揚げるしかないので、世界大恐慌が起きてしまいます。
イエレン議長が15年暮れ頃に金利上げ出来ない理由として「今上げると中国経済が持たないと言う説明していましたが、日銀の金利政策が世界の中央銀行の役割になっているのですが、これを誰も(政治的配慮で?)言いません。
2番手経済のアメリカが金利を上げる気配だけでもこの1〜2年世界中が右往左往しているのですが、日本が仮にアメリカの金利よりも挙げると言い出したらどうなるかちょっと考えただけでも分るでしょう。
償還能力・・信用に反比例して金利が安くなっているのが経済原理ですから、この20年あまり日本が世界最低金利になっているのは日本の信用力がそれだけ高まっていることを表しているのであって・有事のドルから有事の円に変わっていることもこれを示してています・・日本の不景気とは関係がありません。
A国よりも信用のない国は不景気でもA国よりも金利を下げられません・逆に高くしないと資金が流出して大変なことになります・・この原理を無視してアメリカは実力以上に安い金利で資金を腕力で還流させているのですから長期的に無理があります。
出血輸出で象徴されるように中国の貿易黒字は次第に縮小に向かっている・・中国投資に妙味を感じなくなった外資が逃げ始めた・・資本流出危機で苦しくなった中国にとっては、逆ざやになっているアメリカ国債を売って資金繰りを何とかしたいのは経済の原理から言って当然でアメリカに「腕力だけで」売るな!と言われても経済原理に反したことに長期間従わせるのは無理があります・・。
ところで、中国の3兆ドルの外貨準備と言っても(仮に公表どおりに外貨準備があるとしても)その内容に疑問符があります。
中韓はアフリカその他後進国への投資・・・政治的思惑から、不採算事業をむやみに受注する傾向→結果的に工事代金が(不良)債権になっている・・高利回り債券保有率が高いと言われていますが、これらの多くは資源下落による悪影響をモロに受けている・最貧国・後進国や新興国中心です。
資源国は資源下落→新興国で経済失速が始まった上に15年以降アメリカの異次元緩和政策からの出口戦略が始まる予測→アメリカの金利が上がれば似たような金利でリスキーな投資する人が減る・・資金引き上げリスクに直面しています。
中国の投資先の多くはアメリカの金利上げ予測による資金引き上げに直面していてデフォルト寸前です。
新興国に対する中国の債券?は額面が大きく表面金利は高いものの、実勢相場が大幅下落していて中国がイザと言うときに換金出来る・・回収すべき債権・・ドル換金出来る資金にはなりません。

供給不足→ハイパーインフレ(ベネズエラ危機1)

ブラジルやベネズエラのような破綻が起きるのは、国債発行額の多寡によるのではなく、国際収支上の総合的パフォーマンス悪化によるものです。
ジョージソロスのような為替マフィアは国債を予め取得しておいて売り浴びせる必要はありません。
国際収支パフォーマンスが長期的に悪化していて、その国の通貨が実勢より高過ぎると見れば、この落差を狙って先物取り引きを利用して通貨自体の空売りを仕掛けられる→通貨の大幅下落=下落分=輸入物価上昇→輸入資金不足→輸入減少→品不足=国内物価急上昇になることによるものですから、既発行国債の量に直接の関係はありません。
ベネズエラの危機状況は以下のとおりです。ww.cnn.co.jp/business/35093870.html 
2016.12.16 Fri posted at 15:48 JST
「ベネズエラ政府は先ごろ、現在の最高額紙幣である100ボリバル札と新しく発行される高額紙幣(額面500~2万ボリバル)との交換を15日に始めると発表。またマドゥロ大統領は11日のラジオ演説で、72時間に限って100ボリバル紙幣と同価の新硬貨の交換を行うと述べていた。
・・ベネズエラが直面している経済的混乱を象徴している。為替相場は暴落し、インフレが急進。食べ物や薬は不足しており、買う場合にも山のような札束が必要だ。
国際通貨基金(IMF)の予測では、今年のベネズエラのインフレ率は470%で、来年には1660%にも達するという。11月だけで通貨ボリバルの価値は約55%も低下した。国民は買い物の際も、札を数えるのではなく、札束の重さを量って支払いをしている状態だった。」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49059
(英エコノミスト誌 2017年1月28日号)
この1月にロイター通信にリークされた中央銀行の推計によれば、ベネズエラの経済規模は昨年1年間で18.6%縮小した(図参照)。インフレ率(消費者物価上昇率)は800%に達している。
 これらは速報値であり、改定される可能性がある。永遠に公表されない可能性もある(中央銀行は1年以上前に、完全な経済指標を報告するのをやめてしまった)。上記のインフレ率の推計値は、国際通貨基金(IMF)による試算に近い。そのIMFは、今年のインフレ率が2200%に達すると見込んでいる。
ベネズエラの進行を見れば、紙幣発行増によってインフレになっているのではなく、経済パフォーマンス悪化→通貨暴落→輸入縮小による供給不足によってハイパーインフレになっている・・もの不足を糊塗するために、政府が紙幣を大量発行するしかない・・あるいは高額紙幣に切り替えるしかない・・その結果紙幣発行がインフレを起こしているように見えることが明らかです。
世の中には、これを逆に主張する・・紙幣の無節操な発行がハイパーインフレを起こすと言う論説が一般的ですから不思議です。
日本でいくら異次元緩和・紙幣大量供給しようともインフレにならないのは需要あれば直ぐに増産出来ますし、中国から入って来る・・供給が余っている・・買う金があるからです。
金あまり国にインフレが起きようがないのは理の当然・日銀の2%物価序章を期待する政策などは私の素人的意見で言えば、噴飯もの・・無い物ねだりです。
金まり国とは国際的両替出来ない紙幣の量ではなく、国際的にきちんと両替出来る紙幣のことですが・・両替出来る→いくらでも不足資材を輸入出来るの物価が上がりようがないのです。
紙幣が多過ぎてインフレになるのではなく、購買力のある紙幣=外貨に両替出来る紙幣がないから「回りの国が売ってくれない」のでインフレになるのです。
ハイパーインフレの原理は貿易収支悪化→自国通貨暴落にあることが明らかです。
ところで、国債や社債を日本人が持っていようと外国人が持っていようと、円相場が急落すると円資産保有者(国民の多くが円資産保有者です)が損する点は同じです。
結局は自国通貨が暴落するかどうかであり、国内発行の紙幣の量ではありません。
ただし同じ記事を読んでもそれに対するコメントを見ると・・だから「日本の赤字国債発行の危険性がよく分った明日の日本だ」と反応する人がいるのには驚きます。
中韓と交流が必要とは言うものの、どんな眼前の事実を見ても思い込みのある人はねじ曲げて解釈する傾向がある・・「分りあえないのだなあ!」と言う印象です。
勿論逆の立場から言えば私をそう思う人がいるのでしょう。
ただし、今の日本は世界トップの対外純資産国で対外債権保有の方が多いので、円が下がると対外保有資産評価が上がる上に交易条件が有利になる有り難い国です。
逆から言えば通貨下落・デフォルトリスクに関する議論は、経済の底が浅い純債務国に必要な議論であって、対外純資産世界トップの超優良国家日本には、意味のない議論です。
円の対ドル相場が下がると貿易上有利・貿易黒字がもっとたまる・・日本有利になるばかりですから、日本敵視国では、口惜しくとも?円を下げたい国はどこにもないでしょう。
日本攻撃には円を上げさせて貿易赤字に追い込むしかないるしかない・・これがプラザ合意の肝でしたが、市場に委ねておいて自然に円を上げるには日本より金利下げるしかありません。
貿易黒字がたまれば為替変動による調整弁→黒字分だけ円高になる筈ですが、黒字国=金あまりですから資金需要が少ない→低金利化します・・これは日銀政策によると言うよりも自然の流れです。
貿易赤字国→資金不足国は資金不足に比例して高金利・・調達金利が高コストになるので金利の安い日本で借りて自国に持ち込む方がコストが安くなります。
この結果、金利の低い日本から自然と貿易黒字でたまった黒字分をそっくり対外投資に振り向けるようになると円の為替相場が上がりません。
アメリカは長期間貿易赤字が続いていたのに、資金環流システムによってドルが一向に下がらなかったのは、アメリカの強いドル=威信を維持するには好都合だったでしょうが、いわが借金で贅沢していたようなものですからいつかは無理が来ます。
一般の国の場合借金を膨らませる一方ではギリシャやベネズエラのようにいつか破綻するのですが、アメリカは基軸通貨国の特権でドルを刷れば良いので、破綻しないと言われて来ました。
基軸通貨国と言っても本来突出した財力に裏打ちされてそうなっただけで、裏付ける財力がなくなって来ると自然にドル決済取引が減って行きます・・江戸時代の幕府みたいな権力さえあるか怪しいものです。
円ユーロだけではなく今後ビットコインその他仮想通貨時代になって来ると軍事力・権力の裏付け不要の時代が来る可能性もあります。
江戸時代の為替交換は・・信用で成り立っていたように権力がなくとも商人間で信用を失うと商売出来なくなる時代が来るように思えます。
アメリカの金利が対米貿易黒字国よりも高く維持出来ていれば論理上無理がありませんが、中国のように金利逆ざや国がアメリカに義理立て出来なくなると資金還流システムが機能しなくなる・・ある日アメリカドルが暴落する日が来るかも知れません。
中国の場合、対米黒字が年間6000億ドル以上にも達していてこの資金の大部分をアメリカ国債を買わされている・・還流しないとアメリカが承知しない(45%関税を掛けると)・・中国もイザとなればアメリカ国債を市場で投げ売りすればアメリカの威信は大暴落・・と脅かす関係・・お互い強迫関係で来ています。
中国に取っては自国金利が基準金利でさえ4〜5%で市中金利はもっと高いのにアメリカの0、5%前後の低い債権を買わせられるのでは、経済原理もあったものではありません。

社会保障や国債と世代間損得論1

各種社会保障負担に関して「次世代が損をする」と言いますが、元々親のいなかった子供はいません。
社会保障制度がなくとも子は親の老後や最後を見るのが、人としての勤めではないでしょうか?
年金や高齢者医療制度は子のいない親はいても親のいない子はいない・・自分の親を見るべき分の一部を既に親が死んでしまい今は親のいない同世代に負担してもらっているだけのことです。
不公平と言えば若い頃に親が亡くなった人とまだ親が生きている人の間の不公平程度のことかも知れません。
現在の年金赤字や高齢者保険赤字は、個々人が自腹を切る分を減らして行き、高齢者保険や年金支給に切り替えて行く関係・個人・親子負担から社会負担に切り替えていることによっています。
お金持ちと貧乏人と差が最大化するのが老後生活ですが、この差を社会保障制度の普及でなくして行く・・最低保障して行くと、そのレベルをどこに置くかによって、制度赤字が起きて来ます。
僅か5〜10万円の手術費を出せなくて命を落としたり身障者になるのでは可哀相だと言うことから始まって、保険で無料の範囲が15〜20万・・50万円に広がり今では透析や1ヶ月300万円とも言われるオプジーボのように、自己負担を前提にすれば億万長者でも無理があるような高額治療まで、誰もがほぼ無償で受けられるようになると国民平等負担の限界が来ます。
メデイアは社会保障制度は痰述べ原因を高齢化に求めて世代間対立を煽っていますが、財政破綻の原因はどの程度まで社会保障すべきかの肝腎の議論をメデイアがきれいごとごとばかり(「お金のない人は死ねと言うのか」式のきれいごとばかり言っている・肝腎のテーマを避けるところに現因があると言う意見をオプジーボの高額性が問題になった2016/10/08「大義を滅ぼす小義の強調2」のテーマで書きました。
生活保護もその基準を高額所得者の基準にまで上げて行けば、財源が破綻します。
学校教育の無償化などは、どの段階までお金をかければ次世代の社会貢献力アップの期待によって別の基準・・どの程度の教育をすれば、どれだけの効果があるかの厳密な判断が別に必要です。
運動神経が鈍い私の例で言えば、無料化して際限なくスポーツや音楽の練習させられても意味がないと言う実体験があります。
その他の才能もそれぞれ向き不向きがあって似たようなものでしょう。
幼児期からの早期選別にお金を使うのは合理的ですが、これをしないで適性無視の大量訓練→大量養成・・大卒等高学歴者だけ増やす乱暴な政策では、人生を無駄にする人が増えるだけで財政的にも無駄な投資になってしまいます。
売れる商品を作る努力工夫をしないで、大量出店を先行してもその企業はつぶれてしまいます。
社会保障に関して世代間不公平を煽る意見は医療費から介護あるいは次世代教育費等の個人・一家負担から社会負担への切り替え反対論の言い換え主張ではないでしょうか?
個人負担と社会保障レベルの塩梅をどうするかに先決問題があるのに、これを避けて際限なくレベルを広げて行く無理が出て来ただけでしょう。
保育所充実や子育て支援あるいは教育費無償化推進は、子供のいない人にとっては損をする気分・・子供のいる人といない人の不公平感と同じ発想です。
しかし、子供のいない大人はいても親のいなかった人はいないので、世代間対立を煽る意見は無理があります。
国債であれ社会保障であれ全て不都合な事実があると「次世代が損する」と言う事実に反するキャンペインがはやっているのではないでしょうか?
「高齢者批判をしていれば安心」とばかりに馬鹿の一つ覚えのように今朝の日経新聞でも高齢者有利の政治がまかり通っていると言う意見が尤もらしく書かれていますが、親が自己利益のために子供に不利な選択をする親が何人いるか?・・自分の命を棄ててさえ子供を守りたいのが親の本能です・・社会実態無視・・原理原則無視の意見です・・。
生命保険で言えば、自分のために生命保険を掛ける人はいない・・(死亡後に受け取るものですから自分が受け取るメリットは皆無)死亡後に残った家族が生活に困らないように貧しい中から必死に掛けているのが普通です。
人の行動はすべからく死亡後の子孫のために考えて行きていると言っても過言ではありません・・愛国心・郷土愛全て子孫の生きて行く環境・共同体存続・連続を願う人の気持ちの表現です。
高齢者が死後の子孫の幸福を考えて生きているのが普通ですから、高齢者の投票率上昇と次世代が損をする意見と何故結びつくのか疑問です。
今流行の世代間対立論は、子供のいない高齢者が自己利益実現に動く可能性があると言う程度でしょうが、これは今後子のいない夫婦や生涯単身者が増えて来ると現実化する可能性があるでしょうが、今の75歳以上の世代で子供のいない高齢者はホンの一握りでしょうから、議論としては実態にあっていません。
子供のいない生涯単身者等が今後増えて来ると逆に「高齢化しても社会で面倒を見ます」と言う仕組みにしないと「子育て支援」教育その他の次世代投資型社会保障負担を嫌がるようになるので、このときになってかえって社会保障制度がどの世代のためにあるかの実態がはっきりする時代が来るでしょう。
次世代損得論で言えば、子供が一人前になるまでの親の負担+相続財産以上を子世代が親に返せている人が何人いるでしょうか?
税で収めると親が巨額納税したのが法の義務を果たしただけであって、その実績を全く相続出来ませんが、自発的な国債購入で収めていた場合には親の保有していた国債を相続するので政府に大きな発言権を相続する外にいつでも換金・回収出来るので(値下がりしてもゼロになることは滅多にないでしょうから)殆ど損もありません・・。
このように次世代に債務を相続させるのかと言う意見は、任意納付しなかった人の次世代が大きな顔を出来ないと言う意味の格差が再生産されると言う点・・巨額納税者とそうでない子孫が差を受けることだけでしょう。
これは親の功績をどの程度まで次世代に及ぼすべきか・・相続税負担率をどうするかで解決すべきテーマであって、赤字国債の問題ではありません。
日本国債の外資保有額が5%前後でほぼ安定(日本との日々の為替決済上その程度持っていないと決済資金に不安があるから保有しているだけ)ですから、その5%さえ別の資金があれば問題がありません。
対外純資産がマイナスになるとそれ以上の赤字国債を発行しても信任を得られない・・満期決済のための買い換え債を発行しても買い手がつかない・・満期国債の償還資金手当が出来ない・・取り付け騒ぎになるリスクがあります・・。
ユーロ加盟国では通貨発行権がないので、日本のように日銀引き受けが出来ない・・無制限通貨発行出来ない結果、国外からファイナンス出来ない限り取り付け騒ぎになります。
このファイナンスに応じるかどうかがECBとIMFの議論ですが、一定の緊縮財政を条件にして短期救済の繰り返し・・揉みに揉んでいるのが現状です。
これがこの数年大騒ぎになっている南欧諸国の債務危機であり、中南米諸国の場合、通貨発行権があるので、いくらでも紙幣発行して国内的には救済出来ますが、その代わり国内的には何百%と言う大インフレになり、対外的には、通貨の信用が失われて対外債務を払うべき外貨両替が成立しくなります。
何をするにもアメリカドルや日本円など国際通貨を入手しない限り何一つ輸入出来なくなるので、国内経済は無茶苦茶・・・事実上急激な鎖国状態と同じ・・北朝鮮みたいになっているのが今のがベネズエラ経済です。

国債の合理性2

ちなみに親に遺産がなくて相続放棄した件数は司法統計をちょっと見ただけでは(更に深く入らないと)分り難いのですが、以下の記事によると年間18万件程度らしいです。
https://seniorguide.jp/article/1002122.htmlの記事によれば、2016/5/5 00:00
「裁判所の統計によれば、平成26年度の「相続放棄」の届出数は「182,089件」に達しています。」
ところで、一人の被相続人の相続放棄には、第一次的に平均的に妻子3人がやり、次いで被相続人の兄弟姉妹もする必要があるので、(最近の死亡例では、我々世代以上が中心で兄弟4〜5人が多い)私の事務所で担当する事件では、一人の被相続人のために5〜6人以上が放棄手続するのが普通です・・。
裁判所は申し立て人一人に付き1つの事件番号を振るので、受理件数が18万件の場合、相続放棄される被相続人はその6分の1前後→3万前後しかいないことになります。
ところで26年死亡数は厚労省の統計http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/dl/gaikyou26.pdfによれば、以下のとおりです。
「死亡数は127万3020人で、前年の126万8436人より4584人増加し、死亡率(人口千対)は10.1で、前年と同率であった」
債務の方が多くて死ぬ人・・相続放棄された親の死亡は年間約3万人・・何と約40人に一人と言うことです。
40人中39人の子供らは遺産を受け取る側に回っていることになります。
生活保護受給者でも子供になにがしか残したくてコツコツためている人が多いのには驚きますが、親心とはこういうものです。
メデイアは世代間不公平と言い、如何にも次世代が損をするような宣伝しますが実際に親から受けた恩以上のことをする次世代がそんなにいるとは思えません。
徴税と国債の関係も同じで、政府にとっては国民から必要資金を吸い上げる方法が、強制によるか任意拠出によるかの違いでしかなく無理ありません。
強制的に税でとるより国債を買いたい余裕のある人に進んで買って貰う方が公平です。
資金を持っていても有効利用出来ない資金を不景気のときに政府が国債で吸い上げて有効利用するのは合理的ですが、税の場合有効利用したい・・出来る企業家からまで吸い上げ、強制徴収してしまう弊害があります。
企業家よりは政府の方が資金を使うのが上手だと言うのは、今の時代当たりません。
国債は使い道が分らないで保有している国民の資金を任意吸収する点でも合理的です。
年数千〜数百万円を何十年も納税していても何の恩恵もありませんが、お祭りで沢山寄付する人は上席に座らせてもらえるように、国債購入者は年間一定の利息と言う形の還元がされます。
そのうえ、収入の多いときに何十年も多額納税していても、事業失敗・倒産等で失業や生活保護に転落しても過去の多額納税分を他の人と別に割り増しで優遇給付を受けられません。
国債の場合後になって困れば売却して必要資金に当てられるし、使わないで終わっても子孫へその権利を引き継げます。
主君へ勲功のあった武士の功績が子孫へ引き継げたのと同じです。
しかも国債はお金があっても買いたくない人は買わなくとも良い任意性ですから、国民の支持が必須・・なおさら公平です。
税の場合、刑罰の強制がある本質があることから分るように選挙の洗礼があるとは言え国民の支持が間接的ですが、国債はイヤな人は買わなくても良い点で民意そのものになります。
地域のお祭りは寄付が集まらないと縮小して行くしかない・・支持が大きくなるとお祭りの規模が大きくなるのと同じで、民意そのものです。
集めてしまった税金の使い道を国会で決めるよりは、何か大きな国家事業の度にその出費目的の国債投資・・ファンドを募れば国民の目も厳しくなり、より民主的になるでしょう。
弁護士会の予算審議でも同じで、既存規定の支出項目のチェックはツイおざなりになりますが、今年この事業を行いたいので、何十年前に決まっている会費とは別に特定事業のために会員一人当たり何千円の拠出を求める場合の方が、会員の質問その他が多くなり関心が高まります。
官僚が任意拠出・・国債を嫌がり既存の法による強制徴収にこだわりたい本音が分るでしょう。
税体系は複雑で過ぎてその税がどの政策目的に使われるかを(揮発油税などを除いて)原則として決めていません・・。
税は国会の議決がないと取れませんが(租税法律主義)、抽象的にある行為・結果に税を課すと言うだけで、その税を何に使うために必要かを国会で議論しない仕組みです。
予算審議もその支出の必要性だけであって、どの税がこの予算支出に使われるかも決めていません。
この結果予算審議と言っても支出の妥当性に関心が集まる傾向・・揚げ足取りに終始するかなくなるように見えます。
まして消費税になると間接的過ぎて目に見え難く何の抵抗もありませんが、その分社会が疲弊する・西欧の高率消費税が社会の活力を蝕んで来た・植民地を失ったことが基礎にあるとしても・・西欧が消費抑制に邁進していることが停滞の大きな原因の1つでしょう・・ことは事実でしょう。
現在社会は消費力こそが基礎ですが、西欧では消費を標的にして来た結果、消費社会の発達が阻害されている結果をメデイアやエコノミストは全く論じていません。
現在社会は消費力の競争であると言うテーマでAugust 16, 2016「消費力アップ4と世界的減税潮流の基礎1」前後で書いてきました。
この考えは、実は全額日銀引き受けになると様相が変わって来ます・・政府は国会さえ通過させれば(民意無視で)何でもやれてしまうようになるのか?これは後で別に書いて行くことにします。
国債による政府資金の手当方法は、国民に買って貰っている限り申し分のない公平な制度ですが、外資が購入者になると外資に支配されてまう・・ここに本質的問題性があるでしょう。
例えば中国が日本の国債の9割を保有していても、日本がその数倍の外債を保有していれば、中国が日本潰しのために売りに掛ければ日本は他の外債を売って買い支えが可能ですから、要は対外純資産国か否かであって国債残高と関係ありません。
中国が4兆ドル近い外貨準備があると豪語していたのに、あっという間に(今年1月末に)3兆ドル割れになったのは、それ以上の対外債務があるか否かによるからです。
上記のとおり、税の強制徴収よりは国債売却による資金吸収の方が、ずっと公平であることを国債と税の違いを以前連載したことがあります。
ついでに年金赤字について書きますと、年金制度をやめたり支給額を減らす・・高齢者の医療保険や介護保険給付を減らすと誰が困るか・・多くは、子供の負担が増える(遺産が減る)関係です。
親と言うものは貧しくとも少ないなりに何らかを子供に残しておきたい親が圧倒的多数です・・(生活保護の場合でもへそくりしてためているのが普通です)。
医療保険の負担率が仮に1割から3割に上がっても、多くの場合高齢者がその分子供に出してくれとは言わない・・生活費を切り詰めるでしょうが、結果的に子供に残す預金が数千万〜数百万円から千数百万円〜百万円前後に減るような関係になります。

税収弾性値3(国債の合理性1)

昨日最後に書いたように各種政策対象が広がって来ると景気が良くなっても税収がそれほど増えない・・赤字国債を解消するどころか、せいぜい赤字国債の発行額を減らすのがやっと・・不景気時の発行額の半分〜3分の1に減らす程度→次の不景気が来るとまた2〜3倍にすることの繰り返しになると・・累積額が増える一方になります。
赤字国債が増え続けることの「解」は何であるのか?、そもそも従来理論による限り「解」があるのでしょうか?
今の時代・・に限らずいつの時代でも、既存秩序を説明するための理論では説明の出来ない事態が切れ目なしに起きているのですが、旧知識で説明出来ないからと言って反対していても解決出来ません。
新井白石の貨幣改鋳批判「正徳の治」に対する批判を書いたことがありますが、旧来儒教倫理から言えば勘定奉行荻原の改鋳は悪ですが、経済活動が拡大しているのに金の含有量にこだわると潤滑油としての貨幣不足が起きることは、今になると自明でした。
必要な貨幣量は金の産出量によるのではなく、経済活動・交換経済の需要に比例するのですから当たり前です・・・・このために貨幣だけはなく各藩で藩札が発行されるようになっていたし、金本位制を理想としつつも、明治維新以降では紙幣が決済手段の基本となっていました。
通貨の必要量は経済活動に比例するのであって金の量に比例しない・・ただ紙幣の信用維持のために金の権威・憧れを借用していただけのことです。
江戸時代に発達した為替制度は、最後の帳尻残を公認の貨幣で決済する仕組みを背景にしているとは言え、権力のない商人間の信用の発達で成立したものです。
現在に至る為替制度も商人間の信用・・東京手形交換所や大阪・名古屋・その他各地の手形交換所での帳尻決済を基本にする点は、江戸時代からの流れそのものですし、不渡りによる、銀行取引停止処分などの規律による手形の信用維持に業界が自主的に努めて来た結果によります。
今で言えば、信用情報・デフォルト履歴・ブラック制度のハシリです。
藩札は領内限り、しかももイザとなれば幕府公認貨幣との兌換前提の仕組みですが、それでも大名家の信用で流通していたものです。
全部が全部小判や幕府発行の貨幣に変えてくれと一斉に言って来ないから、藩政府としては発行済藩札の5%前後のタネになる幕府発行貨幣を持っていれば何とかなる仕組み・・とすれば保有貨幣量の20倍の藩札が流通出来る仕組みになっていたことになります。
これは今の銀行システムも同じで、いわゆる信用創造機能と学校で習います。
このように幕府発行の公認貨幣の外の周辺決済手段が多様化(キャッシュレス化)している点では、今では江戸時代の比ではありません。
今では権力が信用の源泉ではなく発行体・商人の信用による・・トヨタの株式や債券ならば、額面にプレミアムを付けていくらで買うと言う時代です。
北朝鮮政府の権力が以下に強くとも経済基礎が弱いと北朝鮮通貨を欲しがりません。
プーチンの権力の強弱とロシアルーブル貨幣の強弱は全く別です。
このように今は発行体の経済力そのものの価値によって決まるのであって、通貨主権を取り戻せ・・と言う最近のユーロの議論は時代錯誤だと思っています。
話題が飛びますが、マネーサプライがどうのと言う議論も・・デパートの売上増減だけで、(スーパー〜コンビニどころかネット通販も盛んですが・・)景気動向を騒いでいるのに似ていてイマイチピンと来ない人が多いと思いますが、・・旧来重視されたデータそのままで議論しているように見えるからです。
マネーサプライの増減を議論するならば、10年前に比べてその他決済手段の多様化・キャッシュレス化進行の中で、いわゆるM1M2の比重がどうなっているかを論じた上で修正した議論をするべきでしょう。
このようにわが国では江戸時代から、実際には紙幣であるいは帳尻決済で何百倍もの相殺決済をしていたのですから、ソモソモ金への拘りは古代からの郷愁でしかなかったことになります。
金本位制の思想が完全払拭された現在では、各国の主権に裏付けされた中央銀行だけが紙幣を発行出来る・・紙幣発行体の純粋な信用力・・これもある国が自国通貨を信用があると言っても誰も相手にしない・・国際為替市場で評価される仕組みです。
大恐慌時の1930年には日本が率先して行なった金交換停止が今から考えると合理的だったように、(金本位制は本来古代への郷愁でしかなかった)旧道徳・教養主義に毒されたエリ−トには理解出来ないことが次々と起きてきます。
アメリカは国力があったことが災いして?1971年のニクソンショックまで金兌換をしていました・・世界最後尾の国の栄誉?を担ったのです。
資金力の弱いものから順に世界の進運に早く身を投じる・お金持ちほど古い習慣を維持する傾向があるのと同じです。
西欧では王権神授説に対する革命動乱・・産業革命ではラッダイト運動のように機械化によって職を失う反対もありました・・戦国時代の実力主義→下克上や幕末の攘夷思想と開国論など・・戦後の平和主義と現在の国際環境など・・いつも旧価値観では解決出来ないことが起きて来ます。
ネット空間でも既存論理を前提に現状批判している人が多いのは、(GDP比の債務額や税収弾性値論の不都合を昨日から書いていますがその他の論理も)対中批判であれ何であれ無理っぽい印象です。
何かを批判するには既存論理枠組みが前提にしていた社会が現状に合っているかの疑問から入って行くべきでしょう。
私自身・子孫に借金を残すのかと言う論法には反対意見を書いて来ましたが、だからと言って赤字国債→出口を決めない・・もしかして無制限日銀引き受けの行く末がまだよく分っていません。
この5〜10年間このコラムで書いて来た私なりの素人的理解は、一家の経済になぞらえて、お父さんの収入で足りなくなっても同居している息子・娘が自分の食費しか入れないときに、お父さんが子供らに毎月10万円づつ借金した累積額がお父さんの年収を越えた状態に匹敵するのが我が国の財政赤字額だと言う説明をして来ました。
この計算では、一家全体の収支が重要であって、子供らの収入の範囲で子供から借りている限り総額がいくら膨らもうと一家の経済に何の問題もありませんし、子供らに借金が残る心配もありません。
国債と税の違いは、親が子供から生活費として月10万円を強制的に(税)取るか借りたことにしているかの違いです。
遺産を残せない親に対して子供が親に貸す(出す)のをいやがってその代わり親が銀行で借りた場合・相続放棄されると銀行が損をしますが、支払能力・・親自身に資産があるか別に支払能力のある子供が保障しない限り銀行が無担保で貸さないでしょうから、・保障するしかないならば、結果的に同じです。
親を見殺しにする結果、親世代の自殺が多くなっているのが今の韓国社会でしょう。
日本では韓国のように親を見殺しにしてレジャーを楽しむ勇気がないとすれば、仮に親に資産がなくとも子は身を削っても親を病院に連れて行くしかありません。
ところで日本の場合親世代の方が(個々ではばらつきがあるでしょうが)トータルでは子世代よりも資産を多く持っている・・子世代は相続で得する関係です。
だからこそ政府は親世代から生前贈与の軽減税制度を次々と新設して奨励しているのです。

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