両替制限→過剰流動性・バブル2

中国のバブルは民間が始めたことではなく、政府主導のバブルであるから破裂させるわけに行かない・・当初マンションバブルが広がり「鬼城」があちこちに出来たのでニュースになっていましたが、政府主導で煽っておいて投機家に損をさせたままに出来ないので、次は株式バブルを政府機関紙が煽って大規模ブームを起こしました。
これが15年夏に限界が来た結果、内需主導〜再びマンションバブルとへ再移動していたのですが、アメリカ利上げとトランプの脅しに伴う中国の追随利上げ採用によってマンションバブルを維持出来なくなると、今度は再び株式と商品相場へ誘導していると言われます。
このように政府は次から次へと螺旋状に対象を広げて行く点が諸外国の過去のばブルとの違い・・特異な現象です。
国民の方も例えばマンションバブルが一時的に収束しても、一巡すればマンションにバブルが戻って来る(政府が放っておけないからテコ入れする)に決まっていると言う「政府に対する信頼?」期待があってみんな強気らしいです。
中国破綻論は毎回空振りに終わっている・・嫌中派の議論に過ぎないと言う強気の意見を中国政府が流していますが、バックに巨大政府がついているから一見際限ないバブル循環に見えるだけとも言うのが伝統的意見でしょう。
でも伝統的学問に合わないと言うだけならば、20世紀に入ってからの景気対策としての財政資金投入や金融政策による景気平準化政策も本来はそう言うものですし、日銀や欧米の異次元緩和も似たようなものです。
不景気時に財政投資して穴埋めしていればその内にまた景気が良くなるから・・と言う景気対策も、戦後一時期一時うまく行く時代がありましたが、・・高成長から中〜低成長へ移行する構造不況に突入している場合、財政投入をしても痛みを緩和する(例えば放置すれば失業率10%になるところを8%に抑える)程度の効果しかなく、財政赤字が膨らむばかりでいつまでたっても好景気が来ません。
中国のやり方は一時の不況の穴埋めタイプか、低成長移行への痛みの緩和措置かどうかで結果が変わります。
中国の景気対策は・・内需換気は政府主導バブル・・公共投資だけではなく、「民活・バブル」を組み合わせたもの・・政府自体が次々と対象を変えては仕手相場を煽っているのは、世界史上前例のないことですから、どう言う最後を迎えるつもりか?世界中が固唾をのんでみているところです。
日銀の国債無制限?買い入れも歴史上前例のないことですから、伝統的理解の立場からは、将来どうなるのか?と出口対策を心配する否定的論調・・「一刻も早く脱却すべし論」が一般的ですが、従来の考えに合わないからと批判するの間違いであると17年5月2日「税収弾性値3(国債の合理性1)」以下で貨幣改鋳や金本位制廃止の例を引いて書いて来ました。
中国の際限ない循環的バブル創造も一種の異次元政策だからこそ伝統的考えでは、出口がどうなるかの心配している点では同じですが、もしかして新たな地平を切り開けるのか、あるいは先送りの巨大版に過ぎず破裂の瀬戸際が近づいていると見るべきかのどちらでしょうか。
ただ日経5月6日一面の記事には、国内景気維持とバブルを煽る為の金融装置・過剰流動性供給の結果、・・建設資材・・製鐵その他の資材関連産業活況→資源類の輸入が膨らんでいる・・「経常収支悪化」の小見出しが出ていて国際収支黒字減が始まっているとも書かれています。
この辺は3月26日に私が書いた見通しどおり・「国際収支悪化をどうするのか?」と言う展開になって来ている点を書かざるを得なくなって来たのでしょう。
貯蓄・・外貨準備のあるうちは、輸出縮小→国内生産縮小→失業を内需拡大で穴埋め・先送りして行けますが、資金が尽きるといつか行き詰まります。
日本の国債増発・・引き受け者が日銀であれ外資であれ、国際収支黒字の範囲内である限り問題がないと書いて来ました。
ちなみに昨年度日本の「国際収支黒字はリーマンショック前回復と今日の夕刊に出ています。
経常収支20兆1990億円の黒字(内、海外企業から利子配当が18兆350億円・・円高の結果目減りしているとのことですが・・)です。
赤字国債・・外国から借金で物を買っている状態ではないのです。
中国の16年の経常収支を見ておきましょう。
 https://www.nna.jp アジア経済ニュース2017/04/05(水曜日)                                        16年国際収支、経常収支は1964億ドルの黒字
中国国家外貨管理局は3月30日、2016年の国際収支統計を発表した。経常収支は1,964億米ドル(約21兆6,940億円)の黒字で、国内総生産(GDP)に占める割合は1.8%だった。31日付経済参考報が伝えた。
日本の黒字約20兆円とほとんど変わらなくなっています。
14億の人口と1億あまりの人口比で考えると、あるいは公表されているGDP比黒字比が急減していることが分るでしょう。
中国の商品相場高騰に戻りますと、加工輸出用の原材料過剰購入・在庫は、その内出血輸出によってでもハケて行くでしょうが、元々国内マンション等向けどころかマンション向け需要すらオーバーした・・何の需要もないのに素人が商品相場に手を出して・相場高騰に釣られて輸入してしまったものは、引き取り手もありません。
今朝(5月11日)の日経新聞朝刊25pには、中国の港湾在庫が摘み上がってしまい・・「バラ積み用船料急落」の見出しで資源系用船料金がこの1ヶ月で4割も下落していると書かれています。
商品相場・バブルは末端のマンション等の工事需要がなければ在庫増に直結するので短期間に収束して来たと言うことでしょう。
マンションを高値づかみしてバブル崩壊した場合、ババを引いた投機参加者は塩漬けにするしかない(借入金支払に困るでしょうが・・)だけですが、商品相場が過熱して高値づかみして国内在庫になります。
(高値づかみで損をした資金繰りの問題があるのは別として)町外れに作った新興住宅地・鬼城は放っておいても邪魔になりませんが、鉄鉱石など原材料の在庫は倉庫に入ったままになりますので倉庫や物流業者等が困ります。
客のいない鉄道工事なども、従業員を雇っていると困ります。
はたして政府の誘導どおりに商品相場に火がついて、新たなバブルが「螺旋状」に広がっていますが、5月6日の日経朝刊の遠慮ガチな指摘どおり、国内バブル・・商品相場上昇に合わせて資源輸入が増えて行く・・肝腎の貿易黒字が減少して行く・・国際収支赤字化が始まるとどうなるかの瀬戸際が近づいて来ます。
国際収支が赤字になると輸入代金決済資金が必要ですから、国民の外貨交換を制限するだけでは済まなくなります。
ただし、まだ黒字維持出来ているので中期的課題に過ぎないと言えますが・・これが中国の経済破綻を先送りを可能にしている面があるでしょう。
引用している日経5月6日朝刊1面によれば、17年1〜3月の中国政府の1551億元の財政赤字・・19995年以来22年ぶりとのことですし、卸売物価(商品相場です)が前年同期比7、4%アップとなっています。
国内での過剰投資は経常収支悪化と言う副作用をもたらしていると書いています。
鉄鉱石などの輸入が急増して貿易黒字が25%減った結果、1〜3月期のサービス・物の貿易黒字は前年同期比64%減とも書いています。
所得収支赤字は2年連続で、サービス・貿易収支と合わせた経常収支は、16年10〜12月期に前年同期比86%減となっています。
財政赤字が始まり他方で国際収支黒字減少が始っています。

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