アメリカの傲慢と中国の適応力2

5月19〜20日に書いたように中国は(国内向けに劣等感の裏返しで)格好付けのためにする対外強硬意見ばかり日本で報道されますが、国内ではしこしこと公害であれ礼儀であれ謙虚に学んでいるように見えます。
他方でアメリカは超大国の威信にこだわり何も学ばない・日本に対して理不尽な要求を押しつけてくるばかりですから、長期的に見て学んだ国と学ばない国との違いが出て来る筈です。
米中共に今はローエンド製品向け民度中心であり、人口大国で(広大な領土保有)共通しています・・ハイエンド技術に上がれる人は限られるので、その他の巨大人口をどうするかの問題に直面することは同じです。
同じならば、学ぶ意欲のある中国の方が、(まして、製造現場が微細技術中心になると、欧米人よりアジア人の方が基本的に器用です)アメリカよりも適応力がある・・民度が伸びる可能性があると言う意見になります。
5月20日の日経新聞朝刊では、上海デズニーランドの入園者が、開園10ヶ月で1000万人突破・・予定どおりで順調と出ています。
開園直後で批判の多かった入園者のマナーも批判を受けて良くなっていると出ています。
また日本国内経済に目を向けると5月20日日経朝刊では、国境をまたいだ通販の発達で訪日観光客が帰国後資生堂などのリピーターになっている状態が報道されています。
帰国後リピータ買い増加の結果、化粧品の輸出が過去3年で倍増し、化粧品だけの貿易収支では、史上初(今までは西欧ブランド品の輸入額の方が多かった)・・・輸出が輸入を上回るようになり、資生堂などは国内工場の増産投資をすると出ています。
その他省力化投資が盛んで、ロボット製造大国の日本企業が潤っている経済ニュースが従来から出ています。
「財政投入で持ちこたえているだけだから資金切れになれば直ぐに行き詰まる筈」と言う批判論ばかり見ていると中国の企業は気息奄々で、従業員もいつ解雇されるか心配している筈ですが、そのような説明では末端消費の力強さと矛盾します。
財投で景気の下支えをしながら着々と省力化投資に邁進している様子が、対日発注の変化から見て取れます。
海外観光客数や国内自動車購買数その他・・末端消費の実数をみると、それだけの消費者が育っていることは確かです。
クルマの年間販売が数年前には2000万台規模だったのがいつの間にか2800万台前後で安定するようになっています。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_china_2016
2016年の中国新車販売は前年比13.7%増の2,803万台
中国汽車工業協会は12日、2016年通年の自動車生産・販売台数がともに過去最高を更新したと発表した。
・2016年通年の生産台数は前年比14.5%増の2,811.9万台、販売台数は13.7%増の2,802.8万台。伸び率は2015年と比べ生産が11.2ポイント、販売が9.0ポイント上昇した。
・乗用車の2016年通年の生産台数は15.5%増の2,442.1万台、販売台数は14.9%増の2,437.7万台となり、伸び率は自動車全体と比較すると生産が1.0ポイント、販売が1.3ポイント上回っている。」
以下はアメリカです。
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/salesfig_usa_2016米新車販売、2016年通年は0.4%増の1,755万台で過去最高
「オートデータが4日に発表した12月の米国新車販売台数は、前年同月比3.1%増の169万429台となった。12月の季節調整済み年率換算(SAAR)は1,843万台/年だった。
・1-12月の米国市場の累計販売は1,755万351台で前年同期比0.4%増となり、これまで過去最高であった2015年の1,747万9,469台を上回り、記録を更新した。
・12月の販売は営業日が1日少なかったが、週末が5回あったこともあって前年同月比で3.1%増となった。」
中国では景気対策のために、小型車の減税があったと言え、その程度の臨時優遇策・・(アメリカでは、ガソリン値下がりで良く売れたと言われます)駆け込み需要はどこの国でもあることですから、全体的に2500万台以上の安定した消費力があることが重要です。
また伸び率で見てもアメリカが金融緩和出口戦略で「景気が最高潮」と言うにしては、アメリカ3%に対して不景気な筈の中国が13%増と大幅な違いです。
まだクルマが十分普及していないことから、伸びシロが大きい点があるとしても、絶対数で見てもアメリカの年間1775万台ベースと2800万台を比較すると(事業用も含むので個人保有とは限りませんが一応の目安です)クルマ購入層の人口がアメリカの約1、6倍もいることになります。
人口比の普及率の比較を書いているのではなく、中国の景況がどうかの基準で言えば、着実に安定成長している傾向が見えます。
上記のとおり中国は中国なりにキャッチアップに努力していることが分りますが、さしあたりアメリカの金利上げに追随するしかない点をどうするかが当面の難所
です。
3月15日発表のFRBの金利0、25%上げ・・今後金利上げが引き続く場合・・中国に最後のとどめを刺す始まりになるかはこれからの展開次第です。
EU危機で南欧諸国は不景気でもも独自の金融緩和・金利下げ出来ない難点が世界で認識されましたが、世界経済が一体化しているので、アメリカの金利上げに世界中が影響を受ける点では似たようなものです。
経済力の弱い純に金利を少しでも高くしないと金利の高い国に資金が逃げられてしまう・・たちどころに資金不足に喘いでしまいます・・資金不足・・不景気対策に金融緩和・主権国家だから紙幣をいくらでも増発出来ると言っても、為替相場がそれに比例して下がるので、輸入に必要な外貨を入手出来ない点では同じです。
これが現在進行中のベネズエラ危機・・国民が食糧難に喘いでハイパーインフレになっている通貨的側面です。
アメリカの金融政策の影響がないのは、多分世界最強経済・・最大純債権国の日本くらいでしょう・・。
日本は約20年ほど前から事実上世界基軸通貨国・・世界最低のゼロ金利政策を採用していても資金が集まる有事の「円」と言われる国になっています。
これこそが基軸通貨国の基準です。
表向き言えませんが・・既に日本は事実上世界の基軸通貨国になっていると言うのが私の意見です。軍事力・・物理的強制力がない程度であって、文化発進力でも腕力や宣伝によらずに事実上世界の底辺層に至るまで日本的生き方が世界標準になりつつあります。
文化発信国家と言う基準では、ちょうどエルミタージュ美術館に関する宣伝?映画が千葉劇場(私の事務所の2階にあります)にかかっていましたのでみて来ましたが、西欧の明がなどの紹介ばかり・・文化受容を自慢していることが中心で自国芸術が全く出て来ないのには驚きました。
もしかして独自文化のない民族って?悲しいものだな・・と言う感想を抱きました。
日本の国立博物館・美術館に行って、日本人の芸術品が1つもなくて海外の名作の所蔵ばかりが自慢はでは悲しくないですか?
今のプーチン・ロシアでは民族主義の固まりみたいに見えますが、自国民族の精神の固まりであるべき自国文化を主張しない民族主義って?ロシアって何のための民族国家なのかさっぱり分らない気がして帰って来ました。

アメリカの傲慢(半導体交渉)と中国の適応力1

商品の代わりに人間で言えば難民を送り出すクニがあると、送り出される方の治安や経済情勢が悪化します。
窮乏を基礎にした対外転嫁や先送りはいつか破綻すると言うのが定説ですが・・北朝鮮の例で分るように窮乏化競争では、より貧しい方が競争力があるのが普通です。
中国国内だけ見ると倒産先送り・国内雇用維持になっている代わりに、ダンピング輸出を受ける方にとってはその分国内生産が減る・・失業を輸出されているのと同じ効果になります。
中国人個人で見ても、世界中で世界標準の礼儀作法を守らないで汚しまくる・・大声で騒ぎ顰蹙を買う・・企業では知財の剽窃などルール破りが目立ちましたが、控えめに言って分る相手ではない・トランプ式恫喝が必要だと思う人も結構います。
そうは言っても中国の場合、国際ルールを知らないことに反省している気配が見えて、最近で大分礼儀正しくなっています。
企業行動でも低賃金・人海戦術は先がないとなれば、速やかに省力化投資に精出している様子がこの数年目立っています。
こう言う謙虚な精神がないのがアメリカで、熟練技術者不足となればレベルアップ努力するよりは作業工程を分解して流れ作業方式を編み出して未熟練者の大量採用で対抗する・粗放・大量生産の極大化を押し進めて来ました。
この一態様・・移民受入れ政策で・・要は労働者「数」で勝負する思想です。
粗放・大量生産方式に対して、日本のきめ細かい技術による対抗を受けて、これに再対抗出来ないとなると、先ず第二次世界大戦で一旦叩き潰し、戦後直ぐに再挑戦して来ると世界大国になった傲慢さから工夫するよりは開き直りに徹して来ました。
日本はhもう一度戦争になるとと大変なので、何を言われても「御無理御尤も」の精神で対応して来ました。
日本に追われるようになった繊維〜電気〜鉄鋼〜半導体〜クルマなど(腕力に任せて)日本に負けると次々と輸入制限しただけで安心し、国内での構造改革努力をせずにそれでも日本に負ける分野では海外進出して対抗する・スポーツも負け始めるとルール変更したり、低賃金競争に負けると移民で人口を増やす努力・・国民レベル引き上げの必要性に目をつぶり、その努力しなかったのが、戦後アメリカ政治でした。
いわゆる成功体験が新しい時代への適応を誤らせる好事例です。
日米経済戦争が次々と起きて来る中で最後の半導体では、・・アメリカの粗放生産向きの国民レベルでは、電子機器・・半導体工場等の微細工程をこなすには自国民には無理と諦めたのでしょう・・保護主義だけでは無理となって日本パッシングの道具・対抗馬として韓国企業を育てる方向へアメリカは舵を切りました。
https://matome.naver.jp/odai/2145459542538851901
卑劣 日米半導体協定 ⇒ 日本半導体産業崩壊
更新日: 2016年02月05日
日本は技術・経営で勝利したが,政治で敗北
概略
日本半導体研究開発成功 (大容量DRAM, 技術標準化)
 ⇒【技術的勝利】世界のシェアを奪う
  ⇒【政治的敗北】米国との協定により日本の半導体産業崩壊
   ⇒ 現在,米国と韓国が半導体のシェアを確保」
米国の政治的攻撃:日米半導体協定という不平等条約 (1986~1996年)
日本の半導体の輸出価格をアメリカが決め,日本市場の20%は外国に譲らなければならないという「日米半導体協定」を10年間結ばされ,その間に日本の半導体産業は衰退する。」
アメリカが日本企業の販売価格を勝手に高く決めてしまうことにより、他国と競争出来ないようにしてしまったことになります。
韓国企業を育てる応援を強制されたので?仕方なしに半導体製造装置を輸出せざるを得なくなり、それ以降日本は、いろんな分野で製造装置や部品の輸出で稼ぐ構造になりました。
この辺は逆に今の新たな経済パターンを作り出せて良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
太平洋戦争に引きずり込まれて日本は痛い目にあったので、どんな無茶を言われても柔軟対応に切り替えていることになります。
この辺は逆に今の新たな経済パターンBt0CからBtoB方式にモデルチェンジ出来て良かった・・ああすればこうする日本の柔軟な戦略にアメリカはいらついていることは確かです。
戦後70年間・・隠忍自重をやって来たので韓国はアメリカの後押しさえあれば日本は何でも言うことを聞くと思い込んでしまったのです。
詳細を省略しますが、上記のとおりの理解・・占領直後に日本の工業生産を禁止ししていたのと似たような強制が1996年当時もあったのです・・サムスンの躍進はこうした米国の政略の後押しによるものです・・が今の常識でしょう。
アメリカにかかると経済原理・正義の基準も何もあったものではありません。
http://www.seminowa.org/seminowa_archive2014/articl_other/semi_news_V26_2.htm
日米半導体戦争
半導体シニア協会 理事長 牧本次生 
「この歴史を振り返って強く感じることは、首位を転落した後の米国の強烈な巻き返しである。超LSIプロジェクトの方式を「日本株式会社」と非難しながら、これが有効となれば、手のひらを返すような形でSEMATECHを設立。なりふりかまわぬ振る舞いには半導体を国家戦略として位置づける米国のすさまじい執念が感じられる。この当時、政府、産業界、大学、マスコミなど国全体で「米国の盛衰は半導体にあり」という認識が共有されていたのだと思われる。」
この後アメリカの応援を受けた中韓による日本に対する明からさまな敵視政策が顕在化して来ます。
話題を戻しますと、日米半導体戦争の決着以降日米経済戦争はあらかた終わりましたが、・・日本はクルマの製造拠点をアメリカ国内に作ることにしてアメリカの怒りをかわすのに成功したこともあり、他方でアメリカによる戦後台頭して来た対日押さえ込み政策が成功を収めていたことになります。
半導体交渉は、日本の輸出自主規制させておきその間に韓国企業を育てる政策であり、中国進出政策でした。
例えばGMは本拠地のデトロイトでの工員のレベルアップを放棄して、日本に対抗するためには中国で大規模生産して漸く生き残っている状態です。
アメリカ企業は、中国等の低賃金攻勢・・あるいはアジア人の器用さを武器にする攻勢に対して低賃金+器用な国に海外進出してしまい国内企業改革をしなかった・これがアメリカ国内産業空洞化の結果ですが・・他方で安い移民を入れる方に走ってしまったのとは違います。
アメリカ「民族系?」企業は嫌がらせされる心配がないので遠慮なく国外進出してしまう・・あるいはアップルのように99%中国工場で生産して逆輸入する・アメリカの産業空洞化を日系企業が穴埋めする入れ替わり現象が起きています。
この数年トヨタや日産、ホンダ等の日系自動車工場の進出先では、韓国系の慰安婦運動その他の反日運動に対する沈静化の支えになっていると言われますが・・。
中国の大規模なダンピングが世界の迷惑になっているかどうかは別として、中国はさしあたり国有企業温存の結果、国内大量倒産を防ぎ大量失業を発生させないで今のところ、何とかなっている・・見た目には成功しています。
これをどう見るかは立場によって違うでしょうが、イチガイに「ダメ」とは言い切れないように見えます。

社会保障や国債と世代間損得論3

国債の日銀引き受けは、満期が来ても日銀がまた引き受ければ良い・・永久に返済不用の国債ですから、債権の株式化の一歩です。
実は・・企業の社債も満期借換債発行の繰り返しで、事実上元本返済をし予定していない点は同じ・・国家破綻しない限り過去の旧発国債保有者は無期限保有出来るようになったと見るべきではないでしょうか?
日銀引き受けは事実上無期限国債と同じですから、政府にとって将来何のリスクもありません。
私の上記理解が正しいと断定する自信がありませんが、今の学問では分らないからと言って何でも反対するのって、責任がある立場の人としては仕方がない(何とかなるのじゃないの!とは言えない)とは言え、発展性がない印象です。
日本の消費税論議の1つの論点でもありますが、景気に硬直的な消費税が占める比重が上がると、景気変動に税収が左右されない・・税収弾性値が低いので財政の安定性を求める財務省が、景気変動に関係の少ない消費税にこだわる傾向があります。
逆から言えば不景気で国民・経済界の所得が減っても、税だけ多く取られるシステムはおかしい・・不景気で収入の減ったときには消費材の価格も下げて欲しいのが普通の景気対策ですが、付加される税率がそのままと言うのは納得出来ないと言う反論も然りです。
財政の立場から言えば不景気のときこそ財政出動のために財源が必要・税収を上げねばならないと言うことでしょうが、民間からすれば不景気で収入減でも税が変わらないのでは変な気持ちがします。
トランプ氏の法人税減税や大規模インフラ投資の選挙公約の財源をどうするのかと言う説明がない点で、実現性が危ぶまれているのも同じ原理です。
財源手当てないまま減税すれば、政府機関の支払不能・政府機関の閉鎖になり兼ねません。
この辺は、消費税でない所得税や法人税でも同じ・・財政政策の財源を税収に基礎を置く限り、景気が良くなれば税収が上がるから消費増税する必要がないと言う意見でも無理がある点は同じです。
不景気が永久に来ないと言う前提ならば分りますが、「景気を良くすれば税収が上がるから消費税を上げる必要がない」と言う意見によれば不景気が来たときに(不景気で税収が下がるから元々の固定経費にも足りなくなる外に不景気対策の財政投入資金が必要でダブルで資金不足になってこの穴埋めのために)大幅増税するのか?と言う矛盾があります。
「消費税を上げて景気を失速させて税収を減らしたら元も子もない」・・「角を矯めて牛を殺すな」と言う程度の意味では正しい意見ですが、いつかは不景気が来るのですから、それに対する備えとしては論理が破綻します。
ここでは、政府対国民の被害者意識で書いているのではなく、経済原理から言っても多分この素人的感覚・・「税金で何もかも賄う発想」そのものに無理があると言う感覚が重要でしょう。
この隘路を打開するために不景気のときに経済にカツを入れるための出費は、税で市場から資金を吸い上げるのでは余計不景気になるので、赤字国債で賄うという現実的発想が生まれて来たのです。
そして好景気のときのその穴埋めをしないなままにすると国債残高が膨らむ一方になります。
学校秀才・既存学習論理から言えば政府財政赤字=大変なことになると言う赤字国債・紙幣大量発行は鬼っ子ですから、経済官僚とその意を受けたエコノミスト総出で「異次元緩和」を批判している構図です。
アメリカ連銀もこの妥協を迫られて一刻も早い異次元緩和の脱却に追われています。
ベネズエラ危機が起きたのは、政府の負債が大きいからではなく、ベネズエラの国家・社会の購買力を負債が超過した・・購買力がなくなったことによります。
現在のハイパーインフレとは、購買力がないから他国が売ってくれない・その国の通貨ではどこも両替してくれない・取引してくれない・・物資不足でいくら国内紙幣を印刷してもその紙幣の国際的信用がなく・・ドルや円などの国際通貨でないと売ってくれないのですが、その外貨を手当てする資金がない・・国内紙幣を印刷しても食料品を生み出すわけではない状態を言います。
政府は社会構成の1主体に過ぎませんから、政府発行の国債残高の絶対額やGDP比には意味がなく、デフォルト危機・ハイパーインフレリスクは、民族国家全体の経済力・・国際収支上の対外債務が支払えないときに起こるもので国債の発行残高とは何の関係もありません。
我が国は世界1の純債権大国です。
ネット空間でも既存論理を前提に現状批判している評論が多いのですが、国債悪玉論だけはなく対中、対韓批判であれ何であれ既存論理煮しがみついている限り無理っぽい印象です。
旧来理論・スキームによる理解では中国の国有企業への財政投入の仕方では、・その内破綻すると言う論調が多いのですが、世の中はいつも動いてるのですから、新しいスキームで考えてどうなるかのかの検証・・意見が必要です。
中国が、赤字輸出の継続や無駄な投資が続く・・続けられているのは、中国大企業の多くが国有企業なので豊富な外貨準備の取り崩しによる下支え効果・ゾンビ企業温存策の結果と一般的に見られています。
ゾンビ企業温存・倒産先送りだからその内行き詰まると言っても、そのような先送りは先進国でもしょっ中やってきたことです。
好不況の波があるので、不況時に公共工事等に財政投資して需要の下支えをして倒産を防いでいるうちに次の好景気が来るのを待つ方式です。
いわゆるケインズ式需要喚起策と金融緩和の組み合わせで世界中がこれの採用で大規模不況や長期化を防いで来ました。
構造不況・・その業界の競争力がない場合には、一時的に輸入制限などで保護している間に構造改革しない限り破綻の先送りでしかなく税金の無駄遣いで意味がありません。
・これこそがゾンビ企業温存策で、アメリカの電気・鉄鋼業などが日本企業叩きで輸入制限してもその間に構造改革努力をしなかったので結局どうにもならなかった例です。
中国の場合、下支えているうちに構造改革に成功する努力があるか否かの検証をしてから未来があるかどうかの議論すべきです。
この努力をしないで「下支えだから直ぐに行き詰まる」とは言い切れません。
中国の将来は出血輸出その他死に物狂いで倒産先送りしている間に(低賃金に頼るこ企業モデルを中進国並みの高賃金?に耐えられるように)構造改革が出来るかによるのですが、日本からロボット購入額がうなぎ上りなっているのを見ると輸入制限で安心してしまったアメリカと違い意外に健闘している様子です。
数日前に中国資本が買収した「ボルボ」の例を紹介しましたが、したたかに高度技術吸収にどん欲な様子が見て取れます。
高度技術が身に付くまでの資金繰りのためには赤字輸出しかないなど・・無茶な行動が世界に迷惑を及ぼしていることは確かです。
中国に取って必要なこととしても、鉄鋼に限らず色んな分野で不当廉売輩出源となって、世界の経済を蝕むマイナス面も考慮すべきです。
中国は、世界に迷惑をかけないで構造改革をする大人の対応が求められていますが、中国は地域大国の歴史しかないので、国内政治の経験しかありません。
まだ世界でスマートな振る舞いをすることに慣れていない・・その結果として出血輸出が目立ちましたが、排出源と言えば、公害出し放題で金儲けさえすれば良いと言う態度とも共通しますが、近隣国は迷惑です。

社会保障や国債と世代間損得論2

話題が国債日銀引き受けからハイパーインフレの原因・金利競走に飛びましたが、国債に戻ります。
内部的リスク・・喩えば、国債に頼るとデフォルトの危険・収入以上に無駄遣いしてしまう・・債務膨張するかのような議論もあります。
これもベネズエラの例を見れば分るように債務超過国の例を超優良資産家・・喩えば、百億前後の資産家が、5〜10万円程度の日用生活品をカードで購入すると知らず知らずの間に無駄な買い物をして借金が膨らんで危険だと議論しているようなもので・・当面と言うか中期的には全く意味のない議論です。
今のところ、赤字国債発行が危険だと大騒ぎすること自体が何とかして日本の内政混乱させたいと言う?「ためにする議論の疑い・・」ではないかの疑いがあります。
官僚の立場を勘ぐれば、古代から続く徴税仕組みを守りたいと言う郷愁が、官僚を奮い立たせているだけではないでしょうか?
強制徴収の税の比率をドンドン下げて税の比重を最低限にして行き、何かのプロジェクトごと・・補助金ごとに国債で賄う比率を上げて行く・・特定目的の国債発行で信を問う方が納税者の意見反映が容易で合理的ではないかの意識でこのシリーズを書いています。
プロジェクトごとの国債が各分野に広がると社会保障税も出来るだけ民営化して行く・・民間保険に委ねる方向に繋がるでしょう。
飛行機にエコノミーからビジネス、ファーストクラスがあるように、保険加入レベルに応じたサービスがあってもいいように思えます。
強制徴収による公営保険は最低限の医療や介護を保障するもので良い・・最高レベルの医療まで含めるのは社会保障の枠組みを越えています。
国債の場合、払いたい人に払ってもらう・・その代わりいつでも返す・・市中売却による回収仕組み・・評判が悪いと市中売却値が下がる・この評価システムが何故悪いのか不思議です。
官僚や為政者にとっては税の強制徴収・税率さえ決めてしまえば、税の場合何に使おうと事実上勝手です。
(国会審議が間接的にあるだけ・保険で言えば、給与天引きの保険料率さえ決めればその先何を保険適用にするかは審議会で決める・・国民の直接意見は無視出来ます)
強制出来る税や保険方式の場合、個別政策に対する市場評価を無視出来る便利な点が好ましいのでしょうか?
5月4日の日経新聞5p「中外時報」で地方自治70年のテーマの記載を読むと、大規模施設建設などの場合に住民投票制度創設案を総務省が作ったが自治体首長の反対で立ち消えになっている例が出ています。
(博物館・美術館学校設備ではリターンは無理がありますので、十字軍遠征のファンドやスエズ運河開設のように目的別国債と言うわけにはいかないでしょうが、非営利分野は神社仏閣の新造営のために行なわれてきた「勧進」のように篤志家の寄付で良いのではないでしょうか?
寄付や国債の任意購入に頼るには、所得税を安くして寄付出来る程度の資金余力を国民が持てるようにする必要があります。
町内会館の建設資金や、近所の私鉄駅の改造請願のために私も微力ながら応分の寄付をしましたが、全て税で賄うよりは出したい人が出す・・合理的です。
株式や社債を買いたい人に買って貰う・・途中換金したければ市場で売って回収出来る・・政府の国債も企業同様に政策に信用があれば優良株式同様に買って貰えるし、売買の対象になるべきでしょう。
社債発行するとその企業に借金が残り将来が危険と言う人がいないのに、(社債集めた資金で何に投資するかが重要であって社債の規模そのもを「悪」とは言いません)国債を社債と何故違った目で見るのかの問題です。
市場評価を経ていない税よりは・・将来の心配・・社債・国債のリスクは買った人の自己責任の問題です。
まして全量日銀引き受けになって行けば、民間の購入者がいないので暴落による損が起きません・・結局は日本の円通貨の信用性問題に帰して行くでしょう。
通貨の信用性は国際収支の長期的結果によるのであって、国債発行残額によるものではありません。
財務官僚が将来が心配・・と必死になるのは、税で取る方が便利で民間に頭を下げる必要がない・・と言うに帰するように見えます。
税金の場合には、過去にいくら多額納税していても何の実績にもならない・コマたっときにその一割も還付してくれるわけではありませんが、軍功があれば子孫まで領地保障してもらえたようなギブアンドテイクがありません。
国債購入で貢献しておけば豊かなときにはそのまま保有していて、イザとなれば子孫の代でも売却回収して生かせるメリットがあります。
寄付した人には応分の名誉が刻まれる・その程度で良いのです。
良い政治をしていれば、投資した国債をお金にして欲しいと言う人もいても、もっと買いたいと言う人の方が増える・・株式相場と同じで何の心配もない筈です。
政治に緊張感を持たせるには国債相場で使い道を監視するのが合理的です。
日銀の国債引き受けは相場の影響を受けない・・民意無視出来る点が、これまで書いて来た効用とは違って来ます。
日銀引き受けが常態化し、且つ新規発行国債だけはなく既発国債の市中売買にもアタマを突っ込むようになると、市場評価・市場性が完全になくなります。
満期が来てもその借換債を際限なく日銀が引き受けるようになると、政府としては有期限の国債を無期限化した・・政府が紙幣発行権を取得したのと同じです。
紙幣発行権を乱用することがあるとハイパーインフレになると言う心配が旧来理論ですが、私はそうは思っていません。
何回も書いて来ましたが、供給不足の場合に紙幣発行を2倍にすると価格が2倍になる論理ですが、供給過剰下では紙幣だけ増やしてもより多く買いたい人は滅多にいない・・どこの社会にも貧しい人がいますので、少しは購入量が増えますが、先進国ではその程度では工場増産+輸入の容易な現在では増産処理で間に合ってしまいます。
だからいくら紙幣発行しても豊かな社会では物価は上がらない・・その紙幣は円キャリー取引(日本は世界最低金利ですから日本で借りて海外運用したら利ざや分だけ簡単に儲けられる)によって、国外に流出して行きます。
これが資本収支上「円」の流出を通じて円独歩高を防いでいる仕組みですし、アメリカの貿易赤字によって流出したドルがアメリカ国債購入を通じて還流・ファイナンスされている関係です。
中国の場合、自国の経済力を反映して当然アメリカ国債より国内金利が高いのですから、アメリカ国債を買うのは逆ザヤですが政治力学上+人民元を割安にするために無理して買っていた損な関係になることも大分前に紹介しました.。
以下は16年10月までのデータですが、アメリカは0、5%中国は4、35%で約4%以上の逆ざやです。
国債や銀行金利と基準金利とは同じではありませんが、ほぼ比例して行くとすれば、仮にアメリカ国債を1兆ドル保有するだけでも年間400億ドルずつ利息で損をする関係です。
chuugokuhahttps://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「アメリカの政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月   2月   3月    4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月   11月   12月
2016年  0.5   0.5   0.5   0.5   0.5    0.5   0.5   0.5    0.5   0.5
2015年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.5
2014年  0.25  0.25   0.25  0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25   0.25  0.25

中国の政策金利の推移


中国の政策金利の推移(2010年~2019年)です。
1月     2月   3月   4月   5月   6月   7月   8月   9月   10月
2016年  4.35    4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35   4.35  4.35   4.35
2015年  5.6     5.6   5.35   5.35   5.1   4.85   4.85   4.6  4.6    4.35   4.35  4.35
2014年  6     6     6    6     6    6    6    6    6    6   5.6   5.6

資本環流と貿易赤字の持続性

前世紀の成功体験にしがみつく米中の恫喝は、どうせ一過性のヒステリーに過ぎないと言う前提で、そのときだけ廻りがある程度言い分を聞く程度のアメリカに対するあしらいになる時代が来るのでしょう。
言わばヤクザが息巻いている間黙って聞いているだけの関係と似ています。
これの前触れがトランプ政権の結果の見え透いた恫喝的取引外交です。
これを繰り返しているうちに、国際社会におけるアメリカの存在がドンドン軽くなって行くでしょう。
July 25, 2016「消費力←金融3」前後で消費力のテーマで書いて来ましたが、腕力政治・・大鑑巨砲時代が終われば、発言力は生産力によるのではなく、消費力によるのですが、まだその辺の理解が出来ないので時代遅れの国になりつつある所以でしょうか?
韓国が中国に露骨になびいたのは、04年から約10年間にわたり対中貿易がアメリカを抜いて韓国経済にとって世界一の関係になっていた事実・・今後益々拡大すると言う読みがあったからです。
15年のデータですが、以下のとおりです。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000005986.pdf-
平成28年2月-外務省アジア大洋州局日韓経済室
中国は韓国にとり貿易総額で第1位の貿易相手国。
03年に対日貿易額を,04年に対米貿易額を上回り,15年は約2,274億ドルで貿易額の約25%を占める。
同年の対中輸出の割合は26.0%,対中輸入の割合は20.7%。
輸出依存度:(輸 出 の 対G D P比)50.6%(14年,世界銀行)と極めて高い比率。為替変動や他国の景気動向の影響を受けやすい経済構造(13年の日本の輸出依存度は16.2%)
上記貿易実態をみれば、朴政権が日米の制止を振り切って中国依存へ舵を切っていた背景が分ります。
ところが、頼みの中国経済が15年夏の上海株式大暴落以来変調気味になってきたことから、日米勢力圏へ回帰し日韓合意に踏み切りサード配備を決めた基礎事情でした。
生産力ではなく購買力が世界政治を決める時代になっています。
消費・購買力の基礎は資金力です。
資金力の本質的な差は持続性があるかの評価次第であって、株式発行による自己資本か社債発行によるかの差には本質的な差がありません。
発行済社債評価が下がっても発行体に関係がないようですが、既存社債の満期がしょっ中来る関係で、借換債発行が不利になるのは死活問題になります。
普通の国では長期間貿易赤字・・借金で消費しているとそのうち信用不安・・通貨が暴落で、ベネズエラ危機になります。
アメリカは貿易収支の赤字・・マイナス分をアメリカ国債購入などの資金環流で補っていますが、普通の国と違い基軸通貨の地位が続く限り、今のところ無限の可能性があります。
日銀引き受けによって政府がいくらでも国債を発行出来るのと同じような関係です。
この結果世界の製品を引き受けて、大幅赤字を提供して来ました。
貿易家赤字を続けると言うことは、その国からドンドンものを買ってやって大きな顔が出来る・・恩を着せられると言うことです。
国際収支上は、収支バランスが理論的結果ですから、赤字分同額の資本収支勘定の黒字=流入があります。
いわゆる資金環流ですが、これがいつまで続くかの問題・・基軸通貨国の地位は軍事力によるのではなく、経済力の裏付けがあってこそですから、資本収支・・海外収益還流が大きい我が国のような場合健全ですが、強面で強制的に資金環流をさせている場合いつまでも続くわけがありません。
アメリカが海外収益の拡大が続いて基軸通貨国の地位が続いた場合にも、・・海外子会社の収益還元であれ、国公社債購入であれ資金環流に頼っていると現場労働によらない収入ですから、この恩恵を受ける層と受けられない層(・・これが大多数です)に分かれて来ます。
最貧国への援助であれ、資本環流に頼る社会では、(5月13日に書きましたが、)これに関与出来る階層(先進国ではグローバル企業や金融資本家や関連従事者・後進国の場合独裁政権幹部の賄賂)と関与出来ない階層の国内格差が拡大する一方で格差問題が解決しません。
(後進国への巨額援助に関与する高官の賄賂収受と中国の巨額賄賂も根っこは同じで外資導入・・外資・・店舗や工場新設許認可に関与する「袖の下の横行」にあります・・中国が外資に頼る時代が終わると国民相手の賄賂要求では多寡が知れているので賄賂も激減するでしょう)
格差問題の根源は、資本流入に頼る経済にあるとすれば、反格差論はイキオイ貿易赤字解消運動に帰結するしかありません。
これがトランプ氏の保護主義・国内生産回復政策→貿易赤字解消策であって一応理論としては一貫していると思われます。
これに加えてアメリカが永久に貿易赤字を続けて行けるか先行き不安解消もあって一石二鳥の主張です。
いつまでも大幅赤字を続けられない・何とかしろ!と言われるとアメリカの赤字で潤っていた日中韓など黒字国はうろたえます。
軍事力が怖いのではなく、赤字=黒字削減を言われるのが怖いのです。
貿易赤字国は損をしているのではなく、実は働き以上の消費をして「得して」来た関係です。
働かないでうまいことをする関係は長く続かない・・貯蓄がなくなるとあるとき遂に支払が出来なくなる・・イキナリ最貧国転落・・10何時間時並んで漸く必要な食糧の一部を手に入れられるだけの今のベネズエラみたいになります。
アメリカの場合も、資金還流が止まるとおしまいです。
資金環流には自国企業の海外収益還流と強国へのおつきあいで(巨大な貿易黒字を多めに見てもらうために?)義務的に環流させられている資金の2種類があります。
日本や中国の政府がアメリカ国債を買わされているのは目に見えた還流強制ですが、トヨタなどが無理にアメリカに工場を作らされる・・その分資本環流させられているのもこの一種です。
無理が利くのは消費力があるからですが・・これがいつまで続くかです。
義務的とは言え、長期的に見れば資金移動は投資効率が基準であって、金利の高い方〜安全な方に流れたいのが本来です。
以前は「有事のドル」と言われ国際政治上の危機・動乱が起きると一時的にドルが上がり、さすがにパックスアメリーカーナと言われるだけのことがあると言われたものですが、この20年間程は、「有事の円」となってアメリカドルよりも円が上がります。
こう言う状態下で、アメリカ国債が日本より金利が安いと何のために割高な(金利の殆どつかない)アメリカドルを「イザというときのために」保有しておく必要があるか?アメリカ国内工場を造っても採算が合わないと続きません。
例えば中国に取っては国内基準金利でさえも4〜5%ですから、国債利回りで言えばこの2〜3倍とすれば、15日に紹介した金利のアメリカ国債を買って保有しているのは完全に逆ざや・・大損です。
このためもあって中国のアメリカ国債離れ・・ユーロなどへ分散投資の流れが続いているのですが・・これを阻止するためにアメリカは一刻も早く金利を上げるしかない・・いわゆる出口戦略・・金利上げに必死なのです。
エコノミストは「アメリカがやっているから、日本も出口戦略策定を急ぐべき」と言いますが、日本は世界最強債権国ですから金利上げを急ぐ必要性がありません。
・・それどころか日本が金利を挙げたらアメリカその他世界の資金がみんな日本に吸い上げられて困ってしまうでしょう。
アンカーの日銀がむやみに金利を上げると市中銀行がその上乗せ金利で貸すしかない・・中銀が金利を上げると金融引き締めになるのと同じで、世界経済のアンカ−たる日本が金利を上げるとみんな一斉に上げるしかなくなり参ってしまいます。
アンカーの金利は最低でないと世界は混乱します。

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