国債の合理性2

ちなみに親に遺産がなくて相続放棄した件数は司法統計をちょっと見ただけでは(更に深く入らないと)分り難いのですが、以下の記事によると年間18万件程度らしいです。
https://seniorguide.jp/article/1002122.htmlの記事によれば、2016/5/5 00:00
「裁判所の統計によれば、平成26年度の「相続放棄」の届出数は「182,089件」に達しています。」
ところで、一人の被相続人の相続放棄には、第一次的に平均的に妻子3人がやり、次いで被相続人の兄弟姉妹もする必要があるので、(最近の死亡例では、我々世代以上が中心で兄弟4〜5人が多い)私の事務所で担当する事件では、一人の被相続人のために5〜6人以上が放棄手続するのが普通です・・。
裁判所は申し立て人一人に付き1つの事件番号を振るので、受理件数が18万件の場合、相続放棄される被相続人はその6分の1前後→3万前後しかいないことになります。
ところで26年死亡数は厚労省の統計http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai14/dl/gaikyou26.pdfによれば、以下のとおりです。
「死亡数は127万3020人で、前年の126万8436人より4584人増加し、死亡率(人口千対)は10.1で、前年と同率であった」
債務の方が多くて死ぬ人・・相続放棄された親の死亡は年間約3万人・・何と約40人に一人と言うことです。
40人中39人の子供らは遺産を受け取る側に回っていることになります。
生活保護受給者でも子供になにがしか残したくてコツコツためている人が多いのには驚きますが、親心とはこういうものです。
メデイアは世代間不公平と言い、如何にも次世代が損をするような宣伝しますが実際に親から受けた恩以上のことをする次世代がそんなにいるとは思えません。
徴税と国債の関係も同じで、政府にとっては国民から必要資金を吸い上げる方法が、強制によるか任意拠出によるかの違いでしかなく無理ありません。
強制的に税でとるより国債を買いたい余裕のある人に進んで買って貰う方が公平です。
資金を持っていても有効利用出来ない資金を不景気のときに政府が国債で吸い上げて有効利用するのは合理的ですが、税の場合有効利用したい・・出来る企業家からまで吸い上げ、強制徴収してしまう弊害があります。
企業家よりは政府の方が資金を使うのが上手だと言うのは、今の時代当たりません。
国債は使い道が分らないで保有している国民の資金を任意吸収する点でも合理的です。
年数千〜数百万円を何十年も納税していても何の恩恵もありませんが、お祭りで沢山寄付する人は上席に座らせてもらえるように、国債購入者は年間一定の利息と言う形の還元がされます。
そのうえ、収入の多いときに何十年も多額納税していても、事業失敗・倒産等で失業や生活保護に転落しても過去の多額納税分を他の人と別に割り増しで優遇給付を受けられません。
国債の場合後になって困れば売却して必要資金に当てられるし、使わないで終わっても子孫へその権利を引き継げます。
主君へ勲功のあった武士の功績が子孫へ引き継げたのと同じです。
しかも国債はお金があっても買いたくない人は買わなくとも良い任意性ですから、国民の支持が必須・・なおさら公平です。
税の場合、刑罰の強制がある本質があることから分るように選挙の洗礼があるとは言え国民の支持が間接的ですが、国債はイヤな人は買わなくても良い点で民意そのものになります。
地域のお祭りは寄付が集まらないと縮小して行くしかない・・支持が大きくなるとお祭りの規模が大きくなるのと同じで、民意そのものです。
集めてしまった税金の使い道を国会で決めるよりは、何か大きな国家事業の度にその出費目的の国債投資・・ファンドを募れば国民の目も厳しくなり、より民主的になるでしょう。
弁護士会の予算審議でも同じで、既存規定の支出項目のチェックはツイおざなりになりますが、今年この事業を行いたいので、何十年前に決まっている会費とは別に特定事業のために会員一人当たり何千円の拠出を求める場合の方が、会員の質問その他が多くなり関心が高まります。
官僚が任意拠出・・国債を嫌がり既存の法による強制徴収にこだわりたい本音が分るでしょう。
税体系は複雑で過ぎてその税がどの政策目的に使われるかを(揮発油税などを除いて)原則として決めていません・・。
税は国会の議決がないと取れませんが(租税法律主義)、抽象的にある行為・結果に税を課すと言うだけで、その税を何に使うために必要かを国会で議論しない仕組みです。
予算審議もその支出の必要性だけであって、どの税がこの予算支出に使われるかも決めていません。
この結果予算審議と言っても支出の妥当性に関心が集まる傾向・・揚げ足取りに終始するかなくなるように見えます。
まして消費税になると間接的過ぎて目に見え難く何の抵抗もありませんが、その分社会が疲弊する・西欧の高率消費税が社会の活力を蝕んで来た・植民地を失ったことが基礎にあるとしても・・西欧が消費抑制に邁進していることが停滞の大きな原因の1つでしょう・・ことは事実でしょう。
現在社会は消費力こそが基礎ですが、西欧では消費を標的にして来た結果、消費社会の発達が阻害されている結果をメデイアやエコノミストは全く論じていません。
現在社会は消費力の競争であると言うテーマでAugust 16, 2016「消費力アップ4と世界的減税潮流の基礎1」前後で書いてきました。
この考えは、実は全額日銀引き受けになると様相が変わって来ます・・政府は国会さえ通過させれば(民意無視で)何でもやれてしまうようになるのか?これは後で別に書いて行くことにします。
国債による政府資金の手当方法は、国民に買って貰っている限り申し分のない公平な制度ですが、外資が購入者になると外資に支配されてまう・・ここに本質的問題性があるでしょう。
例えば中国が日本の国債の9割を保有していても、日本がその数倍の外債を保有していれば、中国が日本潰しのために売りに掛ければ日本は他の外債を売って買い支えが可能ですから、要は対外純資産国か否かであって国債残高と関係ありません。
中国が4兆ドル近い外貨準備があると豪語していたのに、あっという間に(今年1月末に)3兆ドル割れになったのは、それ以上の対外債務があるか否かによるからです。
上記のとおり、税の強制徴収よりは国債売却による資金吸収の方が、ずっと公平であることを国債と税の違いを以前連載したことがあります。
ついでに年金赤字について書きますと、年金制度をやめたり支給額を減らす・・高齢者の医療保険や介護保険給付を減らすと誰が困るか・・多くは、子供の負担が増える(遺産が減る)関係です。
親と言うものは貧しくとも少ないなりに何らかを子供に残しておきたい親が圧倒的多数です・・(生活保護の場合でもへそくりしてためているのが普通です)。
医療保険の負担率が仮に1割から3割に上がっても、多くの場合高齢者がその分子供に出してくれとは言わない・・生活費を切り詰めるでしょうが、結果的に子供に残す預金が数千万〜数百万円から千数百万円〜百万円前後に減るような関係になります。

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