格差社会3(株式相場と国内経済)

「大機小機」の連載を印象で読むのではなく検討して見ましょう。
論旨は昨日紹介した通り第一段落で「株式相場の好況は国内実体経済と乖離している」とした上で、第二段落で「総生産が変わらない以上人件費のカットか海外活動による収益か円安の計算上の収益しかない」と一応実体経済と乖離する場合もあることを認めるものの「そうでなければ実体経済とかけ離れたバブルだ」と断定します。
数日前に紹介した「大機小機」に労働分配率の低下を書いたのはその伏線だったのでしょうか?
上記の通り論旨はせっかく海外収益や円安要因による場合にも国内経済と関係なく上下する場合があることを義理で?触れているにも関わらず、この要因該当性の有無を検証または論じることなく、「そうでなければ・・」と仮定の論旨に入って行き、直ちに日銀等による株式購入等の官製相場の弊害論に入っていきます。
これを読んでいると「国内」実体経済と株式相場の乖離は官製相場によって出来ているかのような誤った印象を持ってしまいそうです。
きちんと円安や海外収益増加でも国内実体経済に関係なく株式が上がるとも書いているのですから、私の読み方が悪いからそうなったのかも知れませんが・・.不思議な論理だなあと思って読み返してみると、せっかく「円安や海外収益でも乖離する」と(義理で?)書いておきながら、何故かそのあとでこれに該当するかどうかの検討をすっ飛ばして(如何にも海外収益増加も円安もなかったかのように)いきなり官製相場の弊害に入っているからそそっかしい私の場合「官製相場によって実体経済と乖離してしまっている」かのように印象付けられたのだと分かりました。
上記国内経済と関係なく株式が上がる・・乖離する場合の条件の内、円安について見ると安倍政権誕生直前から急激な為替変動があって、円が80円付近から120円近くまで急落したことは周知の通りです。
(昨年から少し円高傾向ですが、それでも今年6月28日夕刊では112円あまりです)
こうした場合、国内生産活動のアップに関係なく瞬時に海外投資(ドル表示)残高(日本は世界最大の純債権国です)の円評価や売り上げ代金の本国送金の円換算率が円の下落率に比例してアップするので、決算上対外設備投資等や株式・ドル評価の円換算評価益が急上昇します。
これを評価して株価が急上昇したのは、合理的な市場評価だったと言うべきでしょう。
他方で外国人投資家から見れば、ドル表示で120ポイントの株がいきなり80ポイント近辺に下がったのですから、(外資・ドル表示では大損ですが、企業業績が悪くて下がったのではないからナンピン買いをして損はないのでこれを含めて)日本株の割安感から買いを入れるのが普通でありこれが市場原理です。
この場合ドル表示で元の水準まで買っても良いとすれば、円が1ドル80円から120円への下落率と同じ相場・・8000円の株を12000円まで買い進めてもドル表示では同じです。
国内投資家にとっても上記の通り自動的に評価益が生じることによる株価アップ要因がある外、トヨタ等が円安による分を値下げすれば売り上げ増になるし値下げしないまま従来通り価格維持すれば(日本からの輸入部品等のコストが120円から80円に下がっている差額がそのままマージン率アップになります。
実際には120円から80円に下がったコストを100%値下げしないというだけで、企業によっては5〜6%〜8〜10%値下げする場合など色々あるでしょうが、いずれにせよ国際展開企業にとっては評価益だけではない将来的//持続的な5割前後の増益要因です。
内外投資家としては利益率アップが想定されるのでこの種の買い相場が始まると相場が相場を呼んで値上り益も見込めます。
株価は実態経済を反映すべきという論理が正しいとしても、東証上場株価は外資(約3割)も参加している国際商品ですから、基盤とすべき実態は国内だけではありませんので、国内実体だけを見て、株価が決まるものではありません。
経済的基礎がグローバル化している場合は国際的視野で検討すべきです。
国内経済との比較論は比喩的に言えば、千葉県発祥企業が県内シェアーが高くなりすぎて成長限界になり、他県に進出して成功・全国的に売り上げが倍々ゲームで伸びている場合、全国売り上げ増を見ないで「千葉県内での売り上げが現状維持なのに株式だけが何故上がっているのだ」と議論しているようなものです。
トヨタや日産〜コマツ、ダイキンなど国際企業は、国内売り上げ増がもはや限界ですから、米中その他市場での前年比売り上げ増加率が毎月ニュースになっているのです。
特に今回の円安の場合、日本企業の多くは(また円高に振れると困るので)現地価格を円安に比例して価格値下げ→売り上げ増に走らず、円下落効果を僅かしか価格に反映せずに利益率アップに動いた企業がほとんどですから、(円安にも関わらずホンダなどは輸出を増やさずに海外生産比率をあげると当時宣言していました)円安による輸出増・国内生産増GDPアップはほとんど起きていません。
海外資産評価アップと収益増のダブル効果があればその分株価が上がるのは当然ですが、国内付加価値増加・国内総生産増加に結びつきません。
今回の株式相場とGDP・国内総生産アップとは関係がなかったのは当然であり、これを国内実体経済との乖離だけを理由にいきなり官製相場の弊害に論旨を進めるのは(私のような粗忽者をひっかける)不当誘導っぽい書き方です。
海外投資残の大きい企業ほど海外取引比率も高いので円安に比例して株価が上がるのは当然であって、これを市場の歪みと非難する論旨は対象とすべき経済基盤とすべき実態の範囲を意図的に国内に絞っている疑いがあります。
ところで論旨は人件費安も原因のひとつに上げていますが、この数日書いてきたように海外収益増や評価増に寄与していない上に、人手不足下で機械化すればするほどコストに占める労賃比率が下がるのは当然です。
ところで・・現在の株式相場が(国内だけなく国際的視野で)実体経済と乖離しているかどうか及び、乖離しているとした場合その原因かどうかは別として、公的資金が相場を歪めていると言われると(そういうことがあるとすれば困ると思う人が多いでしょう)もっともな感じを受けますが、これも問題があります。
それを論じるのであればそれ自体を独立に論じるべきであり、現在の株式相場が高いこととと(ある程度関係があるとしても)直結する論旨は飛躍があります。
高齢化=年金の時代ですから、公的資金が巨大化している点は先進国ではどこの国でも同じです・・。
カナダ等先進国の年金運用機関の巨額資金が債権や株式相場に与える影響が大きいことは数十年前から指摘されていましたから、問題は我が国の公的資金運用がどうあるべきかの議論の必要性であって、市場における公的資金の比重が高まっていること=悪であるかのような印象づけ批判も問題です。
サウジなどのオイルマネー、中国の国有企業その他いろんな国の巨大な公的資金が日本や世界中の債券や株式相場に影響を与えているのは普通の状態です。
この現状を見ないで、(その分析の一環としての公的資金運用のあり方論であれば合理的ですが)日本の公的資金が安全=国債偏重をやめて株式を買い始めたことだけをテーマにする必要はありません。
中国の人権侵害や公害には黙っている人権集団と同じ印象です。

消費経験が民度を上げる→外貨準備減少

世界的に資源国や新興国通貨下落が進行している状況下で、ローエンド生産に頼る中国経済の限界を見た世界が、資本流出を始めたのですから、資本取引の規制さえ強化すればどうなるものではなく、ハイテク製品に挑戦する力があるかを世界は見ています。
スマホで言えば、中国企業がアップルに負けない新製品を仮に作って世界を席巻しても、その製品工場として最低賃金で働く工場しか中国に作れないのでは、ベトナム等に工場立地を奪われてしまいます。
このシリーズの関心である・・結局は民度次第と言うことです。
一握りのエリ−ト研究者や資本家だけが潤う社会では、豊富な労働力が売り物の中国の金看板がどうなるか?と言う疑問です。
多くの国民がローエンドからセカンド〜ハイエンド製品生産に従事・参画出来ないと平均を引き上げられません。
13〜14億人と言われる巨大人口を皆ハイテクレベルに引き上げるのは無理でしょうから、これまで「売りもの」であった巨大人口・低賃金労働者が逆に足かせになって行きます。
巨大人口はこれからの時代には足手まといになるだけで、シンガポールのように100万前後のコンパクト人口で優秀人材を集めた方が有利な時代が来ます。
アメリカもニューヨークをシンガポールのような都市国家にして独立した方が有利・・アメリカの格差問題の本質は個々人間の格差に矮小化した砂粒の問題ではなく地域格差・・ニューヨ−クその他の大規模都市国家とその他ローカルの格差でしょう。
これを正面のテーマにすると、もともと民族国家の歴史のないアメリカ合衆国の分裂に結びつくので、メデイアその他文化人が個人問題に誤摩化しているのではないでしょうか?
19世紀から第二次政界大戦までの正義より武力中心の大鑑巨砲主義の時代には、国家組織・GDPは大きいほど有利でしたが、平和=正義が守られる時代になると小回りの利く組織が有利で、今のところシンガポール程度の規模が一番合理的な感じがします。
19世紀型思想に特化したアメリカやロシア中国は、人口を増やし過ぎたので時代遅れの規模の大きさを持て余している・・実は困っているのを格差と称しているように見えます。
この数十年で見てもロシア、中国、アメリカは19世紀型腕力時代の名残にこだわっていて失敗を繰り返しています。
例えばいくらイノベーションを活発化しても・・アップルのように大ホームラン級の新製品開発に成功しても、あるいは金融で大儲けしても、生産の方は賃金の安い中国等の工場でつくるしかないので大量の国民を養うのは無理・利子配当所得しかないから、資本保有しない国民はそのおこぼれに頼るしかない・・寄付や社会保障等の善意に頼る階層が増える一方です・・。
この辺は日本の国際収支の紹介で10年ほど前から書いてきましたが、国際収支の黒字内容が貿易黒字から所得収支に移って来る・・所得収支黒字が基本になると資本蓄積の格差に比例して(利子配当収入のない階層には国際収支黒字は関係がありません)格差が生じて来るのは必然です。
02/11/09 「バブル崩壊後の自己資本比率規制2 05/26/07「キャピタルゲインの時代17(国際収支表2)」前後の連載で、当時の過去10年間の国際収支表を紹介して、この間に貿易黒字の比重が下がり、所得収支黒字が経常収支・約20兆円の黒字の約半分を占めるようになっていること・・海外現地生産拡大で労働による生産収入比率が徐々に下がって行く一方・・利子配当収入比率が上がって来ていると書きました。
当時は約20兆円黒字の半分を所得収支・利子配当送金が占めていることを前提に意見を書いたのですが、18年5月11日(2日前)のコラムに久しぶりに日本の国際収支を紹介しましたが、これを見ると同じく約20兆の総合黒字の内、実に18兆もの、利子配当等の(不労?)所得になっていることが分ります。
こうなると高成長期を経験している間に資本収入層に脱皮出来た階層と資本所得層に参加出来なかった階層との格差が広がるのは当然です。
個人の一生で言えば、バリバリ働ける若い間に資金を蓄えて労働による収入が激減して来る老後には自宅にローンも割り住居費ただで利子配当(民間年金や家賃)収入で悠々自適出来ている人と蓄積して来なかった・アパートの家賃払わねばならない上に預貯金も少ない階層との格差が次世代に及んで来たのです。
この10年ほどでまさに親世代の格差が次世代に及んで来たと言うことでしょう。
この辺は親の家に同居出来る(家賃不要の)恩恵や保有アパートなどを相続出来る都市住民2〜3世と自分で新規取得しなければならない都市住民1世の格差・・その他いろんな角度から喩えば、February 5, 2011,「都市住民内格差7」等で連載して来ました・・。
赤字国債を次世代に負担させるのか?と言うスローガンも「国債保有者から相続する人」と負債を相続するだけの人との格差であって世代間対立の問題ではありません。
各種社会保険赤字問題も同じで、世代間対立の問題ではなく富裕高齢者と貧困高齢者の格差を緩和するためにどれだけ社会的負担するか→結局は富裕層の負担問題です。
これがアメリカでその他先進国で格差問題になっている元凶でしょう。
中国はチャイナプラスワンの挑戦を受けるようになって、民度の引き揚げが急務になって来ました。
ローエンド製品の場合、外資の指示どおり作れば良いだけですが、製品開発となると消費者経験がないと、消費者目線での開発が出来ません。
そこで先ずは内需拡大・・消費経験させるのは正しい選択ですが、それは必然的に貿易黒字の縮小赤字体質に変わって行きます。
国民をレベルアップするには営々と積み立てた外貨準備を取り崩してでも、外貨準備のあるうちに何とかなるのでしょうか?
国民が豊かな生活をしないと質の高い商品を工夫出来ないのですから、先ずは良い生活をさせることから始める・・内需拡大の方向は正しい選択です。
ただ土地成金がイキナリ文化的生活を出来ないように、マネーサプライを増やすとバブル・・不動産転がしに走ってしまうのは順序としては仕方がないのかも知れません。
もしも、外貨準備を食い尽くしてバブルで終わってしまうと何も残らない・・少しは文化受容の方に行く人もいるでしょうが、(そう言う人は文化の成熟した国へ逃げ出し)多くの国民には何も残らない可能性があります。
億単位の人が海外旅行出来ただけでも、何か残ったことになるのかな?
安土桃山文化は世界有数の金産出によるバブル景気によるものだったと言い得るでしょうが、この金の輸出による贅沢が、絢爛豪華な文化を生み出したのです。
この担い手は国民全部ではなくホンの一握りであったとしても、後の時代に大きな影響を与えるのですから、それでも良いのかも知れませんが・・。
中国の場合、一握りの影響を受けた折角の人材が海外に逃げてしまう可能性が高いのでそこが心配です。
当面の国力底上げには結びつかないで終わると、バングラデシュやベトナムミャンマーなどと低賃金競争を繰り広げるしかない・・解放前の14億の貧民が残る・元の木阿弥になる可能性があります。
一方で苦し紛れに国威発揚に励む・・軍事力強化・・周辺威嚇にエネルギーを注いでししまうのは長期的にマイナスにこそなれ何の価値もありません。
ローエンド製品レベル〜セカンドエンド〜ハイエンド製品へと経済底上げの必要なときに権謀術数や軍事力に人材投入が偏ると将来性が限られてしまいます。
兎も角今の外貨準備減少は、将来のために貯金を崩しても息子を大学にやるのと同じで雌伏のときとして頑張るしかないでしょう。
これはこれで正しいのですが、ナケナシの貯金をはたいて都会へ遊学させたのに息子娘らが勉強するか、遊びほうけるかの瀬戸際です。
それを決めるのは数千年単位の基礎レベルの問題です。

韓国バブルの行方1(消費信用の増加)

日本のバブルでは、最後の高値づかみした業者の評価損ともっと上がるから今のうちに買っておかねば・・とけしかけられて早めに買わされてしまった人が多かった・需要先食いの結果その後新規購入者が減って、商売にならなくなったいわゆる不況でした。
エコカー補助金期限やタバコ値上げや消費税アップなど駆け込み需要による先食いをすると、その後の不景気を招くのと同じです。
先食いの結果業界にとって次年度の売上が減少しても、期限前に駆け込み購入した消費者・国民が損をするわけではありません。
正規社員の場合給与も下がらないし・毎月支払額が変わらない・・結局人生最後まで住み続ける予定の人には評価が上がろうが下がろうが、関係のない(自分が数十年以上先に死亡したときに相続財産の評価があがるかどうかだけです)ことでした。
転売目的で損をしたのは業者中心で転売目的の国民は滅多にいなかったでしょう。
中韓の不動産バブルの場合は、国民も企業も投機目的購入ですから評価が下がり高値転売に失敗するとローンを払えません・・これが暗転すると大変です。
政府の誘導によって庶民に転売目的の無理な?借金させてマンション熱を煽っての国有企業救済ですから、(赤字国有企業への追い貸しが100必要とした場合、政府が外貨準備を取り崩してX%を負担し、残りをマンションバブルを煽って建設資材等の需要喚起で国有企業を救済し、国民の借金に付け替えさせた)いつかは、転売目的で庶民に負担させたローンをどうするかの問題が起きる点は国有企業はの追い貸しがいつか清算しなくてはならなくなるのと同じです。
無理な誘導とは、政府系メデイアで株が上がるとはやし立てて国民を株式投資に誘導していた結果、1昨年夏頃に大幅下落になった後に、今度はマンション投機を煽って来たことと内需盛り上げのために金融緩和をを断行したことです。
中国人は投機が三度の食事よりもスキと言われる民族性ですから次々と投機に参入するし、韓国では何回も一種の徳政令を繰り返して来たことからモラルハザードが進んでいますから、金融緩和で借り易くなったことで支払い能力を無視してこの機会に・・・と大勢が飛びついた印象です。
(ソモソモ、韓国では借りたら返す・約束を守ると言う近代合理主義精神・モラルがまだ根付いていない印象で、これを前提にワザワザ「不可逆的合意」と銘打った日韓合意をしても守らないで良いと言う国民意見がまた噴出しているのがこの象徴です。)
折角の金融緩和政策効果が企業投資に回らず・・企業人は合理的訓練を受けていますので、先の見通しが悪いと金利下や融資枠が広がったくらいでは儲かる見込みのない投資しません・・この辺の意見もAugust 9, 2016「金融政策限界9」まで連載したことがあります。
この結果、非合理精神行動100%(勝又氏に言わせれば感情8割)の韓国人の個人負債が急膨張してしまい危機的様相を呈して来ました。
生活苦による消費信用増についてはこの後で書きますが・・住宅投資に集中した債務超過・一面から言えば負債増加に見合って資産が増えているから大丈夫と言う強弁に使われていますが・・大局から見れば不動産バブルそのものです。
この辺は政府としても景気対策として有効なので、中国政府同様に見て見ぬ振りをして来たように見えます。
August 12, 2014「個人金融資産の重要性2(韓国個人負債増加)」で紹介したことがありますが、その後更に負債増加・・ゾンビ企業温存ならぬ個人債務の借り換え増?が続いています。
中国のマンション投機熱の激しさについては周知のとおりですが、韓国も負けていない・・韓国の個人金融負債の内先ず住宅投資に関する負債増加についてhttp://japanese.joins.com/article/485/212485.htmlからの引用します。
「韓国銀行が24日に発表した「2015年10~12月期の家計信用」によると、昨年12月末基準で家計負債は1207兆ウォンとなり1年間に122兆ウォン急増した。前四半期比では41兆1000億ウォン増えた。
年間・四半期とも増加幅は家計信用統計を出し始めた2002年10~12月期以降最大だ。2015年の韓国の推計総人口が5061万7000人である点を考慮すると、国民1人当たり約2400万ウォンの借金がある格好だ。」
家計負債の主犯は住宅担保貸付だ。市中銀行の住宅担保貸付は10~12月期だけで18兆ウォン増え昨年末には残高が400兆ウォンを超えた。相互貯蓄銀行、信用協同組合、相互金融など第2金融圏から借り入れた住宅担保貸付も3カ月間で3兆1000億ウォン増え残高は99兆5000億ウォンに達した。 」
15年の統計ですが、単なる消費信用増加だけではなく、景気対策としての金融緩和による不動産バブルが起きている状況が推測されます。
次は不動産バブルが終末に来て(日本でも住宅ローンが払えなくなるとサラ金系融資が増えます)非銀行系融資が増えている現状です。
http://japanese.joins.com/article/052/226052.html?servcode=100&sectcode=110からの引用です。
【社説】韓国経済の信管、家計負債管理に総力傾ける時 2017年02月22日09時42分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
韓国の家計負債が「過去最大値」を塗り替えたというニュースに私たちはいつの間にか鈍感になっているようだ。だがその数値がどのように構成されているのか開けてみれば憂鬱になる。家計負債の量的・質的な面、そしてその増加速度の面ですべて赤信号であるためだ。所得が足踏みなのに家計負債は2015年と昨年の連続で2桁の急増となった。
韓国銀行の21日の資料を見れば昨年末の韓国の家計負債は1344兆ウォンで再び最大値を記録した。昨年の年間と四半期別の増加額とも2002年に関連統計を出し始めてから最大値だった。10~12月期の場合、住宅担保ローンを含めた家計負債が48兆ウォン近く増えた。これは2012年の年間増加額に相当する。
何より貸し出し需要が銀行圏から非銀行圏に大挙移動した点が尋常でない。与信審査強化で銀行の敷居が高くなった隙に相互金融、セマウル金庫、保険会社、消費者金融のような高金利のノンバンクが活発な営業を通じて貸し出しを増やす「風船効果」を生んだ。ノンバンクは所得と信用が低い社会的弱者・多重債務者の割合が大きい。これらの貸し出しが不健全化する場合、金融不安はもちろん低所得限界階層の生計圧迫→消費萎縮→社会不安が加重されかねない。」
上記のとおり、債務額増加した上に借入先が銀行系から消費者信用系に移っていることが国の支払い能力に危機が迫っていることを表しています。
サラ金金利は、韓国は日本と違って34、9%と言うのですから日本で言えばヤミ金並みです。
こう言う状態が長続きするわけがない・・このひずみが大統領弾劾などのヒステリー現象を招いていると見るべきでしょう。
韓国人にとっては、民意が勝ったと高揚しているようですが・・。
韓国の場合アジア危機以降中進国の罠を逃れるため非正規化を猛烈に押し進めて人件費を抑制して成功したつもりですが、その陰の部分・個人債務ばかり膨張して行き国民消費・内需が盛り上がらなかったのは当たり前です。
内需盛り上げ→アジア通貨危機のトラウマがあって貿易赤字が怖いから・・人件費を抑えて競争力を維持するしかない・中国のように外貨準備取り崩しで国民に配ることも出来ない状態だったと言えばそのとおりですが・・。

消費社会と指導者視点のリスク

指導者の号令一家の経済運営は勢いがありますが、一斉型発展型経済で人件費が一斉に上がった場合・・・全産業一斉に競争力を失うので、入れ替わりに新たに伸びて行く産業がないので大変です。
低賃金を武器に国際競争上優位になっていた点では重工業も軽工業も全ての分野で同じですから、各業界で中進国の罠にはまる前に技術力アップに成功していたホンの何%かの企業以外は賃金アップについて行けなくなります。
例えば全産業で技術アップに成功していた企業が5%平均(しかない)とした場合、残り95%の企業がギブアップになります。
深圳などではバングラディシュやベトナム等との低賃金競争に負けて数年前から何千人規模の大工場の閉鎖ラッシュと言われますが、規模が大きいからマスコミ対象になっていますが、実はいろんな分野での整理・失業が始まっているものの、大量失業者の多くを吸収出来るほどの転職先がある訳がないと思われます。
輸出型産業を縮小して内需型に転換するしかないのですが、未富先老が問題になるのとと同じで、まだ内需が育っていない・・庶民の懐がまだ豊かでないので購買力の厚みが足りない・・不足します。
イキナリ内需転換と言っても生産品の大部分が輸出目的であった結果、輸出を縮小すると企業淘汰が早く進み過ぎる・・膨大な失業が予想されます。
日本が中国など低賃金国の挑戦を受けたときには日本にマザー工場を残して現地生産・・現地工場への部品輸出が残った、・例えばクルマや白物家電工場で言えば部品輸出や技術指導などの仕事が残りました。
中国の場合、自社技術がなく先進国からの技術導入なので、日本企業が第2〜3工場をベトナム等に造れば日本から部品輸出になるだけで、中国工場から輸出するべき独自技術が滅多にありません。
ベトナムやバングラデシュで生産→輸出が始まるとその分100%輸出・生産が減る関係です。
鉄鋼・石炭産業の整理だけで約600万人の失業が予定されていると言われますが(前回2月のG20で大見得を切った?)過剰設備整理公約を実行出来るかが見ものでした。
上記のとおり失速しているのは鉄鋼石炭石化製品等目につく企業だけではないのですから、日々発生している暴動に対する政府の危機感は半端ではないでしょうから、つい我慢出来ずに過大設備廃棄をちょっと進めては、こっそりテコ入れするしかないのが実情です。
実際に耐え切れずに直ぐに金融緩和した結果、5月初めには休止中の鉄鋼業などの操業再開・マンション価格暴騰などの副作用が国際的に(7月23日「中国の権力闘争激化1」に勝又氏の紹介しているフィナンシャルタイムズの記事を紹介したように)取りざたされています。
内需拡大・サービス業への人員誘導と言っても、石炭産業や製鉄所で働いていた人(現場工員)がサービス業(にこやかに接する)に転換するのは容易ではないでしょう。
急激な人員整理を避けるために?国有企業の赤字企業救済と兼ねて(金利下げは人民元下落に繋がるのでこれを防ぐために)この数ヶ月紙幣増発(・・中央銀行への準備預金率引き下げ)マネタリーベースに留まらず社会融資総量(7月28日のコラムに記載)の増加で対応して来たようです。
紙幣増発すると近いうちに人民元が下がると思うのが普通ですから、資金余力のあるコクミン・企業は損しないように急いでドルに変える動きに出ます。
(何千年といたぶられて来た歴史の結果、政府を信用していないので、こうした人民の自己保身能力が極めて高いのが特徴です)
その分外貨準備がザルの底から水が漏れるように減って行きますので、金利切り下げほど直接的ではないですが、時間経過で人民元下落圧力になっています。
中国の金融緩和分(社会融資総量)の大方は、債務の借り換えに使っているので債務が急激に増加していると言われます。
5月15日日経朝刊朝刊4面には、中国政府は景気テコ入れ政策?で、4、7兆元(リーマンショック時に4兆元投資で世界をあっと言わせたので同規模以上)の鉄道・飛行場等の公共投資計画を発表しているものの、不動産投資中心にバブル効果が出ていて、不透明な地方政府債務+融資平台(シャドーバンキング)の債券発行が急膨張している状態が始まっている。
しかし、民間投資は減速していて民間には影響が及んでいない・実需がない・・不動産バブル再燃期待政策?・・「不動産投資依存中国で強まる」と言う大見出しになっています。
中国では、バブル崩壊を先送りするためにミニバブル再燃に持ち込もうと言う魂胆でしょうし、利にさとい国民は政府がテコ入れするならば、株式相場と同様に半年〜一年は相場が続く筈だから、その間に一儲けして売り逃げしようとして再投資に踏み切っている人が多いようです。
恐ろしい国民と言えば言えますが、中国では政府主導によってサブプライムローンの拡大版が起きていてこれが破裂したときに世界にどのように激震を走らせるかが現在世界の重要課題です。
リーマンショックは・・・サブプライムローン利用者と不動産業界→金融業界だけが直接の関係者でしたが、中国の場合、多様な分野の国有企業の一斉過剰生産力→破綻と一緒になっている分が戦前のアメリカ大恐慌とメカニズムが似ています。

消費レベルアップ3→文化発信源の多様化2

世界に輸出出来る消費材(文化を仕込んだ表現)かは消費者の嗜好が決める・・研究者や政府官僚が決められないのですから、消費者レベルアップが重要です。
税で吸い取って政府が計画的に投資する分野・・こう言う大学を作りこう言うセンス=既存センスを教えればいいと言うものではありません。
例えば作家養成大学が世界に1つもないと思われますが、仮にあっても書き方の技術を教えることが出来るだけで書く内容を教えるのでは背理・・読む方は有名作家とそっくりの内容を読みたくありません。
その点割に楽なのは、お茶などの芸事や絵画、彫刻、料理、俳諧、デザイン学校その他は大先生に習って一応の水準まで真似出来るようになれば、一人前のお茶の先生、料理人やイラストレーターらしくなれる点では、割に楽な分野です。
客は、大先生とそっくりの料理を作ってくれれば十分満足ですから・・家元や学校制度は、一人の大先生がいてもその周辺以外の国民の多くが恩恵を受けられないのでこれを全国に行き渡らせる普及版を大量に拡散させるには便利です。
師匠のまねごとでも古くは都にある絵画はこう言うものか、仏像とはこういうもの、家が立派になって来ると座敷を引き立てるお花の活け方とはこういうもの立ち居振る舞いの型を普及させるのは良いことです。
全国どこへ行っても駅ビルには全国展開のレストランがあり、デパート支店やチエーン店が展開しているのは、この現在版です。
最近はやりの美術系巡回展もこの一態様でしょう。
日本では早くから家元制度が発達したことが庶民レベルを引き上げるのに大きな役割を果たした・・全国でこれを支える需要があったことが重要ですが・・と思われます。
全国に国分寺、国分尼寺・・戦後で言えば各県に1つの国立大学を作ったのと同じ効果があったでしょう。
御陰で日本人は末端まで行儀作法が行き届いた社会になっていて、文化受容能力の高い社会になったのでしょう。
その先のレベルを求める草の根のお宅系社会は、このような基礎底辺の広がりがあってこそ生まれるものかも知れませんので学校制度の普及は重要です。
ただ、学校制度は料理などの基礎になる一定の決まりを教えることが出来るだけで、創造自体は個人の能力にかかってきます。
今や、一定の文化が行き渡った結果、あちこちにニキビのようにお宅系文化が吹き出して来た状態・・マサに底辺層を厚くして来た成果ですが、今後その先のお宅系の型を教えるような仕組みづくりは無理があります。
これに応じた「型」を工夫することが可能としても、消費者が画一的「型」売れ筋を売りつけられても受入れなくなっている多品種時代ですから無理があります。
大量消費の代表・・アパレル業界が大変なことになっているのも、このような消費変化の結果でしょう。
全国展開のデパート・スーパーで1つの流行スタイルを数十〜百万単位で大量に売りつける商法は今後無理・・1デザイン数万人規模の顧客で足りるネット販売の時代が来るとデパート時代にその年の流行スタイル(有名デザイナー数人程度の作品)が10数種類程度で済んだのが、ネット時代には、名のない多くの作品・万単位にのぼる多様なスタイル・・ちょっとした気の利いた少量品に分散して行きます。
我が家でもここ何年か前から、唐津のある作家(まだオヤの域に達していないようですが気持ちの可愛い跡継ぎ)に注文して我が家風の陶器を順次作って頂いて、すごく満足しています。
この先一定レベルに達した消費者を満足させる製品を作れる技術者を養成する教育システムを(明治以降の学校システムが成功したのは欧米の技術修得目的だったので効果が高かったに過ぎません)巨額予算を投じて作って行くのは無理です。
今後は、上記のような小さな釜での徒弟奉公が必要な印象です。
今後は生産力競争から、消費力競争社会になるとした場合、新たな消費文化を先導し(ウオークマンに始まり最近のポケモンのような)新たな消費に必要な資材の先行生産力・・その先行者利益獲得競争すべきです。
ウオークマンのヒットに関連しますが、ソニー往年の輝かしい躍進の原動力は、盛田氏に至る創業世代が文化的に高度な素質を持っていたことが大きな要因だったと思われます。
その後一流大卒のエリートを大量に入れた第2世代経営者以降業績が冴えない・・最近復活したと言っても金融中心あるいは、買収したハリウッド映画中心に稼ぐようになっているのは寂しい限りですが、正に象徴的経過と言うべきです。
学歴エリ−トは(文化遺産継承比率が低い)中間管理職出身に偏り勝ち・・官僚が文化発信を担うには無理があることを肝に銘ずべきです。
多くの鉱工業製品・・必需品でさえも商品の最後の仕上げに遊び心がどこまで反映されているかが決め手になる時代には、政府が税を投入する大学や国立劇場・オペラ専用劇場などのインフラを用意して、方向性を教える従来型ではどうにもなりません・・。
4〜5日前の日経新聞では国立劇場の果たした役割と今後の課題・・歌舞伎・文楽などの後継者不足問題を書いていました。
私は国立劇場が出来た直後から数多く足を運んで来たので、関心があって読みましたが、学者が議論してどうなるものではない・・消費者が喜び、演し物に人気があれば、後継者が殺到?するし、そうでない限り「政府補助があるし、将来人間国宝にしてくれるぞ!」と言うだけでは次世代俳優になる応募者が集まらないでしょう。
要するに文化の消長・・存続は消費者が決めることです・・この意味では、橋下前大阪市長が消費者の支えない文楽予算を減らすと言ったか?の問題提起は意味があります。
日本の文化は世界中の文化とは違い、宮廷文化から生まれたのではなく、全て庶民発祥が特徴です。
政府主導社会ではありません。
遣唐使前後の古代と明治時代の外国の進んだ文化を受入れる時代では政府主導・・早く全国普及させるためには、国分寺制度や学校制度が有効・・これが一旦普及するととその先の工夫・・独自文化はいつも庶民から文化が起きて来た社会です。
独自性があってこそ世界の新製品需要を主導出来ます。

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