明治民法の養子縁組1

将来的には子育ては社会全体の責任にして行くべきだと言うのが私の持論(その時には父親どころか母親の関与も縮小して行く社会)ですが、(冷凍保存した優秀な精子の試験管ベビーをその時代に必要な数だけ受精させて一定段階まで育ってから誰かが配給を受けて育てる・・こうなれば結婚制度が不要になってしまうでしょう)そうした時代が来れば自分の子だから育てると言うのではなく、誰の血統でも預かって育てる時代になれば、まさに血統の有無などまったく問題にならない時代が来ます。
子連れの母子と一緒になりながら連れ子の食費を出したくない男は、好きなときだけペットに餌をやって後は放りっぱなしの無責任な買主みたいで、そんな男はそもそも女性と一緒になる資格がないと断じても社会常識に反しない筈です。
前回書いた血統に関係なく子供を預かって育てる時代が来ても育てる資格のないヒトです。
これを防ぐためには養子縁組制度(欧米では子育てのための養子として定着している感じです)がありますが、如何にも技巧的過ぎるばかりか、我が国では歴史的に大名や武家のお家断絶・・相続権喪失を防ぐために相続制度や家の格式を擬制する関連で発達して経緯もあって、(子を育てるための養子の歴史がないので)これを利用する夫婦は今でもあまりいません。
江戸時代の家禄制度がなくなった後の明治の民法でも、家を継ぐ・相続のための養子であることが露骨に現れているのが以下の条文です。
明治民法839条では推定家督相続人たるべき男子がいるときには、男子の養子をとることが禁止されていたのは,親のいない子に親をあたえる制度ではなく、相続目的にしか養子があり得ない前提で法制度が出来ていたといえます。

民法第四編(民法旧規定、明治31年法律第9号)
(戦後改正されるまでの規定です)
  第四編 親族

第八百三十九条 法定ノ推定家督相続人タル男子アル者ハ男子ヲ養子ト為スコトヲ得ス但女壻ト為ス為メニスル場合ハ此限ニ在ラス

民法第五編(民法旧規定、明治31年法律第9号)
第一節  相続

第九百六十四条 家督相続ハ左ノ事由ニ因リテ開始ス
 一 戸主ノ死亡、隠居又ハ国籍喪失
 二 戸主カ婚姻又ハ養子縁組ノ取消ニ因リテ其家ヲ去リタルトキ
 三 女戸主ノ入夫婚姻又ハ入夫ノ離婚
第九百七十条 被相続人ノ家族タル直系卑属ハ左ノ規定ニ従ヒ家督相続人ト為ル
 一 親等ノ異ナリタル者ノ間ニ在リテハ其近キ者ヲ先ニス
 二 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ男ヲ先ニス
 三 親等ノ同シキ男又ハ女ノ間ニ在リテハ嫡出子ヲ先ニス
 四 親等ノ同シキ者ノ間ニ在リテハ女ト雖モ嫡出子及ヒ庶子ヲ先ニス
 五 前四号ニ掲ケタル事項ニ付キ相同シキ者ノ間ニ在リテハ年長者ヲ先ニス
2 第八百三十六条ノ規定ニヨリ養子縁組ニ依リテ嫡出子タル身分ヲ取得シタル者ハ家督相続ニ付テハ其嫡出子タル身分ヲ取得シタル時ニ生マレタルモノト看做ス

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