マイホーム主義の終焉2

我が国の専業主婦層(団塊世代の前後15年くらい?)が豊かな生活を必須の前提としながら、夜中に寝に帰るだけの夫を非難して不満を募らせていた・・これが熟年離婚に結びつき、あるいは女性が外に働きに出る動機になっていたのですが、これは矛盾した願望に基づいていたと評価出来ます。
アメリカのまねをするのは無理だとすれば、貧しくともゆとりのある(老荘型の)生活を選ぶか、稼ぐ方(時間に追われる生活)を選ぶかとなって、多くは猛烈に稼ぐ方に傾斜して行き我が国の高度成長とその後に続く経済大国が実現出来たのです。
このために、昭和40〜50年代には時間泥棒とか老荘型生活へのあこがれをテーマとする話題が多く出て来ましたが、働き過ぎに傾斜する社会心理の葛藤を表していたのです。
研究職や専門職(例えば弁護士や医師その他)では、かなり早くから女性も含めて夜昼なく研究室や事務所へ出入りしたりしていて、家庭生活はおまけみたいになっていましたが、(エリート以外では芸能界は昔からです)今では研究職にとどまらずちょっとした専門職・高学歴層ではみんなそうなっていて夫婦であることそのものの意味が問われる時代が来たと言うことです。
我々の知っているその他の専門職では(学者や法律家その他専門家と言えるかどうか境界的な各種業界まで裾野が広いですが、おおむね)高学歴層の女性が結婚を機に隠退しないでそのまま活躍している(出産しないまま)そのためには夜遅くまで職場に張り付いているのが普通になって来ました。
ただし不思議なこと(今のところ私に原因が分からないだけ)ですが、医師界に関しては家庭に軸足を置く女医さんが今でも多いらしく、一人前になるまでの猛烈修行はするものの、多くの女医さんが結婚・出産を機に引退する傾向にあって、せっかく巨額の国費をかけて養成した医師不足が社会問題になっていますが、これは例外でしょうか?
専門職の中で医師だけが何故例外になるのかと言う疑問ですが、医師同士の結婚が多いので、妻が働かなくとも豊かな生活をするのに困らない以上は、マイホームの夢をそのまま追えるのだからその夢を追いたいと言うことでしょうか。
特別な使命感なく勲章的に受験した女性にとっては、めでたく資格を取得し且つ高収入の医師と結婚してしまえば後は家庭でゆっくりしてその成果を享受したくなるのは当然(の権利)でしょう。
最近の若手女性弁護士・裁判官・検察官が結婚しても出産をせずに夜遅くまで働いているのは、(その結果40代まで子供のいない夫婦が圧倒的多数と言えます)元々こうした資格取得の動機が大分違うことに加えて、その基礎的環境としては若手医師ほどの高収入が保障されていないことが大きいのでしょうか?

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