米国の高家賃5とホームレス(IT化)1

ここでいよいよホームレス問題に入ります。
https://www.chosyu-journal.jp/kokusai/6755によれば以下の通りです。

ホームレス大国アメリカ」の現実 世界覇権どころではない国内の疲弊
国際2018年1月20日
賃金は減り 住宅価格は暴騰

㊤路上で寝るホームレス(ニューヨーク)、㊦行政が設置したシェルターベッド。入居待ちが続いている(2017年、ロサンゼルス)

・・・西海岸を代表する都市ロサンゼルスは・・・前年比で20%増加した(支援機関「LAHSA」調査)。18歳から24歳までの若年層ホームレスは64%も上昇しており、「ロサンゼルス短大地区の学生の5人に1人はホームレス」という調査結果(ウィスコンシン大学)もある。
・・・昨年11月、シカゴ大学が発表した報告書では、ホームレス状態にある学生が全米で少なくとも420万人にのぼり、そのうち13~17歳は70万人、18~25歳が350万人という衝撃的な数値が物議を醸した。
また、約46万人の学生を擁するカリフォルニア州立大学(全米最大)が委託した調査によると、同大学では10人に1人にあたる約5万人の学生が特定の住所を持たないホームレス状態にあり、さらに5~4人に1人にあたる10万人が食べ物の確保ができていない。

1大学だけで学生5万人もホームレスとは、日本では想像もつかない現状です。
ハングリー精神から新規イノベーションが生まれるとは言われますが・・・???。

・・・ホームレス増加の主な理由は、工業の機械化による解雇や病気による失業の増加、実質賃金は増えず家計収入は減っているのに進む物価上昇、とくにリーマン・ショック以来続く住宅価格と賃貸料の異常な高騰である。
・・・(金融大規模緩和・・稲垣注)それによって住宅金利は下がり、住宅への投資を促進したが、余剰マネーがふたたび不動産市場に投機する流れをつくり、不動産価格はリーマン・ショック以前をしのぐ天井知らずの高騰を見せている。
・・・矛盾が集中したのがIT産業で急成長を遂げたシリコンバレーを抱える西海岸で、全米で進む不動産市場のバブル化に、企業進出や労働人口増加による需要増大という条件が加わり、住宅価格は高いところで年平均20%も上昇。高級住宅に暮らす人人がいる一方で、低価格帯でもワンルームの家賃が3000㌦(約33万円)にもはね上がったため、多くの人人が住居での生活を諦め、路上生活をしながら働いている。
「更新手続きでいきなり家賃が500㌦(5万5000円)も上がった」「年収700万円稼いでも家族を養うのが難しい」というほど異常な高騰が家計を襲い、空き地や川縁にはテント村ができ、道路に連なる宿泊用の車両が急増した。時給15㌦(1650円)程度の所得ではフルタイムで働いても、とても2000~3000㌦もの家賃は支払うことはできない。いまや「ホームレス=失業者」という概念は過去のものとなり、工員やショップ店員、技師、教員までが路上や車上生活をしながら職場に働きに出て、シャワーを浴びるためだけにスポーツジムの会員になっている(AP通信)。

19日にアマゾン第二本社誘致運動を取り上げましたが、以下に続く文章によれば、アマゾンの本拠地では全米最高のホームレス発生という実態が背景にあることが分かり分かります。

グーグルやアップルなどハイテク企業の本社が集中し、国内でもっとも平均収入の高いシリコンバレーの大都市が、米国最大のホームレス地帯となっている。
・・・アマゾンやマイクロソフトが本拠地を置くワシントン州シアトル(人口70万人)では、ホームレスが1万人をこえて過去最大を更新し、ホームレス人口が全米ワースト2位になった2015年には緊急事態宣言を発令した。人口が増えた反面、住宅価格が年平均10%上昇し、賃貸価格も六年間で57%も上昇しており、多くの一般家庭が家を失った。「好景気」によって富が集まり、経済活動が盛んになったのは数%の上流層だけであり、多くの人人は低賃金労働のもとで住む家すら失って社会の枠組みからはじき出されている。

以上によれば、ピッツバーグ等製造工場の盛んであった地域衰退・・ラストベルト地帯ばかりメデイアが取り上げていますが、もっと問題なのは高度成長している成功地域でホームレスがどんどん生み出されている状況です。
昔のラッダイト運動の場合、製造業の発展で農奴に近い小作人が中間層に脱皮できて収束できたのは、先進国がこの技術を囲い込み世界の工場として世界中から富を収奪できていたからです。
先進国がマルクスの御託宣のとおり矛盾激化しないで後発国ロシアや中国で矛盾劇化して共産革命や動乱が起きたのは輸出受け入れ国の地位になっていたからであって偶然ではありません。
先進工業国は、先進技術独占による高賃金・中間層の厚み構築・社会の安定・未来への希望社会を作り上げていたのですが、これが後進国を市場とのみ位置付けてきた収奪の仕組みによっていたにすぎません。

米国の高家賃(収益還元法に頼る危険)2

日本は武士の台頭以来約1000年の間、観念論でなく実務に裏打ちされた合理的精神を大事する習慣を身につけてきました。
それだけに現場重視・実務に裏打ちされた意見以外には重きをおきません。
朝鮮半島では欧米の言う通りに実社会無視で法制度をどんどん近代化しても、いわゆる「恨の文化」・ねっとりした人間関係はそのままです。
あらゆる場面の意識実態が古代意識のまま日本支配が始まるまで温存されたままでした。
明治維新当時の朝鮮族が中国〜中国が日清践祚で負けると今度はロシアになびき、戦後は米国そして次の大国になりそうな中国に露骨になびく状態を事大主義と批判するのが普通です。
それは古代意識では強いものの専制支配に従うのが処世術として最善であった経験意識を現在にそのまま引きずっているからです。
古代意識をそのまま引きずっている朝鮮族・・・北朝鮮の専制支配体制の方が貧しく、自由がなくとも国民能力相応で国民に不満が少ない・・ストレスが少ないように見えます。
同じ朝鮮族の歴史を持つ韓国では、戦後米軍占領による上からのいきなりの民主化で戸惑っているうちに、日本の賠償に代わる巨額援助で高度成長に入り、その歪みが癒えないうち通貨危機に見舞われました。
IMF支配を象徴とする文化改造の直接支配をうけて民情無視の刑事手続や民事その他で欧米価値基準による乱暴な大改正がドシドシ行われ(戸籍制度も廃止になりました)て来たので、事大主義的価値観によれば、・・・2月8日に書きましたが、日本を法制度で追い越した自信に繋がっているようです。
韓国が制度だけ空回り状に近代化しても、古くから連綿とつながる意識は簡単に変えられない・・民情無視政治乱発プラス超格差社会のストレスが溜まりに溜まっているのは、このような背景によります。
今また、政策誘導により、2019-2-11「超格差社会・韓国4(住宅建設と個人債務膨張1)」で引用した通り(赤ちゃんまで含めて5000万余しかいない人口のうち1900万人以上が債務者と言うのですから)庶民がほぼ全員返し切れないほどの債務を抱える事態になっています。
不動産価格がいくら高騰していても家賃と価格が整合していれば良いかの議論の妥当性・・アメリカの事例に戻ります。
以下で紹介する米国の高額家賃化→ホームレス増加の事例は、IMFの実家ともいうべき米国でIMF的観念論・皮相な理論さえ整合していれば良い?という経済論が幅を利かしすぎた結果、「罠にはまったのではないか?」という視点で紹介していきます。
仮に価格決定の仕組みが経済理論的に整合していても生活費の大半が家賃やローンに消えていく社会・普通の労働者の給与で払いきれない・・一般人の多くが路上生活しかできない社会であれば、それは不健全で持続性(その理論はどこか間違っています)がないでしょう。
韓国のように子供の予備校等への出費に追われて生活が疲弊し、老後生活費がなくなり、老人自殺が増えたり予備校資金を借りた借金返済のために売春婦が増える社会もどこか間違っています。
韓国民が、教育費にかけるお金が諸外国よりも大きいとしてもそれが文化レベルをあらわしているとは思えません。
中韓では大学進学率が異常に高いことも知られていますが、それだけの受け皿のある産業構造ならば意味がありますが、産業構造無視で見栄のためにで増やしても就職先がないので中国では大量の蟻族を生み、韓国では反日運動しながら日本に来て就職運動し売春婦をするしかない状況に陥っているのです。
物事は一定のバランスを前提にしていて、「こういうものにこれだけお金をかけられるのだから、その他生活水準も推して知るべし」という基準でなりたっています。
お米その他の抜き取り検査は、一部の品質が全体を表すことが多い前提ですし各種テストも、このレベルのことを知っているならば他のことも同レベルで理解しているという推定でなりたっています。
(昨日書いた統計・サンプル調査もその原理の応用です
試験問題が漏れたりヤマ勘がタマタマ当たった場合には、この前提が崩れます。
教育費だけあるいは家賃だけ突出して高いのは、出題問題だけ特化した勉強をしているようなもので、社会全体の経済力や文化レベルを表していません。
韓国自殺率に関する本日現在のウイキペデイアです。

2010年のWHO統計では、人口10万人あたりの自殺者数で世界1位となった[4]。韓国の死因に占める自殺は過去10年間で倍増している[5]。韓国の場合、高齢者に自殺が偏っており、60歳以上の自殺率は、2009年は10万人あたり68.25人、2010年は69.27人と極めて高く、その背景には高齢者の生活不安が解消されていないことにあると考えられている[6]。

高齢者の生活苦は年金制度が充実していない前提だけでなく、壮年期に子供の世に教育費にお金がかかりすぎる点にあると言われています。
住宅費の高騰に戻ります。
5〜6年前に香港勤務の知人が会社借り上げマンション(日本の普通のマンション)家賃が50万円だったのが、いきなり100万円に上がったので会社負担とは言え狭いところに引っ越したと聞いたことがあります。
米国などではワンルームで月30万前後、ちょっとした所帯持ち用だと4〜50万円という噂をよく聞きます。
大都会では、普通の労働者は家賃を払ったらそのあとは食うや食わず・・ホームレスに転落する直前・スレスレ生活にはまっている人が増えている大変な生活が始まっているらしいですが・・。
日本で普通の人が路上生活しなければならない社会になるようなことを放置できるでしょうか?
こんなに高い家賃が米国、香港、シンガポール等では普通にあって、経済論理的に可能なのでしょうか?
以下紹介するカラクリ?によれば、収益還元法を逆手にとって、家賃をあげれば住宅価格を上げられるという逆張り仕組みらしいのです。
住宅価格が上がればその価格に還元利回りをかけると自動的に家賃をあげられる仕組みカラクリ循環的に利用しているように見えます。
強者による一方的値上げが抑止されている・正常家賃相場の国であってこそ、賃料を基準に不動産価格の高騰への抑止力を前提にして正常価格とバブルの違いを判断できるのですが、強者の論理で「一方的値上げ通告→嫌なら出て行け」という契約自由の原則を悪用できる社会では、賃料相場は日本人の考える社会的正義にかなった相場形成力を失っているのではないでしょうか?

統計「不正?』騒ぎと性悪説の法家思想1

従業員500人以上の大企業調査手法の変更は今の内閣が始めたのではなく、04年から東京都調査分からはじまりその後大阪などに広がっているというのですから、現場工夫で合理化していった・・規則あるいは法改正かの必要性に気付かなかった可能性さえあります。
(私が知らないだけか不明ですが)全数調査や訪問方法などの末端ルールが法の定めになっているとは想定しにくいのですが、政令か省令か、あるいは細則?要綱?ガイドラインなのか主務官庁である総務省の通達に反していたのかさえメデイアははっきりさせていませんでしたが、2月14日日経新聞朝刊5p焦点②には、調査方法変更には総務省の承認を求める義務違反でないかの書き方が出てきました。
以下素人意見ですが、元々統計や世論調査はサンプル調査が原則と思われますが、全数調査ルールがいつ決まった手法かの報道がないのですが、例えば地方県で五百人以上の企業が2〜3社しかない場合に1社だけのサンプルで2〜3社平均を出すのでは統計的意味がないので全数調査にした意図がわかります。
例えば銀行とスターバックスの2社の場合、銀行員給与を調べて、スターバックス店員給与を同率で推計計算するのは無理があるでしょう。
ちなみに現時点の500人以上企業数の県別統計をネット検索するとデータが古いですが、以下の統計が出てきます。
http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/kihon/kihon_eikyou/pdf/02_2_chosakai_todoufuken.pdf

図表13都道府県別従業者規模別企業数図表
(備考)総務省・経済産業省「平成24年経済センサス-活動調査(企業等に関する集計産業横断的集計)」より作成。

表が大きいので引用を省略しますが、東京神奈川大阪愛知福岡等を除くと千葉でも10社しかなく青森は1社しかなくその他は概ね2〜3社しかありません。
ところが経済成長によって世界企業(東京等の大都市集中)が数え切れないほどになっている現在全数調査は物理的に無理になってきたし、対象先が千社以上もあれば業種ごと(同業種の賃金傾向はほぼ横並びです)のサンプルを作れるので偏る不都合はありません。
報道によれば東京都だけで現在約1500企業もあるというのですから、全数や全戸戸別訪問(大手の場合訪問してお願いして(お茶を飲んで)帰るだけでその場で聞き取れる(一定期間経過後もらいに行くのかな?)ものではないし、本社担当者と面談しても、何(雰囲気?)が分かるか不明でその割に手間がかかり過ぎて非効率なのは誰の目にも明らかです。
ここで言いたいのは政争の是非ではなく、昔から日本社会は理念で一刀両断でビシッと末端まで貫徹していく怖い社会はなく、現場の必要に応じて緩やかななし崩し修正していく社会であったということです。
革新系の主張は秦始皇帝に始まる専制支配体制強化に役立った法家の主張のように理論だけで貫徹・解決しようとする傾向があり、(有名学者の動員大好きです)理論どおりでないのはどこかに邪(ヨコシマ)な癒着?「不正」があるはずというスタンスによる政権追求パターンですが、不正を前提にした観念的主張が日本の社会実態にあっていないので国民支持が広がらないのです。
メデイアは頻りに「統計不正は国家根幹の政策を誤らせるから大罪だ」という大上段議論を展開していますが、東京、大阪等のコスト削減策が統計を歪めたのか?の実態議論があまり見えません。
出回っている議論を見た印象では、サンプル調査した以上実数ではないから・・例えば3分の1しか調査しないならば、実数値に直すには3倍する必要があるのにそれを怠っていたから、(大手企業の賃金が高いのに「その人数がすくなく出ていた)平均賃金が実際より下がっていたので統計数値を歪めたということらしいですが、それは東京都が3割のサンプル調査に切り替えるのと同時にその計算方法をセットでしなかったミス(法理論ではミスも違法の一部ですが「不正」とは言いません。
あたかも政治が絡んだ不正であるかのような内閣追及騒ぎですが、どこの政府でも賃金が下がっていると発表したくないのが普通ですから、敢えて時の政権が賃金統計を低く出す奸計をめぐらしたと思う人は皆無に近いのではないでしょうか?
先秦時代の法家の思想・・元々性善説に対する性悪説から始まっているのが法家思想ですから(日本は財布を拾ったらほぼ90%以上の人が届ける性善説の社会とすれば、届けない10%の人ももちろんいます。
懐に入れてしまう少数派の人にとっては「庶民が自由な判断でやって正しいことなどあるはずがない」・「決裁なしにやること自体が不正」という思い込みがあるのは仕方がないのでしょうか?
高学歴の研究者意見に従うべきで現場工夫を敵視する傾向が見えます。
野党や文化人やマスメデイアは「良いことをしても役割外のことをすれば処罰する法家的思想」・・形式論・・その根底に性悪説に基礎を置いている印象です。
彼らは権力批判道具として民主主義や自由を主張しますが、内面では他人の自由を認める懐の深さがない人の集まりではないでしょうか。
中ソ等の専制的独裁制を尊崇する所以です。
米国の場合民主主義というものの、文化の底が浅いというか、エリートや強力なリーダー重視社会で基本的に庶民の知恵を尊重する歴史がありません。
権力構造は国民間の猜疑心・「性悪説」を前提にしていますし、国民も規制に違反さえしなければどんなに家賃を引きげようと金融でいくら儲けようと勝手」(暴利は許されない意識もない)という論理で突き進むようです。
この結果一握りが巨額収入を得て多くの人が路頭に迷おうとそんなことは法に触れない限り気にしない社会になっているようです。
アメリカは民主主義国家を標榜していますが、「人民による人民のための・・・」というリンカーン演説は政治的レトリックに過ぎないとみるべきでしょう。
その結果、ノーベル経済学賞をもらった?金融理論そのまま、シリコンバレー等で高額所得者が高額で住居を購入するとその取引事例を基礎にした高額値上げが従来の居住者に通告され、払いきれない古くからの居住者が路上生活者に転落していく流れが起きているように見えます。
日本のように「そうは言ってもね・・」という修正要素(日本の各種改正が遅々として進まない・民族社会に応じた進歩にはこれが一番必要)が働かない社会です。
私が常々批判している「秀才が国を滅ぼす論」の一場面です。

超格差社会・韓国5(住宅建設と個人債務膨張2)

以下は」16年までのデータで約2年遅れですが、韓国の家計債務のリスクに関する意見が見つかりましたので引用します。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as180126.pdf

No.9, 29 SEPTEMBER 2017
韓国の 2016 年住宅着工実績
○韓国の家計債務は近年拡大基調にあるなか、特にノンバンクにおいて家計向けを中心に貸出の伸びが高い点がリスク。ただし要注意先債権比率は銀行・ノンバンクともに低下傾向 ○過去の債務拡大局面とは異なり、近年は消費を目的とした家計の借り入れは限定的で住宅関連の債務の割合が大きく、家計債務の拡大が抑制されても個人消費の大きな下押し要因とはなりにくい ○アジア通貨危機時のような大幅な住宅価格下落・金利上昇が起これば、低所得層を中心に家計のデフォルトリスクが大きく拡大するが、リーマンショック時程度のレベルであれば影響は限定的
1.はじめに 韓国の家計債務は近年急速に拡大している。IMFのレポートによると、家計債務がGDP比で36~70%の水準にある間は、長期的な1人当たりGDP成長率に対してプラスの影響をもたらすが、それ以上高くなるとプラスの影響が弱まり、徐々にマイナスの影響に転じていくとの分析がなされている1。韓国の家計債務は名目GDP比90%以上に達しており(図表1)、経済にマイナスの影響をもたらしうる水準に近付いているとみられる。また同レポートでは、家計債務の増加がどのようにマイナスの影響をもたらすかのメカニズムが示されている

ところで上記論文は重要な点を書いています。
リーマンショック級の危機が来なければ良いのではなく、(昨年の米国金利上げの影響をこのシリーズで書いている・・ちょっと金利が上がっても払えるの?問題の他に)住宅供給が際限なく増え続けることはないのでいつか需要の面からも限界が別に来るはずです。
ピアノも車も空調設備も一定の普及段階が終われば、(アップルの変調はまさにこれによります)更新需要しか無くなるのが基本原理です。
韓国の住宅着工数の推移の表が上記論文に出ています。
韓国の 2016 年住宅着工実績
1.構造別の建築着工実績
韓国の 2016 年国内総生産(GDP、実質基準)は建設投資を中心に固定投資が好調を示したが、輸出不振のため、2015 年と同様に 2.8%の成長にとどまっている。 好調な建設投資により、同年の建築着工数は 231,971 棟にのぼり、前年と比べて 6,031棟が増加した。
年別着工数数の表を見ると、2005年 114,55が2016年 231,972棟で11年間で約2倍になっています。
2007年 179,01〜2013年が187,54まではほぼ安定的ですが、13年から16年までの3年間でいきなり23万棟ですから政策誘導的急増だったのは確かでしょう。
内需といっても国民に消費する資力がないので、住宅建設(借金してでも消費するので)による中国同様の不況先送りを兼ねた内需振興策でした。
建築物の用途別の表で見ると
2005の合計が 114,554 棟で内、住宅用が32,710で3割弱、工場や商業用あるいは教育用などその他合計が約8万棟で約7割あまりでしたが、2016年には合計 231,972で、住居用が約5倍の155,16ですから、住居用が約7割を占めていて工場や商業用等その他は2005年とほぼ同様の約8万棟のままです。
サムスンの国外展開の例を見たように企業等は内需振興策と言われても無用な商業ビルや工場を国内に建てなかった・・この間国内生産が空洞化した穴埋めに日本のような財政出動・・政府債務を増やさずに、家計に負債増加を求めた結果でしょう。
このシリーズでは、2月4日の「債務膨張と債務負担部門・中韓」以来、「債務を社会内のどの部門に付け回しているかが重要」という視点で書いてきましたが、韓国では最も弱い庶民に「自宅を持てる」という夢を煽って、巧妙に債務負担をせて内需振興・経済破綻を防いできたことがわかります。
中国の場合もこの点は似ていますが、いじましい夢を売るのではなく投機熱で2戸目3戸目を買い求める文字通りのバブル現象ですが、韓国庶民の場合は日常消費を切り詰めても住宅が欲しいという購入ですから、堅実といえば堅実ですが、目一杯借りている以上金利が上がり始めれば持たない点は同じです。
上記表によれば、この3年間で需要の先食いが起きているので、金利優遇等の政策がなくなれば需要が急減するでしょうし、逆に国際的金利上昇の流れに引きずられると耐えられなくなるリスクです。
上記論文は専門家の意見ですので「素人が異論をいうのはおこがましい」ですが、リーマンショック級の外部環境によるのではなく、需要先食いによる反動減と借金過多による消費減→国内不況による自律的問題を論じるべきです。
ただし、以下の論文では中国、韓国の住宅価格は家賃収益還元内に収まっているのでバブルではなく外部要因による急激な利上げ(少しの追随利上げ程度は景気循環の範囲?)等がなければ価格調整が起きないのではないかという意見?データを示しています。
https://www.smtb.jp/others/report/economy/64_1.pdf
三井住友信託銀行 調査月報 2017年8月号
経済の動き ~ 低金利下の各国住宅価格と家計債務

https://screenshotscdn.firefoxusercontent.com/images/e28350b0-e6e8-4ae0-939e-8e9963e451e0.png

リーマンショック等外部危機場合、逆に金利下げその他の内需振興策を取るので、却って一息つける方向になるのではないでしょうか?
素人目には中国はバブルが弾けそうになると混乱を恐れた救済の繰り返しで現在になったように見えます。
まさに卵を積み上げすぎて「累卵の危機にある」状態で米国と経済戦争を戦えるのかが素人世界の関心でした。
上記論文によれば、賃料相場の範囲内にあるので中韓の住宅建設ラッシュは「社会の発展に遅れていた分を取り戻しただけ」(数年事業拡大に忙しく自宅新築の暇がなかったのがようやく落ち着いて自宅も立派にできるようになった状態?)という解釈になるのでしょうか?
そういう目で見れば遅れて海外旅行を楽しむような遅行指数と言えなくもありません。

超格差社会・韓国2

韓国では財閥に就職し損ねた人材は、行き場をなくし日本へ押し寄せたり海外脱出や国外売春に走るのでしょうか?
・・超格差拡大の結果、現在大卒の日本への大量就職運動や売春婦輸出に見られる激しい格差社会を生み出していると思われます。
https://www.sankei.com/world/news/180907/wor1809070001-n1.html

韓国人の日本就職急増…2万人突破 雇用環境悪化で韓国政府も後押し、目標は「今後5年で1万人」
2018.9.7 07:00

反日感情を率先して煽っている政府が、日本への就職活動を後押しすると言うのですから異常です。
格差拡大で栄耀栄華を尽くしている支配層(主として財閥)に対する格差社会化に対する国民不満が積もる一方・・ピーナッツ事件やセウオール号沈没事件その他何かあるとすぐ大規模騒動に発展する下地です。
経済が拡大基調の時には庶民の懐も潤っていたのでそれほどの不満がなかったでしょうが、アジア通貨危機以降庶民への分配が減ってきたことが大きな違いです。
特にサムスンその他財閥も生産基地を中国や東南アジアに移転しつつるあるので、サムスン等財閥企業の成長がそのまま国内労働者の所得向上に反映しなくなっている点も無視できません。
アメリカの例で言えば、アップルの儲けは以下の通り巨額です。
https://www.apple.com/jp/newsroom/2018/05/apple-reports-second-quarter-results/

2018年5月1日、カリフォルニア州クパティーノ、Appleは本日、2018年3月31日を末日とする2018年度第2四半期の業績を発表しました。当四半期の売上高は611億ドル・・

4半期の売り上げが611億ドル=年間2450億ドル・・円でいえば約30兆円と巨額であっても、その生産基地が中国にあるし、部品供給も多くは日本企業が担っていますので、米国民への売り上げ増や利益の恩恵は金融資産保有者にしか還元されません。
生産工場の国外移転が進み国内工場が減っていく一方では、労働者にとっては逆に職場が狭まる一方です。
この結果、工場系労働よりも低賃金のサービス業への移動が起きているので、失業率が上がらなくとも低賃金化が進みます。
(数年前にウオールマートの正社員が、フードスタンプを持って並んでいる状態が報道されていました)
欧米や日本の場合、世界の生産工場として長年蓄積がある・・国外生産移転が始まるまでの期間が長かったので(年金資金を含めて)中間層の蓄積が厚く、元中間層の多くが金融資産を手厚く保有しているので、老後資金の蓄積なく定年を迎えるのは少数派でした。
旧先進国では低賃金化の嵐にあっても国外の儲けを金融利益として補填ができる人が比較的多いのですが、(日本人の個人金融資産は1800兆円です)韓国等元新興国等では輸出基地としてゴツく稼げる期間が短かった上に、せっかくわずかに蓄積した金融資産をアジア通貨危機による金融資産の暴落を安く買い叩くチャンスと見た国際金融資本家の駆け引きの翻弄された結果「すっからかん」にされてしまったのが韓国です。
マレーシア等東南アジア諸国は過酷な植民地支配経験があるので、IMFによる巧妙な金融支配・第二次植民地支配を免れるための知恵を絞り、韓国のようにストレートな受け入れをしなかったと言われます。
この違いは、韓国が実は日本支配が緩かったので、東南アジア諸国のような植民地支配に対する警戒感がなかったことによるようです。
中国の場合、韓国香港台湾等の第一陣〜タイ等の第2陣に遅れて参入した第3陣で当時金融市場を解放していなかった(今も不完全です)ので、その痛手(売り浴びせ)からはまぬがれましたが、次々と輸出基地としての役割が移転していくローテーションからは逃れられません。
この結果国内生産工場が減っていく・・参入が遅れた分移動期間が短くなるので蓄積期間が短い点は同じです。
新興国は、低賃金を売り物にして輸出基地として一時期繁栄しますが、賃金上昇に合わせて次々と次の新興国へ生産拠点が移動していく(までの期間が短くなる一方)ので、中間層が十分に広がる期間が短く少ない上に金融資産保有率が少ない(国家的に見れば高齢化進行が早く年金の積立てが進まないうちに高齢化社会に突入してしまうのと同じ原理・・先老未富)のが難点です。
新興国で輸出基地が次の新興国に移り始めると、資本蓄積がない結果緩和要素が少ないので結果的にアメリカ国民不満がもっと極端に出てくる傾向があり、これがまっ先に出てきたのが韓国の現状です。
まずは韓国生産基地の国外移転の様相を見ておきます。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/9497.pdfの論文の一部引用です。

サムスン電子のベトナム生産拡大が変える貿易関係―韓国の「過度な」中国依存是正につながるか―要 旨調査部上席主任研究員 向山 英彦
環太平洋ビジネス情報 RIM 2016 Vol.16 No.611
サムスン電子に供給している部品メーカーによれば、10年のサムスン電子の工場別計画生産台数は、 天津( 中国)が約8,272万台、 恵州(中国)7,326万台、 亀尾( 韓国)4,836万台、ベトナム3,415万台、 ブラジル1,395万台、 深セン(中国)897万台、インド827万台であった。
海外での生産拡大に伴い国内生産比率は2005年の約75%から07年に約52%、08年に約35%、09年には20%台に低下した。15年1月時点ではベトナムの生産比率が50%、亀尾が8%と報道されている。
ベトナム(2工場)、中国(現在は2工場)以外にインド、ブラジル、インドネシアで生産を行っている。亀尾工場のマザー工場としての役割は現在も維持されているが( 注14) 、プレミアム機種の生産はベトナムに移管されている。

詳細は上記論文に詳しいので上記に入ってみていただきたいですが、16年の論文・データはもっと古いかな?国内マザー工場の比率が8%しか残っていないとは驚きです。
サムスン電子の移転にともない関連工場もほぼ同比率で国外移転しているようですから、これが国家全体の傾向でしょう。
サムスンが世界的大企業として発展したのは、アジア通貨危機後に政府のテコ入れ・・半官半民化以降です。
本日現在のサムスンのウイキペデイアの記事です。

2000年代から現在まで
サムスン Samsung Galaxy
1990年代までの韓国国内におけるサムスン電子の位置づけは、主要企業の中の一社に過ぎなかったが、上述の半導体事業での躍進などもあって2000年代以降は韓国国内の事業規模や韓国経済に与える影響面などは圧倒的なものを持つようになり、また、世界の電機メーカーの中でも有数の大企業に成長した。

この短期間に、あっという間の国外生産基地移転では、国内で中間層が厚く育つ暇もなかったでしょう。

©2002-2016 稲垣法律事務所 All Right Reserved. ©Designed By Pear Computing LLC