ホームレス排出の基礎2

話題をアメリカのホームレスに戻します。
ホームレスの現状報告・上記の通り立派なボランテイアの活動紹介がありますが、4〜50代で英語を話せない、話しても文字が読めないなどの労働者がどの比率でいるのか不明ですが、昨日冒頭に日経新聞記事を紹介したように最低賃金の現場労働している限りヒスパニック社会その他がゴロゴロあるので英語を身につけなくとも間に合うから英語が身につかないままであった面もあるでしょう。
彼らに対するボランテイア活動の尊さもわかりますが・・・中学生レベルの教育も受けていない労働者がひしめいている社会では・「格差拡大反対」などという以前の印象を受けました。
草刈りなど・・その日食べる程度しか稼げない超単純労働しかできない階層が雲霞のごとくひしめいている社会を作り上げたが、その種労働の必要性が縮小するばかり・・彼らの労働の場をどう確保するかの時代が来ているようです。
米国ホームレス現状報告の続きです。
以下は別の報告です。
http://bigissue-online.jp/archives/1073661229.html

米国の人気の街・ポートランドで深刻化しているホームレス問題の実態
2019/01/16
米オレゴン州ポートランドは、環境に優しい街づくりが行われ(公園、橋、自転車専用道路などの整備)、リベラルな街として知られる。ファーマーズ・マーケットなど健康的な食生活が送りやすく、都会でありながら自然に近い暮らしができることから、暮らすにも旅するにも人気の街として注目されて久しい。
米国北西部ではシアトルに次ぐ人気の街。人口も2010年以降は毎年1万人のペースで増え(2012年に約60万人 → 2017年には約65万人)、この勢いは2040年頃まで続くと見込まれている(*2)。しかし一方では、このすさまじい人口増に伴って家賃が高騰、失業率も高まり、ホームレス問題が深刻化。2015年10月には非常事態宣言まで出された(*3)。観光都市としての洗練されたイメージとは結びつきにくいホームレス問題の実態。
2018年9月に現地を訪れた

・・・カフェ運営は多くのボランティアによって支えられている。その一人、リンダに話を聞いた。
「ボランティアワークはとても楽しいし、多くの学びがあるわ。」
「最低賃金レベルの仕事をしていてはアパートを借りることもままならないのがこの街の現状なの。」
「最低賃金レベルの仕事をしていてはアパートを借りることもままならないのがこの街の現状なの。」
ポートランドの最低賃金は時給12ドル。これは米国の中でも6番目に高い数字だ(例:マサチューセッツやカリフォルニアは11ドル)*5。「オレゴン州雇用部門」によると、全雇用のうち7.4%が最低賃金レベルの仕事に相当する。
ポートランドは大企業で働く人などお金がある人には人気の街だが、低賃金の人には文字通り「生活できない街」になっているのだ。家賃を払えなくなって家を追い出され、仕事も解雇され、何もかもを失う悪のスパイラルに陥る。
1年間のインターンプログラムでカフェ運営を手伝っているドイツ人女性エスケにも話を聞くことができた。
ここで働いてみて、ドイツとアメリカの違いに気づいたという。「病気になると同時に仕事も失い、すぐに家を失う。この国の現実にショックを受けました。低賃金の仕事についてる人、貯蓄のない人、子どもがいる人は、いとも簡単にホームレスになってしまう。」
リンダが「彼の話を聞くといいわよ」と言って、偶然カフェの前にいたアントニオという男性を紹介してくれた。突然のことにも関わらず、快く身の上話をしてくれた。
僕は生まれも育ちもポートランド。父はメキシコ出身、母はポートランド出身。子どもの頃からずっと路上生活、いわゆるストリートキッズだった。学校も行けなかったし、精神を病んでた時期もある。33才になる今年、人生で初めて安全な住まいを手に入れたんだ。生まれ故郷であるこの街でね。」
「アメリカの福祉、公的セーフティネットは落ち度だらけ。自由な国なんて言われるけど現実はほど遠い。これが長年、安全な住まいを手に入れたいともがいてきた僕の率直な思い。」
「仕事は20年以上、建設現場などでの肉体労働。最近は農業や木の伐採の仕事をメインにしてる。稼ぎは決して多くない。この国で農家が十分に稼げたことなんてないよ。水やり、草刈り、農場整備、かなりキツい肉体労働をやって月収は約800ドル。」
「人々に食を提供する農家が十分に稼げない、この国の悲しい現実です。その国の農家がどう扱われてるかを見れば、その国の倫理観を知れるよ。それに比べ、人々の生活を監視、統制してる警察は時給40ドルとやたら稼いでる。ホームレスの人たちを苦しめ、行き場もないのに一掃し、時には殺しもする。この国の警察は大嫌いだ。」
「ホームレスの人々に足りていないのは、コミュニティと仕事スキルと心の問題に対するサポート。これらもないのに、警察からは追い払われ、どうやって生きていけというんだ。」
彼の語り口は非常に簡潔で的を得たものだった。
取材・記事: 西川由紀子

この記者もレベルが高い!
古くは奴隷解放と言っても開放しっぱなしで低所得層を放置してきたために貧困の連鎖が何世代も続いてきた・これが中南米その他からの貧困層の難民的移民に引き継がれてきたように見えます。
まだ分析していませんが、直感的に見てアジア系のホームレスは少なそうです。
もしもそうとすればその原因分析も必要ですが、この点は忘れなければあとで書くことにします。
単純作業系労働力余剰問題がホームレス激増の基礎でないかの関心で以下書いていきます。
運搬の動力を牛馬に頼った時代から車時代が来ると、輸送用牛馬の需要がなくなり、競走馬程度が食肉用しか存在価値がなくなりました。
人間がご用済みになればどうなるかの歴史です。
日本の武士は徳川の平和時代がきたときに、(大久保彦左衛門や旗本愚連隊を除けば)おおむね順調に官僚や文化人(酒井抱一のように)に変身していった歴史を書いたことがあります。
明治維新で職を失った士族に対する秩禄処分も紹介しました。
彼らの多くは、明治維新以降の日本近代化の人的礎となって近代日本の発展を支えてきたのです。
日本は古代からおおむね産業構造の変化に民族一丸でうまく対応してきた歴史です。

ホームレス排出の基礎1

アメリカの現状を見ると、低廉労働力供給源として自国民として移民を受け入れながら、一方で英語を話せない=まともな就業先がないのは個人責任として放置してきたとがめ・国内能力格差が半端でなくなっている現状が出て来たようです。
今朝の日経新聞6pオピニオン欄の「米共和党の盲点」に、60年代から9倍の人口6000万人に膨れ上がったヒスパニック系移民、(ガストニアのヒスパニック系?スーパーに買い物にくるほとんどがが英語を話せない現状を交え)いわゆる3k職場で米経済を下支えしている現状が紹介されています。
・・2012年の報告で少し古いですが・・・.
https://www.musashi.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00003794.pdf&n=houkokusho2012_no1.pdfに貴重な実態報告されています。

アメリカのホームレス問題と支援策
研修先国名:アメリカ合衆国(ニューヨーク州)
研修期間:8月6日~9月7日 33日間人文学部 英米比較文化学科 4年 内野 真紀奈

https://screenshotscdn.firefoxusercontent.com/images/b9228cab-25c7-4c00-8213-2d14e5b9d0e5.png

上記には11年までのニューヨークの統計が出ています。

引用を続けます

「教育支援> 調査の一環として数学と英語の授業を観察した。これらのカリキュラムの目的は、働く上で必要になる最低限の知識を身に付けることや基礎的な学力の向上だった。講師1人に対して、生徒は15人程度と比較的小人数で授業は構成されていて、30代や40代の生徒の姿が目立った。これらの支援を利用する人々の教育歴では、高校を卒業した者や高校卒業資格(GED)を取得している人は半数以下であった。」
「数学の授業では分数の計算や割合の問題を扱っていて、日本だと中学生の履修範囲だと思われる内容であった。」
「英語の授業では、接客や仕事において必要とされる言葉を身に付けることが目的とされていた。驚いたことに英語が第一言語でないため、英語を話せない人の姿も少なくなかった。また日常の会話の中では、流暢に英語が話せていても、文章を読むことや書くことを苦手とする人も多かった。
これらの人にとって英語を学ぶことは、日常生活をする上でも非常に大切なことであると感じた。」
<就労支援>就労支援ではコンピューターの授業を行うクラスと、面接の練習や準備を行うクラスがあった。
支援スタッフの話によると、ACEを訪れるホームレスは、45歳以上の人が最も多いこともあり、1度もパソコンに触れたことがない場合が多いそうだ。その為コンピューターが利用出来るようになることを目指し、授業内容では情報の検索の仕方や文書や履歴書の作成など個人のレベルに合わせて指導が行われていた。
<Project Comeback 卒業式>調査期間に行われたACEのProject Comebackの夏の卒業式にも参加した。これは4ヶ月から6ヶ月間のProject Comebackの活動を終えて職に就くことが出来た37人の卒業式であり、卒業生の自信に満ちた姿を見ることが出来た。
印象に残った台詞の中でこのような言葉があった。「私は今までの人生の中で最後まで何かをやり遂げたことがなかった。だけどここに来て努力をすることや責任を果たすことを学び、自分が変わることが出来た。だから無事にACEを卒業することが出来て自分を誇りに思う。」「私はNYに来たとき、家族も友達も頼る人もいなくて本当に何も持っていなかった。そんな私にチャンスをくれていつも支えてくれた。それが今は仕事もあり、人生を変えることが出来て心から感謝をしています。」「私は今の自分が誇りに思える。家族や子供に対しても、親としての責任を果たすことが出来て、安心することが出来て嬉しく思う。」 この卒業式の中で、卒業生の声から「責任」という言葉が何度も出てきた。このプロジェクトによって、社会の一員として働いていくことの意義を学び、自信や自尊心を持ち前向きに自立へと踏み出す人々の姿があった。
ホームレスの人々が職を得て、自立をすることはなかなか容易なことではないかもしれない。しかしスタッフの献身的なサポートによって、前向きに将来に向かう人々の姿を見て支援の意義を感じることが出来た。

報告書を見るとなかなか優秀な学生です。
この報告書を見るといきなり20年ほど前のことを思い出しました。
司法修習委員長をしていた頃に、(千葉だけでなく全国の制度です)カリキュラムの一環で社会修習を義務化したことがあります。
その研修結果を委員会に報告するので全員の報告書に目を通していましたが、社会福祉事業所を社会修習先に選んだある女性修習生の研修結果報告書は簡潔で要を得た観察眼の鋭いもので感心した記憶があります。
その修習生の名も忘れましたが、今では立派な法曹になっていることと思います。

シェルター収容と公営住宅主義1

どんどん公営住宅が新設され日々ホームレスが吸収されて行けば、全米でこんなに大量にシェルターが設置され、ホームレス人口が増え続けないでしょう。
アメリカのホームレに関する記事は多いのですが、年度別人口推移の表が出てきませんが、最新日付では以下の意見が出ました。
いつの調査データか不明ですが、アップした日付けが一番新しいという程度の最新性です。
http://news.livedoor.com/article/detail/15781067/
2018年12月23日 8時0分 Forbes JAPAN

・・・2016年から増加に転じ2年連続で増えている。
米住宅都市開発省のデータでは米国のホームレス人口は、約55万3000名に達しており、そのうち65%はシェルターに居住している
非シェルターのホームレスの割合が最も低いのはニューヨークで、5%だ。一方でロサンゼルスのホームレスの非シェルター率は75%に及んでいる。

アメリカでは路上生活者の調査をしていないと言われていますが、非シェルター人口をどうやって割り出したか不明ですが・・。
米国では日本の国民皆保険制度がないように、公営住宅で保護する仕組みがうまく回っていないのではない・運用能力がないのでしょうか?
日本の場合大災害があっても、体育館で寝泊まりするのはほんの短期間で、避難が長引くようだと急ピッチで仮設住宅建設が始まり短期間で供給されるのが普通です。
アメリカも変化に合わせて公営住宅が急ピッチで作られているが、急激な需要増に供給部門が間に合わないとすれば、そのうちシェルター利用者が減っていくのでその間は仕方のないことです。
アメリカは日本やドイツのように戦災による究極的住宅不足に見舞われた経験がないので、政府が介入しなくとも必要に応じて住宅が供給されるはず・・市場原理の妥当する領域の意識でこれまでやってきたしそれで不都合がなかったのかもしれません。
その結果、政府率先して低廉住宅供給の必要がなかったし(ゼロという意味ではなく日本やドイツに比べて住宅政策に占める公営住宅の占める比率がごく小さいという比率の問題です)経験がないのでしょうか。
日本も豊かになって久しく、公営住宅や公団住宅供給政策が早くから曲がり角になっているし、新たな市営県営住宅新設がほぼなくなっていますが、(既存のものは空き家だらけ)たまたま東北大震災の時に首都圏の公営空き家に移住してもらうことにして、埼玉や千葉の公営住宅に福島県等の避難者を受け入れています。
たまたま首都圏に多くの空き家があって良かったのですが、現在では中国人や外国人の住居として団地が利用されています。
川口市の古い団地で中国人が集まっている?というところが出始めたようです。
首都圏で時代遅れになった団地が大震災の避難民の受け皿として対応できました。
民間アパートでは外国人への賃貸に忌避感が強く外国人が住む場所に困る・・これを放置すると移民一世の住居不安・治安悪化に連動するリスクが生じます。
住居の安定は移民2世・子供の教育環境や貧困の連鎖を防ぐなど共同体意識のゆりかご・治安安定の基礎です。
都市部では外国人を空き家の多い公団住宅等で受け入れるようになって社会不安回避になっている・・など日本の住宅政策は偶然うまく回っている印象です。
千葉市でも京葉線沿線沿いに大規模な公団住宅分譲地があり、これが老朽化してきたのでいつの間にか外国人を多く見かけるようになりました。
日本人所有者が賃貸に出して外国人が住み着いている場合がほとんどでしょうが、売買価格が数百万円程度に下がるとちょっと収入のある外国人なら買えそうですし公団ですから一定水準が保証され家族持ちには住みやすいでしょう。
アメリカの場合、政治が一生懸命対応しているが、いきなりの情勢変化に供給体制が追いつけないだけならば、一定期間経過で供給が追いついてシェルター利用者が急減するのでしょうか?
準備不足とはいえ、シェルター利用急増が国際ニュースになってから10年近く経ってもシェルター利用者が減るどころか増える一方のような印象を受けるのは、政府・政策部門には本気で公営住宅を供給して彼らを吸収する意欲がないからではないか?とも見えます。
日本のように定住を前提とした歴史がないので、家賃が高すぎて住みにくければ市場原理に合わせてどこか家賃の安い街に流れて行くべきで、政府が下支えする必要がないという思想が根底にあるかもしれません。
次の移住先を見つけるまでのほんの一時的「シェルターで十分」という思想です。
ところが、どこへ行っても高家賃で低賃金層にとっては移住先もないとすれば、低賃金層でも借りられる住居の供給が必要なはずです。
シリア難民やロヒンギャ難民等の流入に対して受け入れ各国が避難民を収容所を設置して対応していますが、これらは全てその場所で難民を仲間として受け入れる姿勢ではなくどこかへ移動してくれるまで一時的に雨ツユを凌ぐ施設としての位置付けです。
アメリカの場合同一市内のアパートを追い出された「難民」なのに、これをもともと彼らのいた共同体で受け入れる予定がなくどこかへ出て行くまでの1時保護的思想・・居住空間とはいえない「シェルター」「収容所」で保護する発想が日本人には異常に見えるのです。
日本では遠くの福島からの臨時難民でも、「千葉に住み着いてくれるならどうぞ!」という歓迎姿勢で「早く故郷の福島へ帰りたいでしょう」という心配りをするけれども千葉に定住するなという拒絶的姿勢ではありません。
外国人も日本に必要というならば、仲間として受け入れる国民合意が先に必要です。
この合意がないまま受け入れると、日々接する一般庶民が外国人に白い目を向けている状況下での受け入れとなり良い結果になりません。
多くの国民意識の現状・・・・アパートの「外国人お断り」がその端的な現れですが・・日本に期待して日本を就職や移住先に選んだ外国人・この多くは親日性の強い人と思われますが、共同体から日頃仲間外れされたままであれば、共同体意識を持てなくなる・逆に反感を持つのが普通でしょう。
私は労働人口減少対策としての外国人受け入れ反対を長年主張してきましたが、受け入れる以上は仲間として仲良くすべきです。

超格差社会・韓国5(住宅建設と個人債務膨張2)

以下は」16年までのデータで約2年遅れですが、韓国の家計債務のリスクに関する意見が見つかりましたので引用します。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as180126.pdf

No.9, 29 SEPTEMBER 2017
韓国の 2016 年住宅着工実績
○韓国の家計債務は近年拡大基調にあるなか、特にノンバンクにおいて家計向けを中心に貸出の伸びが高い点がリスク。ただし要注意先債権比率は銀行・ノンバンクともに低下傾向 ○過去の債務拡大局面とは異なり、近年は消費を目的とした家計の借り入れは限定的で住宅関連の債務の割合が大きく、家計債務の拡大が抑制されても個人消費の大きな下押し要因とはなりにくい ○アジア通貨危機時のような大幅な住宅価格下落・金利上昇が起これば、低所得層を中心に家計のデフォルトリスクが大きく拡大するが、リーマンショック時程度のレベルであれば影響は限定的
1.はじめに 韓国の家計債務は近年急速に拡大している。IMFのレポートによると、家計債務がGDP比で36~70%の水準にある間は、長期的な1人当たりGDP成長率に対してプラスの影響をもたらすが、それ以上高くなるとプラスの影響が弱まり、徐々にマイナスの影響に転じていくとの分析がなされている1。韓国の家計債務は名目GDP比90%以上に達しており(図表1)、経済にマイナスの影響をもたらしうる水準に近付いているとみられる。また同レポートでは、家計債務の増加がどのようにマイナスの影響をもたらすかのメカニズムが示されている

ところで上記論文は重要な点を書いています。
リーマンショック級の危機が来なければ良いのではなく、(昨年の米国金利上げの影響をこのシリーズで書いている・・ちょっと金利が上がっても払えるの?問題の他に)住宅供給が際限なく増え続けることはないのでいつか需要の面からも限界が別に来るはずです。
ピアノも車も空調設備も一定の普及段階が終われば、(アップルの変調はまさにこれによります)更新需要しか無くなるのが基本原理です。
韓国の住宅着工数の推移の表が上記論文に出ています。
韓国の 2016 年住宅着工実績
1.構造別の建築着工実績
韓国の 2016 年国内総生産(GDP、実質基準)は建設投資を中心に固定投資が好調を示したが、輸出不振のため、2015 年と同様に 2.8%の成長にとどまっている。 好調な建設投資により、同年の建築着工数は 231,971 棟にのぼり、前年と比べて 6,031棟が増加した。
年別着工数数の表を見ると、2005年 114,55が2016年 231,972棟で11年間で約2倍になっています。
2007年 179,01〜2013年が187,54まではほぼ安定的ですが、13年から16年までの3年間でいきなり23万棟ですから政策誘導的急増だったのは確かでしょう。
内需といっても国民に消費する資力がないので、住宅建設(借金してでも消費するので)による中国同様の不況先送りを兼ねた内需振興策でした。
建築物の用途別の表で見ると
2005の合計が 114,554 棟で内、住宅用が32,710で3割弱、工場や商業用あるいは教育用などその他合計が約8万棟で約7割あまりでしたが、2016年には合計 231,972で、住居用が約5倍の155,16ですから、住居用が約7割を占めていて工場や商業用等その他は2005年とほぼ同様の約8万棟のままです。
サムスンの国外展開の例を見たように企業等は内需振興策と言われても無用な商業ビルや工場を国内に建てなかった・・この間国内生産が空洞化した穴埋めに日本のような財政出動・・政府債務を増やさずに、家計に負債増加を求めた結果でしょう。
このシリーズでは、2月4日の「債務膨張と債務負担部門・中韓」以来、「債務を社会内のどの部門に付け回しているかが重要」という視点で書いてきましたが、韓国では最も弱い庶民に「自宅を持てる」という夢を煽って、巧妙に債務負担をせて内需振興・経済破綻を防いできたことがわかります。
中国の場合もこの点は似ていますが、いじましい夢を売るのではなく投機熱で2戸目3戸目を買い求める文字通りのバブル現象ですが、韓国庶民の場合は日常消費を切り詰めても住宅が欲しいという購入ですから、堅実といえば堅実ですが、目一杯借りている以上金利が上がり始めれば持たない点は同じです。
上記表によれば、この3年間で需要の先食いが起きているので、金利優遇等の政策がなくなれば需要が急減するでしょうし、逆に国際的金利上昇の流れに引きずられると耐えられなくなるリスクです。
上記論文は専門家の意見ですので「素人が異論をいうのはおこがましい」ですが、リーマンショック級の外部環境によるのではなく、需要先食いによる反動減と借金過多による消費減→国内不況による自律的問題を論じるべきです。
ただし、以下の論文では中国、韓国の住宅価格は家賃収益還元内に収まっているのでバブルではなく外部要因による急激な利上げ(少しの追随利上げ程度は景気循環の範囲?)等がなければ価格調整が起きないのではないかという意見?データを示しています。
https://www.smtb.jp/others/report/economy/64_1.pdf
三井住友信託銀行 調査月報 2017年8月号
経済の動き ~ 低金利下の各国住宅価格と家計債務

https://screenshotscdn.firefoxusercontent.com/images/e28350b0-e6e8-4ae0-939e-8e9963e451e0.png

リーマンショック等外部危機場合、逆に金利下げその他の内需振興策を取るので、却って一息つける方向になるのではないでしょうか?
素人目には中国はバブルが弾けそうになると混乱を恐れた救済の繰り返しで現在になったように見えます。
まさに卵を積み上げすぎて「累卵の危機にある」状態で米国と経済戦争を戦えるのかが素人世界の関心でした。
上記論文によれば、賃料相場の範囲内にあるので中韓の住宅建設ラッシュは「社会の発展に遅れていた分を取り戻しただけ」(数年事業拡大に忙しく自宅新築の暇がなかったのがようやく落ち着いて自宅も立派にできるようになった状態?)という解釈になるのでしょうか?
そういう目で見れば遅れて海外旅行を楽しむような遅行指数と言えなくもありません。

公営住宅のミスマッチ2(都心集中時代)

急激に増えている単身者用生活インフラ不足のミスマッチを前回書きましたが、今回はファミリー向け公営住宅の立地に関するミスマッチのテーマです。
公営住宅は都市が郊外へ郊外へと拡大し続けていた今から4〜50年前の時代に公団や県営・都営住宅を計画してその後広大な土地買収を経て昭和40年代に多く造ったために、都市機能の拡大予想に基づいて不便な場所に立地しているミスマッチもあります。
巨大団地の構想を練った昭和30年代後半頃にはまだ高層マンションにファミリーで住むことなど想像もできなかったので、都市はだだっ広く広がるしかないと無意識に考えて郊外の団地造成用地の取得に励んで行ったのですが、今や、都中心部に高層マンションが林立する時代です。
多摩ニュータウンの例がよく出ますが、そこに住んでいる子育て中の主婦層が働きに出ようとすれば、近くには公団・居住用施設ばかりで、これといった職場がなく、大変らしいです。
域内でちょっとした現場系パートを募集したところそうそうたる国立大の大学院卒の主婦が応募して来たと驚いている事例がありますが、主婦が短時間で通える圏内にマトモな事業所が少ないのです。
公営住宅は商売とは違うとしても、価格補助が税で行われるだけであって、需要・市民のニーズを無視して良いものではありません。
需要・・必要があるのにマイホームを持てない人のために公的住宅制度があるとすれば、需要のあるところに準備するのが親切・責務と言うものです。
為政者が利用者の立場に立つべきとすれば、時代の要請に合わせて需要のあるところに立地すべきは当然です。
都市・都心集中を進めるべき時代に為政者はどんな見識によるのか、時流に棹さして拡散して住まわせようとする余計なお世話・・誤った考えを強制したいのかも知れません。
・・・その結果、低廉な住居を最も必要としている経済弱者が仕事のある市街地から遠すぎて応募出来ない事態が起きています。
言わば、通いきれない遠隔地に住居を用意しておいて応募者が少ないから、需要がない・・公営住宅供給の使命は終わったと言うのはマトモな神経ではありません。
サービス業従事者などが増えてくると男性でもあまり遠くからでは深夜早朝に通いきれないことと、最近は短時間労働も増えていて、掛け持ち勤務者が増えていますが、遠距離通勤では掛け持ちが困難で働ききれません。
パートなど弱者労働では交通費の出ないところが多い上に短時間労働も多くなっているので、遠すぎる郊外の団地では通勤時間と交通費の比重が大きすぎて大変です。
(中にはバス代を浮かせるために何キロも歩いている人もいます)
私の住んでいる千葉市の例でも、私が千葉に来て最初に住んでいた千城台と言うニュータウンやその周辺では、県住や市営住宅の募集があっても、パート等の女性には不便すぎて応募出来ないと言っています。
千葉駅まで片道約40分程度もバスに乗って出てきて、そこからまた別のバスに乗り換えるのでは、時間と交通費がかかり過ぎます。
自分一人ではなく子供の通学交通費もかかるし、何かとモノイリ過ぎるので2〜3万円家賃が高くても中心部に住んだ方が合理的らしいです。
中心部に住むと通勤時間にかかる分だけ多く働ける・・子供が夜遅くまで塾に通える・高校生になると子供もバイトしたり遊んだりしたいなどなど、メリットが大きいからです。
午前中(ビルの清掃など)と夕方(飲食系)は別のところに働きに出ている人が結構多いのですが、遠くから通っていると空きの時間が無駄になってしまうようです。
千葉県では千葉ニュータウン等郊外に大きく延びた沿線の分譲が盛んでしたが、ひとたび経済弱者の転落すると(そういう人が多く相談に来るのです)最近出来た線路(北総線や東葉高速線)のために馬鹿高い交通費がネックで、新京成沿線等の旧来型ごたごた住宅街の民間アパートに引っ越して行く例があります。
書けば切りがないですが、いろんな角度で需要動向が様変わりですから、公営だから不便でも仕方ないだろうと言う政策では弱者にかわいそうですし、何のための公営住宅か分りません。
エリート社員はバス交通費どころか新幹線通勤費まで出る人がいますし、こういう場合、奥さんは専業主婦層が殆どですし、子供の通学交通費も気にならないでしょうから不便でも空気の良いところとなるのでしょう。
バス代も出ない弱者向け労働に参入しなければならない階層向けの公営住宅こそ、都市中心部に立地すべきではないでしょうか?
言わば今の都市は、ここ20年ほど前から拡散から集中への切り替え時代を迎えている訳で、郊外の住宅団地は地方都市の人口減と同じ運命が待っていると覚悟しておく必要があります。
実際、千葉市周辺に多くある住宅団地では地方都市同様に高齢者が殆どになっています。
過疎地が高齢化・人口減に見舞われているのを押しとどめるために、そこに公団や公営住宅等を立地して誘導しても同じ地域内の人口移動があるだけで、大都市から移住する人が増える訳ではありません。
公営住宅が都心部や市中心部の便利なところに多く立地して、非正規雇用の独身者や新婚所帯が住めるようになれば、都市住民内格差の多くが是正されるでしょう。
都心集中が進めば郊外に広がり過ぎた公営住宅は廃棄・・損切りして廃棄処分して行くしかないのですが、地方自治体はこれに抵抗があって、あくまで郊外型住宅を推奨して行くつもりでしょう。
高齢化が進むと民間ならとっくに若者向け店舗閉鎖など対応している筈ですから、公営であろうとも需要あってのことですから、時代の変化にあわせて損切りして行くべきは当然です。
過去の政策を正しいとするメンツのために無理に郊外生活に誘導し、あるいは事実上強制するのは、経済原理に反していて国家全体にとってマイナスですし、思いきって都市集中型に政策を切り替えれば、自ずから都市が立体的にコンパクトになって行くし、インフラ整備が割安で熱効率その他が良くなる筈です。

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