中銀の独立性?2(トランプ政治の正統性?1)

ニューヨークダウ平均に大方連動している年末年始の日経平均株価の動きを紹介しておきます。
日本はファンダメンタルズが悪いから下がるというよりは、アメリカの高金利に世界がビビったことと、政権と議会の対立でついに予算がない状態・公務員給与も払えない事態に突入したことも大きな原因です。
有事の円高想定による株下落→日本の場合、円高率と同率で下がるのが理論的です。
例えば円が120円から100円に上がれば、日経平均が12000円から1万円に下がっても外国人投資家にとってはドル換算では同じです。
実際には瞬時に20円も上がりませんが、小刻みに円が上がるのに連れて外資(プロ)にとっては、コンピュータープログラムによって小刻み・・自動的に売り抜けようとしますから、円相場に連動するので円が100年に上がる場合には日経平均が1万円まで下がるセオリーです。
アルゼンチン等脆弱國ではこの逆で、通貨下落に連動して株価や債権下落→金利上昇になります。
12月20日パウエル議長記者会見による大幅下落・・年末年始の日経平均のグラフを引用しておきます
https://kabutan.jp/stock/chart?code=0000&ashi=1

パウエル議長の12月の会見要旨を引用しておきます。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39169710Q8A221C1000000/
2018/12/20 6:11

米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は19日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、・・・2019年の利上げシナリオでは「来年の経済は2回の利上げが求められるような道筋で成長する可能性が高いと考えている」と語り、従来の3回から引き下げた理由を説明した。・・・・・19年の利上げ想定の引き下げにつながった。パウエル氏は「基本的なところで見通しを変更したわけではない」と強調し、経済は健全な形で成長を続けるとの基本的な想定を堅持した。
・・・
一方、トランプ米大統領から利上げをけん制する発言が続いていることに対しては「政治的な考慮は我々の議論や決定になんらの役割も果たさなかった」と強調し、政治圧力の影響を強く否定した。」

この会見で株価が下がり、年が明けてもさらに下がる展開でした。
トランプ氏によるあまりの恫喝(彼は直接言いませんでしたが更迭論がメデイアを賑わしていました)に怯えたのか?年初1月9日に公開した12月の利上げ時のFOMC議事録要旨は、今後の利上げ予定の取りやめに含みを持たせるような内容であったことが議論を呼び、1月10日以来市場安定化・・株価回復に資しているようです。
これ(日経平均の動き)を見ると予算が成立しないことよりも(予算成立が年を越したどころか、今日現在まだが成立しないままですが、議事録要旨公開だけで株価が持ち直したということは、)金利動向の方が世界経済への影響が大きかったことがわかります。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-01-10/PL3ULX6KLVRA01
Christopher Condon

2019年1月10日 17:02 JST
FOMC議事要旨と12月のパウエル議長会見、際立つトーンの違い
9日公表の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が市場に安心感をもたらす内容だったことで、投資家の間に新たな疑問が浮上した。それは、昨年12月19日の会合後の声明やパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見とはトーンの違いが大きかったためだ。
・・・・
ラインハート氏は、12月19日の声明や議長会見に対する市場の否定的な反応に対応するような形で金融当局者が議事要旨を取りまとめた可能性があると推理。「パウエル議長は会見の冒頭発言と質疑応答でFOMCの認識を正確に伝えたが、あまり歓迎されなかった。その後、議長がもっと強調しておくべきだったと残念に思った部分をもっと気配りして強調することにしたのではないか」と論じた。

比較のために米連邦公開市場委員会(FOMC)決定が政治圧力によるかの神学論争は別としても、政治=国民福利を最大にする必要がある点は金融当局も同じであるべきですから、金融当局も国内景気実態を無視できませんし、基軸通貨国としては国際経済への目配りも欠かせません。
日銀が地方を無視して東京の景況感だけを前提に判断するのが許されないのと同じです。
トルコ・エルドアン大統領のような強権支配者は中央銀行の決定に強力な支配力を持つので、国内景気対策の配慮が優先して金利引き上げが先送りになっていた結果、リラが大幅下落し物価大暴走になってきた例を昨日まで紹介しました。
ただし「政権が政策の最終責任者であるべき」という私の意見によれば、独裁の弊害の問題ではなく、エルドアンの判断が間違っていたことになるのか?というだけのことです。
中銀の独立性を強調するのがメデイアの原則ですが、私は独裁権力者が「自己保身のために経済原理に反した」ことをしても国民が苦しむと言うだけであって、中銀の独立性自体を絶対的なものとは考えていません。
経済「政策」は総合視点でやるべきですから、金融理論ばかりではなくその時の経済体力その他状況に応じた総合判断が必要です。
これを政治判断の利かない金融のプロが最終決断をして良いとは思いません。

欧米離れとトルコ危機?2

国際ルール違反が起きた時に懲罰を与える絶対的覇権国がない状態下では、(ロシアが短期間にウクライナからクリミヤ半島を奪取してしまったように)国際仲裁等が始まる前に既成事実を作られてしまうとどうにもならないことから、それまでの時間稼ぎ的自衛のための相互防衛条約でお互いを守り合う約束が必要になっています。
中国古代に覇権国がなくなって(一般的には、韓・魏・趙に分裂した時を起点にするようですが)戦国時代に突入し、(合従連衡策は集団自衛論の始まりです)日本で言えば応仁の乱後、将軍家(中央)権威失墜後各地領主が自衛のために動き出したのと同じです。
平安貴族が源平騒乱前の平和を懐古し念仏を唱えて和歌(今で言えば平和憲法の精神)を読めば平和が回復するものではなく、各地守護大名が自衛のために戦国大名化していったのは現実的知恵でした。
戦国大名化に特化成功した順に各地の群雄となり、群雄同士の決戦を制して(集団自衛権の重要性・戦国時代では織田松平の攻守同盟に成功した織田信長が最初に名乗りをあげたのは偶然ではありません)最後に天下人となった豊臣の惣無事令となるのです。
18年12月22日のテーマ/トルコ危機に戻ります。
西欧が文句なしに世界の中心であったときには、中央アジアのトルコ領域を侵食してくる目先の敵のためにトルコは西欧に屈辱的でもすり寄るしかなかった(これが対露クリミヤ戦争です)でしょうが、そのもっと遠くの中国が存在感を持ってくると、ロシア・トルコ共に欧米が相手にしてくれないならば、東に中国があるという東向きになってきたのは偶然ではありません。
このような動きは、今の韓国にも共通した心情と理解すべきでしょう。
いずれにせよ、自分自身が文化の中心になるのは無理・・どちらかに媚びるしかない点は同じです。
中国は第一次世界大戦後対日戦略で欧米に擦りより、戦後はソ連にすり寄り、中ソ対立後は米国にすり寄っていましたが、リーマンショック以降自信を持ったので今や「自分が世界の中心になる」という野心を公式宣言してしまったので米国の逆鱗に触れていることになります。
従来の周辺国・・地域大国は長年の欧米文化への服従疲れ・不満から、警戒しながらも新たな求心力となりつつある中国へすり寄り始めたということでしょうか?
トルコはリーマンショック後経済的に弱った上に難民大量流入で困るEUと米国威信の低下を見て欧米をコケにしてみたものの、米国の金融緩和から緩和縮小への動きが強まると、まだまだ欧米の世界支配力の強さに直面します。
いわば一進一退でじりじりと欧米離れを進めていく過程にあるというべきでしょうが、地力アップによるのではなく風見鶏政治でしかないので次の求心力となるべき中国の消長次第になります。
いわば地力アップによる強がりではなく、頼りにするべき中国ロシアもあるぞ!という程度の風見鶏政治である点は同じです。
当面はトルコリラの急激下落によって、国内経済が大苦境に陥るようになっていますが、一方でサウジ皇太子の記者殺害事件で、一時的にトランプ氏に貸しを作って対クルド族関連で盛り返したところですが、この種の「貸し」は基礎体力に基づかない一時的なものに過ぎず、長期的効果はありません。
まずはトルコの基礎体力低下からみていきましょう。
https://diamond.jp/articles/-/184302

2018.11.6
「トルコ・ショック」克服でもトルコ経済の前途が不透明な理由
西濵 徹:第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミス
トルコでは、過去数年にわたって慢性的なインフレ状態が続いてきた。
にもかかわらず、夏場以降のエルドアン大統領の利上げ牽制発言などによる「圧力」に屈する形で、トルコ中央銀行が正常な金融政策運営が出来ない状況が続いてきたことに加え、米国人牧師の身柄解放を巡る米国との関係悪化懸念をきっかけに、通貨リラが急落した

ドル・リラ相場

国際金融市場には「トルコショック」とも呼べる動揺が広がり、トルコと同様に経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が脆弱な新興国では、資金流出の動きが強まった。
国際金融市場には「トルコショック」とも呼べる動揺が広がり、トルコと同様に経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)が脆弱な新興国では、資金流出の動きが強まった。

米中対決と周辺国への影響2

今日は昨日から書いてきた論文紹介です。
最初はグラフだけ紹介しようと思ったのですが、前提条件ど知りたい方がいるかもしれないので、検討した前提条件等を抜粋して紹介することにしました。
私の要約では微妙に間違うといけないのでそのままの抜粋ですが、そのために今日は引用が長くなってしまいました。
印象を書くと対決する米中が損をし「揉め事を起こしていると喧嘩している双方が体力を消耗し周囲が得する」ということでしょう。
第一次、第二次世界大戦の当事者になった欧州が力を落とし、第一次世界大戦や朝鮮戦争特需の恩恵を受けた日本を見ればわかります。
https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/as181226a.pdf

2018年12月26日
   みずほ総合研究所調査本部 アジア調査部
米中貿易摩擦のアジアへの影響
中国以外のアジアはネットでプラスの影響を享受
○米中貿易摩擦のアジアへの影響について、サプライチェーンを通じたマイナスの影響だけでなく、生産代替を通じたプラスの影響についても、国別かつ業種別に試算
○各国別では、いずれもネットでプラスの影響を受けると試算される、その規模は最大のメリットを受けるベトナムで0.5%程度。ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性
○産業別では、多くの国でPC関連と一般機械にプラスの影響が集中するなかで、ベトナムとカンボジアに関してはカバン・帽子・自転車といった低付加価値産業での生産代替が多くなる可能性
1.米中貿易摩擦によるアジアへの波及は、
マイナスとプラスの二つの経路
・・・・
以上のマイナスとプラスの影響の波及経路について、一定の前提を設定し、アジアの各国・各産業への影響を試算することが本稿の狙いである。
2.現状レベルの貿易摩擦を前提し、アジアの国・産業別に影響を試算
(1)前提条件
a.試算の全体に関する前提
・・・中国の対米輸出については2500億ドル相当、
米国の対中輸出については1100億ドル相当が制裁を受ける対象となっており、この部分について分析する(図表2)。
b.サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算に関する前提
・・・・現実には、関税率が上昇しても、通貨の下落や製造・流通業者の利益圧縮によって販売価格への転嫁が抑制されたり、たとえ価格に転嫁されても、最終需要者が価格上昇を甘受して購買を続けたりするケースがありうる。試算を単純化するために「価格弾性値=1」としたが、マイナスの影響を大きくする厳格な前提といえる。
c.生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提
第一に、生産代替を通じたプラスの影響試算に関する前提貿易量の減少と同規模だけ、生産代替が行なわれる(完全代替)と前提する。つまり、米国による追加関税で、中国の対米輸出数量が25%減少する場合、それと同規模の生産が米国の追加関税を回避するために中国から第三国(ないし米国)へ代替されると前提する。
なお、代替率は0~100%の間の値を取りうるため、100%の「完全代替」はプラスの効果を最大にする楽観的な前提である。
第二に、生産代替の行先としては、世界の輸出市場における国・地域別のシェアに応じたものになると前提する。
・・・・この前提は、ADBの先行研究と同じであり・・・・世界シェアが
高い国・地域ほど中国を代替するポテンシャルが大きいと思われる。
(2)試算の手法と範囲、データベース
サプライチェーンを通じたマイナスの影響試算については、OECDの国際産業連関表(ICIO)の最新版(2011年)を用いる・・・・・・・の範囲は1次波及までとし、米中および各国・地域の輸出減少や不安心理などが内需を押し下げる二次的な波及効果は対象としない。
3.アジア各国・地域の各産業とも、ネットでプラスの影響を受ける試算結果
(1)国・地域別の影響


(2)産業別の影響
産業別にみると、サプライチェーンを通じたマイナスの影響については、台湾、マレーシア、韓国、フィリピンといったアジア各国・地域のPC関連分野で目立つ試算結果となった(図表4の赤塗りの横棒)。これらの国・地域が、特に中国とのサプライチェーンにおいて、PC関連部品のサプライヤーとして組み込まれているためである。その他の産業については、各国・地域とも目立った影響はなさそうである。
生産代替を通じたプラスの影響については、多くのアジア各国・地域でPC関連および一般機械に集中する(図表4の青塗りの横棒)。例外としては、ベトナムではPC関連と一般機械に集中するのでなく、繊維にもプラスの影響が分散する。
4.ただし、当面はマイナスの影響が先行する可能性に留意

本試算の枠組みでは、マイナスとプラスの影響がいつ現れるのかという時間の概念を示すことはできない。
以下略

アメリカンファーストと国際協調4(崩壊?2)

EUの対中対米貿易比率はhttp://eumag.jp/questions/f0717によると以下の通りです。

EUの物品貿易相手先と規模(2016年)

特にアジア諸国では対中貿易の方が大きくなっています。
http://www.camri.or.jp/files/libs/1156/201810011524292185.pdfによると以下の通りです。
それぞれグラフ等が出ていますので、関心のある方は直接お入りください。

34 月刊資本市場 2018.9(No. 397)
対中貿易依存度が高い国々はどこか?
公益社団法人 日本経済研究センター 主任研究員 牛山 隆一
1.中国の貿易動向
2.対中輸出比率ランキング
3.対中輸入比率ランキング
4.米中間の貿易関係
・・・・・中国は2017年に日本の輸出先として1位米国(シェア19.3%)をやや下回る
2位(同19.0%)、輸入先としては2位米国(同11%)を大きく上回る1位(同24.5%)で、
引き続き重要な貿易相手となっている。
ただ、日本の対中輸出比率(19%)は世界27位であり、2007年(15%、16位)から比率は少し上昇したものの順位は大きく低下した。
また、対中輸入比率(24%)は世界14位で、やはり2007年(21%、8位)から比率は上がったが順位は下がっている。中国の貿易大国化が更に進み、世界の多くの国々が対中依存を急速に高める中、同比率で見た場合に日本の相対的な位置は低下している。
5.おわりに
本稿では対中輸出入比率を算出し、中国への貿易依存度が高い国々の動向を調べた。世界貿易に占める中国の比重が一段と高まるにつれ、対中輸出比率が20%以上に達する国・地域は2007年の11から2017年は26へ、対中輸入比率が20%以上の国・地域も同じ期間に10
から40へそれぞれ増加した。

韓国などは数年前から対中貿易の方が多くなっていることから、露骨にアメリカの気に入らないことを正面からするようになった・反抗し始めています。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit#によると韓国の対中貿易額は以下の通りです。
登録:2018-04-05 06:15 修正:2018-04-05 17:30

「韓国、中国輸出の79%が中間財」…中国の対米輸出減少の“火の粉”降りかかるか

 

韓国の地域別輸出の比重(2017年)//ハンギョレ新聞社
チョ・ゲワン、チェ・ヒョンジュン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)

慰安婦合意の事実上破棄政策・徴用工賠償判決執行あるいは年末の攻撃用のレーザー照射事件など対日嫌がらせの連発もその延長上のことでしょう。 

 

アメリカンファーストと国際協調2

ちなみにPoliceの語源はギリシャ語のポリス(シティ)らしく、これは英語のポリテカル、ポリシーなどで知られるように、もともと日本語の「政治」を中核とする語源です。
オバマ発言の原文を知りませんが、仮に「ポリスをやれない」と言ったとしても日本語の警察官をやれないと翻訳するのは妥当かの疑問があります。
日本語の警察官は、政治思惑と無関係に(どころか政治的立場による一方に不公平な行動は許されていないでしょう)現状秩序維持機能にロボットのように特化した組織として教育され訓練された機関やその従事者を意味しています。
権力の犬と言って蔑む人もいますが、それは欧米の暗黒の歴史をなぞって言い募っているだけで実際に日本の歴史ではお巡りさんのイメージでわかるように身近な世話役です。
落し物を届けたり行先の道を聞いたり猿が出たと言っては追いかけますようなイメージではないでしょうか?
以上によればオバマが「世界のポリス」をやれないという意味は、政治目的実現のために軍を動かすことは出来ない・・「政治判断が間違っているといくら有能精強な軍を持っていても機能しないからやれない」というあたり前の原理を言ったに過ぎず、日本語の警察官役を果たせないという意味とはだいぶニュアンスが違うのではないでしょうか?
日本の警察は民事不介入といって、揉め事一方の肩を持てないし、要請されても中立行動・・「まあまあ実力行使はやめてください」と二人の間に入って暴力行為に発展しないように阻止する程度しか出来ません。
軍といっても災害出動のほか今ではいろんな機能があるので、一言で言えませんが世界の警察官と翻訳するのは国連平和維持軍程度の役割です。
アメリカがやってきたのは、米国益獲得のために一方当事者の肩を持つ軍事介入そのものですから、これをやめるというのを世界の警察官をやめると翻訳するのは誤訳でしょう。
ポリスをやれないという意味をもっと厳格定義して報道すべきように思えます。
常識的に言えば、他国間の紛争解決手段としての軍事力行使(による介入)は今後できないという程度の意味だった可能性があります。
以上は原文に当たっていないので私の憶測意見です。
我が国憲法でいうところの「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」」はまさにこれをいうものでしょう。
政治力不足・正義に反している主張・マイナスの穴埋めの軍事力行使=不当攻撃には自衛する必要はあっても、自己の政治力.正義不足=不正義補完に使っても長い目で見れば意味がないということです。
「口論で負けているからと相手(妻)を殴っても本当の解決にならない」という意味であり、かといって殴られるのが怖いと不正義に従う義務もない(妻が夫の家庭内暴力に服従する義務はない・・違法攻撃には正当防衛権・・・自己防衛力がなければ警察の介入が必要ということです。

憲法
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

正当防衛・自衛力のない人のために警察の介入・110番で駆けつけた警察が、まず引き分けて暴力行為を停止させることから始めるのですが、これを国際紛争に応用しているのが国連平和維持軍ではないでしょうか?
自衛の範囲の議論をしていると横にそれて行くので、アメリカンファーストに戻ります。
自国に関係ないことには軍事介入しないと言っても、直接間接の区分け定義不明でどこまでが自国国益に直結するかの基準が不明です。
まして時間的限界・今後は介入しないというのか過去に約束して介入している分までいきなり撤退する・・約束を反故にして(遡及的に)やめるのかも不明です。
企業で言えば、今後この分野から事業縮小というのは勝手ですが、契約済で工事途中の現場まで放棄してしまうようになると契約違反です。
昨年12月19日トランプ氏がいきなりシリア撤兵を発表したので、マチス国防長官の辞職表明に発展しましたが、この発表で世界中の米同盟国ではトランプ氏に対する信用が一挙に冷めたものになりました。
1月8日頃のニュースではこの結果、(米国同盟国の動揺を受けて?)ボルトン大統領補佐官がトルコがクルド人を攻撃しない条件付きの撤退と言い始めたようですが・・当然トルコはこんな条件を受けられません。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190109/k10011771841000.html

米軍シリア撤退 “クルド人勢力の安全が条件”にトルコ反発
2019年1月9日 8時42分

米国にとって中東の勢力関係がどうなろうと巨大な国費や兵士の人身損傷を賄うメリットがないというのがトランプ氏の表向き(サウジ皇太子によるカショギ記者殺害事件収束に向けた裏取引という見方が一般的です)主張です。
中東戦略で協力関係にあったクルド族切り捨てに抗議辞任したマチス国防長官および旧来政治判断では、(同盟国をトルコへの生贄にして)置き去りして引き上げるのでは米国の信頼が地に堕ちるという批判が噴出しました。
(日本台湾なども米国は頼りになるのかの心配が吹き出します・悔しいけれども中国への保険もかけておく必要性のバランス論・・米国追従をほどほどに止める動きが加速します)
トランプ氏に言わせれば、今後国際関係関与を減らしていくと表明した以上は、同盟関係を縮小していくのは当たり前・・いつかは「2階に上がって梯子を外される」ことを覚悟すべきだということになるのでしょう。
だから一方で「米国ばかりに頼らずに自助努力せよ、自国防衛予算を増やすべき」だと言っているではないかということで一応一貫しています。
要は「世界の警察官も嫌、政治に関わるのも嫌、揉め事は自分たちで解決してくれ」というのですから分かり良いといえば分かり良い政治です。
「難しいことは分からないから・」と米国が他国と他国の国際紛争から手を引くのは高齢化したわれれ高齢者の身の引き方と同じで結構なことです。
当面自国利益を守るのに必要な限度で他国と関係するのが合理的だというのは一理あります。
ただ自国利益を守るためには、他国との協調が必須ですので、その塩梅をどうするかの基準が見えない点が不安視されているのです。
「泣いて馬謖を斬る」故事がありますが、組織リーダーには行動原理を部下に知らしめ自分が守ることが必須です。
このルールが見えない・・多くの人がトランプ氏の言動が行き当たりばったりで信用できないと思うようになるとアメリカの信用ががた落ちになり、結果的にアメリカの国益に反するようになります。

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