言論政治活動の自由 2(テロ計画も自由か?2)

法人犯罪(不正経理や贈収賄や談合など)やヤクザなど一定組織で原則連座制にすれば、共犯認定が不要になり訴訟も簡単です。
証拠収集が不可能に近い時代には、一定範囲の親族や隣組等の連座制が発達した所以です。
連座制の問題点は個人責任の原理に反する・本当に事件に関係ない人までで牢獄に繋がれる団体責任論につながりますから、文字通り近代法の原理に反します。
そこで刑事罰には簡単に使えないので、現在では資格制限等に使っているのですが、元はといえば証拠認定の困難さに由来するものです。
このように見ると共謀罪法は、証拠がなくとも責任を問われる連座制に比べれば、共謀の証拠認定がいる点で近代法そのものです。
この法律では証拠認定の必要性がこれまでと何ら変わらないので、捜査機関の証拠収集能力(科学技術の発達)のアップがない限り実際には法ができても運用実績が挙がらないはずです。
連座制のように事実認定なしに実質的に共犯とみなしてしまうのとは異なり、証拠が必要とされる点では近代法理・犯罪の認定は証拠によるという近代法の法理に反していません。
法律が出来ても証拠がない限り検挙もできませんから法を作る意味がないのですが、今はデジタル技術に始まって多様な証拠が生まれつつあることに応じられる法律になった・・テクノロジーの利用によってテロ等の企画段階で情報入手していてもテロ行為を起こすまで待っていなけばならない・事前に制止できない不都合は防げるようになったでしょう。
てもそれだけに反抗を企画して実行に加わらない「免れて恥なき徒」にとっては一歩進んだ脅威になるのでしょう。
大分ズレましたが、政治資金規制法に戻します。
規制対象も一般人まで広げるといろんな事情がありうるので、政治資金の取得先に限定しただけであり、政治家でなくとも外国政府から報酬をもらっていることを隠して中立的意見を言っても国民が納得しない点は同じです。
ただし、外国の立派な人と会位、一定期間修行して薫陶を受ける・・あるいは外国の優れた制度やシステムを学んで自国に導入しようと努力することは自国発展に望ましい事ですから、これを否定的に見るべきではありません。
本当に自国発展のためにグローバリズム(TPP)を推奨しているのか、国際資本の(戦前のコミンテルンによる世界共産主義化運動も20年ほど前から流行った新自由主義も)の手先として運動しているのかなどの判定基準がない(今のところ考案できない)ので、たまたま資金移動で区別するのが外形上わかり良い・外形的標識によって規制が容易であるという便宜によっているにすぎません。
国民主権国家においては、民意による政治=国民の意思による国民のための政治に最大価値を置く以上は、政治家は民意=国民の代表者であるべきで、外国人のための政治をするのは実質的憲法違反行為です。
ただ日本では、政治資金規正法程度しかない・その他は原則として野放しになっているように見えるのが不思議です。
ところで、アメリカで昨年の大統領選挙に関してトランプ陣営がロシアの助力を得ていたのではないか?ロシアが行なっていたとされるクリントン候補に対する大量のネガテイブキャンペイン等にトランプ陣営が関与していなかったかのテーマで、特別検察官まで任命され既に幾人ものトランプ政権中枢人物の辞任騒ぎになっている・・いわゆるロシアゲート疑惑で揺れているのはこうした価値観の表面化です。
1月24日にも特別検察官が司法長官の聴取(取り調べ?)まで行っていたことの外、大統領取り調べま?で予定されていることが報道されています。
http://www.sankei.com/world/news/180124/wor1801240019-n1.html

コミー氏解任めぐりトランプ氏から聴取か 米メディア、「司法妨害」に関心【ワシントン=加納宏幸】米紙ワシントン・ポスト(電子版)は23日、ロシアの米大統領選干渉疑惑を捜査するモラー特別検察官のチームが数週間以内に、トランプ大統領からフリン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の辞任やコミー前連邦捜査局(FBI)長官の解任について聴取する意向だと伝えた。モラー氏は、トランプ氏に捜査を妨害する意図があったかに関心があるという。
モラー氏側は先週、セッションズ司法長官から聴取したことが明らかになっている。閣僚からの聴取は初めてとみられる。
ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)は23日、モラー氏側が昨年12月、コミー氏から聴取したと報じた。

一般的には政治の帰趨がきになるから大きなニュースになっているのでしょうが、私の関心は外国の意向に左右されてはならないと言う基本的思想がアメリカでもひどく強いと言うことと、日本のように資金が動かない限り問題にしないと言う形式処理の社会ではない・・・外国勢力との繋がりに対する外形的規制法が自由主義の本場アメリカで制定されているのか?の点にあります。
単なる政治責任問題ではなくFBIが捜査に乗り出し特別検察官が選任されたということは、なんらかの刑事処罰制度があるからでしょうが、何の犯罪に対する刑事捜査なのかメデイアははっきり報道しません。
トランプ政権がロシアによるハッカー攻撃に関わったとすれば、ハッカー関連規制法(日本語でいえば刑法の「電磁的記録不正作出及び供用罪」の変形版みたいなもの?)違反の共犯にすぎないかもしれません。
これだけ日本でも大きく報道しているにも関わらず、何の法令違反で捜査が始まっているのかの紹介が全くありません。
単に仮称サイバーテロ防止法違反行為に加担しただけなのか、外国勢力と一定条件下(大統領候補者になった者が)で接触して一定の行為をした場合に、法で処罰対象になっているのか・そんな規制は滅多にないかを知りたいものです。
資本主義、自由経済主義の本家でこれを守るために独占禁止法が制定されているように、思想表現の自由を守る本家アメリカで逆に外国との通謀に対する規制があったとすれば、(単にサイバーテロの共犯程度か?)驚く日本人が多いでしょう。
このコラムでは車の例をよく出しますが、車がより気持ちよく走り回るにはスピード制限や歩車道の区別をつけたり道路状況に応じた各種規制が必要なように、「自由その他の人権を守るにはかえって人権を行使するに際してのきめ細かな規制やルールが必要」というあたり前の原理がわが国では無視されているように思われます。
選挙が重要だから「勝手にやらせろ」と言うのではなく相応のきめ細かな規制が必要ですし、思想表現の自由に関してもこれが尊重され有用であればあるほど、乱用的利用者が増えるので過剰な表現に対する規制(誇大広告規制等がありますが)の必要が生じます。
物事は発達すればするほど交通法規や証券取引金融商品のように規制も増えて行く必要がある・・その方向に向けた具体論が発達するのが普通です。
ところがわが国では、表現の自由論や平和主義が喧伝されているわりに、アメリカでの表現そのものを取り締まる違憲判例ばかり麗々しく紹介され、表現の自由行使に関する交通ルールみたいな外形規制をどのように工夫しているかの方向では、全く紹介されていないのが不思議です。
(私が勉強不足なだけでしょうが、それにしても勉強不足の弁護士には届かない程度のマイナーな紹介論文しかないのでしょう)

憲法学とは?2

日本の国防力弱体運動家でも「平和を守ろう」といえば誰も反対しにくいからこういう運動をしているのでしょうが、自衛の軍隊でさえ持てない非武装平和主義・従来思想を前提とするのか、「自衛権を認める平和主義」かをはっきりさせる必要があります。
正当防衛になるかどうかは、公判前整理手続きの紹介で具体的に判断するしかないと書いてきましたが、具体論がない平和を守れというスローガンを訴える運動はインチキっぽい政治活動です。
国民が知りたいのはどうやって平和を守るかの具体論です。
国民の多く(97〜98%)が考えている平和希望(自衛隊がきちっと国や民族を守ってくれる)とは違った意味・取り違えを期待していることになります。
改憲容認の希望の党へうやむやで合流しておいて、選挙が終われば民進党系議員多数なので、憲法改正反対を言い出すのではないか?と選挙の頃に書きましたが、選挙後の代表選の時にすぐに改憲反対の主張が出てきたことを以下のコラムで書いています。
「希望の党の体質・代表選候補者の主張3(羊頭狗肉)November 16, 2017,
このような私を含めた批判があったので、小池代表が民進党からの移籍者には誓約書を書かすとか、排除論理を発表するしかなくなったのですが、1週間ほど前に民進出身議員多数の力で幹部間で民進党との統一会派結成基本合意を発表し、統一会派に反対(保守系の人は)は分党したらどうかと言い出しています。

https://www.msn.com/ja-jp/news/national/

産経新聞
“排除”したはずが…今度は蚊帳の外-「希望」なき野党再編、立憲民主中心に進展か/ar-AAuXzMZ#page=2
希望の党の岸本周平幹事長代理は21日のNHK番組で、民進党系3野党結集に重ねて意欲をにじませた。
希望の党の玉木雄一郎代表は、安全保障法制を容認しない姿勢を鮮明にした党見解を近く発表する。玉木氏に近い中堅議員は党見解の方向性をこう明かした。
「安保法制には『反対』。憲法9条改正は『優先順は高くない』。無所属の会が納得する内容にしないといけない」
置き去りにされた希望の党は、恭順の道をひた走っているように映る。(松本学)

絵に描いたようなずるい動きですが、流石に問題が大ききすぎてこの話はご破算になったようですが、飽くまで民進党の従来(改憲集団自衛権反対)主張に戻りたいらしく、今朝の日経新聞朝刊2pには、再び改憲支持の党創立メンバーに対して分党を画策してしていくと出ています。
選挙の時だけ改憲標榜の保守政党に合流を希望して殺到しておきながら、選挙が終わったらまた改憲反対とは驚いた政治家の集まりです。
もともと健全野党・保守2党論を期待させて旗揚げした政党なのに、そこに我も我もと参加しておきながら、選挙が終われば元のなんでも反対政党に逆戻りしそうです。
自衛隊違憲論の憲法学者(学説としてはその動機原因を言う必要がないので明言していないでしょうが、)その基本姿勢は「自衛のためでも軍隊を持つと平和を志向する国家ではなくなる」と言う決まり文句・・「合憲解釈で運用を監視すればいい」という説を取らないのは一旦権限を付与すると暴走する危険確率が高いという価値観を前提にしていると想定されます。
一般的に自分の行動原理を前提に物事を考えるものとすれば、上記希望の党への参集と選挙後の変節ぶりを見れば、「公務員を信用できない」という基本姿勢も理解可能です・・。
とすれば、中露韓に限って人格が信用できるとでも言わない限り近隣軍隊保有国の多くは侵略国家であるはずです。
世界中でバチカン等のごく例外的小国を除いて)軍備のない国はほぼないといっても過言ではないでしょうから、そんな意見が憲法学会の多数を占めているとすれば、世界でも日本だけではないでしょうか。
憲法学者の上記論理によれば世界中が軍隊を持っている現実・とりわけ日本周辺では、中露に始まって北朝鮮も韓国も強大な軍事力を維持していますので、日本は侵略国家に取り囲まれていることになりそうです。
いわば猛獣や山賊、海賊、追いはぎなどがウロウロしている危険な社会・・いつでも襲いたい国々に囲まれている環境下に日本があることになりますが、一方で日本だけが
「非武装の平和国家・(武力を持つと不必要に振り回すから棍棒一つ持ってもいけない)・・結果的に無抵抗で受け入れるのが良い・・戸締り不要で生活すべし」
とすれば、周辺国にとっては、空き巣や押し込み強盗・強姦等犯罪行為やり放題になります。
押し込み強盗は短時間で退散しますが、憲法学者の主張によれば自衛手段準備・訓練自体が違憲→抵抗することが憲法違反になりそうですから、強盗がそのまま居座り、家の主人になり、日本人は彼らの家畜のように扱われることになっても抵抗してはいけないとすれば悲惨です。
親兄弟・子供が理不尽に殺され、暴力を振るわれる・働いてもお金を払ってくれない・・お金を貯めても横取りされてしまう・殺され略奪され妻子が強姦されるがまま耐え忍ぶのが理想の社会というのでしょうか?
中韓やロシア政府は日本政府よりも信用できるという自信があるのでしょうか?
憲法学者がそこまでは明言しませんが、「もしも敵国の侵略があったらどうするんだ」という質問には、「粘り強く平和解決を求める」などのあやふやな回答ばかりで、まともに答えるのをきいたことがありません。
質問者は、平和交渉が行き詰まり相手が実力行使・・(南シナ海埋め立て軍事基地建設強行や尖閣諸島海域侵犯を現実に繰り返しています・・竹島占領や拉致被害も同じです・)武力行使してきた場合を念頭に聞いているのに、はぐらかしているだけです。
現実に日本が占領下に置かれれば「はぐらかし」で済むものではありません。
そこで勝手な想像・・侵略されれば「黙って殺されあるいは鞭打たれているしかないのだ」と考えているのかな?となります。
中国や韓国の占領支配に入るのを理想としている・中国等の支配下に入ったほうが日本人に取って幸福だという意見もあり得るので一概に非難できません。
日産やシャープが、外資傘下に入ってから業績が良くなった例もあって、M&Aで世界企業傘下に入った方が良いかどうかは一概に言えません。
企業買収は金儲けが目的なので、優良〜中堅従業員でも彼らを冷遇してやめられたのでは買収の意味がないので大事にしますが、他民族支配欲は合理的目的によらないので、企業の身売りとは次元・意味が違う点をどう見るかです。
とはいえ、せっかく占領した以上は、大なり小なり搾取目的を満足させるためには占領地経済を肥え太らせる必要がある点は同じです。
ソ連のように占領下のドイツから鉄道線路まで引き剥がして持ち去るやり方もありますが、そいう最低占領政策を繰り返すかは別問題です。
日本ではソ連軍侵攻による満州での地獄の経験がまだ生々しいので簡単には忘れられない上に、中国歴史を見ると中国も政治闘争に勝てば勝った方がどんな残虐なことでもしてきた歴史が知られています。
「無駄な抵抗をしないですぐに支配下にはいった方が幸福だ」と言われても・・・?と言う人が多いでしょう。

(憲法)学者とは?2

戦後70年間の経過で、学者の事実認識能力が実験で示されています。
今でこそ世論に押されて17日見たように学者の自衛隊違憲論が7割に下がっているようですが、戦後から数十年間は、ほぼ100%の学者が違憲という立場だった(私が受験勉強した頃に合憲論を聞いたことがありません)記憶です。
現実の70年間の結果判定では、国民意向を無視できない政党では共産党以外は皆合憲論ですし、国民の8割(本当のところはわかりません・もっと多いでしょう)が合憲と考えている結果によっても民意と学者の事実判断能力との乖離が明らかです。
そして憲法学者のほぼ100%は国民主権・法の下の平等・・学者も庶民も民意は平等に尊重されるべき・・民意優先を一方で主張しているのですから、憲法学者だけに特別の優越的発言権があるかの如く麗々しく学者集団生命など出すことの自己矛盾主張に気がついていないのです。
唯一自衛隊違憲を主張している共産党でさえも党綱領に書いているだけ程度の主張で政権を取れば、すぐにも自衛隊の存続を認めるかのような?苦しい議論をしています。
http://www.sankei.com/politics/news/171008/plt1710080010-n

2017.10.8 01:26更新【衆院選】
共産党の自衛隊違憲論めぐり党首討論白熱 安倍晋三首相「侵略受けたらどうなる」 志位和夫委員長「政権奪取後しばらく合憲」
日本維新の会の松井一郎代表(大阪府知事)は「違憲を合憲と見直すのか、自衛隊をそもそもなくすのか」とただした。
志位氏が党綱領に基づき「国民の多数の合意が成熟して初めて解消に向けた措置を取ることができる」と説明すると、安倍晋三首相(自民党総裁)は「志位氏が首相になり、『自衛隊は違憲』といった瞬間に自衛隊法は違憲立法となる。この間に侵略を受けたらどうなるのか。災害出動もできない」と畳みかけた。
さらに公明党の山口那津男代表が「立憲民主党も拒否するのに、どうやって政府を作るのか」とただすと、志位氏は党綱領に基づき「(共産党を含む)政権はすぐに自衛隊を解消する措置はとれない。(しばらく)合憲という立場を引き継ぐ」と説明した。
・・・激しいやりとりを聞いていた希望の党の小池百合子代表(東京都知事)も参戦した。「『しばらくの間は合憲』といったが、平成5年の自社さ政権では、社会党が一夜にして自衛隊をめぐる立場を変えた。志位氏も同じことになるのでは」と加勢した。

以上の議論を見ると共産党の違憲論も、野党の気楽さで無責任主張しているだけのように見えます。
憲法学者も責任を取らない気楽さでしょうか?
17日に公判前整理手続で紹介した通り、弁護士は顧客という責任相手があるのでむやみに気楽な主張ができないから平均8ヶ月もかけて慎重な事実検討の上での主張になるのです。
憲法学者は学問的には、こういう方向性が良いと思想を述べるのは勝手ですが、実務運用について専門家ではないので実務認定に関して優越的専門能力を担保されていません。
16日紹介した朝日新聞の調査では、憲法学者209人にアンケートして122人の回答者⇨約6割の回答ですが、真面目に考えれば「どういう時にどういう自衛権行使するかによるので、(具体的事実・行使した事実がない)現状では答えられない」あるいは、「自分は研究者であって、現実理解能力がない」というのが誠実な学者の立場でしょう。
我々弁護士も真面目に考えれば「整備される関連規則や前提条件を決めていない段階で違憲かどうか答えようがない」というのが、普通の意見になります。
専守防衛と言っても、兵器だけで見ても日本に飛んでくるロケット弾だけをパトリオット等で迎撃するのでは、迎撃ロケットの性能がよくなっても敵国が発するミサイルのせいぜい5〜6割落とせれば良いとすれば、残りの着弾で日本が火の海になってしまいますし、空軍基地やミサイル迎撃基地自体も即時に機能を失います。
第二波攻撃には迎撃すら出来なくなります。
これでは防衛自体が成り立たないので、ミサイル発射する敵艦を逆攻撃して撃沈するしかないし、迎撃基地自体の移動化(潜水艦発射)を図るしかないのが普通の考えです。
従来型の防衛概念では、戦闘機の発するミサイルや機関銃の弾を撃ち落とす努力は無理があるので、敵戦闘機や爆撃機の撃墜に向かうのが普通です。
刀で斬りかかる相手の矛先や拳銃の標的にならないように逃げているだけでは、いつかは切られ撃たれてしまうので、自分も相手に逆に斬りかかり応射するのが防衛の第一歩です。
この論理程度は専守防衛という観念論でも分かり良いのですが、ミサイルの長距離化が進んで日本近海まできた軍艦や爆撃機からではなく、北朝鮮や中国本土から直接弾道弾を日本へ飛ばせるようになってくると上記論理の応用では難しくなります。
領土侵犯がなくとも、敵本土から日本向けに発射されると瞬時に敵のミサイル基地を叩き返すしか有効な自衛ができなくなります。
専守防衛といっても日本に接近している空母や戦艦、戦闘機だけではなく、敵の本土攻撃までするようになると防衛と攻撃との区別がつかなくなってきます。
まして相手が核弾頭を発すると、第一次攻撃を受けるのを待ってからの反撃・敵発射基地攻撃では、間に合いません。
日本の反撃を防ぐために相手は第一次攻撃自体で一斉大量の核弾頭を発するでしょうから、その時点で瞬時に日本は壊滅してしまい反撃どころではありません。
相手国にとっては、日本の反撃が仮にあっても通常爆弾の五発や十発自分の基地に落ちても、その数分後には日本が壊滅するので、そのあとの反撃続行がないとわかっていれば気楽なものです。
これでは、核兵器保有国には防衛戦争自体が成り立ちません。
日本が有効な反撃が出来てこそ、敵国の安易な先制攻撃を抑止できるので、北朝鮮はこの反撃力保持に必死になっているのです。
このように専守防衛といっても敵の攻撃能力の変化にも関係するので、前もって一定枠を決めてしまうのは危険です。
日本が「敵基地攻撃能力のある兵器を持つのは、危険だ!自衛力ではない」という発想自体が、幼児的発想で止まっていると思う人が8割以上いるということではないでしょうか。
専守防衛といってさえいれば解決するものではありません。
そもそも数発〜10発程度の核弾頭を日本が持ったとしても、日本の十数倍もの多系統の発射基地手段を持っている中国に先制攻撃することは中国の巨大な反撃能力に晒されてしまうので、日本が中国侵略目的で先制使用することは、論理的にあり得ません。
中国(の意を受けたメデイアや文化人)が日本の核武装や自衛力充実に猛烈に反対している本音は、日本に対する核兵器の脅しが効かなくなることを恐れていることが明白です。
日本が仮に核保有しても侵略意図がないのでコスト関係でほんの気持ちだけの抑止力にとどまるでしょう。
同じことは北朝鮮にも言える・・北が核弾頭を一定数持った程度で、アメリカを先制攻撃することは想定できないので、反撃力のない日本は最も危険にされる関係です。

集団自衛権違憲論2(学者意見とは?)

昨日書いたように法律にはABCなどのいろんな解釈が成立するのが普通です。
いろんな説が成り立ち得るのに、特定立場でD説しか成立しない・・これを前提に「憲法学者がこう言っている」という宣伝をした上での抽象的世論調査は、言わば不当誘導的な調査になります。
そもそも真面目な学者が具体的条件不明の段階で根拠のあるA〜B〜C〜D説などの内、D説しかないと断定的学説を定立できるとは思えません。
関連法機整備の仕方によっては違憲になり得るから危険だ!だと言う場合には、違憲法案だと断定意見を言うのは行き過ぎです。
「車は事故が起きることがあるから禁止せよ」と言うのと同じ論法です。
法律文言で「他国侵略せよ」という書き方はあり得ないので、結局は「防衛目的といっても運用でどうにでもなるのが危険だ」という程度とすれば、昨日書いた通り公務員が違法行為をする前提意見ですから、代議制民主主義や司法制度によるチェック機能を無視した意見になります。
正当防衛の例で言えば、事件ごとに事情が違うのに前もって「こういう場合には正当防衛に当たらない」と確定的に言える人がいるのでしょうか?
我々弁護士でいえば受任当初に事件の概要を聞いて、「もしかしたら正当防衛の主張でイケそう」と言う場合でも、相手方や目撃者の主張や客観事実を総合しない段階では正当防衛を主張して良いかどうかすら判断できません。
公判前整理手続きを重ねて検察官の手持ち証拠開示を求めるなどして、弁護側主張を固めていくのに半年単位の時間がかかる事件はざらにあります。
以下は公判前整理手続に要している平均月数です。https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/statistics/data/white_paper/2016/2-6-3_tokei_2016.pdf

資料2-1-6-3
平均審理期間及び平均公判前整理手続期間-自白否認別・裁判員制度導入前後別p-

94弁護士白書 2016 年版

(2)自白・否認別の平均審理期間・平均公判前整理手続期間等
裁判員裁判の審理に要する期間は、犯罪の成立が争われる否認事件か、犯罪の成立に争いのない自白事件かによって大きく異なる。次の表は、2015 年(1月~ 12 月)の裁判員裁判対象事件の自白・否認別の平均審理期間・平均公判前整理手続期間(過去比較)及び審理期間・実審理期間についてまとめたものである。
必要的弁護事件数と国選弁護人選任率の推移(簡易裁判所)
資料2-1-2-5
裁判官裁判(2006年~2008 年)裁判員裁判
   中略
   平均審理期間
        2006~08平均     累計     2009年   2010年     2011年       2012年       2013年        2014年      2015年
                 8.3          10.9             5.6           9.8         10.9          11.7           10.9            10.6             11.2
  うち公判前整理手続期間の平均(月)
  否認事件
     3.7         8.4               3.1             6.8           8.3           9.1        8.5                   8.5              9.1
  うち公判前整理手続以外に要した期間の平均(月)
     4.6       2.5               2.5              3.0             2.6          2.6           2.4                    2.1              2.1
 このように公判前準備だけで平均8ヶ月もかかっている・・事実というものはやって見ないと分からないのが普通ですからちょっとした条件を挙げて「こういう場合どうですか」と聞かれても、もうちょっと前後の事情を聞かないとなります。
あらかじめ、こう言う場合という「一言で言える程度の事情・簡略な例示だけ」で正当防衛になるとかならないとか、「一概に」言えないのが、一般的です。
日本国憲法下においても自衛権・自衛のための闘争権限があるというのが8割以上の国民意見であるとした場合、その基礎にある法理論は、自衛権→個人の正当防衛の思想です。
「どんな不法なことをされても反撃できない・自分の命すら守ってはいけない国家ってあるの?」という素朴な国民意見に自衛隊は支えられています。
「集団自衛権」が違憲か?と言う疑問があるとしたら、解決すべき論点・国民の知りたいことは、その法律によって自衛の範囲・個人でいえば正当防衛の範囲を超えた軍事行動をする権限を与える事になるかどうかこそが本来国民が知りたい争点です。
「もしかしたら権限外の行為をするかも知れない」「こういう心配がある、ああいう心配がある」と言う可能性を聞きたいのではありません。
不当、違法行為を前提に違憲の可能性を言い出したら、警察官が好き勝手に拳銃を発砲したり逮捕したら困るからという理由で、警察制度自体が憲法違反になるかのような議論になります。
この種の危険性を宣伝しているのが自衛隊違憲論です。
従業員にお金の管理も任せられません。
不当逮捕が心配であっても、警察制度を廃止するのではなく公務員の法令遵守教育の他に令状主義や裁判手続きなどのチェックシステム整備をすれば良いことです。
企業も経理システムの整備などで不正経理を防ぐべきであって、他人に経理を任せない方が良いと言う意見は飛躍があります。
非武装論者と運動体がダブル傾向がありますが、公害反対その他何でも短絡的に飛行停止や操業禁止を求める傾向がありますが、車事故が多くても交通ルールや環境整備によって事故を減らして行けば良いように、公害問題も防除システム整備の問題であったことが結果的に証明されています。
なんでも新しい道具やシステムには、相応の不具合があること多いのですが、その不具合を「だましだまし」というか、実用していく中で副作用を減らして行くのが、人間の知恵です。
私自身法案をきっちり見る暇もないので、文字通り素人ですが、常識的に考えて一見明白に「自衛以上の戦争行為ができる」と法案に書くことはありえないでしょうから、その法案を(A~Dの中で最悪曲解すれば)「違憲行為ができそう」という程度では、 昨日書いたように公務員が現場で、意見にならないABCの選択しかできない・合憲解釈の範囲しか行動できないとすれば違憲法案とは言えません。
憲法学者が何が起きるか不明の状態で自分の好きな限定条件・一言で言えるような極端な事例設定して?あたかも正しいかのような意見を述べているとすれば、職分を超えた振る舞いです。
ただし、元々自衛権行使(殺されそうになって相手の手を払いのけてもいけない?)自体が憲法違反という立場の憲法学者にとっては集団自衛権が自衛の範囲であっても憲法違反になるのは当然ですから具体的条文チェックの必要すらないといえばその通りです。
>こういう学者の意見など国民の多くが相手にしていないのに、集団自衛権行使が憲法違反かどうかの質問をして報道する事自体国民を愚弄する茶番劇・報道の歪みを表しています。

GHQ(内部対立)+本国政府+極東委員会2(SWNCC228)

昨日紹介した国会図書館の概説3−2の引用だけでは、ここで関心のある天皇制に関する米本国の動きが不明なので、日本国憲法の基礎になっているSWNCC228骨子を見ておきます。
http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/059/059tx.html#t005によれば以下の通り、ほぼ現憲法の(リフォーム)骨格が示されています。

Reform of the Japanese Governmental System(SWNCC228)
TOP SECRET
COPY NO. 66
7 January 1946
STATE-WAR-NAVY COORDINATING COMMITTEE
DECISION AMENDING SWNCC 228
REFORM OF THE JAPANESE GOVERNMENTAL SYSTEM
Note bytheSecretaries
1〜3省略(稲垣)
CONCLUSIONS
4. It is concluded that:
a. The Supreme Commander should indicate to the Japanese authorities that the Japanese governmental system should be reformed to accomplish the following general objectives:
(1) A government responsible to an electorate based upon wide representative suffrage;
(2) An executive branch of government deriving its authority from and responsible to the electorate or to a fully representative legislative body;
(3) A legislative body, fully representative of the electorate, with full power to reduce, increase or reject any items in the budget or to suggest new items;
(4) No budget shall become effective without the express approval of the legislative body;
(5) Guarantee of fundamental civil rights to Japanese subjects and to all persons within Japanese jurisdiction;
(6) The popular election or local appointment of as many of the prefectural officials as practicable;
(7) The drafting and adoption of constitutional amendments or of a constitution in a manner which will express the free will of the Japanese people.

ここで一応区切りますが、aによって上記7項目の(基本的人権の尊重や自由な選挙による国会の権能と政府・内閣が選挙民に責任を負う等)の基本原則(general objectives)が示されます。
命令/強制ではないというものの以下の一般条項が「should be 」・・されるべきであり、これを司令官は「should indicate」すべきということですから、この原則に反する憲法は認めない・・結局は、強制が目立たないように「巧妙にやれ」ということでしょう。
ですから、トップシーククレット文書でしたが、期間経過で公開されたので今では日本側の手に入っていることになります。
SWNCC228の続きです。

b. Though the ultimate form of government in Japan is to be established by the freely expressed will of the Japanese people, the retention of the Emperor institution in its present form is not considered consistent with the foregoing general objectives.

上記によればthe ultimate form of government(政体)は民意によって establishされるべきであるが、現状の天皇制を(そのまま?)維持するのであれば、上記7項目の基本ルールに適合するとは認められないと判定基準を示しています。

c. If the Japanese people decide that the Emperor Institution is not to be retained, constitutional safeguards against the institution will obviously not be required but the Supreme Commander should indicate to the Japanese that the constitution should be amended to conform to the objectives listed in a above and to include specific provisions:
(1) That any other bodies shall possess only a temporary veto power over legislative measures, including constitutional amendments approved by the representative legislative body, and that such body shall have sole authority over financial measures;
(2) That the Ministers of State or the members of a Cabinet should in all cases be civilians;
(3) That the legislative body may meet at will.

d. The Japanese should be encouraged to abolish the Emperor Institution or to reform it along more democratic lines. If the Japanese decide to retain the Institution of the Emperor, however, the Supreme Commander should also indicate to the Japanese authorities that the following safeguards in addition to those enumerated in a and c above would be necessary:
(1) That the Ministers of State, chosen with the advice and consent of the representative legislative body, shall form a Cabinet collectively responsible to the legislative body;
(2) That when a Cabinet loses the confidence of the representative legislative body, it must either resign or appeal to the electorate;
(3) The Emperor shall act in all important matters only on the advice of the Cabinet;
(4) The Emperor shall be deprived of all military authority such as that provided in Articles XI, XII, XIII, and XIV of Chapter I of the Constitution;
(5) The Cabinet shall advise and assist the Emperor;
(6) The entire income of the Imperial Household shall be tuned into the public treasury and the expenses of the Imperial Household shall be appropriated by the legislature in the annual budget.

以下省略

dでは、「The Japanese should be encouraged to abolish the Emperor Institution or to reform it along more democratic lines. If the Japanese decide to retain the Institution of the Emperor, 」として、日本国民が、天皇制廃止またはより民主的天皇制へのリフォームについてエンカレッジされるべきだが、民主的天皇制維持を決定したときには最高司令官は(これを尊重しながらも)日本当局者にCおよび以下の列挙事項(1)〜(6)を示すべきであるとし、そこには、現行憲法同様の内閣の助言承認や天皇の統帥権の剥奪、皇室年次予算の必要性などを書いています。
上記の通り1月7日には、既存天皇制を否定するだけではなく、むしろ存続させる方向性がありうることを示唆しています。
この時点では、戦犯として被告席に立たせる方向性が100%否定されていたことが明らかです。

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