発展を急ぐ社会3と文化

欧米価値観では、在任期間が長かったことや、非合法に会社資金流用していたとすればそのことだけが批判対象でしょうが、日本価値観ではコストカット=容赦なく切り捨てる経営自体が上に立つ者がやってはいけない暗黙の合意のある社会です。
せいぜい許されるとすれば、日産の危機回避のためにやむなくとった非常手段としての位置付けですから、一段落したら整理の責任者が元社員を訪ねる陳謝の行脚をしなければ許されない・「辛い思いをさせましたが皆様の犠牲があって、今企業が立ち直れました」・・)風土です。
こういう風土ですから「身を引いた人たちの犠牲の上にある」という意識・・今の繁栄が自分の手柄のように自慢するようなことが許されない社会です。
(毛利や上杉が所領大幅減にも関わらず家臣団をそのまま維持し続けたことが美談として伝わる国がらです)
ゴーン氏が豪奢な生活をしていたとなれば国民感情として納得できない・・単なる義理も人情も弁えない「コストカッターだっただけでないのか?」
という激しい評価(日本人は慎み深いので表明されませんが・・)になりました。
欧米価値観からは、「いい事をしたのに日本人から感謝されていない」のは理解不能でしょう。
平成天皇がアジア各地の戦跡をめぐる鎮魂の旅も「今日本人の多くが豊か生活を謳歌できているのは戦陣に倒れた多くの御霊による」「安心してくだい」という報恩の旅でもあったでしょう。
粗放経済・・製造現場は流れ作業.小売業はスーパーやコンビニでは商品知識よりは陳列の合理化だけが重視されるようになると「非正規だから」技術の伝承が途絶えるのではなく、ちんれる作業やレジ打ち作業員を正社員にしても商品対するうんちくが高まることはありません。
アメリカでは もともと書店や喫茶店オーナーがうんちくを傾けるような新たな文化を発酵させていくような人材がいないからこそ、これが成り立ち誰も不満に思わないのでしょう。
発酵と腐敗とは違いますが・・・アメリカ人の多くは時間があれば「発酵」せずに「腐敗」方向に行くのかもしれません。
「小人閑居して不善をなす」と言います。(君子必慎其独也,小人閑居為不善)
日本人からアメリカ人を見れば凝ったものなど理解不能・・安もの好き国民性印象になる所以です。
流れ作業をこなす程度の仕事→全自動化が行き着くところ、アメリカが大量に抱える非熟練労働者レベル・・さしたる訓練のない新興国や消費地でも生産可能になったので、アップルに代表されるようにほぼ全て新興国へ生産移管してきたので米国が汎用品の世界生産基地でなくなりました。
低賃金あるいは工程簡略化に頼るビジネスモデルの場合、そのモデルさえ利用すれば(流れ作業の手順をこなせればいいのですから)ちょっとした訓練さえすれば、どこの国でも生産ができるようになります。
工程簡略化・・関与人員削減の場合、従来1000人で行っていた仕事を500人〜100人へと減らす工夫でしかないのですから、その結果余剰になった人員をどうするかの知恵がいります。
この工夫・受け皿なしに人員削減ばかりで切り捨てて行くと切り捨てられた人材がどうなるかです。
関ヶ原の結果、大規模に領地縮小した毛利や上杉家が、縮小した財政力で元の家臣を養ってきたことが知られています。
勝者となった徳川方の大名も戦闘員としての武士が不要になっても武士を放逐しませんでした。
武士自ら有能な官僚や文化人に変身していったし、(芭蕉も酒井抱一も元は武士で平賀源内は足軽です)農工商分野でも効率化によって生まれた余剰時間を精密農耕化していったし・・作庭〜盆栽その他手間暇かけた文化・・浄瑠璃〜歌舞伎〜俳句、狂歌/川柳への発達、大和絵から浮世絵〜工芸では漆器(手間のかかる蒔絵など)や細工物など衣類では、友禅染などを育てる歴史でした。
アメリカ人の多くは効率化一辺倒で、効率化によって浮いた時間を文化創造等に転化する能力がないように見えますがいかがでしょうか?
日本は過去の文物の修復技術に情熱を燃やすひとが多くそのレベルも世界一級ですが、アメリカでは用済みにならば「ぶっ壊す」ばかりのようです。
日本企業はアメリカのご機嫌をとるために現在アートを重宝がるしかないとしても、見に行くと着想(思いつき?)主義で修練というものを重視しない印象を受けます。
アメリカ流の品種改良・F1の草花は、いくら大事に育てても次世代の花は咲かないし改良にも適しません。
スクラップアンドビルドの精神・・・不要になった人員の解雇・切り捨て文化です。
日本では社内教育が盛んですが、底上げ努力しないで切り捨てに特化していると、新興国がローエンド製品を製造するようになると先進国の同レベル人材は製造現場から弾かれます。
新興国並みの生産性しかないローレベル人材をどうするか?・・過去大量に仕入れた?移民が重荷です。
アメリカはこの数年シェールガスで元気を取り戻したように、資源国としての生き残り程度が能力相応?になってきたのを見ると、建国約200年でメッキが剥げてきたようです。
生産基地の新興国展開が始まった結果、アップルで言えば全量中国生産になっているように国内ローエンド製造業が壊滅とまでは言わないまでもお荷物になったのは間違い無いでしょう。
腕力に任せて「米国内生産しないと許さない」というので、トヨタや日産など日本勢は米国内生産・旧来型労働者の雇用確保に協力していますが・・言わば第二次奴隷解放・低レベル労働者の放逐が始まったことの隠蔽・ごまかしでしかないでしょう。
米国に本籍のある企業の場合は、アメリカ社会の本質を知っているし、選挙権者でもあるので政権による脅しなど怖くないので、気楽に米国内生産に見切りをつけてさっさと国外生産移転を進めています。
自分らは安い賃金の国に進出して儲けられるだけ儲けるので、割高賃金雇用を任せるよ!・・トランプのババ抜きのババを「外国資本に引き受けさせれば良い」というのが、彼らの目先損得勘定でしょう。
その代わりゴツく儲けたお金(の大部分はタクスヘイブンに隠して?)の一部を寄付するから・・と言うのですが・・こんな身勝手な企業経営者を国民が許すしかないほど国民が弱いのです。
日本のような愛すべき国民はいない・搾取対象の人民しかないと言うことでしょうが・・・。

発展を急ぐ社会2(アメリカの場合)

奴隷といっても3月1日書いた通り生存保障が前提でしたから、(牛でも馬でも死んだら元をとれません)奴隷廃止=保障なしに放り出せばいいのでテイのいい終身雇用の切り捨て政策だったことになります。
GMが過去の退職者に対する年金債務の重圧に耐えきれずに破産申請して身軽になったやり方と似ています。
「奴隷解放」とは言うものの終身養ってくれる前提で何の貯蓄もなく(賃金がないのですから貯蓄ゼロは当然です)文字も教えられず生きてきた奴隷が、奴隷解放の名目で無補償で露頭に放りだされた場合、彼らにとっては実は大変なことだったのではないでしょうか。
発展中の近代工場労働に転職できた人もいたでしょうが、何の教育も受けない元奴隷にとっては多分ごく稀な例で、大方の元奴隷にとっては単純に野に放たれた状態となります。
長年飼っていた牛馬や犬や猫を生物皆平等といって「解放すべし」と言って単純に野に放てば多くの犬猫ライオンその他動物は飢え死にします。
いきなり元のアフリカの大地に大量に戻しても、餌を取る能力退化もあり大量死が待っているでしょう。
人間だって同じことで母国と縁が切れて何十年もたった人が母国に帰っても生活基盤がありません。
奴隷解放するならば1世代以上の期間をかけて次世代の職業教育してからにすべきだったでしょう。
なぜそんなに急いだのか・西欧に一刻も早く追いつきたい焦り・この辺は中国も同じです・が社会の変化をゆっくり待てない心理だったのでしょう。
中国も米国も産業構造高度化に取り組んでも高度産業に対応できる労働者がゴマンといるから心配ないということでしょうが、仮にそうとしても社会には表通りと裏通り・高級品〜中級品〜最低の形だけのものなどを売る店のように雑多な混合が必要です。
支配層や産業資本家としてはどんどん近代化し、適応できない従業員を切り捨てれば良い・・・ローエンド製品しか関与できない人材には最低賃金を引き上げて対応すれば良さそうですが、ハイエンド製品対応社会になると物価があがるので最低賃金を少し引き上げる程度では、まともな生活ができなくなります。
高級住宅街や高級ショップの並ぶ商店街は底辺層に住みにくい地域になる一般的現象を見てもわかるでしょう。
そこで最低賃金を引き上げという発想になるのでしょうが、時給900円を1000円にしたところで一泊数万〜5万円以上のホテルに泊まる身分になれない点は変わりません。
逆に生産性以上の賃金にすると採算性の悪い商店などがバイトを雇えなくて廃業してしまい、アルバイト先がなくなってしまう弊害が起きているのが韓国です。
韓国文政権による最低賃金引き上げによる零細事業の閉店ラッシュ・失業増加です。
奴隷解放とか急激な近代化より、徐々に産業構造・労働者が入れ替わって行くのを待つ方が無理がなかったように思えます。
性急な社会変化がその後もアメリカ社会変化の常態になって現在に至っているように見えます。
一定レベルに達したらその次のステージ・・じっくり文化を育てる能力がないのを開き直って変化の速さを自慢してきたようです。
功成り名を遂げたら次は文化に勤しみ楽しむのが日本の価値観ですが、アメリカは成金になれば、文化に勤しむのではなく、追いかけてくる新興成金にせっかく掴んだ成金の地位を脅かされるのが怖い・いつも「前年比成長」していないと気が休まらない社会です。
何かある都度「変化の激しい国際社会」に乗り遅れるという説明が日本知識人?の基本意見・立場ですが、変化が激しいのは文化を楽しめるようになるまでの過渡期・病病理現象でないか?という意識がないのです。
敗戦で焼け野が原にされた結果やむなく国民一丸になって「24時間戦えますか!」のフレーズでむしゃらに復興に努めてきただけのことで、ここらで一息つき独自文化を育むべき時期がきた・これが平成の時代であったというのが私の価値観であり、いつまでも前年比何%成長にこだわるのは恥ずかしいことです。
個人でいえば若い時には寝食を忘れて稼ぐのも良いですが、一定の成功を収めたら事業拡張一点張りから家庭生活・文化を楽しむ生活に切り替えるべきというのが私の持論ですし、わたしの家庭はそのようにしてきました。
繰り返し書いていますが、平成の時代は失われた20年ではありません・・落ち着いて身の周りを振り返るべき時がようやく戻ったよき時代です。
余剰人員が出る都度放り出している社会では、放り出された落ちこぼれが大量に排出されます。
・・飢えた猛獣がたまに人を襲うように黒人のための技能習得政策なしに大量放置すれば治安が乱れ、黒人への不満が高まる悪循環でした。
「犯罪率も高いし黒人差別されるのは当然」という差別擁護論も起きてきますが、なんの教育もせず動物のように育ててこき使った挙句にいきなり放り出す方が悪いのです。
奴隷解放後もアメリカの産業構造はベルトコンベアー方式に代表されるように熟練の技を求めず大量生産・粗放農業による低価格出荷競争が主眼でした。
熟練の技では歴史の長い出身母国と競争できないので非熟練者の有効活用を狙った点は、新発見でした。
アメリカの成功以来、世界中が組織内での訓練によるレベルアップ競争よりも、(1時間に10個作れるひとを15個作れるように訓練するよりは)作業手順の分解・分業の合理化でトータル同じようになるならば安い人件費で済む)方が競争原理上有効という価値観が世界を支配するようになります。
熟練工や手の込んだ高級品質を求めず「低レベル労働者を安く利用して中間レベルの製品を大量に安く生み出す」工夫に重きを置いてきた歴史というべきでしょう。
小売業でもスーパー方式の開発でコストカットし、今でもスターバックスやマクドナルドなどレストランその他チェーン展開による大量出店(質より量)で稼ぐ本質です。
今飛ぶ取り落す勢いのアマゾンでも、要はより良いものを作る能力を売り物にしているのではなくビジネスモデルの優位性・・ネット通販による大量収集した顧客情報分析による売れ筋把握→売れ筋商品投入の速さを囃しているにすぎません。
最近刑事事件として脚光を浴びているゴーン氏の功罪は、短期的コストカッターとしての役割を果たしただけで、その後必要な新たな価値創造能力がなかったのに、その後も君臨し続けたことが白日のもとに晒されています。

アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻2

奴隷解放後もアメリカの産業構造はベルトコンベアー方式に代表されるように大量生産・粗放農業による低価格出荷競争が主眼でした。
熟練工や高級品質を求めず「低レベル労働者を安く利用して中間レベルの製品を以下に大量に安く生み出せるか」の工夫に重きを置いてきた歴史にみえます。
今でもスターバックスやマクドナルドなどレストランその他チェーン展開による大量出店で稼ぐ本質です。
喫茶店オーナーがうんちくを傾けるような方式を好みません。
日本人から見れば凝ったものなど理解不能・・安もの好き国民性印象になる所以です。
ところが、流れ作業をこなす程度の仕事→全自動化が行き着くと、さしたる訓練のない新興国・・消費地生産可能になったので、アップルに代表されるようにほぼ全て新興国へ生産移管してきたので米国が世界の生産基地でなくなりました。
この数年シェールガスで元気を取り戻したように、資源国としての生き残り程度が産業の主力になってきたようです。
新興国展開が始まった結果、アップルで言えば全量中国生産になっているように国内製造業が壊滅とまでは言わないまでも、「腕力に任せて米国内生産しないと許さない」というのでトヨタ日産など日本勢は米国内生産に協力していますが・・言わば第二次奴隷解放・低レベル労働者の放逐が始まったとも言えます。
実は米国日本籍のある企業の場合は、選挙権者でもあるので脅しなど怖くないので気楽に米国内生産に見切りをつけてさっさと工場国外移転を進めています。
https://japanese.engadget.com/2018/11/27/ev-gm-5-15/

EVと自動運転車に資源集中。GMが米国内5工場閉鎖、人員15%削減へ
トランプ政策空振り
米ゼネラルモーターズ(GM)が、契約社員の15%をレイオフするとともに、北米5か所の工場を閉鎖、さらに6車種を生産終了すると発表しました。
GMでは今回の再編によって正社員、契約社員あわせておよそ1万4000人のGM従業員が失業する可能性があります。
電気自動車と自動運転車の開発に資源を集中する方針です。

要は、EV系人材に入れ替えたいということでしょう。
ここでも適応障害が起きて旧来型製造工員が行き場を失なっていきます。

https://jp.reuters.com/article/gm-restructuring-trump-tweet-idJPKCN1NW29P
トランプ氏はツイッターで、GMがメキシコや中国の工場を閉鎖しなかったと批判。「米国はGMを救ったのに、その返礼がこれとは!われわれは今、電気自動車を含めGMへの補助金全額カットを検討している」と述べた。

放逐された時代不適合・低賃金労働者をどうするかの、解決策がないことが今のホームレス激増になっていることがわかります。
彼ら全員の再教育には無理があるので、ボランテイアによるピンポイントの教育効果があっても全体の底上げにはつながりません。
アメリカのホームレスに対する施策をさっと見た印象では、ピンポイント救済に引っかからないその他大多数は滅びゆく「先住民」のごとく「ゲットー」に囲って死ぬまで保護していくしかないイメージです。
シェルターは出入り自由なのでその点収容所とは違いますが・・。
出て行くのは自由でも、ホテル等に泊まれない以上は夜になると路上で寝るか、別のシェルターを選べるにしても結局は近くのシェルターに帰るしかないのでは、事実上一生シェルター暮らしになる点は同じです。
能力別人口構成はピラミッド型で、底辺層の裾野が広いのでボランテイアがピンポイント的再教育して・一つ一つの成功例・・やっている人は善行を積んでいる達成感や満足感いっぱい・・それはそれでいいことです。
しかし・・こういうやり方は砂漠に水を撒いているような気休め・自己満足で抜本的解決にはなりません。
マザーテレサで知られるように、あるいはビルゲイツの巨額寄付金のように、欧米ではこういう気休め政策にのる人を賞賛して底辺層の不満のガス抜きしてきた社会です。
日本は個人スターを必要としない社会です。
一本釣りだけではなく、底辺の底上げ・・解決には静かな長期ビジョンによる国・社会の制度設計が必須ですが、これには数世代にわたる施策が必須です。
我が国は誰もスタンドプレーに走らず・・黙々と戦後住宅不足時には公営住宅供給に税を投入してきたし、教育無償化や国民皆保険や年金制度を進めてきました。
こうした息の長い政策には天文学的予算が必須でしかも地味です・・長くても4〜5年で選挙の評価を受けねばならない民主政体・・政権交代する前提の短期施策では不可能です。
日本人の多くは選挙や目先の評判でなく、子孫が恥をかかないようにお国のために尽くす姿勢で多くの人が頑張ってきました。
これが我が国価値基準であり、良き伝統です。
社会のあり方として、いわゆる性善説と性悪説を古くはjune 4, 2013,モラール破壊10(性善説の消滅)前後、近くは19年2月14日頃に書きましたが、日本は性善説の国であって、監視してこそ真面目によく働くというような性悪説・投票箱民主主義のように底浅いものではありません。
米国では奴隷制度に始まり使い捨て的底辺労働に頼って(都市さえもスクラップアンドビルド政策・用済みなれば、ゴーストタウンにして捨てていく社会・・)奴隷制に匹敵する超低コストの底辺労働に頼ってきたこととセットで移民流入(労働能力としては最底辺層が多い)を受け入れてきたのです。
日本でもアメリカの真似をするのが正しいという主張が有力ですが、私はアメリカ方式に反対してきました。
さすがのアメリカも低賃金新興国に汎用品の生産がどんどん移転すると、教育を受け付けない膨大な数の底辺労働者の負の遺産をどうするかの時代に入っています。
2月27日に紹介したヒスパニック人口が約6000万人で、その中で一握りの成功者もいるでしょうが、大多数が文字やパソコン不要の現場作業(草刈り等の原始的?)に従事している階層では真面目に働いてもアパートに住む収入がない状態です。

アメリカの産業・奴隷利用=粗放経済の破綻1

昨日紹介した日経新聞紙面では、60万人の雇用を誇るアマゾンが18年秋に最低賃金を時給15ドルに引き上げたことを紹介しています。
世界に誇る大手企業がその多くを最低賃金で雇っている現実こそ重要です。
Jul 9, 2016 12:00 amのブログで、「非正規雇用の多いアメリカ最大の大企業のウオールマートの店員の多くが,生活困窮者向けの1、25ドル分のフードスタンプを貰う列に並んでいることが問題になって日本でも報道されましたが、漫画みたいな社会です。」と紹介したことがあります。
サービス業でも日本はおもてなし文化度が高いので、能力レベルに応じた多様な高級職種がありますが、アメリカの場合飲食店といってもフードコート類似のマニュアル対応主流ですから、サービス業従事者の多くは最低賃金すれすれ職になっている点が大きな問題です。
(日本でもチェーン展開のコンビニや居酒屋、ファミレス、回転すしなどの従業員比率が上がる1方ですが・・変化が遅いのが取り柄です・スーパーが発達すると反作用でこだわり製品やデパ地下人気が高まるなど世の中の動きが一直線ではありません・・明治維新当時も洋画が入ると反作用で日本画への注目が起きるなど・・)
2月26〜7日に紹介した現地ルポで見たように英語を話せず文字すら読めないレベルの場合、サービス業はフードコートでも一応顧客対応ですので、(一定のコミュニケーション能力が必要)配送すら(宛名等の理解能力)できず草刈りなどの原始的職業しかありません。
ホームレスト関連するフードスタンプ受給者の激増問題もあり、この点については上記Jul 9, 2016 ブログで
「政府の最新データによると、2014年9月の登録者数は4650万人で、前年の4730万人から減少した」
と引用しています。
この登録は世帯単位であることから、1世帯三人とすれば人口の約3分の1がフードスタンプをもらっていることになるとも書いています。
フードスタンプをもらっていても帰る家のある人が多いでしょうが、ちょっと家賃が上がるとついていけないギリギリの人がこんなに多いことが推測されます。
この人たちの生活保障をどうするかのテーマに答えられないのが、ホームレス激増の背景でしょう。
日本のホームレスのイメージは無職者ですが、アメリカの場合有職者なのに住む家がない状態です。
こういう社会では失業率の統計は前年度との比較傾向が分かるものの、(無職で開き直っている人の割合が分かる程度?)目先困っている人の実態には迫れません。
月収3〜40万円の工員がレイオフされて、最低賃金の配達員などに転じた場合、失業者数は変わらないとしても、生活水準の劇的低下を知ることができません。
ところで昨日見た日中の賃金格差ですが、中国と日本の賃金格差が7〜8年前には10分の1前後の相場の記憶でしたから、短期間に約2〜3割上がったことがわかります。
この賃金上昇の結果、チャイナプラスワンの動きが出ているし、中国は低賃金を武器にした国内生産基地化の夢が破れそうになってきたので焦ってレベルアップに乗りだしたところ、やり方が強引すぎてアメリカの怒りを買っている構図です。
中国が近代産業導入後賃金水準アップに連れて国際競争力維持のために労働の質向上に必死なように、アメリカも奴隷利用による最低賃金による安値生産で始めたものの限界がきて、母国西欧諸国に追いつく・・産業革命の恩恵を受ける準備が始まると、労働の質アップが求められるようになったのです。
低レベル労働者のレベルアップは言うは安く、3〜40代以降の人に再教育してもその効果が知れています。
世代交代を待つしかないとすれば、30代後半以降の再教育不能人材の行き場に困ります。
こうなると低レベル・安いだけの労働者を失業させておけばいいのではなく、何らかの生活費支給が必要になる分、足手まといになってきます。
車産業のEV化も各産業分野のIT化でも同じですが、中高年・既存労働者にEVやIT関連作業に変更を強いる社内教育は年齢が行くほど無理があるので、適応可能な若手新人採用の方が企業にとっては合理的です。
社会の変化が3〜40年周期で起きる場合には、世代交代して入れ替わるので問題が少ないのですが、5〜10年で入れ替わる急激な変化の場合、まだ2〜30年働ける年齢で引退(失業)をしいられるので社会の軋轢が生じます。
先進国の高齢化社会到達までに要した期間と新興国の到達時間がまるで違うのがその象徴ですが、あとから追いつく方は近代産業導入以降ごく短期間で先端技術社会に追いつけるメリットの代わりに生身の人間の陳腐化が早すぎるのが難点です。
日本の場合江戸時代からの工芸技術の蓄積がある上に、産業構造の変化がいつも30年程度の周期で来たので、その間に変化に向けた技術修練を経る時間がある・・次の時代に向けた変化能力の高い人材が多く育っているので社会の分断が起きにくい安定社会になっています。
環境激変の時代に、次々と新たな技術に適応していける企業や人材が多くて今なお多くの製造業がしぶとく生き残れている所以でしょう。
訴訟手続きのIT化の取り組みも、パソコン普及開始後2〜30年経過後の今になってようやく始まろうとしていますが、それも明日から紙媒体を受け付けないというものではなくじっくり進める予定です。
そのうち私ら(昨年末同期会に行ってきましたが、同期の多くはすでに後期高齢者です)に続く次の世代が全員引退していなくなる約10年経過ころに全面施行になるのでしょう。
変化の早い時代にこれでは取り残されるといいますが、社会変化は早くとも30年周期が合理的であり、数百年も遅れすぎた後進国が無理に追いつこうとしているから(草花でいえば北国では春と夏が同時に来るように)変化が早い時代と言われているだけではないでしょうか?
先に進んだ方はゆったり構えて次に備えればいいのであって、焦る必要はありません。
新興国では平均寿命50歳前後の社会に近代工場がいきなり入ってきて生活水準が急激に上がり平均寿命が70前後への高齢化が急速に進む一方で、労働技術の陳腐化がほんの10年前後で進み取り残されるのでは、彼らはその後の長い人生をどうやって生きて良いかわかりません。
馬が高齢化して次の馬を買う代わりに車にするならば順次変化でスムースですが、馬や機械がまだ新しいうちにどんどん入れ替えるようなことを人間相手にしているのが韓国や中国政治ではないでしょうか?

ホームレス排出の基礎2

話題をアメリカのホームレスに戻します。
ホームレスの現状報告・上記の通り立派なボランテイアの活動紹介がありますが、4〜50代で英語を話せない、話しても文字が読めないなどの労働者がどの比率でいるのか不明ですが、昨日冒頭に日経新聞記事を紹介したように最低賃金の現場労働している限りヒスパニック社会その他がゴロゴロあるので英語を身につけなくとも間に合うから英語が身につかないままであった面もあるでしょう。
彼らに対するボランテイア活動の尊さもわかりますが・・・中学生レベルの教育も受けていない労働者がひしめいている社会では・「格差拡大反対」などという以前の印象を受けました。
草刈りなど・・その日食べる程度しか稼げない超単純労働しかできない階層が雲霞のごとくひしめいている社会を作り上げたが、その種労働の必要性が縮小するばかり・・彼らの労働の場をどう確保するかの時代が来ているようです。
米国ホームレス現状報告の続きです。
以下は別の報告です。
http://bigissue-online.jp/archives/1073661229.html

米国の人気の街・ポートランドで深刻化しているホームレス問題の実態
2019/01/16
米オレゴン州ポートランドは、環境に優しい街づくりが行われ(公園、橋、自転車専用道路などの整備)、リベラルな街として知られる。ファーマーズ・マーケットなど健康的な食生活が送りやすく、都会でありながら自然に近い暮らしができることから、暮らすにも旅するにも人気の街として注目されて久しい。
米国北西部ではシアトルに次ぐ人気の街。人口も2010年以降は毎年1万人のペースで増え(2012年に約60万人 → 2017年には約65万人)、この勢いは2040年頃まで続くと見込まれている(*2)。しかし一方では、このすさまじい人口増に伴って家賃が高騰、失業率も高まり、ホームレス問題が深刻化。2015年10月には非常事態宣言まで出された(*3)。観光都市としての洗練されたイメージとは結びつきにくいホームレス問題の実態。
2018年9月に現地を訪れた

・・・カフェ運営は多くのボランティアによって支えられている。その一人、リンダに話を聞いた。
「ボランティアワークはとても楽しいし、多くの学びがあるわ。」
「最低賃金レベルの仕事をしていてはアパートを借りることもままならないのがこの街の現状なの。」
「最低賃金レベルの仕事をしていてはアパートを借りることもままならないのがこの街の現状なの。」
ポートランドの最低賃金は時給12ドル。これは米国の中でも6番目に高い数字だ(例:マサチューセッツやカリフォルニアは11ドル)*5。「オレゴン州雇用部門」によると、全雇用のうち7.4%が最低賃金レベルの仕事に相当する。
ポートランドは大企業で働く人などお金がある人には人気の街だが、低賃金の人には文字通り「生活できない街」になっているのだ。家賃を払えなくなって家を追い出され、仕事も解雇され、何もかもを失う悪のスパイラルに陥る。
1年間のインターンプログラムでカフェ運営を手伝っているドイツ人女性エスケにも話を聞くことができた。
ここで働いてみて、ドイツとアメリカの違いに気づいたという。「病気になると同時に仕事も失い、すぐに家を失う。この国の現実にショックを受けました。低賃金の仕事についてる人、貯蓄のない人、子どもがいる人は、いとも簡単にホームレスになってしまう。」
リンダが「彼の話を聞くといいわよ」と言って、偶然カフェの前にいたアントニオという男性を紹介してくれた。突然のことにも関わらず、快く身の上話をしてくれた。
僕は生まれも育ちもポートランド。父はメキシコ出身、母はポートランド出身。子どもの頃からずっと路上生活、いわゆるストリートキッズだった。学校も行けなかったし、精神を病んでた時期もある。33才になる今年、人生で初めて安全な住まいを手に入れたんだ。生まれ故郷であるこの街でね。」
「アメリカの福祉、公的セーフティネットは落ち度だらけ。自由な国なんて言われるけど現実はほど遠い。これが長年、安全な住まいを手に入れたいともがいてきた僕の率直な思い。」
「仕事は20年以上、建設現場などでの肉体労働。最近は農業や木の伐採の仕事をメインにしてる。稼ぎは決して多くない。この国で農家が十分に稼げたことなんてないよ。水やり、草刈り、農場整備、かなりキツい肉体労働をやって月収は約800ドル。」
「人々に食を提供する農家が十分に稼げない、この国の悲しい現実です。その国の農家がどう扱われてるかを見れば、その国の倫理観を知れるよ。それに比べ、人々の生活を監視、統制してる警察は時給40ドルとやたら稼いでる。ホームレスの人たちを苦しめ、行き場もないのに一掃し、時には殺しもする。この国の警察は大嫌いだ。」
「ホームレスの人々に足りていないのは、コミュニティと仕事スキルと心の問題に対するサポート。これらもないのに、警察からは追い払われ、どうやって生きていけというんだ。」
彼の語り口は非常に簡潔で的を得たものだった。
取材・記事: 西川由紀子

この記者もレベルが高い!
古くは奴隷解放と言っても開放しっぱなしで低所得層を放置してきたために貧困の連鎖が何世代も続いてきた・これが中南米その他からの貧困層の難民的移民に引き継がれてきたように見えます。
まだ分析していませんが、直感的に見てアジア系のホームレスは少なそうです。
もしもそうとすればその原因分析も必要ですが、この点は忘れなければあとで書くことにします。
単純作業系労働力余剰問題がホームレス激増の基礎でないかの関心で以下書いていきます。
運搬の動力を牛馬に頼った時代から車時代が来ると、輸送用牛馬の需要がなくなり、競走馬程度が食肉用しか存在価値がなくなりました。
人間がご用済みになればどうなるかの歴史です。
日本の武士は徳川の平和時代がきたときに、(大久保彦左衛門や旗本愚連隊を除けば)おおむね順調に官僚や文化人(酒井抱一のように)に変身していった歴史を書いたことがあります。
明治維新で職を失った士族に対する秩禄処分も紹介しました。
彼らの多くは、明治維新以降の日本近代化の人的礎となって近代日本の発展を支えてきたのです。
日本は古代からおおむね産業構造の変化に民族一丸でうまく対応してきた歴史です。

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