消費者信用の拡大2(供給過剰と過剰与信)

民法の消費貸借では同じ国民が貸す方に回ったり借りる場合もある互換性(その他分野も全てそういう建て付けです)の関係で出来ています。
(「とんとんとんからりんと隣組の歌で歌詞の1節に「あれこれ面倒 味噌醤油御飯の炊き方 垣根越し教えられたり 教えたり」とあるように、要は味噌醤油をちょっと借りたり貸したりする程の関係・・今で言えば財布を忘れてちょっと知人に小銭を借りたり手元のボールペンを貸してもらうような場合です。)
業として貸すようになると民法の原則的規定では済まなくなってくる・・貸金業法から規制法になっていくのは、業者は貸すばかりの一方的な関係になってきたので規制が必要になったものです。
戦後自由化が進んだように言われますが、結果から見ると逆に宅建業法や証取法から金融商品法になり道路交通法や建築基準法など規制強化が進む一方です。
あらゆる分野で対等者間の契約というものが意味をなさなくなってきた時代の法制度がどうあるべきかが消費者保護法制定の原動力でしたし、いろんな分野で問われています。
自由化が進むとこれのルール化の必要が出てきた・・モータリゼーションで移動の自由が現実化すると、(歩行者同士ならばスクランブル交差点でわかるようにルールがなくとも自然に入り乱れて歩けますが)運転者と歩行者となれば、隔絶した力関係を背景にした交通ルールがより細かくなり、不動産取引が増えると宅建業法ができ、金融商品が増えると証券や金融商品を取り扱う業者に対する規制が厳しくなって行くのは、仕方がないでしょう。
投資のようなリターンが想定されていない消費信用の拡大発達に戻りますと、消費財購入の借金は勤労者で言えば、原則的に昇級を前提にしない限り満期が来てもその時返済すべき新たな収入がないので無理っぽい借金ですが、これを打開するために毎月一定額支払う月報販売が始まりました。
欲しいものを買うために1年間貯蓄してから買うのではなく欲しいと思ったらまず買ってその後1年間毎月貯金しているつもりで月掛けで業者に払えばいいというやり方です。
これは時間を金利負担で買うことになって一見合理的です。
お金を貯めてから友達と旅行したい、進学したい、おしゃれな洋服を買いたいなどと言っていると年令・チャンスがどんどん過ぎてしまいます。
「一見」合理的とは合理的に行動できる人にとって(ダケ)合理的というだけであって、「あれが欲しいがそのために1年間は他の買い物や遊びを我慢できる」人はそんなに多くありません。(だから多くの人にとってお金が貯まらないのです)
本来自発的に貯金できない人でも借金になると半強制的(韓国女性のように海外売春遠征してでも返そうとする人が出てきます)なので無理して払う動機付けが生まれる結果、自発的貯金を殆ど出来ない人の8〜9割を何とか真面目人間に変身させることに成功するでしょうが、それでも終わりころには息切れする人が出てきます。
供給側からすれば、消費の先取りをすれば1年早く売れるものの、その代わり1年前の先取り分の反動減が起きますし、(消費税アップ予定やたばこ値上げ前の先取り需要景気の後で値上げ後の反動減がおきます)消費者が月賦を払うために節約すれば日常的に消費していた他の小さな100個の買い物を我慢する結果他の商品が売れなくなります。
早い者勝ちを防ぐために、リボルビング方式が考案されました。
これは次々と商品を買いクレジットを組んで総額が増えても毎月の支払額が変わらない(返済期間が長くなるし金利支払い期間が長いので帳尻は合っていますが)目先にごまかされる人には一見魔法の仕組みです。
満期を際限なく伸ばしていければ返済期限がないのと同じ・・金利負担だけが重荷ですが、どんどん金利を下げて行けば、(例えば5%の金利が1%になれば借入総額を5倍まで増やしても金利負担が同じです)借入限度が上がります。
日本国債の買い替え債発行はこの原理の国家的応用で、満期が来ればその買い替え債を発行してその新規発行によって得た資金で完済して行くので満期のない借金と資金繰りとしては同じです。
この際、重要なのは買い替え債発行時の国債相場・金利動向です。
満期直前に金利が1%アップしていれば1%多く発行しなければ資金不足になりますから債務残高が膨らんでいきますし、下がってればその逆で借り換え債発行額を減らせます。
国債の場合借り手である政府の方で勝手に?金利を決められるので、低金利政策が主流になってきたことになります。
消費者信用の隆盛は、モノ不足時代が終わり供給過剰体制が恒常化→高度成長終了→給与アップ・支払い能力の右肩上がりの終焉→支払い能力を超えた消費拡大を煽るしかなくなったことによって消費拡大を求める供給側と事業用融資の縮小が始まったことによって業務存在価値を失った金融資本の生き残りのための合作で始まった印象です。
昭和4〜50年代から社債等資本市場の発達により、優良企業が直接資金調達が簡易可能になったことにより、庶民から小口資金を集めて貸す・・問屋的役割の銀行から資金調達する必要がなくなったこと(「銀行よさようなら、証券よこんにちは」のキャッチフレーズ)を14〜15年ほど前にこのコラムで紹介したことがあります。
このように支払い能力を超えた需要喚起必要性の視点で国家的に見ると、需要創出のためのケインズ的財政投入の活発化・・日本政府借金(・・国債には建設国債と赤字国債の2種類がありますが、)財政赤字の始まりと消費信用活発化と赤字国債発行が恒常化するようになった時期がほぼ並行していたことからも観ることができます。
赤字国債に関するウイキペデアでは以下の通りです。
https://docs.google.com/document/d/1B_k-2lcstvNhZWWRqkWpEo0Evf1mJlU7NLjlDEZOEak/edit
「財政法第4条は「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」と規定しており、国債発行を原則として禁止している。財政法第4条の但し書きは「公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる」と規定しており、例外的に建設国債の発行を認めている。
しかし、1965年度の補正予算で赤字国債の発行を認める1年限りの特例公債法が制定され、赤字国債が戦後初めて発行された。その後は10年間は赤字国債の発行はなかったが、1975年度に再び発行されて以降は1989年度まで特例法の制定を続け赤字国債が発行された。
1990年度にはその年の臨時特別公債を除く赤字国債の発行額がゼロになり、1993年度まで発行額ゼロが続くものの、1994年度から再び発行されその後に至っている。」
国家財政に話題が逸れましたが、消費信用の拡大は一見合理的ですが、上記の通り合理的な人間ばかりではない・時間の経過で支払いに窮する人が一定率発生します。
住宅ローンやクレジットの支払いに困った人がデフォルトの先送りのためにサラ金に借りる傾向が出るのは当然の成り行きでした。
上記のとおり過剰消費=過剰債務を誘導する限りいつかは(過剰である以上)支払いに困るのですから、破綻先送利のために徐々に下位の金融業者(サラ金にも払えないとヤミ金に走る→犯罪に走るなど・・自殺と他殺とは紙一重です)に頼るようになるのは想定範囲内のことです。
サラ金金利が高すぎる、取立てがひどいなどの問題があるとしても、過剰貸付を放置するから住宅ローンや各種クレジット支払いのためにサラ金等に借りるのですから、本来サラ金に行くようになった時点でデフォルトすべきだったことになります。
サラ金で借りて2〜3年ほど住宅ローンやクレジット等を払ってくれた・・先送りで得したのは、汚れ役をサラ金に押し付けた金融機関や信販系・バックの物販業界です。

供給不足→ハイパーインフレ(ベネズエラ危機1)

ブラジルやベネズエラのような破綻が起きるのは、国債発行額の多寡によるのではなく、国際収支上の総合的パフォーマンス悪化によるものです。
ジョージソロスのような為替マフィアは国債を予め取得しておいて売り浴びせる必要はありません。
国際収支パフォーマンスが長期的に悪化していて、その国の通貨が実勢より高過ぎると見れば、この落差を狙って先物取り引きを利用して通貨自体の空売りを仕掛けられる→通貨の大幅下落=下落分=輸入物価上昇→輸入資金不足→輸入減少→品不足=国内物価急上昇になることによるものですから、既発行国債の量に直接の関係はありません。
ベネズエラの危機状況は以下のとおりです。ww.cnn.co.jp/business/35093870.html 
2016.12.16 Fri posted at 15:48 JST
「ベネズエラ政府は先ごろ、現在の最高額紙幣である100ボリバル札と新しく発行される高額紙幣(額面500~2万ボリバル)との交換を15日に始めると発表。またマドゥロ大統領は11日のラジオ演説で、72時間に限って100ボリバル紙幣と同価の新硬貨の交換を行うと述べていた。
・・ベネズエラが直面している経済的混乱を象徴している。為替相場は暴落し、インフレが急進。食べ物や薬は不足しており、買う場合にも山のような札束が必要だ。
国際通貨基金(IMF)の予測では、今年のベネズエラのインフレ率は470%で、来年には1660%にも達するという。11月だけで通貨ボリバルの価値は約55%も低下した。国民は買い物の際も、札を数えるのではなく、札束の重さを量って支払いをしている状態だった。」
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49059
(英エコノミスト誌 2017年1月28日号)
この1月にロイター通信にリークされた中央銀行の推計によれば、ベネズエラの経済規模は昨年1年間で18.6%縮小した(図参照)。インフレ率(消費者物価上昇率)は800%に達している。
 これらは速報値であり、改定される可能性がある。永遠に公表されない可能性もある(中央銀行は1年以上前に、完全な経済指標を報告するのをやめてしまった)。上記のインフレ率の推計値は、国際通貨基金(IMF)による試算に近い。そのIMFは、今年のインフレ率が2200%に達すると見込んでいる。
ベネズエラの進行を見れば、紙幣発行増によってインフレになっているのではなく、経済パフォーマンス悪化→通貨暴落→輸入縮小による供給不足によってハイパーインフレになっている・・もの不足を糊塗するために、政府が紙幣を大量発行するしかない・・あるいは高額紙幣に切り替えるしかない・・その結果紙幣発行がインフレを起こしているように見えることが明らかです。
世の中には、これを逆に主張する・・紙幣の無節操な発行がハイパーインフレを起こすと言う論説が一般的ですから不思議です。
日本でいくら異次元緩和・紙幣大量供給しようともインフレにならないのは需要あれば直ぐに増産出来ますし、中国から入って来る・・供給が余っている・・買う金があるからです。
金あまり国にインフレが起きようがないのは理の当然・日銀の2%物価序章を期待する政策などは私の素人的意見で言えば、噴飯もの・・無い物ねだりです。
金まり国とは国際的両替出来ない紙幣の量ではなく、国際的にきちんと両替出来る紙幣のことですが・・両替出来る→いくらでも不足資材を輸入出来るの物価が上がりようがないのです。
紙幣が多過ぎてインフレになるのではなく、購買力のある紙幣=外貨に両替出来る紙幣がないから「回りの国が売ってくれない」のでインフレになるのです。
ハイパーインフレの原理は貿易収支悪化→自国通貨暴落にあることが明らかです。
ところで、国債や社債を日本人が持っていようと外国人が持っていようと、円相場が急落すると円資産保有者(国民の多くが円資産保有者です)が損する点は同じです。
結局は自国通貨が暴落するかどうかであり、国内発行の紙幣の量ではありません。
ただし同じ記事を読んでもそれに対するコメントを見ると・・だから「日本の赤字国債発行の危険性がよく分った明日の日本だ」と反応する人がいるのには驚きます。
中韓と交流が必要とは言うものの、どんな眼前の事実を見ても思い込みのある人はねじ曲げて解釈する傾向がある・・「分りあえないのだなあ!」と言う印象です。
勿論逆の立場から言えば私をそう思う人がいるのでしょう。
ただし、今の日本は世界トップの対外純資産国で対外債権保有の方が多いので、円が下がると対外保有資産評価が上がる上に交易条件が有利になる有り難い国です。
逆から言えば通貨下落・デフォルトリスクに関する議論は、経済の底が浅い純債務国に必要な議論であって、対外純資産世界トップの超優良国家日本には、意味のない議論です。
円の対ドル相場が下がると貿易上有利・貿易黒字がもっとたまる・・日本有利になるばかりですから、日本敵視国では、口惜しくとも?円を下げたい国はどこにもないでしょう。
日本攻撃には円を上げさせて貿易赤字に追い込むしかないるしかない・・これがプラザ合意の肝でしたが、市場に委ねておいて自然に円を上げるには日本より金利下げるしかありません。
貿易黒字がたまれば為替変動による調整弁→黒字分だけ円高になる筈ですが、黒字国=金あまりですから資金需要が少ない→低金利化します・・これは日銀政策によると言うよりも自然の流れです。
貿易赤字国→資金不足国は資金不足に比例して高金利・・調達金利が高コストになるので金利の安い日本で借りて自国に持ち込む方がコストが安くなります。
この結果、金利の低い日本から自然と貿易黒字でたまった黒字分をそっくり対外投資に振り向けるようになると円の為替相場が上がりません。
アメリカは長期間貿易赤字が続いていたのに、資金環流システムによってドルが一向に下がらなかったのは、アメリカの強いドル=威信を維持するには好都合だったでしょうが、いわが借金で贅沢していたようなものですからいつかは無理が来ます。
一般の国の場合借金を膨らませる一方ではギリシャやベネズエラのようにいつか破綻するのですが、アメリカは基軸通貨国の特権でドルを刷れば良いので、破綻しないと言われて来ました。
基軸通貨国と言っても本来突出した財力に裏打ちされてそうなっただけで、裏付ける財力がなくなって来ると自然にドル決済取引が減って行きます・・江戸時代の幕府みたいな権力さえあるか怪しいものです。
円ユーロだけではなく今後ビットコインその他仮想通貨時代になって来ると軍事力・権力の裏付け不要の時代が来る可能性もあります。
江戸時代の為替交換は・・信用で成り立っていたように権力がなくとも商人間で信用を失うと商売出来なくなる時代が来るように思えます。
アメリカの金利が対米貿易黒字国よりも高く維持出来ていれば論理上無理がありませんが、中国のように金利逆ざや国がアメリカに義理立て出来なくなると資金還流システムが機能しなくなる・・ある日アメリカドルが暴落する日が来るかも知れません。
中国の場合、対米黒字が年間6000億ドル以上にも達していてこの資金の大部分をアメリカ国債を買わされている・・還流しないとアメリカが承知しない(45%関税を掛けると)・・中国もイザとなればアメリカ国債を市場で投げ売りすればアメリカの威信は大暴落・・と脅かす関係・・お互い強迫関係で来ています。
中国に取っては自国金利が基準金利でさえ4〜5%で市中金利はもっと高いのにアメリカの0、5%前後の低い債権を買わせられるのでは、経済原理もあったものではありません。

紙幣供給量増大と減価4(新興国への影響2)

先進国(とりわけ日本とUSドル)の紙幣増刷の影響が出たのが、リーマンショック前に世界全体を覆った資源バブル・高騰でした。
この最中にリーマンショックによってアメリカドルが大幅に値下がりした(本来紙幣量が2倍になればドル価値が半減する道理に落ち着いた)結果、世界の債権・有価証券はドル建てが多いので・・結果的にドル表示の株価や債権価値が下がって紙幣増発の帳尻が合うようになった・・大方均衡がとれるようになったと言えるでしょう。
(資源価格高騰はこの作用・・貨幣・債権価値の下落の始まりを部分的に示すもの・先行指標ですから、貨幣価値=債権価値が総体として下がれば、資源価格高騰も収まりました)
このときにユーロ建て債権価値がリーマンショックでは下がり切っていなかった分、数年遅れでユーロ危機が来て、ユーロの値下がり=ユーロ建て債権・株価目減りが始まったのも当然の帰結です。
現在アベノミクスの結果,・・最後の円建て債権の値下がりが、円安現象によって始まったばかりです。
これで世界の主要プレーヤーである日米欧通貨建て債権や株価の評価減が一巡する・・世界中の日米欧通貨建て債権や株価の評価減の均衡運動(貨幣量が仮にリーマンショックまでに2倍に増えていれば有価証券の価値も実質半減するべきエネルギーが溜まっていました)が終わりになります。
現在社会では紙幣増発に対するバランスの最終回復はインフレ・物価上昇によるのではなく、有価証券・債権その他の評価減で均衡を達成して行くのが本来の現象です。
世界へのインフレ伝播・・各種資産評価の水増しは以下のような原理で伝播して行き最後は評価減で収束する・・これをニクソンショックやリーマンショックというようになったのです。
比喩的に言えば、タイの金融業者が5兆円の円紙幣を日本で低利で借りてタイ王国に持ち込み自国内で貸し付けするために円からタイバーツへの両替をします。
その結果,バーツ需要が起きるので、タイでは円外貨保有が増えてその同額分バーツが国内に出回ってしまいます。
実際には円をドルなど使い勝手の良い通貨に換えてドルを新興国へ持ち込み,そこでご当地の通貨に両替するのが普通でしょう。
(・・この段階で、大量にドルを円で買うので円の対ドル交換比率が変わり・円安に振れます・・超低金利政策→円安になる原因です)
日本ではプラザ合意後更に続く貿易黒字蓄積による外貨両替=円紙幣の発行が進んでバブルになりましたが、どこの国でも円→ドル→ご当地通貨への外貨両替が進むとご当地国内紙幣過剰・外貨保有額の上昇→通貨高になります。
しかしこの原因での外貨準備が増えて通貨が上がっても、本当の自前の資金(貿易黒字によるもの)でないのでいつ円やドル資金の回収・逆流が始まるとも限らない・・これがアジア通貨危機の端緒・原因でした・・ので短期資金の流入による通貨高はとても危険なことです。
中国がここ20年あまり中国の成長期待を煽るマスコミ報道に呼応して外国人投資家による巨額資金の流入が継続して=外貨保有増になっています。
その他に10〜20年あまり人民元安政策維持のために、ドルを買いまくっているので外貨準備は増えますが、その分国内紙幣過剰に苦しむ・・常にバブルの危機に怯えています。
(中国の外貨準備増加・・真実は不明ですが本当としても・・は貿易黒字による分だけではなく、投資資金流入と人民元売り・ドル買い支えによる面が大きいことを以前から書いています。)
中国の外貨準備が日本を追い越したと思ったら、僅か数年で日本の数倍・・今では3兆ドル前後になっているらしい(真実は不明)ですが、そんなに貿易黒字がある訳ではないので、その多くが人民元を安く維持するためのドルの買い支えと投資資金流入によるものでしょう。
ドルを買い支えたり、投資資金として流入したドルをユーロや円等に換金すると回り回ってドルが下がるので、アメリカ財務省証券等を買っているのですが、約3兆ドルも外貨準備があるとすれば、同額の人民元が国内でその両替用に(余分に)発行されていることになります。
これが国内バブル要因のマグマとなっていて、いつでも暴れ出す機会をうかがう資金になっている危険を内包しています。

紙幣供給量増大と減価3(新興国への影響1)

2、19, 2013「グローバル化以降のゼロ金利政策2」前後でも書きましたが、ある貧困国・新興国が貿易赤字解消や物価急上昇回避のために高金利、金融引き締め政策を採用していたとしても、国内業者が日本から円キャリーで運んで来た安い資金を元手に無茶安い資金貸し付けの商売したら、金融引き締めのしり抜け・貸し出し競争に勝ってしまいます。
高金利に対しては利息制限法等で規制出来ますが、安い金利での貸し出しを禁止する法律制定は不能でしょうから、貧困国・資金不足国では国際収支赤字累積を防ぐために金融引き締めをしたくとも、安い金利で外国から資金が入って来るとこれが不可能になっています。
その結果、貧困国の国民が(余程の自制心がないと・・我が国でもちょっと補助金がついたり金利がちょっと下がるとローンを組んだりして消費をそのまま盛り上げるのが庶民です・・金持ちは少しくらいのおまけにつられて物を買ったりしません)借金でドンドン物を買ってしまう・・ひいては貿易赤字が増大していきます。
これを防いでいるのが、中国の資本自由化拒否戦略・・主として短期資金流入禁止政策です。
長期資金=工場新設等の資金流入ならば、簡単に引き上げられる心配がないし,庶民の消費増には関係がないからこれは歓迎どころか勧誘していますが、昨年からの日中紛争以来投資資金流入が低迷して中国は今では困っています。
中国の豊富な外貨準備と言っても日本等からの巨額資金の流入によるところが大きいので実際にお金持ちかどうかは実は怪しいのです。
日本で国内需要もないのにゼロ金利にするだけではなく、量的緩和をすると国内で使い道がないので余剰資金・紙幣が世界中に流出して行く経済現象が起きます。
工業製品でも中国など出生産過剰になって国内でだぶつくと、海外に投げ売り的輸出が増えるのと同じ原理が紙幣という商品にも当てはまります。
ひいては世界中で(日本で国内資金需要以上に余剰に印刷した紙幣の量に応じた)紙幣過剰になって行きます。
(火元の日本では逆に余剰分を海外に押し出して行ける・・円=商品としての国際競争力は抜群ですので,過剰紙幣問題は解消されます・・即ち紙幣増発=国内インフレになるという意見は杞憂で,むしろ海外でインフレを起こします)
円紙幣の強さ・・何かのリスク・・欧州危機再燃・キプロス危機・北朝鮮危機等々があると資金逃避先として円が直ぐに高くなる傾向があるのは、世界中の日本に対する信頼・認識を示しています・・。
マスコミ・エコノミストが口を揃えて「失われた20年」などと言って、如何に「日本が駄目だ駄目だ」とこき下ろそうとも、この20年の間に世界の信頼が日本に集まっていることは確かでしょう。
この辺の意見もJanuary 16, 2013「最先端社会に生きる5」その他で繰り返し書いてきましたので、再論しません。
(・・マスコミは政治問題でも何でも日本は「如何に周辺国に対して悪いことをして来たか、もう駄目な国」かを宣伝したい傾向があって、これを私のコラムでは何回も批判してきました・・)
日本が世界一金あまり国・豊かで安定した国ですので、経済論理的に世界一安い金利になるのが自然の理に叶っていますし,低金利競争では理論的に日本が最強です。
貧困国や新興国ほど資金需要が高く,高金利にならざるを得ませんから、金利差の圧力が余計働き、低金利資金の流入リスク・・国内消費過熱リスクが高まります。
ただし、工業製品(車や携帯,パンパ−ス等)はいくらでも増産可能ですので消費が盛り上がっても殆ど値上がりしませんが、(その分輸入が増えます)増産可能性の少ない資源や不動産の値上がりが起き易くなります。
最近あちこちの新興国で(特に中国で)不動産バブル現象が多くなっているのは,消費材に占める工業製品比重が増えていることや食料品でさえ輸入が可能になったために消費材の価格上昇は大規模には起こりえなくなったので供給限界のある不動産や資源に紙幣が集中するためです。
紙幣増加による国内消費者物価の直接的上昇インフレ期待論は、社会システム変化を見ない旧来理論によるものです。

紙幣供給量増大と減価2

日銀が仮に10兆円分の国債を市中(主として金融機関や生保等)から買い上げると、金融機関に資金余剰が生じますが、国内大手企業も資金余剰でだぶついています。
最近で言えば全体で60兆円だったか正確には忘れましたが、大手企業ではものすごい額の内部留保状態・・資金の使い道に困っている状態です。
だからこそ、金融機関が国債を買うしか集まった資金の運用が出来なかったのですから,国債を売って資金を回収してもマトモな企業からの借り入れ需要が増える訳ではありません。
では何故日銀の買いオペ・入札に応じるかと言えば,量的緩和による超低金利化によって国債相場が上がっているので,利益確定売りをしているのです。
比喩的に言えば1%金利の国債を持っている金融機関にとって、金利が0,5%に下がれば理論的に既存債権の評価が5%上がります。
この3月期に金融機関の利益がもの凄く伸びている(三菱UFJBKが約1兆円もの利益を出したと記憶していますが・・)のは,低金利化による国債相場上昇・・利益出しの結果や保有株式等の評価上昇によるところが大きいのであって,銀行が営業上何か工夫して儲けを稼ぎ出したものではありません。
史上最低金利化すると将来は金利が上がる=債権相場が下がるしかないとなれば、早めに手じまいする・・保有国債を手放して得るべき利益を得ておいて評価減に備えておくのが合理的です。
言わば現在の日銀による国債買い入れ政策は、将来の評価下落リスクを民間保有から日銀保有への移し替え作業が始まっている状態と言うべきです。
国内資金需要からはみ出した分、この資金が低金利を武器にして海外流出して行く・・リーマンショック前に盛んであった円キャリー取引の復活です。
日本の金融機関は海外で稼ぐ能力が低いことはあまり変わっていませんので,海外投資家が,日本の銀行から低金利で駆り出して海外へ持って行くのが普通・・所謂円キャリー取引の復活です。
この結果(貿易赤字化による円安だけではなく)円を海外で利用するために円からドルへの両替が増えて,円安が加速されているのが現状です。
結果的に海外向けに安い金利・・言わば、貨幣の押し出し・叩き売り・投げ売り的貸し付けが広がります。
投げ売り的貸し付けが広がれば、審査が甘くなり結果的(いつかは)に不良債権の山になるのは目に見えています。
現在も1国閉鎖経済から世界経済に広がったので分り難くなっているだけで、世界全体を1つの経済圏としてで見ればまだまだ貧困層が多いので、これらの国では先進国の金あまりを背景に貸し付け条件が緩まれば、いくらでも借りて消費拡大したい人が無限にいます。
そう言う国で仮に紙幣発行量が3倍になれば、比例して需要も伸びるでしょう。
その結果、ギリシャ・キプロスのように重債務国になっていつかは危機に陥る・・債権価値がこれに比例して評価減になります。
南欧諸国の危機では債権国フランスやドイツ等が債券評価減で大損失を受けましたし,キプロス危機では、資産隠しあるいは租税回避に使っていたロシアの富豪が大損失を受けています。
現在社会では物価上昇による貨幣価値の下落(も当然ありますが)よりは、通貨下落や債権評価減による修正作用の方が大きくなっています。
少し話題がずれますが、日本の超低金利政策や大量紙幣発行が何故関係のないように見える新興国の需要刺激になるか・・あるいはその国の紙幣大量発行に繋がるかについては以前から何回も書いていますが、もう一度この辺で見ておきましょう。

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