中国バラまき投資の限界2(ベネズエラ危機3)

5日に紹介したデフォルト直前のベネズエラに対して中国は多額の債権を有していて、最早回収を諦めていると言われています。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4752   2017年5月5日(金)
中国「ばらまき外交」の限界 経済悪化が深刻なベネズエラを教訓に 岡崎研究所
「フィナンシャルタイムズ紙は1月25日付社説で、長年にわたる誤った経済政策運営によりベネズエラの経済・社会は深刻な代償を払っているが、同国の最大の債権国である中国も、法外で甘い条件での貸し付けが大きな問題を生むことを学んでいる、と指摘しています。」
「ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は緊急資金援助を求め中国とサウジアラビアを訪問したが、明らかに何の成果もなかった。投資家たちは、ベネズエラのベンチマーク国債を「デフォルトの危険あり」のレベルまで落とした。」
「ベネズエラ最大の債権国である中国にとって、これは重大なことである。この状況は、中国が続けてきた、ほとんど条件もなく、透明性のないままに、多くの場合は資源を対価に多額のローンを提供するという形の対政府資金援助の実情を中国に付きている。」
「中国は新興国に対し気前よく大金を貸しており、ここでベネズエラでの経験から貸出条件を厳しくすると国際的な開発環境に大きな影響を与える可能性がある。しかし、中国が「底なしの貸し出し外交」(open-wallet diplomacy)に制約を加え始めたのはベネズエラだけではない。ジンバブエは、昨年100億ドルの救済パッケージを断られ、約束された20億ドル貸付には具体的な石炭鉱山のプロジェクトおよび将来の採掘による税収が担保とされた。中国は、世界銀行やIMF、アジア開発銀行といった多国間機関が貸し付けに厳しい条件をつけるにはそれなりの理由がある、ということを学んでいる、と指摘しています。」
AIIBにこぞって参加した後進国は中国の(慎重な融資審査しない)乱暴な融資決定を期待していたでしょうが、イザ始まると意外に中国も厳しい審査をする可能性があります。
後進国相手のインフラ受注では、中韓は無茶に有利過ぎる(ほぼ出世払い?)支払条件で日本等先進国から受注を奪って来ましたが、上記のとおりの結果が出て来ました。
インドネシアの新幹線受注も支払い条件が無茶過ぎて日本が土壇場で奪われたことが知られていますが、経済原理無視の無茶な受注で表向きの受注実績だけ拡大しても先がないことが分らないのです。
これが民営ではなく国有企業だから出来る(出血輸出が続けられるのも原理が同じです)ことですが、経済原理に反した投資をしていれば、時間の経過・結果的に国家経済を蝕んで行きます。
インフラ工事代金支払いが出世払いのような契約では、さすがに中国政府の資金が続きません・・あちこちで受注だけして放りっぱなしの工事が一杯あると言われています。
こんな無茶な受注が出来ていたのは、中国の将来性を囃し立てて外資がドンドン流入していたので、その資金転用が出来ていていたからに過ぎません。
中国の民度限界が見えて来て外資が引き上げ始める・・あるいは新規投資が減り始めるとこれまでの大判振る舞いの支出(軍事費だけではなくいろんな分野の支出)を絞るしかありませんが、一旦広げてしまうとこれが難しいのです。
特に、アフリカ等へ使ってしまった資金をどうするかで困り始めます。
中国の3兆ドルの外貨準備と言っても日米欧に対するものは公表額面どおりの価値があるでしょうが、中国の場合公表数字自体が当てにならない上に、その他の構成比が不明・・額面どおりの価値があるかどうか不明と言われる所以です。
対日投資の増減発表でもルクセンブルク経由など複雑化していて、その多くは中国スジの資金として推測されているだけです・・敢えて不透明化を狙っているのでしょう
内容がはっきりすると困ると言うことは本当は?と誰もが憶測を逞しくしたくなります。
外貨準備3兆ドルと言っても中身が薄いのを世界中が知っているから、中国がある日決済資金不足でデフォルト直前になってしまわないか?中国リスクを世界中が気にしています。
この心配が中国からの資本流出の動きを加速します。
外資のうち工場設備等に投資した資金は簡単に逃げられませんから中国は「釣った魚に餌をやらない」と言う露骨な政策で強気ですが、何やかやと言いがかりをつけては支払を遅らせるので、新たな外資も警戒して入るのが減って来ます。
国民の方も輸入代金を簡単に支払わせてくれないと「そんなに苦しいのか?」となって、疑心暗鬼が募りいわゆる隠れたホットマネーの流出と国民の海外資金逃避が始まるとどうにもなりません。
外資とのせめぎ合いだけならば、純債権国かどうかが大きなポイントですが、人民からの外貨両替要求になって来ると外貨準備がいくらあっても間に合わなくなります。
まさか国内流通紙幣を全部ドルで買い上げるのは不可能ですから、国民が国内流通紙幣を次々とドル交換に持ち込むようになると際限がない・・底抜け状態になります。
銀行の信用不安→我先に預金払い戻しを要求すれば、取り付け騒ぎになりますが、この場合中央銀行が紙幣満載のトラックを乗り付ければ騒ぎが収まります。
しかし、外貨であるドル交換要求殺到の場合人民銀行がドル紙幣を無制限印刷して供給するわけには行きませんからこの手は使えません。
外貨への交換制限しかないでしょう。
物資不足による配給制度を貨幣に応用したことになります。
外貨不足の最貧国では臨時に外貨割当制が取られることはありますが、・・IMFで昨年秋にSDRに採用されたばかりの中国が、これをしなければないとはこれほどの屈辱的なことがあるでしょうか?
中国の外貨危機・交換制限は外資による売り浴びせによるばかりではなく、国民の政府不信によるとすれば世界史上初めて新手の金融危機の始まりです。
今はその取り付け騒ぎの一歩手前・・人民が外貨準備攻防の主役であるからこそ、昨年から国民の外貨交換条件をドンドン厳しくしているのは恥も外聞もなくした政府としては正しい政策でしょう。外貨両替制限の内容を以下に紹介しますが・やり過ぎっぽい印象です。
ここまでやると人民は余計政府を信用しなくなり・・いよいよ売り抜けに工夫を凝らすようになるでしょう。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-01-03/OJ6XGS6S972D012017年1月3日 15:34
資本流出リスクを警戒する中国当局は、新年を迎えるに当たって個人による人民元の外貨への交換について要件を追加した。」
詳細紹介を省略しますが、知りたい方は上記にアクセスしてご自分で入って下さい。
要点は誓約書に違反すれば3年間外貨両替出来なくなる外、マネーロンダリング調査対象・・ブラックリストに入ると言うことで、正規ルート利用者は震え上がってしまい・1年分枠を一度に使い切れなくなりました。
その頃に日経新聞に解説が出ていましたが、正月明けに1年分の限度額一杯の両替請求がドット出ると投機筋が見て空売りを膨らませていたのですが、政府はその裏をかいて(上記具体的使い道の誓約書記載義務)成功したことになります。

中国バラまき投資の限界1(ベネズエラ危機2)

中国が逆ざやのアメリカ国債を買わされるのは不満ですが、買わないで貿易黒字だけを積み上げるのではアメリカが怒るし・・かと言って、資本流出に直面していて人民元を買い支えるしかない・大暴落では現在のベネズエラのような事態が待っています。
逆ざやにならないように自国金利を日本のようにアメリカ以下に下げられれば良いのですが、金利を下げると資本がさらに逃げて行くのでそれが出来ないので「どうにもならない状態です。
中国は仕方なしにアメリカの顔色を窺っていたのですが、この1〜2年資本流出が激しいことから、人民元防衛のためには背に腹は代えられない・人民元の買い支え用資金としてアメリカ国債をドンドン売ってしまい、今では日本よりも少なくなってしまいました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/12/post-6565.php
「米国債最大保有国が中国から日本に、元安防衛で外貨崩し」
2016年12月17日(土)20時37分
中国が世界最大の米国債保有国の座を日本に明け渡した。下落が続く人民元を支えるために外貨準備を取り崩しているからで、円安が進むのを好ましく思っている日本と正反対の事情が背景にある。
投資家は中国の米国債保有動向から目が離せない。もしも大規模な売りがあれば、ただでさえ上がっている米金利に一段の上昇圧力が加わり、それがドル高/人民元安の加速をもたらしかねないからだ。」
シンガポールのフォーキャストPteのエコノミスト、チェスター・リャウ氏は「中国は人民元相場維持のためにドル(資産)を売っているが、日本は円安を喜んで放置している」と指摘した。
人民元の対ドル相場は15日、米連邦準備理事会(FRB)の政策金利引き上げと来年の想定利上げ回数の上方修正を受け、8年ぶり余りの安値に沈んだ。」
中国としては南シナ海問題で中国の主張を認めないアメリカに対する意趣返しもあったでしょうが、アメリカ国債をドンドン売られるとアメリカは黙っていられない・・「黒字だけのいいとこ取りは許さない」(「黒字を減らすかアメリカ国債を買いますか!いやなら関税45%」)と言うトランプ氏の強烈な対中批判になって来たことになります。
中国はオバマの弱腰を前提に南シナ海で中国批判するならば・と言う脅し?でドル売りを仕掛けて見た積もりだったでしょうが、トランプに一喝されてみると、中国としては年間6000億ドルも黒字を稼ぐアメリカ市場を無視出来ないので・・引き下がるしかありません。
しかしアメリカ国債を売らなければ資金繰りがつかないし、輸出を減らすわけにも行かない・・どちらも出来ず進退窮まっていたのですが、北朝鮮情勢緊迫化を利用してアメリカの言うことを聞くカードを切れたことによって、為替操作国認定を避けるのに成功しました。
経済原理に基づく解決の道を探せなかったので、政治の場での譲歩・・・南シナ海の譲歩よりは傷の浅い北朝鮮を渋々切り捨てたことになります。
遂に切り捨てられた北朝鮮が正面から中国批判を始めたことがこの数日出ています。
http://www.yomiuri.co.jp/world/20170504-OYT1T50079.html       
圧力強める中国に北朝鮮の不満爆発…対立激化2017年05月04日 23時08分
【ソウル=中川孝之】北朝鮮の朝鮮中央通信が3日、中国の政治家らが「敵対勢力とぐるになり、残酷な制裁にしがみついている」と異例の名指しでの中国批判を展開したのに対し、中国政府が4日、「我々は公正だ」と反論するなど中朝対立が激化している。 トランプ米政権に同調して圧力を強める中国に対して北朝鮮が不満を爆発させた形だ。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7540.php
北朝鮮が初めて中国を名指し批判
5月3日、北朝鮮中央通信社(朝中社)が中国を名指しで批判した。北朝鮮が中国を批判するのは、これで3回目。しかし、名指し批判をしたのは初めてのことだ。
アメリカ景気の底堅さ・失業率改善などを背景にアメリカ連邦準備理事会での金利上げ決定近し・・とマスメデイアが15年来囃し立てていますが、経済原理によれば経済力差に金利が連動すべきであってこれを無視してアメリカ連銀が低金利政策を長期間維持するのは無理なことが下地にあります。
経済力(実際には償還能力)がなくとも旧家・名門であると言うだけで安い金利で借りている旧家のようなものです。
日本の異次元緩和には、アメリカと違って出口戦略がないことを批判するのが一般的論調ですが、日本経済が世界最強経済である以上最低金利しかないと言う根本が無視されています。
・・・もしも逆に世界最強の日本が金利を上げると世界中の資金が(円キャリー取引の逆張り)日本へ吸い寄せられてしまうので世界中がこれに負けずに揚げるしかないので、世界大恐慌が起きてしまいます。
イエレン議長が15年暮れ頃に金利上げ出来ない理由として「今上げると中国経済が持たないと言う説明していましたが、日銀の金利政策が世界の中央銀行の役割になっているのですが、これを誰も(政治的配慮で?)言いません。
2番手経済のアメリカが金利を上げる気配だけでもこの1〜2年世界中が右往左往しているのですが、日本が仮にアメリカの金利よりも挙げると言い出したらどうなるかちょっと考えただけでも分るでしょう。
償還能力・・信用に反比例して金利が安くなっているのが経済原理ですから、この20年あまり日本が世界最低金利になっているのは日本の信用力がそれだけ高まっていることを表しているのであって・有事のドルから有事の円に変わっていることもこれを示してています・・日本の不景気とは関係がありません。
A国よりも信用のない国は不景気でもA国よりも金利を下げられません・逆に高くしないと資金が流出して大変なことになります・・この原理を無視してアメリカは実力以上に安い金利で資金を腕力で還流させているのですから長期的に無理があります。
出血輸出で象徴されるように中国の貿易黒字は次第に縮小に向かっている・・中国投資に妙味を感じなくなった外資が逃げ始めた・・資本流出危機で苦しくなった中国にとっては、逆ざやになっているアメリカ国債を売って資金繰りを何とかしたいのは経済の原理から言って当然でアメリカに「腕力だけで」売るな!と言われても経済原理に反したことに長期間従わせるのは無理があります・・。
ところで、中国の3兆ドルの外貨準備と言っても(仮に公表どおりに外貨準備があるとしても)その内容に疑問符があります。
中韓はアフリカその他後進国への投資・・・政治的思惑から、不採算事業をむやみに受注する傾向→結果的に工事代金が(不良)債権になっている・・高利回り債券保有率が高いと言われていますが、これらの多くは資源下落による悪影響をモロに受けている・最貧国・後進国や新興国中心です。
資源国は資源下落→新興国で経済失速が始まった上に15年以降アメリカの異次元緩和政策からの出口戦略が始まる予測→アメリカの金利が上がれば似たような金利でリスキーな投資する人が減る・・資金引き上げリスクに直面しています。
中国の投資先の多くはアメリカの金利上げ予測による資金引き上げに直面していてデフォルト寸前です。
新興国に対する中国の債券?は額面が大きく表面金利は高いものの、実勢相場が大幅下落していて中国がイザと言うときに換金出来る・・回収すべき債権・・ドル換金出来る資金にはなりません。

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